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『十三人の刺客』(1963)東映京都作品 実録タッチの作風による集団抗争時代劇のはしりとなった。 文春文庫ビジュアル版の
『洋・邦名画ベスト150 中・上級篇』では第1位に選ばれている。 江戸時代、明石藩の藩主、松平斉韶の暴君ぶりは 幕府にまで聞こえていた。 幕閣たちは将軍の弟であるため、 厳しい処置もできず、頭を悩ますが、 ついに暗殺することを決意する。 御目付役島田新左衛門に命が下り、 残り十一人の仲間を集めた。 暗殺の場は、参勤交代の途中である。 綿密に練られた計画であったが、 しかし、松平斉韶には切れ者の側用人が控えていた……。 かって昭和三十年前半にピークを迎えた 日本映画はテレビの普及などで下降線をたどり 邦画各社は赤字になるケースも出てきた。 (新東宝は昭和36年に倒産した) 東映も時代劇で黄金時代を築いたが、 徐々に人気に陰りが出始め客足も遠のいていた。 暗中模索の様だったが、新しいタイプの時代劇 として東映企画課長の渡辺達人氏の原案から バトンタッチされたのは池上金男。 監督の工藤栄一もネタ作りに参加して 池上金男が出した第一稿は何と原稿用紙で 六百枚もあった。 これをそのまま映画にすると4時間になる。 「電話帳かいな?」と言われたが 池上金男が詰めて361枚の決定稿が完成。 この出来上がった脚本が滅法面白い。 評判になって京撮企画部に監督や役者が 詰めかけたが、この脚本を読んだのが 片岡千恵蔵御大。 「俺がこの主役をやる!」と宣言してしまう。 本当は順番では市川右太衛門御大のはずだったが、 京都撮影所では誰も千恵蔵御大に逆らう者はいない。 片岡千恵蔵が主演となるとギャラも上がってしまう。
苦肉の策は本来はカラーで撮る予定だったが 予算が無くなったのでモノクロで撮られる事になった。 自衛隊の京都府長池演習所の中に作られたオープンセットが
クライマックスの落合宿に使われた。 元々このセットは「十三人の刺客」のために組まれた 物ではなく、松田定次の『地と砂の決斗』のために 巨費を費やされた組んだ物の残骸だが、 採算が取れなくて今回も使い回されていた。 題名の【十三】は素数を題名に入れるとヒットする
というジンクスがある。 黒澤明の『七人の侍』や『隠し砦の三悪人』が好例。 工藤栄一もこの後、昭和42年に 夏八木勲で『十一人の侍』を撮っている。 出演者は御大の他に、里見浩太朗、嵐寛寿郎、
西村晃、水島道太郎、丘さとみ、藤純子 山城新伍、月形龍之介、丹波哲郎など。 そして敵役は日活から来た内田良平 「馬鹿殿」役が有名な菅貫太郎。 内田良平は日活アクションで馴らし 拳銃捌きは得意だが時代劇は初体験だった。 時代劇の言い回しとリアクションはかなり苦労したらしい。 また菅貫太郎はこの作品でインパクトのある バカ殿の演技が絶賛されたが、同じような役が 後に付いてまわるはめになり腐っていたとか。 音楽は伊福部昭。タイトルバックの手鼓を使い
能や狂言のような掛け声もあるテーマ音楽も良い。 伊福部さんは東宝や大映、東映の作品も手掛けていたが 時代劇は東映と大映。ちょっと大映の仕事の 『眠狂四郎』に似たイントロかなと思ったりして。 芥川隆行のナレーションから始まる冒頭 何やら武士が三宝に乗せた「上」と書かれた 訴状の前で腹を切って息絶えている。 「弘化元年九月五日、早朝。江戸城馬場先御門外 老中土井大炊頭様御屋敷前にて、 播州明石十万石松平佐兵衛督斉韶様家来、 江戸家老職間宮図書切腹せり」 明石藩の藩主・松平斉韶(なりつぐ)は将軍の弟君で
その異常な性格と暴虐ぶりが幕府の中でも問題となっていた。 だが彼の行状を知らない将軍はいずれ斉韶を老中にするつもりだと言う。 筆頭老中土井大炊頭(丹波哲郎)も加わった幕閣の席でも
この事が協議される。 土井は「上様はことをわけて穏便に図るようにと――」仰せられた。 幕閣の席は静まった。 「斉韶様を明石松平家へご養子にいたしたのは時の老中幕閣のお手落ち」 間宮図書の亡骸は土井大炊頭の屋敷に保管されている。
