H&K MP5Aを構える松本警部補(高倉健)
11月10日に逝去された俳優・高倉健(享年83歳)
ここ数日のニュースや帯番組でも話題に取り上げられているが、
ブロ友ゾンビマンさんのブログで1989年に出演した3本目の
ハリウッド資本の映画『ブラック・レイン』が21日まで
大阪ステーションシネマの「新・午前十時の映画祭」で
上映されている事を知り、亡くなった映画俳優はその出演作を大きな
スクリーンで観て故人を偲ぶのが最大の供養と思い、劇場へ行って鑑賞してきた。
(実は今回が初めての劇場鑑賞、初公開当時は多忙で行けずその後
セルビデオを購入して鑑賞)
監督はリドリー・スコット。『ブレードランナー』でネオンと
酸性雨が降りしきる未来の都市を視覚化した彼が実在の大阪の
街を彼なりのイメージで体現している。
(実際のロケーションは大阪市内で心斎橋や十三、
京橋の商店街から神戸元町など)
そして『スピード』で監督としてデビューする前の
ヤン・デ・ボンが撮影監督として参加している。
音楽はハンス・ジマーがスコアを書いている。
主演はマイケル・ダグラス、高倉健、、
それに劇場用映画ではこれが遺作になっている松田優作。
特に癌に侵されて痛みに耐えながら鬼気迫る演技を通した
松田優作の演技は忘れられない。
当時売出し中のアンディ・ガルシア、
後にスピルバーグの奥さんになったケイト・キャプショー
若山富三郎、神山繁、小野みゆき、ガッツ石松、内田裕也、
安岡力也、國村隼らが参加している。
高倉健は、生涯4本の外国映画に出演している。
最初はロバート・アルドリッチの『燃える戦場』(1969)
次に東映京都撮影所で撮影したワーナー映画で
シドニー・ポラック監督の『ザ・ヤクザ』(1974)
三本目が本作で最後が1992年のユニヴァーサル映画『ミスター・ベースボール』
200本以上ある高倉健のフィルモグラフィーでも警察官の役柄は
これと『駅-STATION-』(1981)での
北海道県警の三上英次役以外ない珍しい役柄であった。
NY市警の刑事ニック・コンクリン(M・ダグラス)は
離婚して慰謝料や子供の授業料の払いに悩む日々を送り
内部調査でも汚職の容疑で査問を受けていた。
相棒の若い刑事チャーリー・ビンセント(A・ガルシア)と
ランチを取って愚痴をこぼしているところへレストランに
マシンガンを持った一団が押し入ってきた。
それは強盗ではなくボス挌の男は客の日本人ヤクザから何か奪って
そのボディガードも刺殺して逃走する。
ニックはマシンガンを持った手下を射殺すると刺殺した男を
追って精肉工場へ男を追い詰める。
争った末にニックは軽い怪我を負ったが男をチャーリーと共に逮捕する。
捕まえた男は日本から指名手配されている日本の
新興ヤクザ佐藤(松田優作)だった。
だが佐藤は日本へ引き渡しが決まりニックとチャーリーに大阪まで
佐藤を護送する命令が下る。
日本で芸者と遊んで来いと上司に言われ軽い気持ちでNYを
旅立ったニックたちだったが、
到着した飛行機の中で大阪府警の警官と名乗る連中に
佐藤を引き渡すが、これはトリックですぐに本物の
大阪府警の警官が現れる。佐藤に逃走されたニックたちは
大阪府警に呼び出されて警視の大橋(神山繁)に叱責されるが、
我を通して日本の警察の捜査に介入しようとする。
大橋は2人の”よそ者の”ために英語が話せる
警部補の松本正博(高倉健)を付ける。
ニックは飛行機の中で警官を装った男が殺されている現場である
クラブ・ミヤコに連れて行かれた時に
アメリカ人ホステスのジョイス(K・キャプショー)に出会い情報を聞き出す。
だが佐藤の罠で暴走族にパスポートが入ったコートを奪われた
チャーリーは追いかけるうちにニックとはぐれる。チャーリーは
佐藤の手下たちに囲まれニックが見つけた時は佐藤に長ドスでチャーリーが
首を撥ねられる直前だった。落胆したニックを慰めるジョイス。
そこに松本もやって来てニックにチャーリーの遺品を渡す。
遺品の中にはチャーリーの警官バッジと愛用の拳銃S&WのM66もあった。
その拳銃とホルスターを持ってニックは佐藤を捜して街に飛び出す。
うどんをすするニックと松本。
「ニックさん NYの上司から聞いたが汚職で疑われていると?」
「ヤクの売人からくすねたんだ」「盗ったのか?」
「カネを自由にしてやっただけだ」
