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『シン・ゴジラ』(2016)
東宝『ゴジラ』シリーズの第29作にして完全リニューアル。 『ゴジラ FINAL WARS』(2004/北村龍平監督)から12年ぶりの国産ゴジラ映画。 冒頭の現在のデジタルCG東宝ロゴから過去の1992年以前の東宝ロゴに切り替わる (かっての東宝のロゴは特撮の神様、円谷英二が作った) そして劇中もエンドタイトルにも伊福部昭のゴジラ映画の劇半が流れる。 話は完全に新しいストーリー展開だが、過去の作品にある程度のオマージュが 散りばめられている。だが物語は今風。不明生物の動画はネットで拡散され ニコ動のコメントが溢れ、市民は避難そっちのけでスマホで撮影するのに忙しい。
監督は庵野秀明(総監督)樋口真嗣 (監督・特技監督) 脚本は庵野秀明が書いたオリジナル。 初代ゴジラ(1954年)はアメリカの水爆実験の結果生まれた怪獣だったが、 今のご時世では核実験は北朝鮮くらいしかやっておらず 深海に廃棄された核廃棄物に汚染された生物が進化していくという (第一形態から第四形態まで変化していく) 従来の設定とは異なる21世紀バージョンのゴジラが生まれた。 (ギャレス・エドワーズ版の『GODZILLA ゴジラ』(2014)は 1954年版に関連させていた)
庵野秀明と樋口真嗣が作った2014年の9分の短編『巨神兵東京に現わる』と 今回のゴジラが東京の都心を襲う場面と酷似している。 この夏休みの時期でシネコンは「ONE PIECE FILM GOLD」「ポケモン」
「ファインディング・ドリー」などのアニメに対抗すべく ここでゴジラかと思ったが、話のレベルは高く、中高生ましてや小学生には ついて行けない敷居の高いストーリー。 ゴジラ映画に政府の危機管理対応が・・・憲法が・・超法規的措置が・・・ とかは怪獣映画としては蛇足か。生臭い政治を絡めてくると子供は食いつかない。 全ての観客層対象じゃない。 まして「大きな子供」ばかりが喜ぶ作品になっているが。
特にゴジラが登場して海底トンネルが水没、そして上陸していく くだりで政府のちんたらして対応を庵野秀明は相当なアイロニーを込めて シナリオを書いたと思われる。 1998年に松竹で『大怪獣東京に現わる』(宮坂武志監督)という 日本に2大怪獣が出現して市民がパニックになるが 全く怪獣の姿が出ないと言う低予算のいわばパロディ映画があったが 想定外、想定外、想定外・・・前例がない。危機管理マニュアルがない・・ だが脚本は相当捻っていて全29本の国産ゴジラ作品の中でも最高のシナリオに はなっているのは間違いない。 憲法9条の有無など無視して自衛隊を防衛出動させるが 「どこの役所に対して言ってるんです?」という台詞ひとつで 日本の官僚主義、お役所姿勢を皮肉って「いまこの場で判断しろと言うのか」 と自らの保身を頭に過らせながら勇者不懼など微塵もない内閣総理大臣。 すかさず「総理、ご判断を」を連発する官房長官。 ゴジラが「有害鳥獣駆除」ということになっているが、これには笑える。 「私は好きにした。君たちも好きにしろ。」
ゴジラの生態を知っていて姿を消した科学者
その写真が画面に映るがそれが岡本喜八(1924-2005) 今回の『シン・ゴジラ』は岡本喜八監督の代表的な一本 『日本のいちばん長い日』(1967・東宝)のリスペクト。 昭和天皇や閣僚たちが御前会議において降伏を決定した 1945年8月14日の正午から宮城事件、そして国民に対してNHKの
玉音放送を通じてポツダム宣言の受諾を知らせる
8月15日正午までの24時間を描いている。 原爆投下により無条件降伏を迫られた時の内閣の苦悩と ゴジラによって多国籍軍による東京への核攻撃を迫られた 日本の臨時内閣をオーバラップさせ、 福井晴敏の原作を映画化した 今回の監督である樋口真嗣が手掛けた戦争秘話『ローレライ』(2005) も広島、長崎に続く第三の原爆を東京に投下させるのを阻止する映画だった。 今回の『シン・ゴジラ』は最高のシナリオと最新のVFX技術を駆使して 庵野秀明、樋口真嗣 の両人は相当気が入った(悪ノリもしている) 画作りに徹底している。自衛隊の全面協力で戦闘場面はCGだが 登場する装備はほとんどが実在するもがほとんどで、 東宝特撮の十八番である架空のメーサー殺獣砲などは今回は登場しない。 画角は東宝スコープよろしくシネスコサイズで国産ゴジラで ソロで登場したゴジラとしては1954年版(1.37:1) カラーの1984年版(1.85:1)と違い初めてのシネスコサイズ版となったが 音響はなんと3.1チャンネル!後方からの効果音は無し。 本作はフロントL/C/Rの3ch+サブウーファーから構成される 3.1ch仕様で上映される。
IMAXで鑑賞する人は画面はデカイが音は前面からだけとなるので 少しでも重低音がよく通る劇場での鑑賞をお勧め。 過去のゴジラの造形は腕が長いのが特徴だったが、今回は敵キャラが 不在なので腕が短く尻尾が太く大きくなっている。 目玉は小さいが全体的に赤みがかっている。 これは初作の『ゴジラ』(1954)は本編モノクロだったけど 実は赤いゴジラであったという諸説に基づいてデザインされたらしい。 ゴジラも進化というか変態するゴジラで海から二足歩行で上陸する ゴジラではなかった。まるで芋虫のように這ってだらだらと体液を 垂らしながらモスラの幼虫のように東京の蒲田などを破壊していく。 ローランド・エメリッヒの「GODZILLA」が日本に入って来たとき、 「走るゴジラ」を見て日本のゴジラ・ファンは一斉に反撥したものだが、 まさか地面を這うゴジラを見れると思わなかった。 これを知って海外のゴジラ・ファンはどう思うだろうか・・・。 えっ?これは?