その間宮が書いた訴状を読む土井大炊頭。 そこに呼ばれたのは公儀大目付島田新左衛門(片岡千恵蔵) 「時にその方、斉韶様をなんと」。 「はあ、由緒ある松平家の跡継ぎには相応しからぬお方かと存じます」 「その方、それを知りよるなら改めて申すことがある」 「この三日の間、旗本衆のなかより人を選び、ふるいにかけ、 その方と思いを定めて――」
「ご老中、人の命はなによりも重く、何よりも代え難きと心得ております。 斉韶様も人の子。それを仰せられる前にご公儀のご威光を
もってご隠居願われるか――」
「間宮が命に代えて願ったのはそれであった。だがそれが叶わぬのだ。」 「なぜでございます?」。 「明年、斉韶様には、江戸ご出府のみぎり老中職にご就任と、 すでに上様より仰せ出されておる」。
「では、あの殿にご正道を任せられると仰せられまするか」。 「されば、そのご正道の歪みをいかに正すかが思案のしどころになのだ。 ときに新左、その方に引き合わせたいものを招いておる。会ってくれるか」 島田新左衛門が茶室に入ると、尾張中納言家来木曽上松陣屋詰・
牧野靭負(月形龍之介)が鎮座している。
ここで牧野靭負が島田新左衛門に語ったのは・・・ 参勤交代のおり、木曽上松陣屋へ立ち寄った松平斉韶に、
息子の嫁を手ごめにされ、そして息子は惨殺されてしまう。 嫁もその後を追って自害した。
仕える尾張中納言の面目をつぶされただけでなく、 立派な跡継ぎ夫婦までを殺された無念が募る――
再び土井の前に戻る島田 「どうだ新左!」 「手前にはこうしている間にも間宮図書の声が聞こえる心地がいたします」 「されど天下のご正道を成す老中といえども叶うことと叶わぬことがある。 上様のお言葉に背き、上様のお支筋に非をうつ。老中のわしには出来ん。 だがやらねば、天下の政事は乱れ、災いは万民にも及ぶ。どうだ新左――」 「侍としてよき死に場所」 「死んでくれるか」 「見事成し遂げてご覧入れます」 間宮の訴状を破り火にくべる土井大炊頭。 場面は変わって江戸の明石藩屋敷。軍師・鬼頭半兵衛(内田良平)が
何やら吠えている。
それは家来が間宮の家の者には手を掛けるなと厳命したのに反して 息子夫婦や孫にまで縄をかけて屋敷に中庭に引きずり出していたからだ。 家来は逆らえない斉韶の命令だと半兵衛にすがる。 ここでバカ殿の松平斉韶が登場。演ずるは菅貫太郎。まさに怪演である。 今回の件、間宮の家の者には一切無関係である事を老中土井大炊頭から 仰せられている事を訴える鬼頭半兵衛に扇子を投げ怒る斉韶。 「たかが老中ひとりの申す世迷言、気に掛ける事は無い!」 この後、斉韶は間宮の者全員を自ら斬り殺してしまう。 こうなっては軍師・鬼頭半兵衛はいくらバカ殿でも藩主の命を守る事が
最大の使命。家来にこの数日間、老中土井大炊頭の屋敷に出入りした 者を全て洗うように命令を下す。そして翌朝、その家来が持って来た 名簿に目を通す半兵衛。その中に島田新左衛門と牧野靭負の名を 見つけて土井大炊頭が島田新左衛門に斉韶暗殺の命を下した事を悟る。 鬼頭半兵衛にとって島田新左衛門は旧知の中だった。 「土井大炊頭が島田を選んだとすればお家にとっては 最も悪いくじを引き当てたようだ」
島田新左衛門の屋敷、食客である浪人、 平山九十郎(西村晃)が居合の稽古をしている。
座敷には集められた徒目付組頭の倉永左平太(嵐寛寿郎)他五人が集まられている。 「おぬしたち一同、わしに命を預けられる事は承知だろうな」 「ならば言おう、この度、御老中土井大炊頭様の御内領により 明石十万石、松平斉韶様のお命を頂戴する事に相成る」
倉永左平太はここで計画を語る。来月の十月、参勤交代で斉韶が江戸から明石に 戻る。明石領内に入ってからでは暗殺は遂行出来ない故、参勤交代の道中の間に 襲撃して斉韶の命を奪わなければならないと。 ここで島田新左衛門の甥、島田新六郎(里見浩太朗)が登場。