「離婚して養育費で生活が苦しいんだよ」「盗みは― 君自身を汚し私まで汚す」
そして佐藤のアジトである京橋のパチンコ屋の一室でスパンコールを発見する。
これはクラブミヤコのホステスで佐藤の情婦のものだと感じたニックは
ホステスを尾行、神戸の銀行から出てくるホステスにスイッチして
何かを受け取った佐藤の手下の梨田(内田裕也)を尾行して製鉄所まで追う。
製鉄所の一室には佐藤と広域暴力団の組長、菅井(若山富三郎)がいた。
佐藤がNYで奪ったのは偽札の原版で、元は菅井の子分だった佐藤が縄張り欲しさに起こした抗争事件だったのだ。
ニックは佐藤を捕まえようとするが、
手下の梨田と吉本(國村隼)に阻まれ2人を射殺するが、佐藤を逃がしてしまう。
そこへ大橋ら警官隊が押し寄せて佐藤を追うニックの行く手を阻む。
チャーリーの遺体と共にNYへ強制送還で飛行機に乗せられる
ニックだが、空港から逃げ出して松本の自宅の団地へ。
松本も停職処分となり警部補から降格されていたのだ。
日本の警察も当てにならないニックは一計を案じてジョイスに
協力を求めて菅井の立ち回り先に行く。
ゴルフ練習場にいた菅井に偽札を手渡すと、
ニックは菅井の屋敷に連れて行かれる。
過去のアメリカに対する私怨をニックにえんえん聞かす菅井
「10歳の頃、B29が飛んできた後は街が消えていた。
燃える炎は雨を呼んだ。それが黒い雨だ。」
「お前らは黒い雨を降らせて価値観を押し付けたのだ。
俺たちは自分を見失い、佐藤のような男が大勢生まれた」
ニックは菅井にある提案をする
「仁義がどうとか体裁を重んじるなら、俺があんたの手を汚さないように
佐藤を消してやる。この国に関係のないガイジンがね・・・」
そしてある田舎の畑の真ん中にある屋敷。
じつはここが菅井たちの集会場で、菅井や他の組の親分集に
今日、ここに佐藤が原版を持って現れ菅井に盃を貰うと言うのだ。
菅井の子分に散弾銃を与えらるニック。
まわりは人家も無くて畑に農民が数人いるだけだ。
ニックは銃を構えて佐藤が現れるのを雑木林の中でじっと待つ・・・
そこへ農民に変装して短機関銃を持った佐藤の手下がニックに近づく。
にぶい音とともに地面に伏したのは佐藤の手下だった。
倒したのは松本で、ニックの身を案じて菅井の屋敷からニックを
尾行して来たのだ。
農民たちは全員佐藤の手下で消音銃で菅井らのボディガードを
消して屋敷に近づいて行く。
佐藤の腹は偽札の原版を奪って菅井らも殺して組織全体を
乗っ取る計画に違いないのだ。
そして佐藤が現れて菅井に原版を渡す。
だが盃を渡す前に菅井に「オトシマエをつけろ」と小指を詰めさされる佐藤。
ニックは佐藤の手下が屋敷の中に入ったのを確認すると、
松本に援護を頼んで屋敷の中に入っていく・・・・
小指を落として盃を菅井から受け取ろうとした時に佐藤は
隠し持っていた短刀で菅井の胸を突き刺殺してしまうのだった。
その時に佐藤の手下が駆け込もうとしたところをニックの散弾銃が
火を吹いてあたりは双方入り乱れての銃撃戦となって
菅井側や佐藤の手下もニックや松本の放った銃弾で倒されていく―
佐藤は置いてあったバイクにまたがり畑を逃走するが、
NYでチキンレースの常勝であるニックには佐藤を追い詰めることなど
簡単であった。バイクが転倒して逃げる佐藤、
泥だらけになりながら、ついにニックのパンチに佐藤の身体が揺らいだ。
地面には鋭い切り株が佐藤の身体を狙っている―
このまま佐藤を押し倒せばチャーリーの仇が討てる・・・・
ドアが思い切り開いた―。大阪府警の刑事部屋だ。
「大橋警視は?」松本は同僚の警察官に訊いたのだった。
泥だらけになって松本とニックに両腕を抑え込まれながら
ふてぶてしい表情の佐藤の3人が戻って来た―。
「松本警部補 逃走犯佐藤浩史の逮捕を警視に報告します」
「ご苦労、警部補から詳しく事情聴取をする」
場面は変わって、大橋から犯人逮捕の感謝状を贈られ
「Congratulation(おめでとう)」と労いの言葉を掛けられるニック。
式典にはジョイスも祝いに来てくれていた。キスを交わすふたり。
そしてニックが帰国する日、空港で松本はニックに漏らす
「偽札の原版が見つからない、あの家にも、道路にも」
「運のいい奴が拾ってるよ、そっちのコネと原版があれば一生暮らせるぞ
左うちわさ」
