|
あらすじ
戦国時代の甲斐の国、ひどく臆病な男がいた。その恐怖心は時と共に増大し、この世のすべてに向けられる。 第一章 勇猛な父上と臆病な息子 時は戦国時代、武田信玄様がご存命の甲斐の国にとても臆病な男がいた。武田の騎馬武者はそれはお強く天下にもその名を知られていた。 この男生まれは武士の家、しかも父上は武田の騎馬隊の一隊を任せられるほどの勇猛で知られた人物であったのに子である男はなぜか臆病に育ってしまったのである。 父上は息子である男に自分と同様に武田の騎馬隊に入隊して信玄様のお役に立たせたいと考え、男の臆病な性格を変えようと名のある道場で剣術を習わせたり、自分で馬術を教えたりと様々な手段を講じたが稽古中に木刀で頭を叩かれたり、馬から転げ落ちたりしたために男はますます臆病な性格になってしまった。父上は息子を臆病にしてしまったのは自分の責任だと悔やみ、そのまま亡くなってしまった。 第二章 麓と男 残された男は父上がいなくなったことによりますます臆病になり、食べ物を口にする時には毒が入っていないかと飼い猫に毒味をさせたり、外を歩くと何者かに襲われるのではないかと考え、鎧姿に鉄砲を持つという有様であった。 甲斐の国人たちは男の異様な姿に驚き、男を恐れるようになっていったので、男は自分の命が狙われるのではないかと考え、ますます臆病になっていった。 こうして男の臆病さはさらに深刻になり毒味役の飼い猫と一緒に生活していたら、かみつかれたり、爪でひっかかれたりするのではないかと考えたり、鉄砲を持っていたら、暴発して自分が死んでしまうのではないかと考えるまでになっていった。 男は毒味役の飼い猫と鉄砲を遠くの山に捨てたが、身を守るための武器と毒味役がいなくなったことにより、ますます臆病になり、自分の家が倒れて下敷きになって死んでしまう可能性があると考えるまでになった。恐怖にとりつかれた男は自分の家にいることが怖くなり、近くの山に逃げ込んだ。 第三章 山と男 山に洞穴を見つけ、そこに籠り、ガタガタ体を震わせた。 男は不図あることに気がついた。「家が倒れて下敷きになるなら、この洞穴が崩れて自分は死ぬかもしれん」 男は大急ぎで洞穴を抜け出し、山の中を目的もなく走った。どのくらい走ったのか、男は疲れて土の上に仰向けに倒れこんだ。 すると、目に飛び込んできたのは空高くそびえる山の木々であった。男はその木々が自分目掛けて一斉に倒れてくる可能性を恐れ、再び目的もなく山の中をひたすら走った。 喉はカラカラになり、腹も減ってきたが、男は恐怖に駆られひたすら走った。目は血走り、汗と泥まみれでそこだけ地獄の様相を呈していた。男はとうとう力尽き動けなくなった。 そこはまだ山の中だが男の知らない山だった。帰り道のわからなくなった男は恐怖に駆られたが、そこには大量のキノコが生えていたので安心した。「これだけのキノコがあれば、10日は生き延びられるべ」と言って男はキノコを早速食べようとその中の一つを手に取った。 その頃、男の家の周りでは近くの山に男が入って行ったという目撃情報を最後に行方がわからなくなってしまったので、山狩りをしようと人々が集まっていた。熊が出るかもしれないので猟師を先頭に山狩りが行われ、10日経った頃に男を発見した。男は骨と皮になり餓死していた。その周りには大量のキノコが手付かずのまま残されていた。そして、男の遺体にはキノコが一つ握られていた。山狩りをした人々は口々にこう言ったという。「なぜ、食用のキノコが目の前にあるのに餓死したんだべか」 |
ソウルのMy小説
[ リスト | 詳細 ]
著者の著したMy小説を掲載致します。
全1ページ
[1]
全1ページ
[1]



