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沖縄の自然シリーズの一環として『沖縄のカエル』が6月に出ました。
カエルの仲間は世界に6500種以上がいて、日本からは44種が知ら
れているといいます。さらに沖縄県には17種の在来のカエルがいて
何と・・・そのうちの11種が沖縄の固有種! 貴重な存在です。
オキナワイシカワガエルは、大陸にも近縁種がいない生きた化石
とも言える存在。かつて大陸と地続きだった頃に移動してきて、島と
なったあとも、雨が多くて天敵の少ない環境で生き延びてきました。
カエルに限らずヤンバルクイナやノグチゲラ、ヤンバルテナガコガネ
などの固有種が住んでいるのが沖縄島北部のやんばるの森です。
赤土の流失が懸念されます。 (北海道新聞・11月28日夕刊より)
環境省は今年9月このやんばるの森の広い範囲を国立公園に指定
しました。その一方で、すぐ隣りに米軍のヘリパッド建設が強行され
多数の樹木(一説では2万本)を伐採。土砂が川に流れ込めば・・・・
カエルにも影響が出ることは明らかです。将来的には世界自然遺産
への登録をめざす動きもあるようですが・・・・・・自然豊かな森の上を
オスプレイ(猛禽類のミサゴ)が飛ぶ光景は、ふさわしくないでしょう。
今からでも工事は中止!すべきです。翁長知事ブレないでください。
札幌に住む在来のカエルは、このエゾアカガエルとニホンアマガエルの
わずか2種だけ。ほかは国内移入種です。沖縄のカエルがいかに豊か
で貴重な存在か・・・「ケロケロ?」とは違う多様な鳴き声にも注目です。 ホルストガエルも大陸に近縁種がいません。先祖は絶滅した
のでしょう。乾燥化など環境の変化が原因だったのかもしれま
せん。しかし、かろうじて生き残ったこの森の子孫たちは開発
(しかも軍事)の犠牲になろうとしています。長年にわたり著者が
撮影してきたこの姿が「遺産」とならないことを願うばかりです。
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昆虫関係図書
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「虫の虫」は、「虫に熱中する人」の意味だろう。虫好き、特にゾウムシ
好きで知られるご本人にぴったりの造語かもしれない。「虫の虫」が、
日本に果たしてどれくらいの「個体数で分布」しているのか分からない
が、外国と比べると相対的に多かったのは間違いない。多様な自然
環境が身近にあり、虫愛ずる伝統が引き継がれてきた証しだろう。
しかし、高度経済成長で列島改造が進み、身近な自然が失われてい
くのと並行して「虫の虫」も消えていく。かつては、ほとんどの高校に
生物部があって何人かの「虫の虫」がいた。それが1980年代以降だ
ろう生物部は消えていき、高校での「虫の虫」は絶滅危惧種(ほぼ
絶滅)となった。たまに出会うと珍種扱いで思わず愛でてしまう。
養老さんの本は、初期の頃のものからつまみ読みしていたが、本業?
の解剖や脳の話から死や墓、虫の話まで幅広いものの、その根底に
ある「養老史観」は一貫しているなと思っていた。その一部を分かりや
すく集大成させた「バカの壁」が馬鹿売れしてできたのが鎌倉の「虫御
殿」なのだろう。
先日の「爆問学問」でも紹介されていたが、壁一面に並ぶ標本箱は壮
観だ。そんな氏も傘寿が近いという。順番なのは仕方がないことだが、
この膨大な「情報」がどう処理されるのか、されないのか・・・余計なお
世話かもしれないが何だか気になる。海外流出となれば、この国の文
化予算・レベルの貧しさを改めてさらすことになる。
本は、ラオスでの虫採りのドタバタ日記かと思いきや、随所に養老史観が
散りばめられていて、帯にあるように「自然と向き合えば、答えは見えてく
る」ように思う。それだけ自然とかけ離れた生活になっているということへ
の警鐘だろう。ラオスの山奥まで行かなくとも、国内の足元にはまだまだ
注目すべき自然はある。それでも付録?のDVDでテングアゲハの雄飛
が見られるだけでも十分な価値はあるものと思う。
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1915年10月11日、あのファーブルが亡くなりました。92歳。昨日は没後
100年でした。親交のあったルグロが、その著書「ファーブルの生涯」の
中で葬儀のようすを次のように述べています。
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(南仏)アルマスの様々な花をとりまぜた花冠にとりまかれ、顔はその
まま覆われずにある。珍しいほどに澄みきった秋晴れの下、柩は山の
の近くオリーブ樹にとりまかれ、野の花と昆虫のささやきにみちた小さ
な墓場へとしめやかに運ばれていった。大きな穴が掘られた。弔辞が
10あまりもあった。その間にも何匹ものバッタやテントウムシが柩に
来てすがりついた。ふと見ると墓穴の口の白い石の上で、ウスバカマ
キリが「祈りのポーズ」を取っていた。こうして彼に愛された虫たちが、
藪の中や砂地の中からやって来て、まるで彼のあとを慕ってどこまで
もついていきたがっているようであった。 (一部を要約・改変)