新六郎は武芸も身に付けたが、今は芸者おえん(丘さとみ)の 家に居候している。今で言うヒモである。 刀より今は三味線だとうそぶくが、ふらっとおえんの家にやって来た 新左衛門が新六郎の愛用の三味線を奏でる。 三味線の腕さえも新左衛門に勝てないと悟った新六郎は刀で三味線の 弦を切り、おえんに別れを告げ新左衛門の元に出向く。 「いつ帰ってくださるの?」とおえん 「早ければひと月足らずだろう。 遅ければ盆に帰ってくる。迎え火を炊いて待っていてくれ――」 浪人・佐原平蔵(水島道太郎)と九十郎の弟子小倉庄次郎も
加わり総勢十二人が集まった。 十月二十四日、斉韶の明石藩一同は播州明石に向けて江戸を発つ。 船着き場で新左衛門たちは襲撃しようと試みるが 半兵衛の取った策で屈強の警備を敷かれて手も足も出なかった。 計画を練り直して江戸に戻る事にする。 そして斉韶一行を迎え討つのは木曾落合宿と決める。 まず斉韶一行を尾張藩内を通せずとして尾張藩・牧野靭負に 協力を願い、行先を落合宿を通過させるようにする。 落合宿全体を買い取って要塞化して罠を仕掛けて 斉韶一行を襲撃する手筈を取った。 「何の変哲のないこの宿場がいかに必殺の場に変わるかだ」 そこに落合宿の庄屋の娘加代(藤純子)と惚れあっている 郷士の木賀小弥太(山城新伍)が加わり十三人となる。 十一月十七日、濃霧の中か馬蹄の音がして明石藩53騎が現れた。 これは亀岡の山中で撮影されたが、濃霧で有名な京都府亀岡だが なかなか思う通の霧が出ずに撮影用のスモークを750本も 焚いてあの名場面が撮れたそうな。ただ当日、録音部を呼んでいなかった らしくて蹄の音はアフレコで入れている。 時代劇映画史上最長とされた30分にわたる殺陣シーンが始まる。
遥かに上回る量を使い工藤監督は始末書を何枚も書いたそうだ。 結局完成した版は3時間を超えてこのままでは上映出来ないので 削りに削って2時間5分がファイナルカットとなった。 ダビングなどのぎりぎりの作業で完成したプリントの試写は 深夜になったが京都撮影所の試写室は超満員で大好評につき 上映後は試写室に撮影所の関係者の拍手が鳴り響いた。 封切は昭和38年12月7日で併映は佐伯清監督の 『わが恐喝の人生』(東映東京、千葉真一、梅宮辰夫主演) だったが、翌週に倉田準二監督の『月影忍法帳 二十一の眼』 (東映京都 松方弘樹 里見浩太郎 主演)に差し替わって 時代劇二本立てで上映された。興行成績は工藤監督に言わせると 損はしていないが、少し儲かった程度との事。 参考資料
「東映京都撮影所血風録 あかんやつら」
(春日太一著 文春文庫)
「映画監督 工藤栄一」
(工藤栄一、ダーティ工藤著 ワイズ出版)
「伝説日本チャンバラ狂」
(黒鉄ヒロシ、ペリー荻野著 集英社)
「十三人の刺客」(昭和38年)
(東映チャンネル 12月16日放送)
こちらが昭和38年公開時のオリジナルポスター。
上から2番目は80年代に再公開された時のもの。
俳優の序列(ビリング)に違いがある。
監督: 工藤栄一 企画: 玉木潤一郎 天尾完次 脚本: 池上金男 撮影: 鈴木重平 美術: 井川徳道 編集: 宮本信太郎 音楽: 伊福部昭 助監督: 田宮武 片岡千恵蔵 里見浩太郎 内田良平 丹波哲郎 嵐寛寿郎 西村晃 月形龍之介 丘さとみ 三島ゆり子 藤純子 河原崎長一郎 水島道太郎 加賀邦男 沢村精四郎 阿部九州男 山城新伍 原田甲子郎 春日俊二 明石潮 片岡栄二郎 北龍二 香川良介 菅貫太郎 東映京都撮影所作品
東映株式会社配給 モノクロ・35㍉ シネマスコープサイズ 11巻 3,438m 125分 映倫番号:13392 (C)東映
この記事をもって2018年の最後となります。
非常に少ない投稿数でしたが今年も
10万件以上の訪問者がありました。
どうか来年もよろしくお願いします。
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東映が1963年に製作した『人生劇場 飛車角』(沢島忠監督)は、
