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書庫ショート小説「あいつ」

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この物語はフィクションであり、ここに登場する人名・地名・団体名、その他あらゆる名称は架空のものであります。
よって、本物語に対する、ご質問・ご要求・ご意見・訴訟に関する諸問題は一切お受けできません

午前4時のバステューユ広場の裏通り。
昨日と今日の希望の変局点。
りとるとさきは人気の無い、しかし何か緊張の糸が張り詰めた中を歩いていた。
そして、店の前の吐瀉物の中に相変わらす横になっている男に声をかけた。
ヤニック・・・久しぶりね。お元気?
その男は目を開けた。
りとるはシャツの第二ボタンまでを外し、喉仏から胸の上辺りまでをヤニックに見せた。
そこには、ハートの真ん中に矢が突き刺さった・・・ニコライの持っていたマッチと同じマークが
刺青されていた。
ヤニックは、目を見開いた。・・・りとる。久しぶりだな。待っていたよ。
男は、右手に握ったトカレフ38口径オートマチックを、更にしっかりと握り、
そして、反対側のビルの屋上にいる男に合図を送った。
ビルの頭上の男は、ヤニックの指示を受けて、どこかに連絡をしていた。
ヤニックは周囲に細心の注意を払い、そしてりとるに言った。
ここから100m先の公衆トイレの女の方の裏手に行け。
そこに壊れかれた扉がある。その中でjoyが待っている。
それと、思いっきり走れ。
あそこの角で北のやつらがうろついている。
付けられたな・・・りとる。
あとは、俺と、仲間があいつ等を始末する。
さぁ、行け。
りとるとさきは、思いっきり走った。
北のやつらが走ってきた。
ヤニックは素早く寝ていた場所から2回転し、建物の影に隠れ、トカレフの引き金を絞った。
頭上の仲間も、自動小銃の標準をこっちに向かってくる奴らに合わせていた。
朝焼けの銃声。りとるを追ってきた奴らは3人。
裏道を散開して走ってきた。
さずがにロシアで鍛えられたスパイである。
実戦の経験が深い。走りながらも、正確にヤニックと頭上の仲間の位置に銃弾を浴びせてきた。
ヤニックと頭上の仲間は、まだ撃たない。銃の有効射程距離に達していないからである。
あと5m・・・早く来い。ヤニックは心の中で叫んだ。
やつらの弾もあと3発で切れるはず。マガジンを取り替える時が狙うとき。
一瞬、奴らが拳銃を撃つ時間に間が出来た。
脳より先に体が反応した。
本能とはこうゆうものなのか。
理性では理解できない何か。
それは人間の本能の叫び。
自由と言う理性の檻の中では、本当に望んでいる自由は得られない。
扉を開けて、理性の外に出よう。
きっと、そのチッポケな理性と言うやつは、実は、単に建前えと見栄えの塊りだったと気づく筈だ。

ヤニックと仲間は、一気に奴らに銃弾を浴びせた。
ヤニックのトカレフは、マガジンを改造してあり13発連射ができる。
頭上の仲間のM16アーマライト、暗視標準器付きは50mの射程距離を誇る。
マガジンの弾は25発。しかも16m弾。
中戦車の鉄板も貫通させる殺傷力がある。
しかし、この自動小銃を撃つ体力は並大抵では出来ない。
3つの死体が闇の中に倒れていた。
ヤニックは、元の位置にまた寝転んだ。
別の仲間が死体を片付けだした。
道路に水を撒く老婆は一人、忙しなそうに動いている。
じつに仕事が速い。全員が自分の任務の何たるかを知り尽くしている。
今日は大変な日になりそうだぜ・・・・。ヤニックはほくそえんで、眠りについた。

トイレの裏の扉・・・りとるとさきは息を切らして、そしてその前に立った。
人の気配。しかし、その気配は隣の男トイレから。
りとるとさきは銃を握り締めた。
撃てつを外す音。。。
「まって」・・・joyの懐かしい声が響いた。
りとる・・・・?
そうよ・・・・joy?
りとる、母さんが言ってたんだけど・・・・あの物はどうしたの?
・・・・、・・・・。
りとるは静かにしゃべった。
あの物は、・・・私の胸の中に仕舞ったよ。
突然、ドアが開いた。
りとる!
中からショート・ブロンドのエメラルドグリーンの瞳の娘が抱きついてきた。
久しぶりね joy・・・。元気だった?
joyは二人を中に誘った。この地下通路から店の中につながっている。

