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クロヒカゲ Lethe diana
かつては独立した科(ジャノメチョウ科)とされていたものが、タテハチョウ科の
ジャノメチョウ亜科に「格下げ」された仲間のひとつ。「黒日陰」とあるが、必ずし
も日陰を好むわけではなく、特に♂は林縁部の空間を占有し、進入するほかの
♂や他のチョウなどを激しく追いかける。これは、幼虫の食草のササ類の生育
場所と一致する。生まれた場所周辺で、産卵しに来る♀を待っているのだろう。
オープンランドの花に来ることがあまりないことも、「日陰蝶」と呼ばれる所以の
ひとつかもしれない。他のタテハチョウ同様、樹液に来るのはしばしば見るが、
獣糞に来たのを見た記憶がない。市内では6月下旬から姿を現し8月下旬まで
見られるが、基本はダラダラ羽化の年1化で、時に9月に2化が発生するようだ。
広く分布し数も多い「普通種」で、派手な模様もない。ゆえに人気のない
クロヒカゲだが、よく見ると特徴的な目玉模様とその縁取りは美しい。
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野蝶百景
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クジャクチョウ Inachis io geisha (Stichel, 1908)
成虫で越冬するタテハチョウの仲間で、市内では平地から山地まで見る機会が
多いチョウのひとつ。上のように雪解けを待って活動を始め、年・場所によっては
6月まで姿が見られる。おそらく越冬後に交尾するのだろうが、その場面を目撃
したことがない。おもな図鑑を見ても、交尾の生態写真がなく(探索不足かもしれ
ないが)、越冬前か越冬後か、また両方か・・・? 謎が残る。
ひょっとすると♂の多くは越冬しない(できない)のではないか? 晩夏に多数の
雌雄が花で群れる場面を見ながら、人目を避けて交尾を済ませているのでは?
そんな「妄想」さえ抱かせる。日本産亜種名は「geisha=芸者」でエルタテハの
亜種名は「samurai=侍」・・・いかにも西洋人好みのネーミングだと思う。
越冬個体は6月中には姿を消し、7月に入るとその子孫が姿を現す。それらも7月中には
役目を終え、約1か月の卵・幼虫・蛹の期間を経て、8月下旬から2化目の越冬する個体
たちが登場する。その活動のピークは9月いっぱいだが条件によっては10月になっても
眠らない(眠れない?)でフラフラしているしていることもあるし、雪が残る3月に飛び出し
たりすることもある。休眠・覚醒のスィッチは何だろうか? 本州では山のチョウで場所も
数も限られているようだが、北海道では水平・垂直に広く分布し数も多い。目を引くその
姿も合わせると、最も「北海道の蝶」にふさわしいのでは・・・と個人的に思っている。
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キベリタテハ Nymphalis antiopa
独特の姿のタテハチョウの仲間で、派手ではない深みのある何とも言えない
色彩は、人の手で表現するのは無理かもしれない。毎年出会いたいチョウの
ひとつだが、市内では山地のチョウで、発生数の変動もあって必ず出会える
場所はなかなかない。シラカンバやダケカンバなどが幼虫の食べ物となる。
他の越冬タテハ同様、雪解け後に活動を始めるが、よく見られるのは5月〜6月の
晩春で他のタテハチョウよりも遅い。7月にはほとんど見られなくなり新しい個体が
現われるのは8月中旬以降。秋が深まる頃まで活動し、時には山を下り住宅街に
現われることもある。越冬後は警戒心が薄れているのか、あまり怖れず人に寄って
くることもあるが、越冬前は敏感でなかなか近寄ることができない。
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キバネセセリ Burara aquilina
太い胴に見栄えのしない翅など・・・その姿からしばしば蛾と間違えられる。
そもそも分類上は蝶と蛾の線引きはなく、科ごとに便宜的に分けて呼んで
いるにすぎないが、それでもセセリチョウ科は蛾に近い仲間かもしれない。
花・獣糞・鳥糞に来るのをよく見るが、樹液に来るのは見たことがない。ほかには
コンクリートや人の汗にも集まる。他のチョウでも見られる行動なのだが、キバネ
セセリはかなり積極的だ。生きるために何かのミネラル分が必要なのだろう。
時に大発生して山沿いの民家などに入ってきて嫌がられることがある。市内では
1991年に大発生したようで、2013年・14年にも大発生した。15年・16年はほとんど
見られず、17年はやや回復傾向にあった。10年あまりの間隔での大発生なのか
どうか、原因は何か・・・? よく分かっていない。長い目での観察が必要だろう。
幼虫の食樹は、今のところハリギリ(センノキ)のみであるが、幹に産み付けられた
卵から孵化した幼虫は繭を作って越冬するという(永盛ほか・2016年)。鳥の餌食に
なりやすい場所だと思うが、鳥が大発生と関係があるのかどうか・・・
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キアゲハ Papilio machaon
市内では最も目にする機会の多いアゲハチョウで、春と夏の年2回姿を現す。
平地から山地まで広く見られ、庭先の花や家庭菜園のニンジンなどに来るの
をよく見るし、山頂などを占有する行動も見られる。吹き上げられて来ることも
ひとつの要因だが、あえて視野が開ける場所に集まり、通過する♀を待つの
だろう。食草となるセリ科植物は沢筋に多く、蛹化場所もその周辺である。
初齢幼虫は典型的な「鳥糞擬態」と考えられる。成長するにつれて緑色部分が
多くなり、葉の色に紛れるようになる。食草はセリ科のオオハナウド・エゾニュウ・
ミツバなどであるが、外来植物のイワミツバ・ノラニンジン、栽培種のニンジンや
パセリなども食べる。1960年代今の東区の大谷学園周辺には田畑が広がって
いて、その用水路沿いのセリで命をつないでいたが、宅地化して姿を消した。
摂食の仕方が違うので大きな争いにはならない。
住宅街で発生する場合は塀や壁などで蛹が見つかることが多い。タテハチョウでは
ぶら下がる「垂蛹」が多いが、キアゲハは壁面に平行に吐糸で3点を支える。周囲の
環境(表面の色・日長・温度など)で緑色の蛹と褐色の蛹が現われるというが・・・・・・
どうだろうか? 住宅地周辺で増えた外来種のイワミツバにいち早く目をつけたのが
キアゲハだった。この柔軟性・適応力があれば、キアゲハの未来は明るいだろう。
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