時代劇が低迷していた東映が
復活する導火線役を務めた「任侠映画」のはしりだった。 先便をつけたのは当時、東京撮影所所長だった後に東映の取締役社長、 また会長を歴任した岡田茂。
そこへ俊藤浩滋プロデューサーが入り数年のうちに『明治侠客伝』、 『日本侠客伝』、『昭和残侠伝』、『兄弟仁義』などシリーズ化され
鶴田浩二、池部良、歌手の北島三郎、そして高倉健たちが主役を務め、
昭和43年には俊藤浩滋の愛娘の藤純子(冨司純子)が
主役を張った『緋牡丹博徒』がスタートして任侠映画が東映の屋台骨を 支えていたことは紛れもない事実だった。 俊藤浩滋が鶴田浩二を主役に据えた『博奕打ちシリーズ』
昭和42年に第一作の『博奕打ち』(小沢茂弘監督)がスタートする。 そして昭和43年、正月第二弾として公開されたシリーズ第四作である 『博奕打ち 総長賭博』(併映は工藤栄一監督の『日本暗黒史・情無用』) 監督は「将軍」こと山下耕作、脚本は当時、数々の任侠映画のシナリオを書き、
あとの『仁義なき戦い』(深作欣二監督)で名を上げる笠原和夫。 また山下耕作には東映時代劇の中でも最高作と誉れ高い 『関の彌太ッぺ』(昭和38年)もある。 今でこそ、このシリーズ第4作の『博奕打ち 総長賭博』は
東映任侠映画屈指の最高傑作と伝えられているが、 当時はプログラム・ピクチャーの一篇で、脚本の笠原和夫も 完成した初号プリントを試写で観てもそんなに傑作とは思わなかったとか。 作品は昭和43年1月14日に封切られ、 予定の10日興行の後、二番館や地方の劇場へ廻されていく。
キネマ旬報のベスト10にも入らず封切りから1年が過ぎようと
していた頃、突如、この映画の批評が映画雑誌に寄稿され世間が沸いた。 映画芸術1969年3月号(259号)に「総長賭博のなかの鶴田浩二」という表題で 作家の三島由紀夫が3ページに亘る感想を書いて掲載されたのだった。 三島は同じ年に製作されて、鶴田浩二が主演もした内田吐夢監督 『人生劇場・吉良常と飛車角』 (昭和43年)<キネ旬ではベスト9位にランクイン>
を観て鶴田の演技に感心して阿佐ヶ谷にある下番線の劇場まで
『総長賭博』を観に行ったとある。
舞台上手の戸がたえずきしんで、あけたてするたびにパタンと音をたて
しかもそこから入る風がふんだんに厠臭を運んでくる。 ・・・このような理想的な環境で、私は、「総長賭博」を観た。 そして甚だ感心した。これは何の誇張もなしに「名画」だと思った。 何という自然な必然性な糸が、各シークエンスに、 綿密に張りめぐらされていることだろう。 セリフのはしばしにいたるまで、何という洗練が支配し キザなところがひとつもなく、
物語の外の世界への絶対の無関心が保たれていることだろう。(中略) 何という絶対的肯定の中にギリギリに仕組まれた悲劇であろう。 しかもその悲劇は何とすみずみまで、あたかも古典劇のように、 人間的真実に叶っていることだろう。 「総長賭博論」三島由紀夫 三島由紀夫の評論が掲載された「映画芸術」(筆者所有) もう絶賛である。まさか任侠映画でギリシャ悲劇を彷彿させるとは。
この雑誌が出てから『総長賭博』を追いかける映画マニアも かなりいたとか。また、戦後の日本文学界を代表する作家の一人である 三島由紀夫が東映の任侠映画を手放しで絶賛するに至っては 世間の東映任侠映画に対する扱いも変わって行った。 叔父貴分の俺にドスを向ける気か。 てめえの任侠道はそんなものだったのか。 任侠道か。そんなものは俺にはねえ。
俺はただのケチな人殺しだ。 この6年後に世に出て日本映画屈指の傑作の一篇である 『仁義なき戦い』を書いた脚本家、笠原和夫の片鱗がもうこの時期に 見え隠れしているのが興味深い。 しかも主人公の鶴田の敵対する親分を演じるは金子信夫! 今更ながら、『仁義なき戦い』と一緒に観れたら かなり興味深い上映プログラムになるかも。 山下耕作は再度、笠原和夫とタッグを組んで 『博奕打ち いのち札』(昭和46年)も作っている。 これもなかなかの傑作だ(DVDは出てません) 昭和九年。江東地区に縄張りを持つ天竜一家の総長荒川が脳溢血で倒れ、
