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最近読んだ本の中で、ワクワクするのに十分なもののひとつが標題の著作。
気鋭の昆虫研究者の「冒険」が、読む者もその魅力に巻き込んでいく。
冒険の始まりは、札幌市の円山だった。クロクサアリの巣を観察していた
著者は、何か変てこな虫を見つける。よく見るとエンマムシの仲間だった。
しかも、何とクロクサアリを食べていたのだ。アリを食べるエンマムシ!?
もちろん新種で「アリクイエンマムシ」と名付けられたが、今でもかなり稀な
虫だという。それにしても、円山にこんな虫がいるなんて・・・
クサアリの仲間などのアリの巣には、さまざまな虫が「共生」している。シジミ
チョウの仲間やアリヅカコオロギ、アリスアブをはじめ、奇妙な姿のハネカク
シの仲間やまったく翅のないハエまでいる。これらのアリの巣を好む昆虫を
まとめて「好蟻性昆虫」というが、アリとの関わり方は様々だ。「相利共生」・
「片利共生」という言葉では割り切れない関係があるようだ。
ミズナラの根元に開いた穴にクロクサアリの巣がある。
根元からアリの行列が、近くの木のアブラムシまで続く。
行列の途中ではこんな光景も。何かの幼虫を襲っているのか、「世話」しているのか・・・?
この日(5月30日)は、翅アリ(♂)も見られた。働きアリに攻撃されているように見える。
カイガラムシ?に集まるクロクサアリ。 (以上、2012年5月30日・中央区宮の森で撮影)
クロクサアリの巣は市内ではよく見られる。見つけたら必ず観察しているが、アリクイエンマムシ
どころか、その他の好蟻性昆虫もほとんど見つけられない。アリの巣にもぐっていて、めったに
外に出てこないせいもあるだろうが、やはり目の付けどころが違うのだろう。著者の目に留まった
ことは偶然ではあるまい。札幌から始まった著者の冒険は、やがて世界へと広がっていく。その
様々な顛末がまた面白い。
とくに熱帯地域のサスライアリ(いわゆる軍隊アリ)と「共生」する珍奇なハネカクシの仲間の探索
は涙ぐましい。定着した巣を持たず、文字通り彷徨するアリの行列の中からアリに擬態した小さな
ハネカクシを探し出すのは至難の技だろう。それでも研究者を惹きつけるのは、その多くが分類
上も生態的にも未知の虫だということだ。知りたいという好奇心が人を動かす。
一般にも分かりやすく記述されているが、最新の研究という事情もあってか出典論文が準備中(
査読・印刷中?)というものが多い。本が先に出てしまったということだろうか。また、熱帯のフィール
ドは広大だけに、どれだけ調査しても少人数では限度がある。どこかの地域、何かの対象に絞らない
と手に負えないだろう。限られた時間をどのように有効に使い、どんな冒険を見せてくれるのか、今後
の成果が楽しみになる。好蟻性昆虫ブーム到来の予感。
丸山宗利 『アリの巣をめぐる冒険』 東海大学出版会 2012年9月
丸山宗利ほか 『アリの巣の生きもの図鑑』 東海大学出版会 2013年2月 |
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2013年03月19日
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