フランスの第二次世界大戦の時、ドイツの占領支配下の中、彼等レジスタンス組織は、
地下を自由に動き回れる通路を下水道を利用して作り上げた。
いまだに、この通路は彼等のレジスタンス組織に引き継がれている。
フランス警察も、彼らの組織には距離を置かざるを得ない。
現在、彼等フランスレジスタンスの各組織は、北・中国の脅威、ロシアの侵略、ボスニアの内戦、
そしてイラン・イラク・パキスタンのイスラム圏内の宗教闘争のテロに対して、
時には金で、時には力で、時には核も動かしての対抗をしている。
仕事の依頼は、各国である。
国益と言う正義の名のもとに於いて。
本当がどうか?はどうでも良い。
彼等レジスタンスは自分たちが正しいほうに味方する。
例えそれが、反対組織としても、正しい正義に荷担する。
だから、一番恐ろしい組織である。
金では買えない。何か。
その何かを未だに持ちつづけている、勇者たち。
いま彼ら、レジスタンスの一番の悩みは、フランスの使用済み核燃料が、
日本でプルトニュウムとなったものを、中国を経由して北に流れ、
そして核弾頭となったものが、イスラム圏内に金で流れていると言うことを、
フランス政府が黙認していることである。
フランスの現在の大量の失業対策として。
将来の黒人とイスラム人のフランス国内における人口増加対策が一番の悩みの種である。
フランスも病んでいる。
それを止めることは、今のところ何も無い。
化粧をした美人の国・・・・フランス。
しかして、化粧を落とした顔には深く、そして汚れた傷が目立つ。
それを国はあらはにしない。
魅力の裏側には、必ず闇がある。
それが生きている証拠である。
しかし、その闇が光に変わったとき、国は国で無くなり、
人は人としての心を持たなくなる。
本当に大切な物は?、愛すべき物は何か?、そのために守らなければならない物は何か?
このことだけは、我々も心の中心に置いておきたい。

joy は組織の本部となっている場所に二人を誘った。
りとね・・・あのね・・・国重って言う警視総監だっけ?。
あの男、泉名大臣を殺して、自分が行ってきた、
日本で処理している使用済み核燃料のプルトニゥムを、
北に流している事実や総理大臣への裏金とその組織作りを、全て泉名大臣の責任として始末したんだよ。
それに関係した、りとるや揚揚や、そしてそこに居るさきを殺そうとしている。
でも、もう問題はそんな小さなことではないんだ。
我々、フランスの組織としても、我が祖国を守るために、一緒にやるからね。
そう「あいつ」に協力を依頼されたんだ。
でも我々は、我々の意思の元に協力することに決めたんだ。
それは、母さんの意思でもあるしね。
CIAとイギリスのMI6も動き出した。
当然、国益って言う正義のためにね。
それと、自国以外のスパイ組織の壊滅のために。
まずは母さんのところへ・・・。
りとるは、ミッシェルの遺影に手を合わせた。
joy の声が後ろから響いた。
4年前だわ・・・、バクダッドに居たの。母さんは。
シーア派への武器引渡しとしてね。
その時、スンニ派の自爆テロらしいのだけれど、本当のところは分からないの。
シーア派にもいろんな組織があって、内紛かも知れないの。
全ては大義名分を付けているけれど、単なる権力争いなのよ。
こちらが意図した事と、相手が思っている事が必ずしも一致はしないけれど、
でも利用されて、裏切られて、そして殺されて。
誰のために、何のために協力してきたのが、時に分からなくなるけれど、
正しい事を正しいって、言える時代を作るために、
私が母さんの後を継いだのよ。
・・・りとる。
りとるの左眼からは大粒の涙が零れ落ちていた。
そして右目からも。一粒の涙が。
ミッシェル・・・貴女が私に言いたかったこと、この胸の中に仕舞ってあるよ。
そして、それをjoy にきっと伝えるから。
彼女ならば分かるでしょう。
私たちの願っている事を。私たちが本当にしたかった事を。
そして未来の夢の事を。

joy はもう一言、りとるに投げかけた。
もう少しでここに、揚揚も来る。
母さんの、・・・いや、私のとうさんのジャッカルと一緒に。
揚揚・・・。どうしていたのかしら?
全てはこの場所から始まった。
そしてまたこの場所に戻ってきた。
そしてこの場所から、また始まる。
全ては正義のために。

・・・続く・・・

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この物語はフィクションであり、ここに登場する人名・地名・団体名、その他あらゆる名称は架空のものであります。
よって、本物語に対する、ご質問・ご要求・ご意見・訴訟に関する諸問題は一切お受けできません

楊楊は真夜中のハイウェイをライトも点けないで突っ走る、ジャッカルの背中でまたあの日の事を思い出していた。
楊楊がニコライと共にベトナム戦争を駆けずり回っていたときの事だった。
夜中の一時の休息時間。交替ずつ眠りに入る。
楊楊はニコライの傍らでいつも眠ることに幸せを感じていた。
大きな右手が、楊楊の頭全体を包んだ。
暖かな、そして柔らかなニコライ・・・。

でも此処は戦場。一時間もしない内に自然と目も醒めてしまう。
だがこの一時間もしない時間に天国と地獄が共存する境であった。
隣で休息している仲間は、絶えず次々とナイフで首を欠かれ、一人ずつ死んで行った。
闇の恐怖・・・周りには誰も居ない、そして音もしない。
そこに漂うのは恐怖と言う闇の音の無い世界。
自分の心の中にある「俺はこれで良いのか?と言う疑問・・・そして此処に居る理由は?」
と言う問い掛けだけが、何回も何回も繰り返して心の闇に問い掛けてくる。
そんな事を戦場の最前線で考えさせ、そして闇の恐怖を植えつけ、一人、ひとり、確実に殺していく。
音も無く。声も出さずに。
ベトコンのゲリラ戦法。
ある味方兵士は、恐怖で敵の地雷の中に突っ込んで死んで行く。
またある将校は、自分でM16アーマライトの自動小銃の銃口を口の中に入れ、引き金をひいた。
スイカのように砕け散った脳。
それを抱いて、笑って気がふれてしまった味方の兵士。
地獄だった。
誰もが誰も信じられず、己の持っている銃だけが最高の友だった。
だから、休息と言っても、本当は誰も寝ていない。
本当に寝た奴だけが、殺されて行った。
朝になったほうが安心する。
日の中では、絶えず進攻する。銃も相手の方に撃つことが出来る。
自分の心の中にでは無く。
そして闇の恐怖は無くなる。

