シチリア脱出計画

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マリーリアの憂鬱

 復活祭の休暇とそれに続く胃腸炎による病欠から復帰した月曜日のことだ。雇い主のマリーリアが大雷を落としてきた。
 
 この休暇中に家の中をよくチェックしたところ、あちこち汚れていることに気づき、自分が掃除しなければならなかったと言う。前の家政婦(イタリア人シニョーラ)はきちんとやっていたのに、どうしてできないのか、もっと効率よく働くようにと。
 
 私の不在は約10日間であり、この間に掃除をしていなければ汚れが溜まるのは当然だろう。マリーリアは、多忙を理由に基本的には料理以外の家事をしない。私が休みの日もそうで、たまに、物の入れ替えをするくらいだ。毎日掃除をしなければ汚れが目立つのは当然で、彼女にはこの視点が欠けているのではないだろうか。
 
 しかも、広い家を塵ひとつない状態に磨き上げなければならないとなると、大掃除的な作業(箪笥の上や壁、物置の大掃除など)は1ヶ月に1回くらいしかできない。これらの場所をもっと頻繁にやるとなると、目立つ場所の掃除が毎日できない。マリーリアはきまぐれなところがあり、毎日やらなくてよいと言いつつ、埃を見つけては掃除していないと言う人なのだ。
 
 彼女が雷を落とすのは、決まって1週間以上の休暇が明けたときだ。だから、休暇はうれしいが、休暇明けのことを考えるといつも気が重い。
 
 この日のマリーリアは、目立って機嫌が悪く、あれこれと注文をつけてきた。
 
 まず、“普段の掃除”はベッドメイキングと整理整頓、床の掃き掃除くらいでよい代わり、家中の部屋を順番に大掃除することだ。1週間で全部の部屋がきれいになるという計算だが、これはこれまでの4倍のスピードで作業をしなければならないことになる。
 
 埃払いは毎日しなくともよいと彼女は言うが、1週間に1度の頻度ではかなりたまることは明らかで、気まぐれな彼女からいずれ指摘されるだろう。2日に1回はやらなければならない。。。以前にも増して体育会系度が上がり、時間との戦いも激しくなることは確実だ。
 
 そして、もうひとつの注文が、ユウキのことだ。彼が朝起きたがらないために早く家を出ることができないことも、掃除が中途半端な原因と考えたのだ。
 
 他の子供たちに比べると睡眠時間が長い(母親の私も、睡眠時間はきちんととらないとダメな体質だ。)彼にとって、朝6時半に起きるのはきついようだ。身体を揺さぶったり、顔をなでてもなかなか目を覚まさない。目を覚ましても、布団の中にもぐりこんで行き、着替えようとしない。こうして時間が過ぎて行き、最後に私の怒鳴り声に大泣きして言うことを聞くというのがいつものパターンだ。
 
 マリーリアの提案は、ユウキに体罰を与えることだ。小さな子供というものは、痛みを伴わないと理解しないというのが彼女の持論で、実際、彼女自身も子供たちに体罰を与えている。長女(11歳)の方は聞き訳が良いほうなので、体罰の警告くらいだが、7歳の長男はよくビンタをもらっている。
 
 私は、いわゆる“おしりペンペン”ならやるが、ビンタは与えない。弾みで怪我をすることがあり危険だからだ。また、身の回りの出来事を話すようになったユウキのこと、ビンタをもらったなどとL家親族に話すようなことがあれば、子供が喉から手が出るくらい欲しがっている彼らは、好機とばかりに勇んで、母親が子供を折檻していると裁判所に訴えるだろう。マリーリアには悪いが、“おしりペンペン”以外はやる気がない。
 
 ともかく、最近の彼女は非常にピリピリとしていて、リラックスするようにと長女に言われたくらいだ。なぜこんなにイライラしているのかというと、彼女を取り巻く環境が悪化して行っているからだろう。
 
 未曾有の経済危機に瀕しているイタリアは、人々の購買意欲が落ち、さらにモンティ内閣の大増税政策や医療費改革(例の、“チケット問題”)が追い討ちをかけ、薬局の売り上げはかなり落ち込んでいるようだ。いわゆる“経済弱者”が薬を買わなくなったことと、法律が変わって、客には一番安い薬を提示するよう義務付けられたことも要因のひとつだ。
 
