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吸血鬼 佐藤亜紀
19世紀半ばのオーストリア支配下、ポーランドのとある寒村が舞台。
表題は「吸血鬼」ですが本著にドラキュラが出てくることはありません。
登場するのはかつての詩壇の寵児で今では見る影も失くした田舎領主。
実務に長けたその妻。
その地を管理すべく赴任した役人夫婦。
農奴も同然の領民たち。
あれですね。士族でかつての輝きを失くしたとは言え文芸家ともなると地に足なんか着いてるわけはありません。現実を見る目など端っからなく、絵空事の詩をしたためながら成り行きで革命なんかも起こす気になったりする困ったさん。
方や、口に糊するがせいぜいで、迷信なんか信じてるくせに生きるためには妙に現実的な領民。
それに絡むは、職務に誠実で何とか赴任先での生産性の向上を図りたい真面目な官吏さん。
あまりにも貧しい土地では信仰より迷信が蔓延するとしていて、迷信からくる死者に対する蛮行が横行しています。そのおぞましさといったらありません。
さて、それぞれの思惑は外れに外れて、終わってみればすべて計算尽くで動いていたある人物のひとり勝ちと相成り・・・。
暗く陰鬱な内容ではありますが、セリフの多用による臨場感、現在形の短い文章がもたらすリズム感で戯曲のような読み心地を得られて面白かったです。
ミノタウロス 佐藤亜紀
帝政ロシア崩壊後のウクライナで地主の息子がドイツの脱走兵とともに辿る破滅への道。
ロシア革命の下、労働者、農民から成る赤軍と、反革命派の白軍が泥沼の闘争を続けるなかをどちら側にもつかず、暴力、殺戮、略奪、放火、凌辱、裏切りと何でもありとばかりに跋扈する。
いいひとなんかひとりも出てきません。
映画だったら観ていません。
でもこれは佐藤亜紀の筆による超一級のピカレスクロマン。
滅法おもしろく、一気に読みました。
読後には爽快感とも言える妙な突き抜け感を持ちました。
モンティニーの狼男爵 佐藤亜紀
人嫌いで狼狩りが得意な田舎貴族が主人公です。
(これまで読んだ佐藤亜紀には田舎貴族や名家の傍系がよく出てきました)
この男爵が妻を愛し過ぎて狼に変身することができるようになったというだけの話ですが、これがやはり佐藤亜紀ですから読ませます。 著者の名前がなければ翻訳ものと勘違いするほど佐藤亜紀は海外の小説っぽいです。
それでいて外国の読み物にありがちな饒舌さやくどさがなく、すうっと読み始められる心地よさもあります。
長編にままある中だるみもなし。どれも一気に読めて疲労感もありません。
何よりこのひとの文章、好きだなぁ。
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佐藤亜紀と言う方は初耳です。と言うか、現代の小説は村上春樹と村上龍しか読んだことがない^^;
有給休暇は、部屋に籠って、小説でも読もうかと考えているので、良いのがありましたら、ぜひ教えてくださいませ。
2019/8/1(木) 午後 11:12
北欧系は・・・・ボケるネタがありませんなぁ。
てか、ぐりさんの読書メモは大喜利のお題目では有りませんね
サーセン
2019/8/1(木) 午後 11:16
> 猫さん
無給休暇の日々を読書三昧で暮らしております。
暑いしわたしも家にこもるしかありません><
哲学書がお好みの猫さんにお勧めできる小説って・・・^^;
2019/8/2(金) 午後 7:57
> ωさん
北欧、東欧あたりがお好みの作家さんのようです。
今読んでいるのが同じ著者の『醜聞の作法』。
これも大喜利っぽい♪
2019/8/2(金) 午後 8:01
奇遇ですね、いまミノタウロス読んでる途中なんですよ^^
2019/8/19(月) 午前 6:26 [ 金の木馬 ]
> 金の木馬さん
おや、そうでしたか^^
きれいごとなしのピカレスクものも面白いですよね!
2019/8/19(月) 午前 10:25