ニコライはロシア系のアメリカ人である。
次第に部隊の仲間からの目が変わって行った。
時には、仲間から「お前の国の人間は良いよな!」
自分で戦争しないで、俺たちアメリカを侵略しようとしている。
こんなアジアの端くれで死んでたまるか!
お前の顔を忘れないぜ。ニコライ。
そして帰国できたら、俺はお前を殺す。
ニコライはそんな時、いつも俯いて笑っていた。
時には喧嘩もした。
でも最後にはニコライが相手の馬乗りになり、ナイフを喉仏に突きつけて終わっていた。
体に流れる血は違っていても、想う心はみんな同じなのに、どうして、
素直に仲間と認めないのだろうか?
自分の座る席ばかりを考えている人達よ、どの席が自分に適するのか?
そして、その前後には何人の同じような考えの人間が居るのか?
一歩外から眺めてみれば、滑稽極まりない景色にしか映らないのに。。。

楊楊も次第に戦場の中で、子供とは言え、銃とナイフの使い方を自然と覚えて行った。
そして、どうすれば人を殺せるのかも。。。
死ぬという事。
楊楊はこの頃からずっと思っている。
「肉体が死ぬことは一瞬の出来事」ちょっと痛いだけで、怖くも痛くも辛くも無いよ。
本当に怖くて、悲しいのは、自分の心が死んでしまう事。
信じている仲間に裏切られること。
自分の掲げた正義が力でねじ伏せられて、そして自由が奪われてしまうこと。・・・なんだ。
だから、正しいことを正しい・・・って言える世界。
皆が争いをしないで、いつも笑顔で居られる世界。
そんな世界で暮らしたい。そして眠りたい。
そのためらならば、どんな苦しいことでもする。
ニコライのためにも。
戦争も泥沼状態に突入し、アメリカの実質上の敗戦が濃厚となった。
アメリカ兵士は全て、このアジアから撤退を始めていた。
ニコライと楊楊も引き上げの船に乗っていた。
みんな帰りの船の中は賑やかな笑い声で満ち溢れていた。
夜の闇も幸せの闇で、みんなゆっくりと安心して眠ることが出来た。
だが、ニコライは寝ていなかった。
まだここは俺にとっては戦場だ。何時殺されるのか、リンチに合うのか分からない。
ニコライは絶えず今まで使っていたナイフを離さなかった。
楊楊にもその恐怖感は当然伝わっていた。
彼女は今まで米兵が殺し合っていたアジアの人間である。血が違うと・・・。
彼ら米兵は帰国すれば、当然のように本国では英雄扱いされ、そしてその後は有名人、勇敢なる人達。
就職もそして生活も、安定して暮らせるものと思っていた。
しかし、実際は正反対の生活を余儀なくされていた。
彼らは殺人者、気違い扱いをされて、就職どころか、日々の暮らしの食べ物さえ事欠くような生活をさせられた。
戦争孤児・・・。本来は戦争によって親が居なくなった子供の場合に使うが、
しかし、戦争によって全ての幸せを崩され、そして死の戦場から帰ってきたのにも係わらず、
誰にも蔑視されてしまう。
人殺しの集団と。
本当の戦争孤児は、戦争帰りの勇敢な兵士だった。
ある者は、強盗、殺人、そしてドラックに身を滅ぼした。
またある者は、また戦場に志願して自分の居場所を求めて死に向かう兵士もいる。
ニコライは十字勲章を2つも受けた。
英雄であり、勇敢を讃えられて、そして暖かな日差しの真ん中で暮らしていける筈だった。
米兵を25人助けた。死の銃弾を掻い潜って。
アメリカ人としての誇りを示すために。
でもそんな十字勲章なんて物は、米国内では骨董品の価値も無く5$にもならなかった。
血と勇気の徴の十字勲章が。。
時代の中で、大きな流れの中に紛れ込んでしまうことは、現在社会の我々の生活にも多々あるだろう。
社内孤児。家庭孤児。・・・同じように、孤独な孤高の人は居ないだろうか?
決して自分の大切な人達を孤児にしないで欲しい。
その人はとても傷付いている。
誰かに手を差し伸べているのに、みんな彼らを無視してしまう。
何故我々は、彼らを無視するのだろう?胸に手を当てて考えてみよう。
きっと、何かの答えが見付る筈だ。

