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サカハチチョウ Araschnia burejana
上のように発生する時期によって、かなり姿が異なる典型的なチョウのひとつ。
明治時代、日本でも近代的な生物研究が始まっても、「別種か?」との見方も
あったが、飼育観察で疑問が晴れた。なぜ・・・このような季節型が生じるのだ
ろうか? そのメカニズムはかなり解明されてきたが、その目的・・・何のため?
となると、きちんと説明するのは難しいのではないだろうか?ひょっとすると・・・
「念のため」くらいで、たいした意味はないのかもしれない。何らかの意味づけを
したくなるのは知性を持った人の性だが、それで文明を発展させてきた面もある。
各種の花、獣糞、汗に来るほか、地上で吸水するが、樹液に集まるのを見たことがない。
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野蝶百景
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ゴマシジミ Maculinea teleius
道内では広く分布し、決して珍しいチョウではなく、かつて訪れた十勝の愛国や
帯広競馬場、道北の中頓別町では一度に多数を見ることができた。しかし札幌
市内では局地的でなかなか生態写真を撮影するのが難しい。本来の生息環境
である湿地草原が農地化・都市化などで失われたことが大きな原因だろう。
愛国では今は廃線となった鉄道線路沿い(一時ブームとなった幸福駅周辺)で、
中頓別では頓別川の堤防沿いで発生していた。札幌市内では無意根山の高層
湿原、国道沿いの人工法面のナガボノシロワレモコウ(バラ科)で発生している
のを見たが、今はどうだろうか? アリとの関係も分布に影響しているのだろう。
このチョウのユニークな点は、何と言っても幼虫の食性だろう。ワレモコウの
つぼみに産み付けられた卵から孵った幼虫はしばらくは花穂を食べて育つが、
4齢になると地上に下りてアリ(クシケアリの仲間)を待つ。アリが来ると、背面
から分泌物(蜜)を出してアリを手なづけ、そのままアリの巣に運ばれるという。
幼虫の目的は何か? それはアリの幼虫を食べるため!つまりゴマシジミの
幼虫は「半肉食」という特異な食性を身につけたのだ。アリと幼虫のこのような
関係はほかにもあるが・・・なぜなのか?蜜に目がくらみ「天敵」を巣に運んで
しまう・・・人の目には奇異に映るが、「損得」のバランスはどうだろうか?
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コムラサキ Apatura metis substituta
名前の通り紫色の輝きが印象的な蝶だが、輝くのは♂だけで♀は地味。
これは他のチョウや一部の鳥などでも見られる例なのだが・・その意味は
何だろうか? ♂は♀へのアピールで、♀は天敵逃れのため?なるほど
確かにそうなのかもしれないな・・・と、人は一応納得しているのだが・・・
彼らはどう思っているだろうか? 一見人とは真逆に見える雌雄の姿だが、
よく考えてみると、「美しい」は人の概念・価値にすぎないし個人によっても
基準は様々だ。彼らが生きる最大の目的が、いかに子孫を残すのかという
ことなら、いかにペアを組めるかにかかっている。そのための選択されてき
た結果の今の姿なのだろう。そこから先は個別に考えるしかない。
幼虫が食べるのはヤナギ類。その関係から河川沿いで見ることが多い。
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コミスジ Neptis sappho intermedia
翅を開いたときの3本の白線が印象的なタテハチョウの仲間。市内では
5月下旬から姿を現し、ほぼ連続して9月まで見られる。基本は年2回の
発生だろうが、目撃記録を見ると、場合によっては晩夏に3化目が発生
していることも考えられる。市内には同属のミスジチョウ・フタスジチョウ・
オオミスジがいるが、それぞれ幼虫の食性が異なるのは興味深い。
幼虫が食べるのは、エゾヤマハギやクズなどのマメ科植物。ほかにも外来の
ハリエンジュ(ニセアカシア)やフジなども利用していると考えられる。その一方
ミスジチョウはカエデの仲間、フタスジチョウはバラ科のシモツケの仲間、オオ
ミスジはバラ科のウメ・スモモ。マメ科・カエデ科・バラ科・・・同属でのこれらの
食性の違いは何を意味しているのだろうか?
コミスジ属の先祖のチョウが誕生したユーラシア大陸のどこかから各地に分散
する際に、それぞれの地で利用できる植物を選んだ結果としての種分化なのだ
ろうか・・・もしそうなら、種分化は現在も進行中なのかもしれない。オオミスジは
卑弥呼の時代、ウメ(あるいはスモモ)とともに中国から運ばれて分布を広げた
可能性があるし、コミスジは外来植物に進出中。種としての欲望は止まらない。
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コヒョウモン Brenthis ino mashuensis
豹柄が印象的なヒョウモンチョウ類の仲間のひとつ。札幌市内では年1回
6月下旬から現われ、7月上旬が発生のピークとなり、7月中には姿を消す。
同属によく似たヒョウモンチョウ(ナミヒョウモン)がいて、区別が非常に難し
いものの、札幌市内ではナミヒョウモンは生息せず(絶滅?)、このような
チョウを見たら、まずコヒョウモンと思って間違いない。他のヒョウモンチョウ
では民家の庭など平地でも見られることがあるが、コヒョウモンが山地から
下りて来ることがほとんどないのは、食草(オニシモツケ)の関係だろう。
幼虫が食べるのはバラ科のオニシモツケ。山地の河川沿いに多い植物なので
成虫が見られる環境は、このような場所になる。オニシモツケ上の幼虫を見る
たびに不思議に思うのは、どうしてスミレ類を食べないのか?ということだ。
他のヒョウモンチョウ類の多くはタチツボスミレなどのスミレ類を食草とするほか
ツマグロヒョウモンのように植栽されたスミレ類を食べるようになったものもいる。
元々スミレを食べていたものが、競合を避けての食性転換なのか? はたまた
環境変化によるスミレ消失での食性転換か? それとも最初からバラ科だった
のか・・・様々な妄想がよぎる。食べ物が違っても豹柄が同じなのも不思議だ。
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