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『二重の鍵』(1959) A DOUBLE TOUR クロード・シャブロルの長編第三作目にして
自ら傾倒していたヒッチコックを意識したサスペンス映画。 製作は『太陽がいっぱい』を世に出したアキム兄弟で 前作『いとこ同志』の成功でまとまった製作資金に恵まれ、シャブロルの作品で 初めてのカラーで撮影された映画となった。 南フランスの田園地帯の風景を見事に捉えたのはアンリ・ドカ(ドカエ)だ。 原作はアメリカの小説家スタンリー・エリンの「ニコラス街の鍵」 舞台をアメリカから南フランスに置き換えて、1959年の初夏から撮影が始まり 2か月後の7月にクランクアップした。 脚本をシャブロルと書いたのが、『気のいい女たち』や『女鹿』とかで シャブロルとコンビを組むポール・ジェコフだ。 ベルナデット・ラフォン(1938年10月26日〜2013年7月25日)
ヌーベルヴァーグの花であったベルナデットが亡くなった。 クロード・シャブロル、フランソワ・トリュフォー、ルイ・マルたち ヌーヴェル・ヴァーグの映像作家に重宝されて そのフィルモグラフィーは120本にもなる大女優だった。 老齢に差し掛かっても俳優活動を続け、舞台やTVでも活躍した。 彼女の代表作はトリュフォーの短編『あこがれ』や シャブロルの『美しきセルジュ』や『気のいい女たち』、 ジャック・ドニオル=ヴァルクローズの『唇によだれ』 ルイ・マルの『パリの大泥棒』、トリュフォーの『私のように美しい娘』 ドヌーヴと共演したラズロ・サボの『恋のモンマルトル』 クロード・ミレールの『なまいきシャルロット』 そしてジャン・ユスターシュの『ママと娼婦』などが代表作か。 彼女に哀悼の意と共にこの記事を捧げます。
主演はマドレーヌ・ロバンソン、ジャック・ダクミーヌ、 アントネッラ・ルアルディ、ジャンヌ・ヴァレリー、 そしてジャン=ポール・ベルモンドとベルナデット・ラフォン。 この撮影後にすぐにベルモンドはパリでジャン=リュック・ゴダールの 歴史的な傑作『勝手にしやがれ』の主役に起用されパリへ戻る。 実は『勝手にしやがれ』は当初、シャルル・アズナブールと ベルナデット・ラフォンに主演がオファーされていたが、 売れっ子女優になりつつあった彼女は先にジャック・ドニオル=ヴァルクローズ の『唇によだれ』の出演を決めていたので、『勝手にしやがれ』には出れなかったとか。 南フランスのエクス・アン・プロヴァンスのあるマルクウ家の大邸宅。
屋敷の窓から下着姿で庭師をからかうのはこの屋敷の メイドのジュリー(ベルナデット・ラフォン)だ。 そこへやって来たのが牛乳屋のロジェ(マリオ・ダヴィッド)で 彼はジュリーの恋人で「服を着ろ!」と制してこの屋敷と 離れにある邸宅に牛乳を持って行く。 大邸宅の離れに住んでいるのはレダ(アントネラ・ルアルディ)だ。 実はこの大邸宅の主のアンリ(ジャック・ダクミーヌ)は 外交官の娘であり、日本帰りのレダを愛人にして自分の屋敷の隣に 住まわせいた。アンリの妻テレーズ(マドレーヌ・ロバンソン)の 老醜を目のあたりにして、若い女にうつつを抜かすのは男の性(さが)だろうか・・・ アンリの息子リシャール(アンドレ・ジョスラン)は一日中、 自分の部屋に閉じ籠ってレコードを聞き、鍵穴からメイドのジュリーの 下着姿を覗いて喜ぶマザコンでインポの変態だった。(最悪じゃないか!) そしてこの屋敷にやって来たのがハンガリー人で風来坊のこの家の居候 ラズロ・コヴァックス(ベルモンド)だ。 