そんな時ニコライはハーレムノ交差点の角から二軒目ある、
JOHN NICKELの花屋の前であいつに会った。
あいつはニコライにぶつかり、胸のポケットにフランス行きの航空券と$1000の入った封筒をねじ込んだ。
フランス・・・其処にしかニコライの生きる居場所は無いと・・・・。
ニコライは翌日、フランス行きの飛行機の中に楊楊と居た。
フランスの地下組織、レジスタンス。
第二次世界大戦以来、依然としてフランス国内の地下組織は存在する。
現在は世界のテロや犯罪の闇の警察組織として生まれ変わっている。
ニコライは、フランスのバステューユ広場の裏手にあるミッシェルの店の前に楊楊と立った。
バステューユ・・・中世の頃は市民革命の本山。そして城塞都市。そして監獄。
いまは地下組織と、世界の犯罪組織がひしめく裏の街。
昼間は、観光客などで華やかに賑わいを見せているが、
しかし、夜になるとこの街は一変し、犬一匹も歩かない、そんな危険地帯。
警察官も昼間は4人のチームで観光客のために警備をするが、夜は犯罪者しか中に入ってこない。
朝になれば、毎日誰かが道路で血を流して死んでいる。
死臭のする裏通り。
そこにミッシェルはあった。

真夜中の2時。バステューユ広場の裏通り。
闇が広がる。街灯は全て壊されている。
ミッシェルの前に、大きな男が吐しゃ物と汚物に溺れて寝込んでいる。
いや、死んでいるのかも知れない。この1時間ばかりニコライは観察していたが、全く動かない。
ニコライはその男に近づいた。そして5$紙幣一枚と、十字勲章を一つ渡した。
男は目を見開いた。そして酒臭い声を口から発した。
ニコライか?
ニコライは黙ってうなずいた。
男は、ただ一言。「明日の夜中の2時にまた来い。」と。
ただし、これを持って行け。明日、呼び止められた奴に見せろ。
ニコライの右手の中にマッチ箱を突っ込んだ。
・・・箱のデザインは、ハートの真ん中に矢が刺さっているものだった。
そして最後に男は言った。俺を思いっきり蹴飛ばせ。
警察とロシア系組織が俺たちを監視している。
ミッシェルが見える通りのコーナーの車の中に、そして見上げた斜め後のビルの屋上に。
男の瞳の中に映りこんでいた。
ニコライは思いっきり男を蹴飛ばした。
男は少し宙に浮き上がり、そして気絶した。
今夜は最高に冷える。フランスの冬は長く、そして日照時間が短い。
人々は地下街とか暖かな店から出てこない。
外に居る人間は、こじきか警察、または観光客を目当てにするコール・ガールだけである。
真夜中の2時、ニコライは楊楊の右手を握り締めて裏通りを歩いて、
ミッシェルの少し手前の所まて来た時だった。
背後から人の気配に、ニコライは、右のポケットの忍ばせたナイフを握り締めた。
背後からの軽快な足音と可愛い声・・・・。
「ねぇ、おじさん・・・お花買ってくれない?」
こんな時間に花売りの小娘。。。これが合図。?そんな訳は無い筈だ。
ニコライはその花売り娘に振り返った。
ブロンドのショートヘアーをしたエメラルドグリーンの瞳の可愛い少女が其処に立っていた。
「ねぇ、お花買ってよ〜」
ニコライは右手に握ったマッチ箱をその娘に見せた。
ごめんね、おじさんお金無いんだよ。。。ホラ。ネ。
少女の瞳が一瞬光りを帯びた。
ニコライね。少女はポツリと話した。
私はjoyよ。ミッシェルは私の母さんがやっているお店。
付いて来て。
joyはニコライと楊楊に来るように促した。

・・・続く・・・

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この物語はフィクションであり、ここに登場する人名・地名・団体名、その他あらゆる名称は架空のものであります。
よって、本物語に対する、ご質問・ご要求・ご意見・訴訟に関する諸問題は一切お受けできません

マルセイユの冬はとても日が短く、横殴りの風が絶え間なく吹き続く。
フランスと言う国自体の冬の季節は、日照時間が1/3程度であり、
朝は9時から午後の4時には暗くなる。
冬のフランスは犯罪都市と言う事を肝に銘じて置いてもらいたい。
現在のフランス・・・、人種問題が昨年度より大きく取りざたされている。
これも現政府ミッテラン大統領の政策に他ならないが。
フランス系黒人の差別。実は、今に始まった事ではない。
彼らは中世の時代から奴隷として、アフリカから連れてこられ、現在に至っている。
スポーツの分野では、黒人と言う体型、運動神経の観点から、
ゲルマン系フランス人のパトロンによって、サッカー・テニスの分野では超一流の選手が育っている。
しかしながらその実態としては、フランス系黒人は、レイオフ、賃金格差、
そして全ての面での人種差別。
・・・・フランスは病んでいる。

漆黒の闇が一人の女の背中を包み込んでいた。
後からも悲しみが感じられる背中、しかし、そっと声を掛けたら。。。。
殺されてしまう。
そんな隙の無い、いや、殺気が漂う黒いアクアスのトレンチ。
そして赤いヒール。
その女はダビドフの細巻きの葉巻に、クロスの中央に音譜のマークが入っている
チェコ製のオイルライターで火を着けた。
ニコライ・・・・彼はその女の父親のような存在だった。

