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山極寿一 『家族進化論』 東大出版会・2012年
ゴリラの社会などを研究し、日本の近年の「サル学」をリードする著者。
その最近の著書を読んだ。いくつかの最新の成果が盛り込まれている
と同時に、これまでの成果についても興味深くまとめられて読みやすい。
そのテーマのひとつが「子殺し」。オスによる子殺しは、哺乳類の中でも
霊長類に最も多いという。その理由のひとつを「父性の確立」の側面から
説明している。それが確立している場合とほとんど確立していない場合
には子殺しはほとんど起きず、中間の場合に起きているという。
ペアで添い遂げるテナガザル、乱交が見られるボノボでは子殺しはなく、
父性が曖昧なチンパンジー、マウンテンゴリラでしばしば子殺しが起きる
という。特に、チンパンジーの場合には、おもにに若いオスが対象となり、
それを群れ内で食べる「カーニバル」があるというから驚く。
こうした「サル学」を読むと、では人間ではどうなのか・・・と類人猿とヒトの
社会をダブらせて類推してしまう。今のヒトの社会での「父性の確立」は
どうなっているのか、子殺しが起きる素地はなくなっていると言えるのか?
「文明国」での急速な核家族化が進む中、考えさせられるテーマである。
昆虫にも「社会生活」を営むものがいる。彼らには子殺しはないのか?
肉ダンゴを与えるコアシナガバチ (2012年8月・中央区円山ふもとで撮影)
アシナガバチやスズメバチも「家族」を構成するが、サルやヒトとは
まったく違う完璧な母系社会だ。オスは「いたほうがいい」程度の
存在だから、「父性の確立」など初めから問題にならない。そうなら
子殺しはまったく起きないのか? しかし、社会性のハチ類の一部
では巣の幼虫を食べることが観察されている。様々な理由で餌が
十分に確保できない時に、幼虫が非常食になっているというのだ。
本当に飢えからくる行動だろうか? もう少し広く、詳しく観察する
必要がありそうだ。チンパンジーの群れで起きる「謝肉祭」の理由と
も比べて考えると興味深い。
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昆虫関係図書
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昆虫などの節足動物やヘビ・トカゲにカエルなどなど・・・みんな皮を脱ぐ。
だが、その瞬間を見たいと思っても、野外ではなかなか叶わない。その
様子を美しい写真で見せてくれるのが、この『脱皮コレクション』だ。
定番のセミやチョウの羽化のほか、シマヘビ・ヤモリ・カナヘビなどの脱皮
も見ものだ。カエルも皮を脱ぐというが、それを食べるというのも面白い。
夏の終わりともなると、市内では、カンタンが結構多く鳴くが、その姿を
見つけるのは、なかなか難しい。まして脱皮の瞬間となると、野外では
不可能に近い。まず、葉裏に隠れている幼生を発見するのが大変だし
脱皮する時刻が夜明け前に多いというのもネックになる。運よく見つけた
としても、下のようにすでに「脱いだあと」ということになる。
脱皮直後のカンタン (2008年8月・南区砥山で撮影)
『脱皮コレクション」(監修・岡島秀治、日本文芸社、2011年)
人も日々垢を落としつつ「脱皮」しているはずだが、なかなか「一皮むけた
境地」に達するのは難しいようだなぁ、特に政治に携わる人々は・・・
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ずっと「真冬日」が続いている。近郊の江別・岩見沢は記録的な大雪となった。
札幌市内の積雪はそうでもないが、進んでは出歩く気にならない。
寒気に包まれた三角山を見る
この状況で、自転車で図書館に来る者もいるようだ。 (2012年1月16日)
年末から正月にかけて、何冊かの本を読んだ。そのひとつ「松村松年自伝」
は、なかなかの内容だった。日本の昆虫分類学の基礎を築いた人物の意外
な一面を覗くことができる。やんちゃで「ガキ大将」の少年時代、バンカラな
学生時代(札幌農学校)、今や歴史上の人物となった人々との交流や裏話
などで飽きさせない話が続いた(中には「話半分」自慢もあるとは思うが)。
松村松年がつけた昆虫の学名で、今も有効なものがある。だれも本格的に
やらなかったという「時代の味方」があるとしても、その精力的な仕事には、
やはり頭が下がる。昆虫以外にも多趣味で知られたとこからも分かるように、
持って生まれた資質、明治という時代の気質が大きな役割を果たしている
ように思う。
大の「おとな」が捕虫網を振り回して、虫を追いかける姿は、いつの時代にも
奇異に映るようだ。松村が札幌の円山で虫を追いかけていると、農作業の
おばちゃんから、次のように諭されたという。
「書生さん、いい年して虫ばかり捕っていないで、はやく親孝行しなさいよ」
また、円山の山頂で灯火採集(アセチレンランプ)をしていたら、ふもとの青年
団の若者が、手に手に棒を持って登ってきて、「狐火」を確かめに来たという。
事情を説明して事なきを得たようだが、時代を感じさせるエピソードだ。
私自身も網を振っていて、「何かいるんですか?」などと声をかけられることが
しばしばだが、詳しい説明は面倒なので、「環境調査です」と答えることにして
いる。もちろん、この説明の「半分」はウソではない。
松村松年の著作のひとつ。「JAPAN‐EMPIRE」の文字が時代を感じさせる。1931年といえば、
満州事変が起きた年だったか?
「松村松年自伝」 昭和35年12月、造形美術出版局(東京) 松村自身の筆によるものではなく
娘さん(山下年子)による口述筆記の形をとってまとめられた。年譜・業績目録も参考になる。 |
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海野和男さん、有名な昆虫写真家。多くの写真集を出されています。今は小諸を拠点に活動されている
ようですが、かつて住んでいた東京の何気ない場所での虫の表情をまとめたのが、この本。市ヶ谷や調布
などに、こんな虫が・・・1988年の出版ですから、それ以前に撮った虫です。20年以上経って、これらの虫は
どうなっているでしょう。都市化が進む中で、こうした記録の価値は、ますます高まっていくでしょうね。
単に虫だけでなく、その虫が活動している環境が写し込まれているのがいいですね。海野さんのブログ
「小諸日記」は、毎日更新で必見です。
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昆虫の種類はきわめて多い。名前(学名)がついているものだけでも90万種以上。この先、分類が進めば
さらに増えることは間違いない。その一方で、記載される前に絶滅し、「名無し」で消えてしまうものもいること
だろう。日本列島には、多様な自然環境があり、里山的農耕文化が続いて来たことなどで、昆虫も多様性に
富み、人々の関心も高かった。同時に、出版されてきた昆虫の本も多様だ。それらの中から名著と呼ばれる
ものを集大成したのが、次の本である。
情報社会の進展が加速する中、ネット検索で「何でも出てくる世界」が出現したが、個々の情報は
ばらばらで、それ自体では意味をなさないことも多い。やはり、ある意図をもった「編集」が必要で、
それがなければ、生きた情報にはならないだろう。
この本の出版(1999年)以後も、面白い昆虫の本が出ているが、過去の業績の輝きは消えることは
ない。巻末には、江戸時代の代表的な「虫譜」リストがあり興味深い。
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