そして松本はNYのニックの子供たちにと玩具が入った土産を渡してやる。
ニックも世話になったお礼にと松本に阪急百貨店の包装紙に入った
プレゼントを渡す。
そしてニックが松本に一礼をしようと頭を下げると
「違うよニックさん 親友はこうだ」
松本が大きく手を開いてニックの手を固く握りしめる。
「元気でな カウボーイ」と言ってニックは去っていく。
今貰った包みを開く松本、中身はワイシャツだったが―
その下には偽札の原版が2枚光っていた。
親友になった男は互いに笑い、ニックは右手を差し出して
親指を突き出して微笑んだ。
高倉健の流暢な英語に惚れ惚れする。
丹波哲郎は別人の吹替えだったが(007は二度死ぬ)
これは紛れもなく高倉健自身の英語だ。
東映出身の俳優には珍しくインテリであったという。
また劇中はアンディ・ガルシアとレイ・チャールズを唄う高倉健。
これは日本映画じゃないから演じてくれたのだと思う。
邦画なら誰も(監督もプロデューサーも)あんな事は頼まないから。
だからこの映画は貴重なんだ。
まあ物語の締めくくりは変にならず、男と男の友情で終わってるんで
いいかなと思っている。
マイケル・ダグラスに演技指導する監督のリドリー・スコット
まあ大阪らしくないという声が高い映画だけど、
1988年当時(撮影時)の大阪の街が映し出される。
最初に空撮で登場するのは大正区の中山製鉄所とめがね橋こと千本松大橋
(昔、深夜に車に乗ってるとめがね橋で変なおっさんに絡まれた事があった)
ニックたちが護送車で行く道は阪堺上町線の軌道が見える。
あれはあべの筋で撮影されているが
大阪府警本部の内部は実は大阪府庁の中で撮影されている。
大阪府警から護送車が出てくるのも実は大阪府庁。
佐藤のアジトは京橋商店街にあるパチンコ屋の京一会館。
(背後にオレンジ色のJR環状線の車両が走っているのが見える)
クラブミヤコはかっての戎橋キリンプラザだし、
ニックたちが暴走族に囲まれるのは十三の栄町商店街。
チャーリーがコートを奪われるのは改築される前の阪急ビル・コンコース。
ニックと松本がうどんをすするは大阪市中央卸売市場本場(福島区野田)
菅井がいたゴルフ練習場は「ゴルフシティー」という
新大阪から大阪の間にあった(今は更地)
そしてニックが佐藤を追う製鉄所は新日鐵住金堺製鐵所(堺市)
松本が住んでいる団地は南港ポートタウン(大阪市住之江区)
パラマウント・ピクチャーズ提供
監督: リドリー・スコット
製作: スタンリー・R・ジャッフェ
シェリー・ランシング
製作総指揮: クレイグ・ボロティン
ジュリー・カーカム
脚本: クレイグ・ボロティン
ウォーレン・ルイス
撮影: ヤン・デ・ボン
音楽: ハンス・ジマー
主題歌 "I'LL BE HOLDING ON "(歌 グレッグ・オールマン)
マイケル・ダグラス
高倉健
アンディ・ガルシア
松田優作
ケイト・キャプショー
若山富三郎
神山繁
内田裕也
國村隼
安岡力也
小野みゆき
島木譲二
ガッツ石松
オリジナルデータ
テクニカラー
35mm(スーパー35)
パナビジョン(キャメラ&レンズ)
シネスコサイズ(2.35:1)
ドルビー・スペクトラル・レコーディング
SRステレオ(2−4トラック)
125分
新・午前十時の映画祭
デジタルDLP上映
デジタル・ロスレス24ビット音響(6.1CH)
125分
日本語字幕:戸田奈津子
こちらもご参照あれ。
歌うサイレント・ウォリアー『ブラック・レイン』
「ブラック・レイン」で使われたスーパー35は左のフルフレーム版で撮影され
右のシネスコサイズで劇場で上映。
TV放送は左のバージョンで放送されたと思われる。
過去に『ヴェラクルス』で使われたスーパースコープと同じ。
少しアスペクト比に違いはあるけど。
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大阪ステーションシネマ10で鑑賞。
ここのスクリーンはフルサイズがビスタサイズで
『ブラック・レイン』はシネスコサイズなのでスクリーンの真ん中に映していた。
いわば今のデジタルテレビでシネスコの映画を観る原理と一緒だった。
音響はかなり良好だと思うけど。チャンネルセパレーションも
低域(LFE)の効き方も。
上映中の劇場に出た東映からのメッセージ