女がベトナム戦争の時の記憶。
小さな女の子だった。
しかしその記憶だけは忘れられない記憶。
沢山のベトナム兵士に囲まれた居た。
恐怖で声も出ないような死臭。そして、叫び声。
一人、またひとり・・・リンチ、何かをもてあそぶ様に殺されて行く。
ある者は、両足を縛られ、左右の自動車で引きちぎられた。
ある者は、蚊しか居ない窓の無い部屋に閉じ込められての痒みの地獄。
直ぐに殺すことがいかに簡単で、死者に対してはいたわりの事なのか。
地獄とは殺す寸前で生かし、そして生の希望を全てもぎ取り、そして自ら死に向かわせること。

暑かった。でも震えて寒かった。
その子供は口を塞がれかけた。
噛んだ。何だか分からなかった。
細い肉を噛み千切った。
指だった。
兵士の叫ぶ声がしたと同時に、頬を殴られた。
でも目を閉じるわけには行かなかった。
閉じたら・・・殺される。
その子は目を閉じなかった。
そして、長いナイフがその子の心臓の上から落とされ掛けた。
1・2・3・4・finish・・・最後の言葉はその兵士の死へのカウントダウンとなった。
周辺に居たベトナム兵士は、機銃掃射により、全員一瞬に死へ旅立った。
その子は起きることが出来なかった。
自分も死んでいるのかと思った。
一人の男が近づいてきた。
その男は血だらけだったが、しかし優しい目でその子を見詰めて、
そして胸に下がった名札の名前を言った。
もう終わりだ。
さぁ、暖かいベットに一緒に帰ろう。楊楊。
ジョン・ニコライ・バリシニコフ。
ロシア系アメリカ人の3世。
楊楊はニコライの子供として何時も一緒に過ごした。
とても幸せな日々だった。暖かかった。優しかった。
ニコライと一緒にアメリカから、イギリス、そしてフランスのレジスタンス地下組織に入り込み、
自由革命評議会のメンバーとなった。
自由のために。本当の正義を正すために。
ベトナム戦争。。。目的は何だったのだろう?
アメリカとソビエトの代理戦争?確かにそうだった。では目的は?
言葉に詰まってしまう。両者とも目的が無い戦争。
正義は何か?それも無い。人民と国家を守る。。。それは嘘だ。
アジア圏には石油も無い。
目的が無い、見返りの無い・・・アメリカとソビエトの消費戦争。
人も含めて資源が枯渇した方が負ける。
人は自分を守るために、正義とか仁義とか、言葉を使って他人を傷つけていく。
それが言葉の暴力を含めても、勝った方が生き残れると信じている。
次に自分が負けることは知らずに。下らないサークルゲーム。
本当の正義とは何か?人を守ることではないのだろうか?
身近な人を守るために、今日は知らない人々を傷つける。
それが正義か?あさはかな・・・考えを持った人のお面を被った野獣達よ。

ニコライと楊楊は、デブリン。プラハ。イスタンブール。バスラ。そしてマルセイユ。
革命評議会のメンバーとして闇の世界に入り込んだ。
プラハの赤い薔薇。・・・・楊楊の昔のコードネームだ。
チャウセシスク・・・共産主義の独裁者一人。国、そして人民を全て私物化した男。
その男は人民によりリンチで殺された。と報道されている。
実際に殺ったのは、楊楊だ。
ベッドの中でのキスの瞬間。カプセルに入れた青酸カリを男に舌で押し込んだ。
カプセルが溶ける時間をあと、3秒間違えたら、楊楊が死んでいた。

ニコライの遺品はこんな小さなライターだけ。
海を見詰めていた。
ライターをコートの右ポケットに突っ込んだ。
煙が一瞬、小さく輪を描き、そして消えた。
楊楊は最後の煙を吸い込むために、葉巻を口元に運んだ。
その瞬間だった。
一発の銃声。
楊楊の葉巻が飛んだ。
同時に楊楊は岸壁の舫(もやい)に横っ飛びし、身を隠した。
もう一発。もやいの上に命中した。
危ない。楊楊に死の影が走った。
右太股のガーターに挟んだブローニング・オートマチックを引き寄せた。
何処に居る。
もう一発。右足のコートをかすめた。
狙撃銃・・・カラシニコフだ。
あの銃をここまで正確に扱える奴は、KGB狙撃班のユーリー・ザイチェフしか居ない。
ユーリーは確か、あいつが殺った筈だったが。。。。
何処に居る・・ユーリー。
楊楊は焦った。
何処だ。。。
一瞬の光り。ユーリーのカラシニコフのターゲート・スコープが灯台の光りに反射した。
楊楊は、しかし、100mも離れて、しかも地上40mもある頭上の大型クレーンの操縦室に
ブローニングの銃弾を打ち込むことは出来ない。
もっと近くに行かなければ。