彼はアンリの娘のエリザベート(ジャンヌ・ヴァレリー)と婚約している。 アンリがこのとんでもない風来坊を居候に、しかも娘と結婚を許したのは 愛人のレダを紹介してくれたことに他ならないのだ。 アンリの本心は妻と別れてレダと新しい生活を始めたいのだが、 離婚すれば、土地や屋敷、子供や収入も無くなってしまう微妙な立場だった。 妻のテレーズは夫とレダの仲は承知済みだが、夫と別れないのは ひたすら世間体を気にする事に執着している理由だけだった。 そして彼女が許せないのは夫に若い愛人を宛がったあげく 自分の娘と婚約してこの家に入り込もうとしているラズロの存在だった。 テレーズはエリザベートを呼びつけて、ラズロと別れるように促したが ラズロは気にせず町へ出て友人のブラド(ラズロ・サボ)と飲み歩く。 その頃。マルクウの屋敷では、テレーズがアンリに条件を出していた。 レダを愛人としてこっそりと囲う事とラズロと娘を別れさせろと テレーズはアンリに提言したが、アンリは逆上して妻に言った。 「何様のつもりだ、このウジ虫め、お前の口からレダの名が出ると 彼女が汚れるんだ!偽善者、卑怯者、ババァ、老いぼれめ!!」 「鏡を見やがれ!これが妻と親の顔か?よく見ろ これが 男に好かれる顔だというのか?じっくり見ろ、これがお前の顔だ!」 (もうボロクソの極みだ・・・今なら婦人団体が黙っちゃいないだろ) プッツンしてしまったアンリはそれまでこっそりとレダと密会していたが、 彼女を町へ連れて行き、道端でもキスしてラズロたちと乱痴気騒ぎをする。 その昼、アンリの屋敷での食事会。彼氏の牛乳屋のロジェに頼まれて レダの家に空き瓶を取りに行ったジュリーは家の中で殺されているレダを 見つけたのだ。ジュリーは一目散で屋敷に走って帰って来た・・・・ 「奥様、レダさんが・・・殺されています!」 殺したのは誰だ??
未見の方には最大のヒントを出しておこう。
ヒッチコックに傾倒していたシャブロル。 サスペンスの神様ヒッチコックのニューロテック映画は・・・ 鍵はノーマン・ベイツだ。だがこの作品はあの映画よりも先に公開されている。 この年のヒッチコック作品は『北北西に進路を取れ』だ。 まあヒッチコキアンのシャブロルは次回作が何かをもう察知していたかも知れない。 ヒッチもシャブロルも他界した今はもう闇の中かも知れないが。 シャブロルがこの『二重の鍵』を撮らなければ、この後の 映像作家シャブロルは存在しなかったかも知れぬ。 シャブロル作品の一遍的なテーマである偽善的なブルジョワ家庭の崩壊の原点は この『二重の鍵』が出発点であるに違いない。 長いスランプの時期、スパイ映画も手掛け、サスペンス映画の佳作 『殺意』も発表したが、このおよそ10年後にシャブロルは 二大傑作『肉屋』と『不貞の女』をもって昇華するのだった。 パリ・フィルム チタヌス 監督: クロード・シャブロル
原作: スタンリー・エリン 脚本: クロード・シャブロル ポール・ジェゴフ 撮影: アンリ・ドカエ 音楽: ポール・ミスラキ アントネッラ・ルアルディ マドレーヌ・ロバンソン ベルナデット・ラフォン ジャン=ポール・ベルモンド ジャック・ダクミーヌ アンドレ・ジョスラン ジャンヌ・ヴァレリー イーストマンカラー ヨーロッパ・ヴィスタサイズ(1.66:1) 88分 フランス語 1960年5月10日公開(東和配給) A DOUBLE TOUR 1959(C) STUDIO CANAL ALL RIGHT RESERVED
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