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字幕映画のススメ

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1966 (C) 角川映画
 
大魔神』(1966・大映京都)

大映はかって京都太秦にあった京都撮影所で特殊撮影技術を応用した
時代劇を製作する企画を永田雅一大映社長に提出した。
大映京都は戦前は日活の撮影所で戦後は大映になってからは
多くの時代劇を製作していたが、スタッフは優秀であり
1963年にMGMと合作した『あしやからの飛行』では
ブルーバックやミニュチュアを使った特殊撮影は本場ハリウッドの映画スタッフも
唸らせるほどの見事なテクニックを擁していた。
 
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挂甲武人埴輪(国宝)
 

大映京都撮影所のスタッフは前年に大映東京撮影所で生まれた怪獣映画
大怪獣ガメラ』の成功を尻目に自分たちが作ればもっと素晴らしい作品を
世に出せると意気込みはあった。実は『大怪獣ガメラ』と併映された
大映京都作品『新鞍馬天狗 五條坂の決闘』は市川雷蔵主演。黒田義之監督作品
で総天然色(イーストマンカラー)で『大怪獣ガメラ』はモノクロだった。
大映の思いは『新鞍馬天狗 五條坂の決闘』の添え物が『大怪獣ガメラ』だった。
だが会社の思いと裏腹にガメラはヒットして、鞍馬天狗は消えていった。
『大魔神』は鞍馬天狗の弔い合戦に登場した企画だったのだ。
この映画の元になったのは昭和17年に公開されたフランス映画『巨人ゴーレム』。
これを日本特有の埴輪の武神石像に置き換え、民話を加え戦国の世に登場させる作品が
立案された。これが阿羅羯磨(アラカツマ)=荒神信仰を描いた『大魔神』となる。
監督は『新鞍馬天狗』の第一作を監督した安田公義。そして一緒にクレジットされる
のはガメラに敗れた『新鞍馬天狗 五條坂の決闘』の黒田義之特技監督。
黒田義之は特撮のパートの全責任を受けて『大魔神』と併映される大映東京の第二作目
田中重雄監督『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』に対抗すべく全精力を注いで撮影に入った。
京都スタッフは五班に分かれてプリプロダクションに二ヶ月、撮影にも二ヶ月
バジェットは通常色彩映画の1.6倍をかけて製作された。
まさに大映京都が一丸となって製作にあたった記念碑的作品だった。
 
出演者は費用がかかる特撮に重きを置いたために大スターは起用されていない。
藤巻潤青山義彦、それに歌うスター高田浩吉の愛娘だった高田美和
「大魔神」の中に入ったのは大毎オリオンズの投手から俳優に転じた橋本力
橋本は大映東京の大部屋俳優だったが、京都で主役が貰えると喜んで京都に行ったら
待っていたのは大魔神の着ぐるみだった。ただあの眼力はなかなか評判で
ブルース・リー主演の『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972)で香港へ呼ばれたのも頷ける。
 
よく「大魔人」と誤記・誤植があるが、正しくは「大魔神」だ。決して人ではなく神の存在だから。
また怪獣映画だと呼ぶ人がいるが幻想映画でガメラと同じではない。
 
魔神像にタガネを打ち込んだ左馬之助の手下が地割れに次々と吸い込まれて行く場面や
それまで晴天だった刑場に暗雲が立ち込め、天空から巨大な光の玉となって
降臨する大魔神の何んと恐ろしい登場の場面。
昭和41年、まだ幼稚園児だったが、ガメラより100倍も面白かった。
その年の続編、続々編になる『大魔神怒る』も『大魔神逆襲』も
祖父に大映の劇場に連れて行ってもらった。(おかげで勝新の座頭市や雷蔵の忍びの者も覚えている)
 