なぜ、ユーリーが私を?
KGBとは今いざこざを起こしては居ない筈。
今回のアジアン・ルビー・ルートの事は、彼らも関与しない筈。
そう外務省から極秘連絡が入った。
ロシアだって、今まで相当、北には武器を供与してきている。
石油、天然ガス採掘。個人所有化。
それで所得格差がロシアに始まった。
パンさえも買えない。冬のソビエトに大量の餓死者が出た。
ペレストロイカ・・・ゴルバチョフの陰謀。
本当の目的は自由な社会にする事ではなく、共産圏から金を巻き上げて、
政治家や資産家の貴族個人をより、裕福にさせ金を集めるため。
ソビエト国民は、この黄金の言葉「ペレストロイカ」に騙された。
いや、ソビエト国家が騙した。
社会主義を崩壊させるために。
国民を餓死させるために。
石油が有れば、世界が自分に膝まづく。
大した間違いを考えたものだ。
人は間違えを修正しなから歩いて行く。
でも権力を持つたびに、その間違いを正当化して、
自分の歩くべき本当の道では無く、間違った方向にハンドルを切ってしまう。
決して後は振り向かない。振り向くことが怖いからだ。自分の間違いを間違いとして認めたくない。
何故?プライドって言うばかげた奴を後生大事に持って居たいから・・・ではないのだろうか?
プライドを捨てた時、本当の自分が見えてくる。・・・そんな事は分かりきっているが、出来ない。

けたたましいバイクの泣き叫ぶ爆音。
ハーレー・ダビットソン・ナイトライダー。
楊楊に向かって飛び込んできた。
真っ黒な皮のライダースーツを着込んで、
ウィンチェスターコマンダーのショットガンを2発、
その男はクレーンの操縦席目掛けてぶっ放した。
暫しの沈黙。・・・・。
楊楊!
その男は乗れ!と右手で合図した。
弾を入替えて、更に2発を漆黒の闇に撃ち放つ。
黒いコートの下に着込んだ、赤いチャイナドレスが躍った。
楊楊はハーレーを後ろ向きに乗り込み、
そしてクレーンに銃口を合わせた。
男は、バイクを急発進させた。
クレーンの上から、一発の銃弾。
バイクの男の左腕の肉が一部飛んだ。
楊楊の顔にその血が飛び散った。
男は無言でバイクをフルスロットルで突っ走っている。
クレーンの真下に来た。
楊楊はブローニング・オートマチックの引き金を引いた。
1・2・3・4・5・6発・・・、全ての弾を撃ち放った。
上から、カラシニコフが落ちてきた。乾いた音が響き渡った。
ユーリーは死んだか?いや、分からない。でも怪我はさせただろう。
楊楊はそう思った。右の太股が熱い。
コートの右のポケットを上から触った。
穴が開いていた。ニコライのライターにカラシニコフの狙撃銃の弾が突き刺さっていた。
コニライ・・・また助けてもらったね。
楊楊は南に輝く、一つの星を見詰めていた。

お前さんを連れて行きたい場所がある。
暫く俺に付き合え。・・・・その男は話した。
俺の名前は「元珍」ローチと呼ばれている。
ジャッカルで良い。
マルセイユの地下組織ミッシェルは俺がまとめている。
あいつに頼まれた。
お前さんをある場所に連れて行けと。。。
でも、あんたが「プラハの赤い薔薇」とは・・・、
光栄だよ。
相変わらず左腕からは、血が滴り落ちている。
ジャッカルは無言でスロットルを引き絞った。
・・・何処に連れて行かれるのだろう・・・
私の名は、楊楊だ。
プラハの赤い薔薇・・・それは、昔の名前だ。
楊楊はブローニングに弾を込めた。

・・・つづく・・・

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この物語はフィクションであり、ここに登場する人名・地名・団体名、その他あらゆる名称は架空のものであります。
よって、本物語に対する、ご質問・ご要求・ご意見・訴訟に関する諸問題は一切お受けできません

プラハのヤーゴイstreetにひっそりと佇んでいるBER 「LITTLE」。
新年のカウントダウンが始まりかけていた。
5・4・3・2・1・・・・・、入り口から突然のプレゼントが投げ込まれた。
それも2つも。
レンガの壁際に居た「あいつ」は叫んだ。
逃げろ!
入り口のピアノの前に居た赤いチャイナドレスの女・・・楊楊。
横っ飛びにピアノの裏手の転げ落ちる。
と共に、左の太腿のガターに挟んだ、ブローニング・オートマチックの引き金を引いていた。
1発。
2発。
3発。
入り口で人が倒れる鈍い音。
楊楊は、そのまま転がり回った。
1・2・3・4・5秒。
ピアノが木っ端微塵に砕けた。
かろうじて楊楊は、倉庫の扉の影に隠れることが出来た。
もう一発入り口に打ち込んだ。
入り口は沈黙を保っている。
楊楊の白い胸元に赤い血が滲んでいる。
ピアノマンのニコライのものだ。
何で・・・此処が分かった?
どうして・・・。
ニコライ!ニコ・・・。
彼の右腕だけが、楊楊の側に落ちていた。

りとるはテーブルを倒して、さきと共にその影に隠れることがやっとだった。
りとるは震えていた。
そう、あの時の交通事故の事を思い出していた。
寒かった。心が寒かった。
体から流れ出る熱い血。
誰も助けてはくれなかった。
寒い。
突然に生きている世界が変わってしまう時、
何を頼って歩けば良いのか?
人は迷いながら、歩く道を探す。
その道が間違って居ても、引き返さない。
いや、引き返せない。
引き返すことも怖いから。
正解?・・・そんなもの何て、いま此処に無いのならば。
頼れるのは自分と拳銃だけ。
りとるはベレッタの安全装置を外し、引き金に指を掛けた。
泣いている。何故?涙が出るのだろう。
悲しい訳じゃない。
ただ昔に居た自分が可愛そうと想った。

