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1977(C)Universal Studio.
ウィリアム・フリードキン特集③
『恐怖の報酬』(1977・米) SORCERER
WAGES OF FEAR アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督によるサスペンス映画史上の傑作(1952年製作)を
鬼才ウィリアム・フリードキンが製作と監督で再映画化した1977年作品。 日本では国際版(WAGES OF FEAR:92分版)がCICの配給で劇場公開された。 ビクターから過去に発売された日本版VHSおよび、米・ユニヴァーサルから リリースされている北米版DVDはアメリカ公開版(SORCERER:122分版)だ。 主演はロイ・シャイダー、ブルーノ・クレメール、フランシスコ・ラヴァルという顔ぶれ。 音楽を担当したのはドイツのプログレグループのタンジェリン・ドリーム。 彼等が初めて手がけた映画用音楽で高く評価され『ザ・クラッカー 真夜中のアウトロー』や 『ザ・キープ』、『ニア・ダーク 月夜の出来事』など傑出した音楽を発表している。 クルーゾー監督のオリジナル版(以下クルーゾー版)とフリードキン監督のリーメイク版の 相違点は主要4人の男たちが、なぜ南米の最南端ボルベニールのジャングルの村へ流れて来たかを 冒頭でエピソードを付加して説明する点。クルーゾー版は台詞のみで構成されていた。 (舞台も南米の北部ベネズエラだ)
油田で爆発事故が起きて消火するためのニトログリセリンを二台のトラックで険しい道を 運ぶ筋はクルーゾー版と何ら変わらないが、クルーゾー版が乾いた崖の多い山道を疾走する トラックで行くのに対して、フリードキン版は大雨や泥にまみれた高温多湿のジャングルを通って 火災現場へ向かう。(木製の架け橋や今にも落ちそうな吊り橋を渡るのが見せ場になっている) 道を塞ぐ大きな岩を運搬中のニトロで粉砕するシーンも、フリードキン版もあるが 岩から、倒れた大木に変更されていた。また油田爆発のシーンは、リアルでクルーゾー版より迫力があるが、 原因はゲリラによるテロ工作という”新味”が付け加えられた。 あのシーンはプロパンガスと50万ガロンの軽油で燃やされて撮影したために 誰も50フィート以内は近寄れなかったらしい。 実は主演は当初はロイ・シャイダーじゃなくスティーブ・マックィーンだったのだが、
マックィーンの出演は承諾されていたが、一緒にアリ・マッグロウを出演させろという条件だった。 さすがにフリードキンもこの条件は呑めず、ロイ・シャイダーをオファーした。 マックィーンが出たならば、マルチェロ・マストロヤンニとリノ・バンチュラもオファーする構想だったとか。 やはり物語としてはクルーゾー版の方がモノクロームでありながらも
時間的設計の巧みさや、心理描写の使いかた、イブ・モンタンの迫真の演技で軍配が上がるが フリードキン版は例の吊橋を通過する場面やダイナマイトのニトロが漏れている恐ろしい場面も 忘れがたい。特に吊橋の場面は粒子が荒れているが(推測だがラボで増感処理をしたものと思う) ドキュメント・タッチでクルーゾー版を凌ぐシーンだと思っても過言じゃない。 ニトロを運ぶトラック二台を丹念に整備する場面もクルーゾー版には強調されていなかったが フリードキン版にはしっかり挿入されており、これから4人に降り掛かる運命の道行を 予感させる重要なカットだ。 フリードキンにとっては、アメリカ国内で興行的に失敗して、(バジェットは2100万ドルで 国内収益は900万ドルの差額1200万ドルの大赤字だった)日本でも本来は121分のユニヴァーサル版が 配給されるはずだった本作を、フリードキン自身が権利関係でユニヴァーサルとパラマウント側を 訴訟したため、オランダ経由で92分の国際版しか回って来なかった不運な状況であった。
(フリードキンは国際版のファイナルカットまで契約しなかったためにこのような短縮版が 存在する結果になった)
また撮影のディック・ブッシュが途中で降板しために、第二班撮影のジョンM.スティーヴンズを残りの 撮影を任せたというアクシデントに見舞われた。 だがフリードキン自身はこの「恐怖の報酬」は自分自身が監督した映画で一番の作品だと語る。 「それは、私が意図した通りに正確に表現出来た、ただ一つの映画だよ」 そうしてフリードキンがこの映画のDVD化に際してフルフレームを要求しために 劇場ではヴィスタサイズ(1:1.66)だったが、スタンダードサイズで北米版DVDは収録されている。 1977(C)Universal Studio.