跡目相続が問題になった。六人衆中井組組長信次郎は二代目を推挙されたが辞退、 兄弟分の松田を推した。しかし、松田は服役中で、 荒川の舎弟分の仙波組長は荒川の娘婿の石戸を指名し、 信次郎の反対を押し切って、石戸が二代目を継ぐことを決定した。 その二代目披露の大花会が行なわれる一ヵ月前、松田が出所した。 事の次第を聞いた松田は兄貴分の自分をさしおいての石戸二代目決定に怒り、 信次郎の妹で松田の女房である弘江や、子分の音吉の制止もきかず、 石戸に殴り込みをかけたのだった。このため松田は謹慎に処せられてしまった。 仙波は松田を失脚させ、石戸を抱き込んで荒川一家を乗っ取ろうという 腹づもりだった。
松田の気持ちを理解できる信次郎は花会を取仕切るという責任があり、 女房のつや子が、松田と音吉が再度石戸組に殴り込むのを阻止できなかった 責任を取って自害した時、
ついに松田と兄弟分の緑を切らねばならなかった。だが、
松田はそうした信次郎の気持ちを知りながらも、 石戸の二代目披露を叩き潰すのが最後の意地だと言った。
やがて花会の日。石戸は信次郎から、 仙波が荒川一家を政界のボス河島の握る国志会に
組込もうとしているのを知らされ、反対した。そのため、 松田に襲われて傷を受けながらも跡目相続を済ませた石戸は、 その直後に仙波組代貸の野口に殺されてしまった。 仙波を鋭く追及した信次郎は、
逆に自分が松田と結託して石戸を殺したと濡れ衣を着せられ、 荒川一家存続のために松田を斬って身の証しを立てねばならなかった。 松田を斬った信次郎は、その刀をひっさげて、 荒川一家を売ろうとする張本人の仙波に迫った。 信次郎が仙波を倒した時、彼の顔には満足気な笑みが浮んでいた。 (キネマ旬報より) 東映京都作品 監督: 山下耕作
企画: 俊藤浩滋 橋本慶一 脚本: 笠原和夫 撮影: 山岸長樹 美術: 富田次郎 衣裳: 豊中健 編集: 宮本信太郎 音楽: 津島利章 擬闘: 谷明憲 助監督: 本田達男 大西卓夫 志村正浩 鶴田浩二
若山富三郎 藤純子 金子信夫 桜町弘子 名和宏 曽根晴美 佐々木孝丸 三上真一郎 沼田曜一 香川良介 フジカラー(東映化学) 東映スコープ(2.35:1) 95分・モノラル 映倫ナンバー15163号 博奕打ち 総長賭博(C)1968 東映
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1972(C)東映
『女囚701号 さそり』(1972)東映
先日、『キル・ビル』を劇場公開以来数年ぶりに再見したけど、 タランティーノの脚本の下地にはこの作品が埋め込まれていたはずだ。 あのブラック・マンバの復讐劇は「さそり」に近いものがある。 原作はビッグコミックに掲載された篠原とおるの劇画「さそり」から。 物語は主人公ナミを裏切った男たちへの壮絶なる復讐劇が展開するのだが、 国家や社会に反抗した者が収容される施設,すなわち「刑務所」に送致された 社会の脱落者たちが、ナミを中心として国家権力に反旗を纏う アナーキズムが漂う執拗なバイオレンス描写の連呼が全編を覆う。 当時は学生運動の挫折感を味わった若者を中心として絶大な支持を 受け、初代「さそり」は4作まで製作された。 東映東京撮影所の助監督だった伊藤俊也の監督昇進第一号作品だったが、
伊藤俊也はいきなり梶芽衣子とぶつかった。 東映における梶の主演作、『銀蝶渡り鳥』の演技が伊藤俊也が イメージしていたナミのキャラクターと大きく違ったのだ。 藤純子なき後に東映で「ポスト純子」として日活から移った梶芽衣子だが その女任侠渡路線のキャラが伊藤俊也の考えと意見が食い違う結果となった。 伊藤は梶に対して自分の意見を率直に伝え、現場に緊張が走った。 だが、梶芽衣子は頭ごなしで監督に自分の演技を否定されようが、 衣装合わせの場に現れ、作品はクランクインした。 梶芽衣子自身も自ら立案した「寡黙な女復讐人」という台詞が極端に 少ない俳優には演技力を試される難しい役に果敢に挑戦していくことになる。 梶芽衣子は日活ニューフェイスとして太田雅子の名前で青春映画にも出ていたが