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もちろん、虫たちの「意図」はまったく違って、荒地の中に突如出現した
「物体」が初秋の太陽に暖められて好都合だったのでしょう。それでも
南フランスの10月の情景が想像でき、ファーブルにとってはふさわしい
日和だったことは間違いないでしょう。ちょうど没後100年。それほど話
題にはなっていないようですが、「ファーブルに学ぶ」はどうなっている
のでしょうか? かつてこんな展覧会がありました。
各地のいくつかの博物館を巡回したようですから、足を運んだ方も
いたのではないでしょうか。 ファーブル自身が採集した多数の昆虫標本、自筆の原稿や著書
などが展示され興味深く見ました。また同時開催された講演会で
は、フランスの「昆虫事情」なども聞くことができました。
ファーブルはフランスでは、今は日本ほどは「有名人」ではない
というのは事実のようです。やはり虫に対する伝統的な接し方が
日本とは違うのでしょうか。「虫はいらないもの、見えないもの」で
クワガタなどは「悪魔」扱いされたこともあったようです。もちろん
皆がそう思っているとも思えません。その証拠にフランスなど欧州
諸国が今も昆虫学の先進地です。ただ研究者も含めて虫への接
し方の根底にはやはり宗教観の違いがあるのを感じました。
日本では学校の教科書に「偉人」として採り上げられてきたことも
「違い」を象徴しています。子どもはある程度の学年までは男女の
区別なく基本的に「虫が好き」です。その後、興味の対象は変化し
「虫離れ」していきますが、「ファーブルの面影」は残っていて知ら
ない大人はいないほどの「有名人」になっています。公教育が賛美
すべき「偉人」として採り上げた何らかの意図があったとしても、そ
れを受け入れる「伝統的な虫好きの素地」がありました。
その素地は今はどうでしょうか?「自然離れ・理科離れ」がさかんに
流された時期がありました(今も?)。学習ノートの表紙から昆虫の
姿が消えるという騒動もありました。この「キモイ」は決して本来の子
どもの声ではなく、親世代など大人の思い込みの影響によるもので
しょう。子どもに昆虫標本(生きた虫も)を見せると、初めは嫌がって
いた子も、次第に手で触れることができるようになります。先入観か
ら解き放たれて好奇心が勝った瞬間、本来の姿です。
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自然界のどんなささいな問題でも、たとえ、それが、思いように
よっては子どもらしい問題に見えるものでも、けっしてばかにし
てはいけない。(中略) 観察する者はなにものもゆるがせにし
てはならない。もっともささいなことから、何が出てくるかはだれ
にもわかったものではないからだ。 (「ファーブルの言葉」より)
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この社会の自然環境の改変(破壊)はすさまじい勢いだ。地球規
模での生物種の大量絶滅は過去に5回あったという。そして今が
6回目か、人類由来の・・・? 生物進化を司ってきた「神」(存在
すればだが)の目には、これも「想定内」なのだろうか。
個人の力ではどうしようもない流れだが、せっかく観察に出る機会
に恵まれているのだから、ファーブルのこの言葉に学んで、この
「改変」を見て記録していきたいと思う。知らないと思い込みが先行
するし、時には恐怖さえ覚えることもあるが、知ると消えて「何だそう
なのか!」とすがすがしい気持ちになる。
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やっと雪が融けた6月初旬、近郊の小さな沢でザリガニを探す親子に出会った。
立派なニホンザリガニだった。久しぶりに見た。かつてはたくさんいたが、絶滅が危惧されて
いるという。そのニホンザリガニ、遺伝子の解析などから、ニホンザリガニを含むアジアザリ
ガニ類の起源がもっとも古く、世界のザリガニの祖先型だということが分かったという。さらに
その中でも、ニホンザリガニが最も古く、その起源は北海道中西部(札幌付近)と推定される
という結論は驚きだ。ザリガニ類の起源が札幌? 本当なら札幌のニホンザリガニは、まさに
「生きた化石」級の貴重な存在になる。
子供の頃に、田んぼの用水路でよく釣ったザリガニ、それはアメリカザリガニだった。ニホン
ザリガニに会うには、近郊の山地の小さな沢に行かなければならなかった。うっそうとした
広葉樹におおわれ、冷たい湧水がある場所。チョロチョロと流れる沢には、捕食者となる大き
な魚はいない。転石をめくると小さなザリガニが隠れていた。しかし、今ではこんな環境は
少なくなったと同時に、容易に移動できないニホンザリガニも消えていった。ここでひとつの
疑問。では「札幌起源のニホンザリガニ」は、どうやって分布を拡げていったのか?まだ解明
すべきことは多い。
川井唯史・中村太士編 「北海道水辺の生き物の不思議」 北海道新聞社・2013年
・ニホンザリガニを救え! ・ゲンゴロウが減っている
・サンショウウオの不思議 ・カワシンジュガイを知っていますか?