 その上、中心街にある彼らの薬局は、昼休みなしの通し営業や土日祝日営業(これは、近日中に実施)が義務付けられ、雇っている薬剤師への報酬アップを迫られている。薬局というところは、場所柄、必ず一人は薬剤師が常駐していないといけない決まりがあるのだ。結局、薬剤師を一人解雇し、マリーリアの夫が昼休み中と土日に独りで“店番”することになったようだ。
 
 イタリアで最も稼ぎが良いと言われている薬局持ち薬剤師(彼女の夫の家は、パレルモで代々薬局を経営している。)と結婚し、子供たちをパレルモ有数の私立学校に通わせ(授業料が家計を圧迫しているのは想像に難くない。)、順風万帆な人生を送っていた彼女にとって、今回の経済危機と法律の改正は、人生最大の大きな危機に違いない。なにしろ、薬局がつぶれるかもしれないのだ。
 
 だから、ピリピリしているのだ。その気持ちが、つい八つ当たりという形で外に出てもおかしくはない。
 
 フィレンツェの某パスティッチェリーアで研修をしていたとき、そこの経営者は高齢に近い年齢の女性だったが、すぐに激高し、手近にあるものを投げ飛ばしていた。この話をミレッラ母にしたところ、女性の上司というのは最悪のパターンだと彼女はコメントした。一般的に、男性上司が大筋あっていればオーケーという態度なのに対し、女性上司は緻密な仕事を部下に求め、また私情が仕事に出やすいのだという。なるほど、自分や自分の周りの話を総合すると、これに当てはまることが多い。
 
 マリーリアも“女性上司”であるので、このパターンなのか、と思う。いずれにしても、闇労働なので、彼女の機嫌を損ねると首になるのは明らかだ。この不景気の中、仕事などまず見つからない。子供を食べさせて行くためには、何が何でもこの仕事にかじりつかなくては。
 
 通貨がリラからユーロに変わったとき、給料は据え置きにも拘らず物価は2倍に跳ね上がり、イタリア人は経済的にも精神的にも“余裕”を失ったという話をきいたことがある。今回の経済危機で、その状態はさらに悪化しているに違いない。大方のイタリア人が、明日はどうなるか分からないという不安を抱え、気の重い生活をしていることだろう。特に、マリーリア一家のように、これまで特権階級的に恵まれた生活を送ってきた人々にとって、この状況はことさら重くのしかかるに違いない。
 
 というわけで、雇い主マリーリアの機嫌を崩さないよう、子供を“おしりペンペン”で起こし、トライアスロンとアクロバットを一緒にしたような仕事に精を出す毎日だ。さぁ、今日も頑張ろう。

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ジャコミーナさん、お疲れさまです。せっかくの休暇明けがそれでは、何だかいつも気が重いですね。イタリア人の中には、時々こういう自分の中のイライラや葛藤を、自分で消化できずに、人にぶつけてしまう人がいて(実は、うちの夫にも時々ですがその傾向があります。)、そういう人としばしば顔を合わせなければならない上、雇い主だと言うのは大変だと思います。非合法での雇用は、こういうときに、法や経済的支援がないのもつらいですよね。

掃除も、自分では掃除をしないのに、埃には気がつく人というのが一番やっかいですよね。「毎日一部屋ずつ順に掃除していけば、埃はたまらず、家中がきれいなはずだ。」と、うちの夫も言うのですが、土足で屋内に入るので、特に廊下や台所、洗濯物を干す部屋などは、州に何度も掃除する必要が出てきます。10日間掃除をしなければ、埃がたまるのは当然ですよ。苦労されている分、きっとどこかで、いいことがジャコミーナさんたちを待ち受けていますように。

2012/4/27(金) 午後 5:58 [ なおこ ]

