一期一会

札幌の昆虫の生態や自然を写真と合わせて紹介します!

野蝶百景

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                         7月中旬・中央区宮の森 ♂

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                            7月中旬・五天山 ♀

               ツバメシジミ  Everes argiades
 
       明治初期、北海道を採集旅行したフェントンらは道央地域で本種の集団吸水を
       目撃したと記している。その数はおびただしく、まるで海に浮かぶヨットの艦隊の
       ようだったいう。確かに集団で吸水する習性はあるものの、今ではこんな光景は
       まず見られないだろう。どちらかというと平原に依存する彼女らにとっての良好な
       環境は、人にとっても利用価値は高い。明治以降150年の間に、農地・宅地など
       に変わり、生息環境は失われていった。同様の影響を受けた蝶はほかにもいる。
       例えば絶滅に瀕するアサマシジミ・・・ツバメシジミも同じ道をたどるのだろうか?

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                   7月下旬・西区平和 交尾(上が♂)を邪魔する♂

         しかし事情はちょっと違うようだ。アサマシジミがナンテンハギに固執したのに対して
         ツバメシジミは、明治以降牧草として入ってきたクローバー類=シロツメクサやアカ
         ツメクサ、ムラサキウマゴヤシなどを積極的に食べるようになって、生き延びてきて
         いる。この食性の違いは何のか・・・?興味深いが、いずれにしても人の経済活動に
         よる生態系撹乱の対照的な例として今後の動向を見守っていかなければならない。

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                        6月中旬・南区観音沢 「春型」♂

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                 9月上旬・西区福井 「秋型」♂ 札幌市内では年3化のようだ。

           名前がなぜ「ツバメ=燕?」なのか・・・きちんと調べていないので分からない。

           シータテハ  Polygonia  c-album  hamigera   

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                         5月上旬・西区平和 越冬明け

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                         5月中旬・円山公園 越冬明け

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                         7月中旬・手稲山ふもと 夏型(第1化)

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                           7月下旬・円山墓地 夏型

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                          8月上旬・源八沢 夏型

        名前は後翅裏面の「Cに見える紋」に由来する。成虫で越冬するタテハチョウの仲間で
        今頃はどこか雪の被らない場所で休眠しているはずだ。山沿いの住宅地に下りて来た
        個体は、暖を求めて屋内のどこかで眠っているかもしれない。記録を見ると早い年には
        4月下旬に目覚め、5月に入ってピークとなり、6月いっぱいまで生き延びるものもいる。
        
        課題は他の越冬タテハ同様、いつ交尾するかということ。市内では秋に結構個体数が
        多い割に交尾場面を見たことがない。越冬前か、越冬後か・・・秋の花に雌雄が同時に
        訪れる場面をよく見るが、吸蜜に夢中で相手には無関心・・・ひょっとすると性的の未熟
        なのかもしれない。秋型♂の縄張り行動が弱いのも、そのことを類推させる。

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                9月下旬・円山ふもとの庭   秋型(第2化)の雌雄が集まるが・・・

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               9月下旬・五天山 秋型・・・2017年はおびただしい数が羽化した。

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                        10月中旬・西区平和 西区平和
 
        9月になって羽化した秋型は、初雪が降るギリギリまで花や腐果、獣糞などに
        来るのが見られる。夏型に比べると、翅の切れ込みがより深くなり、裏面は閉
        じるとさらに枯葉のように見える。鳥などへの天敵対策の結果かもしれない。

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                     8月中旬・野幌原生林 ハルニレにいた終齢幼虫

          市内ではハルニレとオヒョウが幼虫の食べ物のようだ。カラハナソウ(クワ科)も
          食べるという。このトゲを持った幼虫と成虫のギャップには、いつもながら驚く。

          ジョウザンシジミ  Scolitantides orion jezoensis
 
    国外ではユーラシア大陸の中・高緯度地域に広く分布するが、国内では
    北海道限定で、しかもどこにでもいるわけではない。なぜだろうか・・・?

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                             6月上旬・南区八剣山

            道内の分布を見ると、黒松内低地帯以南の渡島半島や道北の宗谷地方には
            生息せず、北緯43度〜44度の帯状地域に発生地が点在する。札幌市内でも
            その姿が見られるのは貴重だが、発生地が南区の山沿いに限定されるのは
            幼虫の食草(ベンケイソウ科の仲間)と深く関係していると考えられる。

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                             2月の八剣山(砥山より)

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                          5月の八剣山(東簾舞より)

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                          6月の八剣山(西簾舞より)

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                           8月の八剣山(砥山橋より)

         定山渓に向かう途中、右手に独特の姿の山が見える。観音岩山(通称・八剣山・498m)。
         堆積岩を貫いた安山岩がむき出しになっている。多様な植物や昆虫が見られるほかに
         山頂からの眺望がよく人気の山だが、山頂付近の足場が悪く滑落事故が絶えない。

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                        八剣山山頂(右が定山渓方面)

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                       八剣山山頂(札幌中心部方面)

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          支笏湖火山群の噴火による火砕流で古豊平川がせき止められ、大きなダム湖の
          ような湖(古藤野湖)があったのではないか・・・・という説がある。だとすると、上の
          地図のブルーの部分(高位河岸段丘)まで水没していたのではないだろうか?