さきは既に入り口から投げ込まれた手榴弾の手を見切っていた。
アジア人の手。
色で分かる。
北の奴らだ。
ここまで追ってくるのか?
どうやって?
私達を殺すために。
その理由は?
泉名大臣のアジアンルートは封じ込められた。
でも誰かが握っている筈。
その人間が私達を。。。
たかが¥100もしない中国製の手榴弾。
これが世界の何万人の人達を地獄に送ってしまったのか。
それが、北やイスラム圏内、またインドネシアのイスラム原理主義者、
ボスニア-ヘルツェコホビナノ内紛、果てはコロンビアの革命同名にも流れている。
こんなもので、ふざけている!
さきは入り口に走った。
そして通りを走り抜けて逃げる奴らに引き金を引いた。
静寂だけが残った。

「あいつ」は既に居なかった。
ある人物を殺すために。
そして、りとるの胸に一枚のカードを差し込んで行った。
「冬の東京に行って来る」
「バステューユ広場にあるjoyの店に行け。」
カードは切れのある文字で、りとるに語っていた。
きつく、そのカードをりとるは握り締めた。
・・・joyの店か・・・懐かしいわ。

新年の三が日の中、穏やかな日々が東京では続いている。
風も無く、新たな一年が始まろうとしていた。
警視庁特別捜査官室。
国重総監はただ一人で、新年を迎えていた。
春になれば国政選挙が始まる。
今の自由党総理総裁では、・・・このままの閣内体制では・・・選挙は勝てない。
党員の誰もが、そう思っている。国民も同じだ。
私が座る総理の椅子を、野党の民族党・党首の大沢には渡せない。
いや、渡してはならない。
私が座るのだ。
この時期を待ち望んでいたのだ。
現在の総理とはT大学の同じ学部の同級生。
でも俺は3浪して、私設秘書上がりの泥だらけの道を歩いて来た。
選挙に度に米つきバッタのように頭を下げ続けた。
上からつばを穿きかけられることにも慣れっこになった。
汚い金もばら撒いた。
全ては二世の無能な議員を当選させるために。
現在の総理は親の選挙地盤を引き継いだ、いわゆる二世議員の世界。
そんな奴らがこの国を、
テレビケームをするような感覚で動かそうとしている。

格が違う。
汚れて此処まで来た俺と、総理のあいつとは、比べることすら出来ない。
実力がどうのとか、実績がこうの・・・とか、そんなもので世の中が動くのならば、
きっと素晴らしい理想の世の中なのだろう。
人間がこの世の中に生きている限り、世襲とか名門とか、苦労を全く知りもしない、
実力とは全く関係の無い、社会的なステータスが大手を振ってまかり通る社会。
親の残した財産が全て。
人、金、土地、そして家柄と言う訳の分からないもの。
そんなものが、この世の中を動かしている。
アメリカさえも、あの実力主義のアメリカさえも、結局の所
ケネディ家、ブッシュ家・・・あれが実力なのか?
北だって同じだ。
本当の正義は何処に在る?
本当の真実は何処にある?
それは、自分で掲げる正義しか無い。
自分で見た真実でしかない。
だから俺がこの日本を掌中に納める。

国重悟警視庁総監は、そのために泉名大臣の野望をつぶし、
全ての罪を「あいつ」に擦り付け、全てを闇に葬って来た。
正義は自分に有り。と報道関係や党内で息巻いている。
・・・今の総理にはお辞め頂く。
北との金融取引と言う、スキャンダルの汚名により。
そのための玉(現金)は十分と言えるほど、泉名大臣のルートから儲けることが出来た。
泉名大臣を「あいつ」に仕掛けさせて、
北の奴らに抹殺したのもこのためだ。
全ては闇の中で。。。
北には、随分とお土産をやったけれど、それも総理になったときに、返してもらおう。
北の脅威をもっと誇大に国民に論じて、その方向に向かわせれば、
いや、でっち上げれば、北に対する国防と言う名により、全ては自分に有利に働く。
爆弾が空の張ボテのテポドンを飛ばすのに1億は痛がったが、まぁ、仕方ないだろう。
そして最後は、北とイスラムが手を結ぶと言うクライシス。
核の脅威は北からでは無い。
中東から発射すると言う仮想クライシス。
これこそ、アメリカもNATOも動かざるを得ない。
北の言いなりに成り下がる世界。
中国はどうする?
自分の撒いた種をどうやって拾うのか?
金で「主義」を売り込む、偽イスラム原理主義者なんて、腐るほど居る。
北と日本の友好関係の復活。
自分がやる。華々しく。
日本の常任理事国入り・・・これで自分が果たせる。
そして、歴史に自分の名前を刻み込むのだ。
それが実力と言うものだ。
これで・・・二世議員の奴らに本当の実力を見せ付けられる。