・謎の赤いフナ−ヒブナ ・水草だって生きている
・アライグマの脅威 ・外来ザリガニの生命力 |
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最近読んだ本の中で、ワクワクするのに十分なもののひとつが標題の著作。
気鋭の昆虫研究者の「冒険」が、読む者もその魅力に巻き込んでいく。
冒険の始まりは、札幌市の円山だった。クロクサアリの巣を観察していた
著者は、何か変てこな虫を見つける。よく見るとエンマムシの仲間だった。
しかも、何とクロクサアリを食べていたのだ。アリを食べるエンマムシ!?
もちろん新種で「アリクイエンマムシ」と名付けられたが、今でもかなり稀な
虫だという。それにしても、円山にこんな虫がいるなんて・・・
クサアリの仲間などのアリの巣には、さまざまな虫が「共生」している。シジミ
チョウの仲間やアリヅカコオロギ、アリスアブをはじめ、奇妙な姿のハネカク
シの仲間やまったく翅のないハエまでいる。これらのアリの巣を好む昆虫を
まとめて「好蟻性昆虫」というが、アリとの関わり方は様々だ。「相利共生」・
「片利共生」という言葉では割り切れない関係があるようだ。
ミズナラの根元に開いた穴にクロクサアリの巣がある。
根元からアリの行列が、近くの木のアブラムシまで続く。
行列の途中ではこんな光景も。何かの幼虫を襲っているのか、「世話」しているのか・・・?
この日(5月30日)は、翅アリ(♂)も見られた。働きアリに攻撃されているように見える。
カイガラムシ?に集まるクロクサアリ。 (以上、2012年5月30日・中央区宮の森で撮影)
クロクサアリの巣は市内ではよく見られる。見つけたら必ず観察しているが、アリクイエンマムシ
どころか、その他の好蟻性昆虫もほとんど見つけられない。アリの巣にもぐっていて、めったに
外に出てこないせいもあるだろうが、やはり目の付けどころが違うのだろう。著者の目に留まった
ことは偶然ではあるまい。札幌から始まった著者の冒険は、やがて世界へと広がっていく。その
様々な顛末がまた面白い。
とくに熱帯地域のサスライアリ(いわゆる軍隊アリ)と「共生」する珍奇なハネカクシの仲間の探索
は涙ぐましい。定着した巣を持たず、文字通り彷徨するアリの行列の中からアリに擬態した小さな
ハネカクシを探し出すのは至難の技だろう。それでも研究者を惹きつけるのは、その多くが分類
上も生態的にも未知の虫だということだ。知りたいという好奇心が人を動かす。
一般にも分かりやすく記述されているが、最新の研究という事情もあってか出典論文が準備中(
査読・印刷中?)というものが多い。本が先に出てしまったということだろうか。また、熱帯のフィール
ドは広大だけに、どれだけ調査しても少人数では限度がある。どこかの地域、何かの対象に絞らない
と手に負えないだろう。限られた時間をどのように有効に使い、どんな冒険を見せてくれるのか、今後
の成果が楽しみになる。好蟻性昆虫ブーム到来の予感。
丸山宗利 『アリの巣をめぐる冒険』 東海大学出版会 2012年9月
丸山宗利ほか 『アリの巣の生きもの図鑑』 東海大学出版会 2013年2月 |



