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書庫ショート小説「あいつ」

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あいつ・・・vol.2

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注:本創作小説に登場します、名称・人名・地名等の全てに関してはフィクションであり、
想像の域を超えない内容にて記載します。
気分が悪くなられる方がいらっしゃれば、誠に申し訳ない事であり、謝罪いたします。
しかしながら、本、創作に関しての、訴訟等諸問題につきましては、ご容赦願います。

第二話。

突然、中央操作室のスクランブル(緊急警報)の警報が全館に鳴り響いた。
政雄は、ここの所、原子炉の異常とも思われる微振動の原因調査のために、
24時間勤務体制をしており、原子力発電所の全てをコントールする
中央操作室に寝泊りしていた。
ここは、新潟県柏崎市刈羽村・・・・T京電力柏崎原子力発電所5号機。
1号から数えて7号機まで、全て100キロワット級の沸騰水型原子力発電所である。
東北・関東甲信越の電力の60%を賄っていると言っても過言ではない。
日本には原子力発電所のタイプが二種類存在する。
一つは、T電力が推奨しているゼネラルダイナミックス社製の沸騰水型であり、
これにはH製作所、T芝が取り組んでいる。
そしてもう一つは、K西電力が推奨している、ウェスティングハウス社製の加圧水型であり、
M菱重工が取り組んでいる。
ともに、政府のエネルギー長期化計画の原子力推進基準に従って、通産省の指導のもとで実施している、
言わば原子力産業は国家事業である。

外は春を告げる雪雷が鳴り響いている。
政雄は中央操作室になだれ込んだ。
すでに中央操作室の炉心温度モニター、発電容量計の異常にしがみ付いている
原子力運転課長の千田が狂気と化していた。
運転副長の政雄は、とりあえず、化学室の史枝に連絡した。
(発電所には炉心用の第一汚染地域と第二次汚染地域、そして一般領域の3領域に区分されている)
炉水の異常温度上昇があり、水量計が水量不足の警報が出ていたからである。
ひっよっとすると・・・炉心の冷却水配管の亀裂が発生して、放射能汚染水が流出??
どこから・・・?
先日から炉心の異常振動を調査している政雄は、ある推論を持っていた。
ホットラボ(第一次汚染領域の化学分析室)の真上の炉水配管?確か、肉厚不足で昨年度の定期点検で
全て交換したはずだが、しかし、ホットラボ周辺からの異常振動が施設課の吉野から報告されていた。
ラボには、紅一点の史枝が居た。入社2年目で主任。スタンフォード大学を卒業後、父の勧めでT電力へ。

防護服を着ている時間も無かったのだろう、
すでに放射能を浴びた炉水の放射能汚染度測定を、ピンクの第一汚染区の作業着のみで測定をしていた。
(炉水の第一次汚染区はピンクの作業着、冷却水の復水の第二次汚染区はブルーの作業着)
史枝は焦っていた。作業時間のリミットが、あと30分。
第一次汚染区の作業時間は2時間と決められている。体の受ける放射能が基準値を超えてしまう。
時間が無い。
(原子力発電所勤務の家族には、何故か女の子が良く生まれる。
男性の精子と放射能の関係はまだ不明であるが、事実は事実である。)
初めての測定値。。。カウンターの表示器がオーバースケール。
炉水が洩れている。しかも大量に。
何処から・・・・ラボの真上???
私達は???
主任である史枝は作業者の安全を確保しなければならない。
既に外注の分析班を非難させていた。
だから、今、一人で、このラボで分析をしている。
政雄は史枝の性格を良く分かっている。
だから、いまラボに向かっていた。
「アイツは死ぬ気だ。」・・・こんな事で。こんな事・・・・日本が大惨事に・な・る???
一般の作業着から、パンツまで全てを着替えて、ラボまで行くのに、30分は掛かる。
嫌な汗をかきつつ政雄は走った。

正義は何だ?
昨日、課長に炉水冷却水配管のバイパス処理を言ったのに、
作業時間が無いとか、金が掛かるとか。。。。
でも本当の理由は違う事も、政雄は知っていた。

工事申請を5号機の発電部長に言えない、千田課長。
T大学のエリートでこの会社の本店採用。政雄の現地採用組とは別の人間。
履歴に傷はつけられないのだ。
あと、一年此処に何もせずに、何も起こさずに居れば、本店の課長として帰れる。
電力の本店勤務は、電所勤務とは天と地の差である。
しかも、全原子力発電所の頂点に立つ、本店の唯一、一人の運転課長。
名だたる大メーカーのH製作所、T芝、F電気、・・・・、社長以下が、みんなひざまづく。
「おれはエリートだ」
そんな時、政雄は「あいつ」を見た。

・・・続く・・・

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闇の中に静まる恐怖と向き合いながら、孝志はブローニングオートマチックを左手で握り締めていた。
右手はすでに、昨日の夜にサボイホテルでアイルランド革命協議会の奴らに襲われて、潰されてしまったのだ。
包帯も既に赤い血でどす黒く変色し、その中から鮮血がにじみ出て湯気を立てている。
孝志は探していた。
「あいつ」を・・・・・。
昨日の夕方、デブリン市内の古市場でクラッチがなかなか繋がらない老いぼれのワーゲンで、
あいつを確かに追い詰めた。・・・・筈だった。
あいつは黒のバーバリーのトレンチコートの中から、
駆け抜けざまに、左手でサイレンサー付きのワルサーPPKコマンドを取り出した。
そして、孝志のワーゲンのフロントガラスの真中に命中させた。
これと言って致命的な殺傷力がある拳銃ではない。たかが、6mmの弾だ。
当てるものなら、当てて見・・・ろ・・・。
急ブレーキと共に、左のフロントタイヤが悲鳴を上げて、消火栓にぶつけて止めた。
「あいつ」はちらっと、左半身だけを孝志の握ったハンドルを見て、立ち去った。
孝志はそのときのあいつの顔を覚えていない。
しかし、あのコートはしっかりと網膜に焼き付いていた。
コートの下から出た、スコットランドヘリンボーンのスーツ。
銀行員かと思われそうな、野暮なスーツを敢えて着込み、英国の情報部、
サーカス・サーカスの情報員と良く会っているも目撃した。
その女はRRKの管理部にベッドの上で殺された。

不意に足音が背後から聞こえた。
あの特徴のあるヒールの音・・・オールデンのウィングチップの皮のヒール。
「あいつ」だ。
孝志は左手で握ったブローニングのスライドを顎を使いぎこちなく引いた。
たぶん、左指では引き金も引けず、発射した後の反動で、左の手首を痛めてしまう。
だから・・・一発だけで勝負。そう思っていた。
何と長い時間が経ったのだろう。
ブライトリング・ナビタイマーはまだ2分しか経過していない。
まるで、1秒ごとのスライドを見ているような感じだった。
銃を握る左手が汗ですべる。
闇の悪魔は自分の心の中を黒く染め上げて行く。
そして、その恐怖と戦い、敗れたものが自分に負けてしまう。
見えない恐怖・・・・だれの心の中にも潜んでいる。
それを、「あいつ」にもてはやされている。
孝志は恐怖を打ち消すために、振り向き様に、誰も居ない裏道に一発の銃声を轟かせた。
一瞬のざわめきが、沈黙に変わった瞬間。
何に向かって・・・・・それは自分の心に潜んでいる
恐怖と腐ったプライドとそして、・・・・
「あいつ」に向かって。

・・・END・・・

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gery  funabashi
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