売れず、巨匠マキノ雅弘監督に芸名を変える事を勧められ どちらかと言えばアウトロー的な役を演じるようになって世間に認められるようになった。 日活退社後に東映に移ってこの「さそり」シリーズと 東宝で撮った藤田敏八監督の『修羅雪姫』二作で人気を決定づける。 1972(C)東映 荒波に白い波しぶきのお馴染み東映三角マーク。だがBGMは日本国歌の
「君が代」と大写しの日の丸国旗。 ここはY県のY刑務所、所長の郷田(渡辺文雄)が法務大臣から 表彰を受けている最中、刑務所内のサイレンがけたたましく鳴り響く。 湿地帯を走り逃げる、松島ナミ(梶芽衣子)と由紀子(渡辺やよい) 二人の女囚は看守たちに包囲され捕えられる。 ここは女性刑務所で絶対封建的な所長の郷田や看守長の仲崎(室田日出男) 好色な看守、曽我(沼田曜一)たちに囚人はクズ同様に扱われていた。 ナミは懲罰房へ入れられ、手足を縄で縛られ身動きの出来ない状態にされた。 こんな地獄にナミが来た理由は恋人だった麻薬担当の刑事の杉見(夏八木勲)に 騙されて、やくざに強姦された上に杉見に棄てられたために彼を刃物で 襲ったが、殺せず、殺人未遂で実刑を受けたのだ。それでもまだ杉見を許せない ナミは復讐に燃え、脱獄を繰り返して杉見の命を狙っているのだった。 刑務所には片桐(横山リエ)や政木(三原葉子)ら表向きの模範囚らが
女囚たちを牛耳っていたが、新しく入ってきた進藤梨恵(扇ひろ子)と トラブルを起こして政木が進藤を陥れようとしたが、ナミの機転で 政木が疑われ浴室内で割れたガラスを手にナミを追っかけて 乱闘の末、政木は誤って郷田の片目を潰してしまう。 女囚全員が懲罰で穴を掘らされている時に杉見が現れ、昔、逮捕した片桐を 呼んで囁く「ナミを消したら、お前を仮釈で出してやるよ」 その様子を遠目から見抜き、杉見に厳しい恨みの視線を送るナミ。 ナミは再び独房へ入れられるが、そこには女囚の鬼頭(片山由美子)が いた。その夜、鬼頭はナミに優しく接するが、ナミのレズのテクニックで 身悶えして骨抜きにされる。鬼頭は刑務官で郷田が送った囮だったのだ。 郷田は徹底してナミを潰すべくあらゆる手段をかけてくる。 「閻魔落とし」と呼ばれる穴を掘っては埋め、また掘っては埋める 懲罰にナミの体力も限界だったが、ナミの唯一の味方の由紀子が看守を スコップで殴ったために看守に肩を撃たれてしまう。 怒った女囚たちはスコップで看守を襲い、銃を奪って暴動が起きる・・・ ここぞとばかり銃を奪った片桐はナミに銃口を向けるが。 由紀子がナミを庇って盾になり片桐に撃ち殺されてしまい 女囚たちは看守数人を人質に取って刑務所内の倉庫に立て籠もって 抵抗を始める。暴動グループのリーダー格の大塚(根岸明美)は ライフルを手に悪態の限りをつき、人質の看守たち(小林稔侍ほか) 性欲が溜まった女囚たちに裸に剥かれて逆レイプされる始末。 片桐はナミをこの事件の原因だと扇動して倉庫に呼び出させ 女囚たちにリンチをさせるが、ここでも進藤が片桐の企みを 暴いて女囚たちに片桐を捕えさせて天井から網ロープで吊るされる。 そこへ看守たちが雪崩れ込み銃撃戦になるが、ナミが灯油に火をつけて 倉庫は火の海になって片桐は生きたまま丸焼けになりナミはこの隙を突いて 脱走する。ナミは東京に舞い戻って自分を強姦した海津興業のやくざたちの 命を次々と奪っていく・・・海津の組長も殺られて自分の身辺にも 危険が迫ったと知る杉見。ついにナミの魔手は杉見の勤務する警視庁に 及んだ。杉見の乗ったエレベーターの中に全身黒の衣装を纏ったナミがいた。 拳銃を抜いてナミの持つ小刀を奪い、また有頂天になる杉見。 図に乗ってナミにキスしたのが間違いだった・・・ナミは杉見の舌を噛み切った。 ナミは小刀を拾い杉見を警視庁の屋上へと追い詰めメッタ刺しにして、ついに 積年の復讐を果たす。再び刑務所の冷たい扉を開けて入るナミの姿で幕を閉じる。 東映が70年代前半に打ち出した「ピンキー・バイオレンス」の代表作の一遍を成すが、
