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岩手県議会 知事の「聞き捨てならぬ」波紋
岩手県議会本会議一般質問の答弁で、達増拓也知事が若手議員に「反論」したことが、波紋を広げている。「聞き捨てならない」などと言い返した知事の態度に野党会派が反発、閉会後も場外戦が続く。民主党籍を持つ知事と自民党系会派との対立構図が背景にあるが、一方で、議会審議における知事ら執行部の「反問権」導入にも一石を投じた。(盛岡総局・岩崎泰之)
<質問に強く反発>
「制度的に知事の言論を抑圧しようという異常な段階に来ている」
12月定例会が閉会した10日、達増知事は報道陣の質問が終わった後、突然、議会への不満をあらわにした。発言は約5分間に及び、言うべきことを言った知事はあぜんとする記者を置き去りにし、知事室に消えた。
事の発端は5日の一般質問だった。自民党系会派・自民クラブの高橋雪文氏が「(知事は)民主主義や草の根という言葉で(責任を)県民に転嫁している」との趣旨の質問をしたのに対し、達増知事は強い口調で「聞き捨てなりません」と反論。「県民のうめきや叫びが議員には聞こえないのでしょうか」と逆に問い掛けた。
議会は民主党系会派を除き一斉に反発し、10日に撤回を求める決議案を賛成多数で可決。これを知事は「制度的な言論の抑圧」と受け止めた。
議員側も収まりがつかず、閉会後も議員のホームページ(HP)などには「質問されていないことに長々答弁した」といった批判の言葉が並ぶ。質問した高橋氏は、「知事は反問権を行使し、質問と異なる答弁をした。反論するのはいいにしても、あれでは個人攻撃だ」と問題視する。
<まだ規定どまり>
「反問権」は、議員からの質問に首長ら執行部が逆質問できる権利で、会議規則に盛り込む地方議会が徐々に増えている。岩手県議会事務局によると、執行部からの反論や逆質問を禁じる規定はないが、答弁は聞かれたことだけに答えるのが同県議会の不文律。議会と執行部が政策などを議論する場は存在しない。
岩手県議会は今回の定例会で議会基本条例を制定し、検討段階で「反問権」の是非も議論した。だが「質問の時間がなくなる」などの理由で、「質問の趣旨を確認することができる」という規定にとどめた。
県幹部の1人は「(答弁で議員に)『だったら、どうしたらいいのか』と言いたくなる時がある。反問権などがあれば、施策の中身も深まるはずだ」と主張する。
議会側には、多くの情報を持つ執行部とは対等に議論できないという弱気な一面もある。では議会における議論はどうあるべきか。
地方議会に詳しい斎藤俊明岩手県立大教授(政治学)は「議会はより良い政策を形成する一端を担っている。反問権を導入するなどし、県政課題について執行部と丁々発止の議論を行う場が必要だ」と指摘する。
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