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                簾舞地域の基盤となる堆積岩(新生代第3紀・砂岩頁岩互層)

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                          安山岩の柱状節理(東簾舞)

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                           八剣山の柱状節理

         岩場に張り付くようにエゾキリンソウが生えている。これがジョウザンシジミの食草。

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                             南区観音沢のガレ場

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         7月中旬・八剣山 エゾキリンソウで吸蜜する夏型・・・2化目は毎年見られるわけではない。

エゾキリンソウが生育するのは、上で見てきたような露岩地。よってジョウザンシジミも
その周辺に限られる。海底に噴出した溶岩が固まり隆起して風化した結果の環境・・・・
 そこに氷河期に北回りで進入してきたジョウザンシジミが今も生き延びていることになる。
 こうした環境は人には経済的な価値が少ないため放置される一方、安全面からしばしば
被覆工事が行われて生息地が失われる懸念がある。                    

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                            南区砥山の被覆工事

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                  7月上旬・八剣山 前翅がやや縮れているように見える夏型

          手元に10cm四方の小さな本がある。『ジョウザンシジミ』(HTBまめほん・1992年)。
          ジョウザンシジミに魅せられた著者(小山弘昭氏)が、長年観音沢に通って観察・
          飼育した結果の集大成・・・その生態解明もさることながら、半世紀以上前の札幌
          の自然環境描写が随所に記され、自然の豊かさが失われつつあることに警鐘を
          鳴らしていて興味深い。小さなチョウが消えても問題ない・・・それこそ問題だろう。

          沖縄名護の選挙は「美ら海」を保全する立場から見れば残念な結果だったが・・・・
          長い目で見れば、これから。施設が無用の長物となっている未来の姿が見える。
                    



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                             7月中旬・三角山

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                     7月上旬・中央区宮の森 テリトリを見張る♂

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                     7月中旬・三角山 侵入者とのバトル(卍巴飛翔)

            ジョウザンミドリシジミ  Favonius  taxila 

         ゼフィルス(ミドリシジミ族)と呼ばれるシジミチョウの仲間で、♂の輝きは
         「森の宝石」の例えにふさわしい。市内ではミズナラやカシワがある森や
         山沿いの都市公園でも普通に見られる。ただ、小さいことや活動時間が
         朝方中心であることから、この美しい「隣人」になかなか目がいかない。

         「ジョウザン=定山」は、札幌の奥座敷と呼ばれる定山渓(温泉)に由来
         する。明治から大正にかけ、札幌農学校が日本の昆虫分類学を牽引して
         いた頃、中心にいた松村松年博士らが頻繁に調査に通っていた関係で、
         今も「ジョウザン」の名前がつく昆虫は多い。さらに「定山」とは明治初期に
         アイヌの案内で温泉を発見、開発した僧・美泉定山にちなむ。
            
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                    5月下旬・円山ふもと ミズナラにいた終齢幼虫

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                 細かい鱗粉が作り出す構造色・・・野外での輝きには及ばない。
           
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             ミドリシジミ族には、よく似た種がいて野外での判別はなかなか難しい。
             慣れると♂の輝きが微妙に違うし、裏面の地色や後翅裏の橙色紋の
             違いも判断材料の一つになる。年によって発生数に変動はあるものの
             今は絶滅の心配はないようだが・・・宝石が見られない森はつまらない。
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                             8月上旬・南区砥山

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                           7月下旬・中央区円山

            ジャノメチョウ  Minois dryas bipunctata
     
        蛇の目紋だけが目立つ地味なチョウだが、よく見ると深みのある地色が美しい。
        年1回、市内では7月下旬から姿を現し、8月上旬がピークとなる。どこでも見ら
        れるわけではなく、平地から低山地の水のある環境周辺に多く、山奥にはほと
        んどいない。これは幼虫の食草であるススキやヨシ、スゲなどの分布と関係が
        あるのだろう。人工的に造られた水辺(ビオトープなど)でも発生することがある。

        例えば、採石跡に造られた近郊の五天山公園は、それ以前は記録がなかった
        (と思われる)が・・・今では毎年安定して多数が発生している。人の経済活動で
        一度は破壊された環境が、回復していく過程を示すひとつの例だろう。ほかにも
        ヒメシジミやカバイロシジミ、エゾヒメシロチョウなど市内では減少が目立つチョウ
        たちも「戻って」きているようだ。多少の「罪滅ぼし」になっているのかもしれない。

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                            8月上旬・五天山公園

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                     8月上旬・五天山公園 吸蜜することも多い。

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                     8月中旬・南区簾舞 吸水する姿はあまり見ない。

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                      8月上旬・南区簾舞 何とか鳥から逃れた・・・?

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