なおこさんへ

なおこさんのだんなさんも、マリーリアと同じことを言うんですね。ということは、彼のお母さんもそうでしょうし、これはイタリア人の一般的な考えなのでしょうかね?
掃除以外にも昼食の準備やアイロンがけもあるので、分刻みで作業を進める必要があります。電話がかかってきたら、以前は出る余裕がありましたが、いまはありません。小児科医の予約なども電話でする必要があるので、困りましたね。。。
石の上にも3年といいますから、いまはこの状況を受け入れて、改善の機会を待ちたいと思います。

2012/4/28(土) 午後 1:18 ジャコミーナ

q...さんへ

今回は、鍵コメでないので、念のため、コメントを承認せずにお返事しますね。

前回のコメントをいただいた後、どうなったかと心配していました。やはり、あちらのお祖母さん、油断できませんね。ともかく、今回は、うまくかわせたようでよかったです。法律の専門家に相談はされましたか?大げさに思えるかもしれませんが、備えあれば憂いなしです。GOOD LUCK!!

2012/4/28(土) 午後 1:28 ジャコミーナ

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お仕事って大変ですよね。雇用主の要望を聞かないといけない割には、フルタイムで働いていても(?)正社員にされない、とかお給料は破格とか、仕方無いのかもしれませんが、不公平ですよね。薬局ですが、病院と同じで、街に必要な物だと思うので他の店との競争に敗けるとかでない限り(一つの街に何軒とか、通りに何軒とか決まってませんか?)、売上は減るかもしれませんが、潰れないと思うんですけど。ジャコミーナさんも大変でしょうが、しっかり眠ってお仕事頑張ってください。あと、私の息子も朝弱いんで、お気持ち分かります。我が家はとりあえずDVDで気を引いて起こし、無理矢理着替えさせて、ご飯を食べさせてます。もっと早く寝てくれたらいいんですけど、なかなか。

2012/4/30(月) 午前 8:41 [ suika ]

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イタリア人って、公共の場はきれいにしないのに、自分の家の中は異常にきれいにすることにこだわるんですよね。自分でしないで、人を雇って、「私は家の中がきれいじゃないと気が済まないのよ。」と誇らしげに自分の家を見せてくるのに違和感を感じます。
私は自分の家の掃除やアイロンでさえ完璧にできていないから、ジャコミーナさんが仕事としてこなしていること、すごいと思います・・・。自分のイライラを他人にぶつけるイタリア人は多いですよね、学校の先生とか公共窓口の人とか。それに人の子供のしつけにそこまで口を出さなくても、しかも体罰って・・・。でもイタリア人なので想像がつきます。
理不尽なことの多いイタリア・・・、お互いに頑張りましょう・・・。

2012/4/30(月) 午後 7:41 [ よもぎ ]

suikaさんへ

薬局の数は、街の規模によって決められています。しかし、何もマリーリアの夫の家が経営しなければいけないというわけではありません。赤字が続き、営業すればするだけ赤字が膨らむならば、営業権を他の薬剤師(薬局を持ちたい薬剤師はいるでしょう)に売却せざるを得なくなるでしょう。昨夏に実施した全面改装の借金返済が痛いですね。いくらきれいにしても、このダブルパンチでは。。。それに、あの辺りは大小の薬局がいくつもありますから、競争は激しそうですね。マリーリアの夫は、無口で無愛想な人ですし。。。

マリーリアは、引退した両親が経営していた不動産会社の名義を保持しています。従業員は解雇し、事務所も売却しましたが、所在地住所を自宅に変更し、登記上は生きている法人です。もしも薬局になにかあったら、不動産会社を再開する考えなのかもしれません。子供たちが成人したときに仕事探しで苦労させないようにしなければいけませんから。

2012/5/1(火) 午後 2:32 ジャコミーナ

よもぎさんへ

恥ずかしながら、他所の家で掃除の仕事をしている分、自宅は後回しです〜。週に1回、土日にやるくらいなので、あちこち埃だらけですよ。紺屋の白袴ですね(苦笑)。

一般的に、イタリア人は自己の感情をコントロールするのが苦手なのかもしれません。訓練を受けていないといった印象です。イタリアは儒教圏ではないので、普通なのかもしれませんが。文化の違い、と割り切ってかわすしかありませんね。。。

2012/5/1(火) 午後 2:39 ジャコミーナ


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