『青い体験』(1973)
MALIZIA
新しいママになる女性(ひと)に 少年の心は騒いだ……
愛してはいけない人への愛に 少年はいま青春の門を通る……
イタリアでは『艶笑もの』というジャンルがある。
いわゆるお色気コメディーで60年代から盛んに製作され
『イタリア式離婚狂想曲』『女王蜂』『追い越し野郎』
『誘惑されて棄てられて』などの名作もある。
これは70年代に流行した「筆おろしもの」
フランスで製作された『個人教授』のような青春映画を
お色気を盛り込んで面白おかしくした筋の作品が多く作られた。
特にお色気女優のエドウィジュ・フェネシュが主演した
『青い経験』(劇場未公開・TV放送)が有名だ。
フランスも対抗してナタリー・ドロン主演の
『新・個人教授』(1973)も同じジャンルと言えるが
イタリアの方がえげつなく、下品で笑える場面が多い。
主演のラウラ・アントネッリはユーゴ生まれで
イタリアのTVなどで出ていたが
マゾッホの原作『毛皮のヴィーナス/女芯のいとなみ』で
大胆なヌードで登場して人気を得て売れっ子女優になる。
彼女の代表作は『セッソ・マット』とこの『青い体験』
またヴィスコンティの『イノセント』でも
重要な役で登場していた。
彼女は『コニャックの男』で共演した
ジャン・ポール・ベルモンドの恋人で知られ
その仲は約10年も続いたと言われる。
監督はサルヴァトーレ・サンペリ。
同じキャストで『続・青い体験』も監督したが
出来は本作には及ばなかった。
三度ラウラ・アントネッリ主演で
『青い体験2000』を監督するも全く話題にならなかった。
撮影は名匠ヴィットリオ・ストラーロ
『暗殺の森』や『ラスト・タンゴ・イン・パリ』
『ラスト・エンペラー』のベルトルッチ作品や
『地獄の黙示録』や『ワン・フロム・ザ・ハート』など
コッポラの映画でも活躍した。
少年ニーノを演じたアレッサンドロ・モモは
『続・青い体験』の後に僅か17歳の若さで
オートバイ事故によってこの世を去っている。
日本ではワーナーホームビデオからVHSが
出ていたが、DVD化されていない。
一度DVDになる予定があったが急遽中止となって
その後は発売予定の噂も聞かない。
BSなどではたまに放送されていたが
ワーナー版のSD画質、TVサイズにトリミングされた
バージョンが流されていたくらいだったが
5月15日の深夜に日本で初めて
イマジカBSがイタリアから送られた素材によるHDフォーマットで
オリジナルのシネスコサイズで「最高画質版」と謳って放送された。
(リピートは7月にある予定)
願わくば「ゴールデン洋画劇場」で放送された
池田昌子の日本語吹替で聞きたい気もする。
シシリー島の小さな町の朝まだき、
生地商のイグナツィオ・ブロカ(T・フェルロ)は、
アントニオ(J・チリッジィ)十八歳、ニーノ(A・モモ)十四歳、
エンジーノ七歳の三人の息子を残してこの世を去った妻の葬儀を
とどこおりなく終えたところだった。
表面、悲しみをよそおっているものの、
彼の心の中には病弱でヤキモチ焼きの女房が死んだ安堵感があり、
しかも近所の大金持ちの未亡人コラロ(A・ルース)の挑発もあって、
自然と頬の筋肉がゆるんでくるのを押さえるのに一苦労というところだった。
だがそんな状況を一変するような事態が発生した。
若く美しい娘がお手伝いとして彼の家にやってきたのだ。
妻が死ぬ前に家政婦協会に頼んでおいたのだという。
優しくよく気のつくアンジェラ(L・アントネッリ)を
すっかり気に入ったイグナツィオは、もう中年のコロラなど見向きもせず、
何とかアンジェラの気を引こうとやっきになった。ところが、
その気になっているのは親父ばかりではなく、
長男のアントニオもすっかりアンジェラの魅力にまいっていた。
そんな父と兄の態度に反感を持った次男ニーノは、
独自のペースでアンジェラに接近した。
学校から帰ればアンジェラと一緒にいる時間はニーノが一番多いことになる。
一方、イグナツィオに相手にされなくなった末亡人のコラロも、
ニーノに挑発的な態度をとるようになり、
若いニーノのセックスに対する欲望も日に日に昂まっていった。
ある日、ついに我慢できなくなったイグナツィオは、
“小さな子供たちには母親が必要だ”とプロポーズ。
彼女は家族全員が同意すればと答える。
狂喜したイグナツィオだったが、ここに二人の強敵が現われた。
一人は田舎で楽隠居の生活を送っている厳格な母であり、
もう一人は弟エンジーノを使って、“お母さんの幽霊が出る。
僕たちのお母さんの面影を消さないで”というニーノである。
だが、アンジェラはニーノの幽霊話は彼の嫉妬心が生んだ作り話で
あることを知っていた。SEXへの願望と不安に揺れ動くニーノの心を
見てとった彼女は、激しい雷雨の夜、ついに自分の方からニーノと
一夜を共にするのだった。
翌朝、ニーノは照れくさそうに
“夕べお母さんが僕の所にきて父さんの再婚を祝福するって言うんだ”と告げた。
結婚式の日、イグナツィオは何も知らずにただもう嬉びに胸をつまらせ、
有頂天になっている。ニーノはアンジェラに祝福のキスをすると、
くったくのない笑いをうかべて“ママ”と呼ぶのだった。
(キネマ旬報より)
イタリア原題の"Malizia"とは「悪意」を意味する。
英語なら形容詞で”Malicious"だがこの映画の「悪意」はニーノが魅力的な
アンジェラへ年上の女性の憧れの思いを言い出せないもどかしさや、
心の葛藤を数々の悪戯や嫌がらせとして行動させてしまう心理を表した
タイトルだと思われる。
牧師たちや家族と食事の最中に真横にいるアンジェラの
パンティーを脱がせたり、寝ている彼女のベッドの横に立ってみたり
友達と覗いているのを知りながら裸にさせたり思春期の少年ニーノの
行動はエスカレートするばかり。
だがラストはアンジェラの思いが爆発して
ニーノはアンジェラに手玉を取られて童貞を奪われる。
イタリアンコメディらしい脂っこい場面が多いが、
観た後はそんなに後味悪くない。親子どんぶりなんだけどね。
それが中高生に受けたのか日本でもヒットした。
またニーノの悪友の姉ルチアーナを演じたティナ・オーモンも魅力的。
音楽のフレッド・ボンガストはこの手の映画の作曲家として有名だが
ジュリアーノ・ジェンマ主演の『続・さすらいの一匹狼』の主題歌も
歌っていたことでも有名。
クレシ・シネマトグラフィカ製作
監督: サルヴァトーレ・サンペリ
製作: シルヴィオ・クレメンテッリ
脚本: オッタヴィオ・ジェンマ
サルヴァトーレ・サンペリ
アレッサンドロ・パレンゾ
撮影: ヴィットリオ・ストラーロ
音楽: フレッド・ボンガスト
ラウラ・アントネッリ
アレッサンドロ・モモ
テューリ・フェッロ
アンジェラ・ルース
ピノ・カルーソ
ティナ・オーモン
テクニカラー
テクニスコープ(2.35:1)
98分
イタリア語・モノラル
1974年10月12日公開
日本語字幕:高瀬鎮夫
MALIZIA:1973(C)Warner Bros. Entertainment Inc.