「あいつ」と「楊楊」とか言うポルポト将軍の孫だとか言う女。
そして「りとる」と「さき」。
りとるとさきの頭の中のマイクロチップは壊れたようだ。
記憶を破壊するほどの電磁波を頭脳に掛けないと、マイクロチップは破壊できないが、
あの女どもは、自分の記憶を消すと言うスイッチを押してしまった。
それで本当の自由を勝ち取ったと思っている。
許されることではない。
国家権力を軽く見るな!
あいつ等を葬ってやる。
幸い、防衛庁が防衛省に格上げになる。
いずれ、国家の予算の20%強は国防に掛けられる。
消費税の増大、また揮発油税の一般財源化、更に教育と言う名の元に、
学校教育補助金、学校法人税の優遇措置の廃止。
宗教・その他国技からの税金徴収。
幾らでも金を集める名目はある。
金のなる木は、汗水を流して働く賢明な国民だ。
北の脅威は金で買える事ができ、そしてそれを自分がコントロールできる。
全ては金だ。
国重はババナ産のモンテクリストNo.9の葉巻に火を付けた。
蒼い煙が、地上35階の皇居を望む特別捜査官室に漂い、野望の渦を巻いている。
きっと、勝てる。。。
国重は煙をゆっくりと、吐き出した。

・・・・続く・・・・

イメージ 1

あと3時間で新年を迎える。
プラハのヤーゴイ通り。
裏道。
街頭も寂しく、人通りも無い。
新年を迎えようというのに。
裏道の更に奥まった袋小路の一軒のJAZZ BAR 「LITTLE」。
まばらな客がピアノの音符の旋律に流れる
バートランドの子守唄を聞いていた。
あいつはレンガの壁の一番奥まった暗がりの席に、ピアノに向いて、
HIGHTLAND WHISKY をなめていた。
店のバーテンダーのYAKOBUがある女性シンガーを紹介している。
WE INTRODUCE TOHIGHT SPACIAL GEST SINGER FROM ASIA.
MISS YOUYOU .
赤いチャイナドレスの彼女は、ピアノの前のスポットライトの前に出てきた。
腰まで割れたスリットの中の白い足が、この店の常連達にアジアの神秘を
覗くような目をYOUYOUに向けている。
彼女は、タバコに火をつけて、そして、ピアノの旋律に自分の声を載せて、
そして歌い始めた。

「愛の波」

愛の波に溺れ
おやすみの口づけを
遠い夢の涙
静かに眠れ
何時の日かめぐり逢う
温もりを信じて
身も心も全て捧げたい
帰らないあの日に

風の中で聞いた
愛しさ囁き
凍り付いた胸を
安らぎに溶かして
脱ぎ捨てたこの想い
朝焼けに映して
身も心も全て守りたい
戻らないあの日を

投げ捨てたコインの中に
悲しみを閉じ込めて
月の光りに照らされた
想いだけを見詰めたい
何時の日かめぐり逢う
温もりを信じて
身も心を全て捧げたい
帰らない貴方に
MY SEET MY LOVE・・・・

・・・・・・・
りとるとさきは入り口近くのテーブルに腰を下ろし、
YOUYOUの歌を聴いていた。
りとるは呟いた。
あの人は、私の姉さんなの。
多分そう思うの。
本当は分からないけれど。
記憶が無いしね。でも血が騒ぐのよ。
そしてさきに対しても、自分の一部のような、そんな気がしている。
りとるもさきも、同じように、自分の意志に関係の無い世界に紛れ込んでしまった。
だから、いま自分が居る環境を元に戻したい。輝いていた世界に。。。
でもね、さき・・・、私は、自分の意思で、自分の足で、ここに留まろうと決めたの。
それはね、使い捨てにされない。から。ここが。
私が居ないと、ミッションは完了しない。
そんなことを考えていると、私は生きて居るんだ。って、思えるの。
多分、YOUYOUさんもそうだと思うのよ。
さき・・・貴女はどう?
さきは、声を吐き出した。

私も同じだよ。
とても辛くてイヤだけれど、でも生きているって感じたんだ。
りとる・・・まだ一緒にいられるかな?
しばらく、私も皆と同じように、私しか出来ない事、
ここでやらせてもらいたいんだ。
使い捨てになりたくないよ。もう。
りとるは俯きながら、さきの声を聞いて、少し寂しそうな顔をした。
そして直ぐに、さきに向き直った。
それじゃ、あの人のところに行こうよ。
プラハに来た訳、分かってくれて、ありがとう。

さきは心の中で呟いていた。
ひとは一人では生きていけないんだ。
でも一人でやらなければならない事は沢山ある。
それをゆっくりでも良いから、一つずつ、やっていくことで、
自分の足跡を築いていくんだ。
自分のやり方で。
それで生きていることを証明できるんだ。
明日にその希望をつないで行こう。

あとがき
このフィクションに参加された方。
想像の世界とは良いながら、かなり突っ込んだ形で書かせ貰いました。
気分を害したこともあると思います。
失礼しました。

人は、人の中で生きています。
それはこの先もずっと、変わりの無いことと思うのです。
人がみんな微笑んで、この地球上では生きていけないものなのでしょうか?
それは神のみぞ知ることなのでしょうか?
せめて、私どもだけでも、人のやがることはしない。
そんな些細な優しさを持って生きて行きたいものですね。
それは、心がけ次第で唯一、我々自身が一人ひとり出来ることなのですから・・・・。

さて、次回の構想を来年度に考えて参りますので、
またよろしくお願いします。

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