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1966 (C) 角川映画

戦国の頃、丹波・花房領での祭の夜、家老の大館左馬之助(五味龍太郎)とその一味は謀反を起こす。
両親を討たれた幼い忠文と小笹は、猿丸小源太(藤巻潤 )巫女の信夫(月宮於登女)
とともに狼谷の洞窟にひそんで成長する。
この山には魔神を封じた巨大な武神像がまつられており、
領内に災いある時は防いでくれるという伝説があった。左馬之助ら悪の勢力が栄える一方、
領民たちは困窮をきわめていた。やがて忠文(青山良彦)と小源太は左馬之助に捕まり処刑されそうになる。
その時、少女・小笹(高田美和) の祈りに応えて武神像に魔神が乗り移り、
魔神が登場する。 魔神は城下へ暴れ込み、すさまじい復讐をはじめる。
城下に下りた魔神は破壊の限りを尽くして、左馬之助の手下が魔神像の額に打ち込んだ
タガネで左馬之助の心臓を一突きにして惨殺した。
それでも怒りの収まらない魔神に自ら身を投げ出した小笹。小笹の流した清い涙で
魔神の怒りは消え、魂の抜けた武神像に戻りやがて土へと戻る。
やっとこの丹波の国にも平和が蘇った。(1966年4月17日公開  同時上映『大怪獣決闘ガメラ対バルゴン』)

魔神の身長は4m半(十五尺)でこれには理由があった。撮影の森田富士郎によると
人間の身長の2倍半のなのでカメラのスピードも2.5倍に固定されいて
通常のスピードに戻した時に人間の動きのようにリアリズムが生まれる点と
ミニュチアも精巧に作れる尺図であり、これが功を奏したようだ。
ガメラと違って、「大人の鑑賞」に耐えれる娯楽時代劇であり、その夏には
第二作『大魔神怒る』(三隅研次監督)が公開されることになる。
音楽は『ゴジラ』を始めとする名匠・伊福部昭。確かに『ゴジラ』的な低音の利いた
大魔神の音楽を作っている。また録音の林土太郎が作った魔神の足音。
あれは偶然に見つけた音をアレンジしたものだが、それが何かは明言していない。
大映はウエスタンエレクトリックの録音資材を早くから取り入れているので
音響が素晴らしい。光学モノラルのサウンドトラックでも魔神の足音は迫力がある。
大魔神の顔の造詣だが、アゴが割れている。安田公義のヒントでカーク・ダグラスを模して
アゴに割れ目を入れたとか。また石像にタガネを打ち込んでそこから血を流す場面は
美術の内藤昭が昔に観たフランス映画からヒントを得たものらしい。

監督: 安田公義
特技監督: 黒田義之   
製作: 永田雅一 
企画: 奥田久司 
脚本: 吉田哲郎 
撮影: 森田富士郎 
美術: 内藤昭 
造型: 高山良策 
編集: 山田弘 
音楽: 伊福部昭 
音響効果: 倉嶋暢 
アクション: 橋本力
擬闘: 楠本栄一 
助監督: 西沢鋭治
 
 高田美和
 青山良彦
 藤巻潤
 五味龍太郎
 島田竜三
 遠藤辰雄
 伊達三郎 
 出口静宏 
 二宮秀樹 
 月宮於登女

イーストマンカラー
大映スコープ(1:2.35)
84分(8巻/2296m)
 
参考図書
「鮮烈!アナーキー日本映画史 1959−1979」 (洋泉社)
「大魔神の精神史」 (小野俊太郎・著 角川書店)
 
 
 

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    こんばんは。
    子供の時に見た大魔神の睨みは本当に恐かったです。
    橋本力の名前がちゃんとポスターにも載ってたんですね。
    ついでに伊達三郎の名前もあって嬉しい…(笑)。

    [ - ]

    2012/7/11(水) 午後 11:29

    返信する
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    bigflyさん こんばんわ。
    なんせ橋本力は「主役」ですから(笑)
    二宮秀樹の名前もありますよ。『大魔神逆襲』にも
    出てました。マグマ大使のガムでも有名になりましたよね。

    GH字幕

    2012/7/11(水) 午後 11:45

    返信する
  • 大魔神が登場するまでの時間の長さが、子供向けではない作品だと主張してますね。
    ガメラ目当てで映画館へ行きましたが、大魔神の素晴らしさに圧倒されたのを強烈に覚えてます。
    主役だけでなく悪役のトップも五味龍太郎で、言わば二段落ちぐらいのクラス(笑) 第2作も中堅(神田隆)でしたが第3作でやっと大物(安部徹)の悪役になりましたね。

    大魔神を動かした清き涙の高田美和もお色気を振りまく熟女女優に。
    16年後だったら踏み潰されてた(笑)

    ギドラキュラ

    2012/7/12(木) 午前 1:17

    返信する
  • 大魔神が出てくるまでのドラマも面白かったし、そして大魔神の圧倒的な強さ・・・いやあもう最高でした。

    tosa

    2012/7/12(木) 午前 11:50

    返信する
  • そうそう、間違えてることが多い。
    大魔人じゃなくて
    字幕さんは大魔チン
    そのチン長は・・・撃チン!