ジャングルに囲まれた南アメリカの小さな村ポルベニール。
この地の労務者ホテルで1人の男が目をさます。名はドミンゲス(ロイ・シャイダー)。 彼はアメリカで銀行強盗をして逃げ、この地に流れついた男だ。 本名をジャッキー・スキャロンといい、近くの精油所で働いている。 この村に下宿屋兼カフェのエル・コルサリオがあった。 ここで朝食をとっている男は、セラーノ(ブルーノ・クレメール)と呼ばれており、 パリで銀行家を営んでいたが不正がバレ、この地にのがれてきたのだ。本名はビクトル・マンゾン。 泥まみれになり土管工事をしている男がいた。彼、カッセム(アミドゥー)は パリで爆破事件をおこした爆薬のプロ。
そんな奴らの村にも飛行場があり、くたびれたDC3が着陸した。中からおりたったのは、 殺し屋ニーロ(フランシスコ・ラヴァル)。彼の落ち着き先はエリ・コルサリオだった。一方セラーノは、 国外脱出をはかろうとするが金がない。それは、ドミンゲスも同様であった。そしてその日、 ポルベニールから300キロ程はなれた油田で爆発がある−−。 反政府派ゲリラのしわざによるものらしく、犠牲者は多く、村は一種の無秩序状態におち入った。 石油会社の支配人コーレット(ラモン・ビエリ)は、油田火災を鎮火する方法を専門家と相談するが、 結論は、爆薬による爆風によって消火するしかない。 だが、石油会社の倉庫の40ダースものダイナマイトはゲリラにうばわれ、 残っているのはニトログリセリンだけだ。
この危険な液体を道なき道300キロ運ぶ以外に手はないのだ。 早速、トラックの運転手4人の志願者がつのられた。報酬を目当てに何人かが名乗りを上げ、 ドミンゲス、セラーノ、カッセム、そしてマルケス(カール・ジョン)が選ばれた。 1人1万ドルの現金と、国外へ出られる旅券が報酬だ。2台のトラックが用意された。 タイヤ、スプリング、車軸等の点検が行なわれ、オガクズを敷きつめた荷台にニトロがつみこまれる。 夜明けが訪れた。出発だ。だがマルケスが小屋で殺されていた。ニーロが殺したのだ。 やがて、彼がマルケスのあとがまで、トラックに乗る。まずドミンゲスとニーロのトラックが、 そして15分後セラーノとカッセムのトラックが出発した。雨が降る。道はでこぼこで、トラックの震動は続いた。 ニトロは爆発しないか−−。やがて彼らの行手には今にもくずれかかりそうなつり橋が迫ってきた。 道案内に立つ1人。難所を脱したもののセラーノ達のトラックが道からおちて爆発。 間もなくドミンゲスのトラックをゲリラが襲う。銃でもってゲリラを倒すドミンゲス達だが、 ニーロは傷つき、やがて死んでいった。まもなく目的地だ。だが、トラックは大破。 ドミンゲスはニトロの箱を1つ持ち、目的地にたどりついた。任務は終った。だが……。 今、ドミンゲスは1人、エル・コルサリオで酒を飲む−−。(キネマ旬報より) (日本公開1978年3月11日 CIC配給) パラマウント・ピクチャーズ 監督: ウィリアム・フリードキン 製作: ウィリアム・フリードキン 原作: ジョルジュ・アルノー 脚本: ウォロン・グリーン 撮影: ジョン・M・スティーヴンス ディック・ブッシュ プロダクションデザイン: ジョン・ボックス 美術: ロイ・ウォーカー 衣装デザイン: アンソニー・パウエル 編集: バッド・スミス 共同編集: ロバート・K・ランバート 音楽: タンジェリン・ドリーム ロイ・シャイダー ブルーノ・クレメル フランシスコ・ラバル アミドウ ラモン・ビエリ ピーター・カペル カール・ジョン フレデリック・フォン・レデブール ジョー・スピネル テクニカラー ヴィスタサイズ(1:1.66) 92分(日本公開版) 121分(アメリカ公開版) 英語モノラル 日本語字幕:高瀬鎮夫 |

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