まあ全体的にテンポも良く特に特撮(VFX)も以前のゴジラより 規格外に向上していて(ゴジラ映画初の全編フルCG)見応えはあるが アメリカ人の父を持つ日系三世の大統領特使を演じた石原さとみは ミスキャスト。英語スピーチは申し分ないが、誰が見ても日本人。 全然ハーフだのクォーターだのと思えない・・・ ただの生意気な小娘にしか見えなくて「ガッジーラ」と 言われても、恰好つけやがってと思ってしまった。 演技の出来るハーフの女優なら日本にも沢山いるぞ。 エンドロールに流れる328名にのぼる俳優の名前でひときわ
「別格」になっているのが野村萬斎。
あの陰陽師がどこに?と思ったが野村萬斎は画面に出ていない。
今回のゴジラは全てCGで作られたが、元となるのはやはり人間の動きで 狂言師の野村萬斎の動き(モーション・キャプチャー)でCGにてゴジラの外観が 肉付けされて映像化されている。 360度12個の赤外線カメラの中心でセンサーを装着して
尻尾の重量感を出すために10キロの重りを引きずった野村萬斎が ゆっくりゴジラの動きを「演じた」ということでかなりの重労働だったはず。
別格扱いは当然かも。
着ぐるみという楔から完全に解き放たれたゴジラがどう描かれるのか 密かに期待していたのだが、62年前に登場した東宝プロパーの 『ゴジラ』の伝統芸がここで断ち切られ、
逆に緩慢なロボットのような動きのゴジラになってしまったのが惜しい。
「仏作って魂入れず」と陰口を言われても仕方がない。 逆に背びれを青く光らせて放射能炎を吐くだけにとどまらず 観客の思惑を吹き飛ばすここまでハイパーなゴジラのスペックになっては 今後の展開はどうなることやら。 ラストはまるで原爆ドームのように動かなくなりモニュメント化した ゴジラが都心に聳え立ちその尻尾の先にはには異形のものが生成されている。 ギャレス・エドワーズ版が「威厳」のゴジラなら今回の 庵野・樋口版はさながら「異様」なゴジラという印象を受けた。 「シン・ゴジラ」は、7月30〜31日の週末動員数で1位を獲得。
興行通信社がランキングを開始した00年以来初めて、
日本版ゴジラシリーズが週末動員ランキング1位になったという。
8月1日までの公開4日間で、観客動員71万人、興行収入10億円を記録している。
東宝/シネバザール 監督: 庵野秀明(総監督) 樋口真嗣
製作: 市川南 エグゼクティブプロデューサー: 山内章弘 プロデューサー: 佐藤善宏 澁澤匡哉 和田倉和利 ラインプロデューサー: 森徹 森賢正 脚本: 庵野秀明 撮影: 山田康介 美術: 林田裕至 佐久嶋依里 デザイン: 前田真宏 (ゴジライメージデザイン) 竹谷隆之 (ゴジラキャラクターデザイン) 編集: 佐藤敦紀 音響効果: 野口透 音楽: 鷺巣詩郎 音楽プロデューサー: 北原京子 美術デザイン: 稲付正人 VFXスーパーバイザー: 佐藤敦紀 VFXプロデューサー: 大屋哲男 スクリプター: 田口良子 河島順子 スタイリスト: 前田勇弥 ヘアメイク: 須田理恵 照明: 川邉隆之 整音: 山田陽 装飾: 坂本朗 高橋俊秋 特技監督: 樋口真嗣 特殊造形プロデューサー: 西村喜廣 録音: 中村淳 C班監督: 石田雄介 D班監督: 摩砂雪 轟木一騎 庵野秀明 アニメーションスーパーバイザー: 佐藤篤司 (ゴジラアニメーションスーパーバイザー) カラーグレーダー: 齋藤精二 キャスティングプロデューサー: 杉野剛 南明日香 プロダクション統括: 佐藤毅 准監督: 尾上克郎 総監督助手: 轟木一騎 特技総括: 尾上克郎 扮飾統括: 柘植伊佐夫 使用音源
「ゴジラ」「宇宙大戦争」「怪獣大戦争」「キングコング対ゴジラ」
「三大怪獣・地球最大の決戦」「メカゴジラの逆襲」ほか
作曲:伊福部昭
長谷川博己 竹野内豊 石原さとみ 高良健吾 松尾諭 市川実日子 余貴美子 國村隼 平泉成 柄本明 大杉漣 犬童一心 片桐はいり 小出恵介 斎藤工 嶋田久作 塚本晋也 鶴見辰吾 手塚とおる ピエール瀧 古田新太 前田敦子 松尾スズキ 光石研 モロ師岡 横光克彦 渡辺哲 岡本喜八(写真のみ)
野村萬斎
カラー シネスコサイズ(2.35:1) Digital Intermediate (2K) (master format) 120分 デジタル音響(3.1ch) 日本公開2016年7月29日 配給:東宝 (C)2016 TOHO CO.,LTD. 備えあれば憂いなし!
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