    [ HK ]

    2012/7/12(木) 午後 2:28

    返信する
  • ブロ友さんのところで記事読んで気になったのだけど
    こちらでは続編のしかレンタルされてないんですよね。
    結構怖いらしいですね。
    埴輪だったのは知らなかった。

    pu-ko

    2012/7/12(木) 午後 3:37

    返信する
  • 私の中では不朽の名作だ。
    孫に「だいまじ〜ん!!」と、あの顔が変わるシーン
    をしても変顔のばあばあにしか見てくれない

    え!!字幕ちゃんって大魔チンだったの?
    で?なんでHKさん知っているの?

    [ ごや ]

    2012/7/12(木) 午後 8:36

    返信する
  • 子供の頃に観たけど、ぶっちゃけガメラの100倍面白いとは思えなかった〜
    今観ると、かなり違うだろうから、再鑑賞してみます。
    幸い、スカパーで3作まとめて録画してあるし。

    HERO-K

    2012/7/12(木) 午後 10:21

    返信する
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    ギドラキュラさん
    確かに大部屋俳優がわんさと出てます。

    高田美和・・・軽井沢夫人(にっかつ)で頑張ってました。
    ヒロインは二作目の藤村志保がよかった。

    GH字幕

    2012/7/12(木) 午後 10:42

    返信する
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    tosaさん
    火攻めも爆薬も効かないけど乙女の涙でイチコロなんです。

    GH字幕

    2012/7/12(木) 午後 10:44

    返信する
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    HKさん
    最近、わが大魔チンは怒らないし逆襲もしません(笑)

    GH字幕

    2012/7/12(木) 午後 10:45

    返信する
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    pu-koさん
    あれ海外は第一作目はないですか?
    まああの埴輪のまま動いても全然恐くないしね(笑)

    GH字幕

    2012/7/12(木) 午後 10:48

    返信する
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    おさるさん
    それなら大映の白髪鬼とか妖怪ダイモンの
    方が孫さん喜ぶかも(笑)

    はあ我が大魔チンですか?きっとHKさんの奥さんから
    聞いたのでは?・・・・

    GH字幕

    2012/7/12(木) 午後 10:50

    返信する
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    HERO−Kさん
    二作目からガメラと離れて『座頭市海を渡る』二本立て。
    三作目は『新書・忍びの者』と大人向けの番組になりました。
    バルゴンは後年に観直したけど、お子様ランチだわ。
    翌年のギャオスの方が良くできてました。

    GH字幕

    2012/7/12(木) 午後 10:54

    返信する
  • 大魔神BOX買ってしまいましたよ〜
    日本人の信仰の土着性に着目してエンタテインメントにしたのが良かったし、新しかった気がしますね。

    こ〜ぢ

    2012/7/13(金) 午前 11:42

    返信する
  • 私も大魔神大好きでDVDBOXやフィギュアを持っています♪
    ちょっと前にリメイク?の深夜ドラマがありましたが残念な内容でした(汗)

    元ネタのゴーレムも三作あるそうですね、現存しているのは『巨人ゴーレム』だけだったかな?観たい観たいと思いながら未見のままなんです(汗)

    風天一家

    2012/7/13(金) 午後 0:47

    返信する
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    こ〜ぢさん
    三本とも昭和41年でやってしまった大映パワー。
    だけど3作目で増えすぎた制作費を回収できず打ち止めでした。
    たしかに殿さんと巫女が同じ対等の立場だという
    のが興味深いですねぇ。

    GH字幕

    2012/7/13(金) 午後 11:57

    返信する
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    フーテンのトモローさん
    確かにパウル・ヴェゲナーのゴーレムは3本あったとか。

    あっ、CGの大魔神は観たくないなぁ・・・

    GH字幕

    2012/7/13(金) 午後 11:58

    返信する

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