果てのない暴力描写と、ほとんど笑顔のない能面のような梶芽衣子の演技ととも伊藤俊也の シュールな実験的映像でほかの作品の追随を許さない後世に残る印象深い作品となった。 特に前半でナミの回想シーンにある杉見に初めて処女を許すナミが横たわっている 背景に潜入したナイトクラブや、杉見がナミを裏切って梅津に札束を渡されるシーンが 同一画面で進行する芝居の回り舞台的演出、やくざたちからの凌辱場面はガラスの床に ナミを置き俯瞰と鳥瞰で撮影してナミの心の変化を表現している点、 刑務所内の浴室で怒りに燃えた三原葉子の政木が不動明王のようなメイクで緑色のライトを 顔の下から当てナミを追い回す怪奇的なムードなど一瞬劇画チックだが、 その過剰的とも言える演出がこの作品の面白さのカギとなっている。 1972(C)東映
梶芽衣子の脇を固める俳優陣もよくて
大島渚組の渡辺文雄、ナミの仇に先日亡くなられた夏八木勲 眉毛なし一重瞼の女梅宮みたいな風貌の横山リエ、 新東宝出身で東映でバンバン脱ぎまくった三原葉子、 美人女優だけど下品な色気を発散してた根岸明美 「プレイガール」のレギュラーだった 片山由美子と渡辺やよいは東映ピンキーバイオレンスの常連。 そして梶芽衣子に負けずとも劣らず扇ひろ子姐さん。 あとは怪優、沼田曜一ややけにアップが多い室田日出男 そして今では考えられないパンツ脱がされて女に犯される 小林稔侍とか。 監督: 伊藤俊也 企画: 吉峰甲子夫 原作: 篠原とおる 脚本: 神波史男 松田寛夫 撮影: 仲沢半次郎 美術: 桑名忠之 編集: 田中修 音楽: 菊池俊輔 助監督: 小平裕 梶芽衣子 横山リエ 夏八木勲 渡辺文雄 扇ひろ子 渡辺やよい 三原葉子 根岸明美 片山由美子 室田日出男 伊達三郎 堀田真三 沼田曜一 イーストマンカラー(東映化学) 東映スコープ(2.35:1) 87分 1972年8月25日公開(東映配給) 併映「まむしの兄弟 傷害恐喝十八犯」 |

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1973(C)東映
『ポルノの女王 にっぽんSEX旅行』(1973・東映京都)
ロジャー・コーマンが監督した『忍者と悪女』(1963)
これに主演したボリス・カーロフの契約期間が三日間残っていたのを 使って『古城の亡霊』(1963)を撮ったのは有名な話。 モテナイ男、女の前では赤面、ドモリ・・・
根暗、早漏、だがヤリたい抱きたいハメ狂いたい・・・ 悶々男の発散しきれない鬱屈した思いを中島貞夫は荒木一郎を 起用してテレンス・スタンプとは一味違った日本の古都京都 を舞台に描いた東映版『コレクター』だったかも。 真逆な『気狂いピエロ』は中島ワールドならではの毒の効いた演出か? 東映はフランスからサンドラ・ジュリアンを呼んで 『現代ポルノ伝 先天性淫婦』(1971・東映東京)と 『徳川セックス禁止令 色情大名』(1972・東映京都)を製作して いずれも大ヒットして、今度はスウェーデンから売れっ子の女優 クリスチナ・リンドバーグ(正確にはクリスチナ・リンドベルイ)を 日本へ招き、東映ポルノのトップスターである池玲子と共演させた 『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』(1973)を鈴木則文の監督で製作、これもヒットした。 クリスチナ・リンドバーグは1950年、ストックホルム生まれ そのフランス人形のようなフェイスと似合わない大きな美乳と肢体で 主演作『情欲』(1971)、『露出』(1972)が成人向け洋画では異例のヒットで その名が知れ渡り、東映へ招聘される事になる。 『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』をクランクアップしたが、まだクリスチナの 契約期間が残っている事を知ったプロデューサー天尾完次は 東映京都にいた中島貞夫に契約期間を利用してもう一本撮らせることになる。 下敷きにあるのはウィリアム・ワイラーの『コレクター』(1965)と
ジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』(1965)だ。 脚本は中島貞夫と『温泉こんにゃく芸者』(1970)などで 中島貞夫と組んだ金子武郎がほぼ即興で書き上げた。 1973(C)東映
京都の爆弾作りの青年、五味川一郎(荒木一郎)の頭の中は
裸女が犇いていた。もう寝ても覚めてもセックス、セックス、セックス・・・ でも女にはモテない、抱けない、彼女などいるはずもない・・・ ヤリたい一心で、ポンコツ車を東京へ走らせる。 着いた東京ではナンパも試みるが、五味川の誘いに乗ってくる女など ひとりもいなかった。羽田空港の駐車場で車を停めていると、 小柄な外人娘が、五味川の車に乗り込んできたのだ。 彼女はイングリッド・ヤコブセン(C・リンドバーグ)で 実は麻薬の運び屋だったのだ。五味川を取引の相手と間違って 彼の車に乗り込んできたのだった。言葉の通じぬままの二人・・・ 途中で放っておこうとした五味川だったが、イングリッドは 五味川の車から降りない。もうしょうがないのでイングリッドを 京都の自分の部屋まで連れ込んで鍵を掛ける。 ようやく間違いの気づいたイングリッドだったが、五味川に 強姦されてしまうが、早漏の五味川は先に果ててしまう・・・・ ロープで縛って自由を奪った五味川だったが、彼女が好きになり 身の回りの世話をしてやるが、彼が買い物に行った隙に イングリッドは逃げてしまう。イングリッドは酒場で スウェーデン語を話せる神山(下馬二五七)と知り合い、 彼を信用してマリファナ・パーティについて行くが、これは 神山の罠でそこに集まっていた男たちに輪姦されてしまう。 五味川が鴨川の橋の上でイングリッドを探していると そこへ裸足で放心状態でとぼとぼ歩いてやって来るイングリッド・・・・ 五味川はイングリッドを連れて帰り、元気づけてやるが・・・ そして傷も癒えた彼女を解放してやろうとするが、新聞には 麻薬の運び屋として報道され、顔写真入りで手配されていた。 ふたりは愛情を感じ、やがて結ばれるが、そこへ麻薬組織と 警察が乱入してくる。組織の売人やイングリッドは逮捕されるが 彼女を失いたくない五味川は爆弾を投げつける・・・ 「危ない!」だが彼が作った爆弾は不発。 最後の最後まで五味川の人生は不発だったのか? 愛する女も守れないのか?落胆しておおきなため息を吐く五味川。 その時、大音響と共に凄まじい爆発が起きて五味川もイングリッドも 警官隊も売人たちも・・・・消えてしまう。ドッカ〜ン!! (1973年3月3日公開 東映配給)
当時、「空に星があるように」で歌手、頭脳警察での音楽活動や『白い指の戯れ』(1972・日活)などで
俳優として、または直木賞にノミネートされるほどの文筆家のマルチプレーヤー、 荒木一郎の俳優としての隠れた傑作に違いない。中島貞夫に可愛がられた荒木一郎は 俳優活動は現在は休止して音楽活動とマジック(奇術)の評論家として活動している。 この映画のために書いた曲は「りんどばーぐスペシャル」 カナザワ映画祭(9月)にはクリスチナ・リンドバーグが来日するらしい!
(映画秘宝より)来るって・・・今62歳じゃん! 企画: 天尾完次 三村敬三 脚本: 金子武郎 中島貞夫 撮影: 国定玖仁男 美術: 雨森義充 編集: 神田忠男 音楽: 荒木一郎 クリスチナ・リンドバーグ 荒木一郎 下馬二五七 粟津號 水城マコ 日高ゆりえ 川谷拓三 片桐竜次 岩尾正隆 フジカラー
シネスコ(1:2.35) 72分 映倫番号17518 成人映画(R18) |

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