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欧州危機の本質とは何か――ギリシャでもなく、イタリアでもない

東洋経済オンライン 2011年11月18日(金)11時7分配信

 欧州危機の本質は、ギリシャでもイタリアでもない。そして、損失拡大からの資本毀損による銀行の資本不足の危機でもない。ユーロという共通通貨の問題でもない。本質は銀行の存在そのものの危機であり、金融そのものの危機なのだ。

 ギリシャはEU、欧州経済にとっては、小さな存在である。規模からいってもそうだし、経済的に傑出した産業は、観光と海運ぐらいで、あまりない(国としての重要性とは別の議論であり、重要な国ではない、という意味ではない)。

 さらに、これまで、ギリシャ危機はさんざん言われてきたし、破綻するのは予想どおりだから、いまさら騒ぐことではない。ギリシャ以外のほとんどのまっとうな銀行はそれなりの手当てはしていたはずだ。

 それなのに、今、ギリシャの国内政治の動きに右往左往するのはおかしい。それがイタリア国債に波及するのもおかしい。イタリアはもともと政府の効率性、信頼性が低く、政治の多数の政党が乱立し不安定だった。したがって、財政赤字が膨らみやすく、実際にもそうだったから、何も新しいことがベルルスコーニによって起こされたわけではない。

 では、なぜ、ギリシャのデフォルトがイタリアに波及し、欧州全体の危機になるのか。改めて整理してみよう。

 10月末にEU首脳が集まって、金融危機への対応策をまとめた。包括戦略と呼ばれるこの対策は3つの柱からなる。

 第1が、ギリシャ財政破綻への対応で、ギリシャ国債を保有する民間投資家の負担を当初の21%から50%へと大幅に増加させ、ギリシャが今後財政を再建することが可能な水準まで債務水準を下げ、デフォルトを回避する。

 第2は、欧州金融安定基金(EFSF)の実質的な規模を1兆ユーロ(約106兆円)規模へと拡大し、「今後、財政危機がスペイン、イタリアに波及すると欧州金融市場は崩壊する」という懸念の拡大を防止することを目指す。

 第3は、欧州の各銀行の資本増強をめざし、自己資本率の基準を9%に引き上げる。

 これらの対策は、事前に議論されていたとおりのもので、3つのポイントを押さえ、規模もそれなりのものとなったので、一応評価され、一時的には(2日間)、欧州でも米国でも株価は大幅上昇となり、大幅下落していたユーロは反発した。

 その一方、「これでは不十分、もっと抜本的な解決策が求められる」という意見もあった。いちばん大きな理由は、「EFSFは100兆円では足りないし、しかも、今回の規模の増大は外部から資金を借り入れることによるもので、レバレッジをかけるだけのことであり、本質的な規模増大になっていない」というものだ。

 しかし、この両者の見方はどちらも間違っている。なぜなら、現在の欧州危機は解決できない危機であり、したがって、抜本的な解決策は存在しないからである。現在、一時的に安心感が広がり、暴落からの反動で、株価もユーロも多少戻しているが、今後、繰り返し、不安と安心の間で揺れ動き、そのたびに株価や為替が乱高下することになるだろう。

 なぜ解決できないか。まず、第1に今回の欧州危機は、財政危機ではなく、銀行危機であり、ギリシャは関係ないということである。それなのに、ギリシャ問題で銀行危機が起きてしまっている。ギリシャは、不良債権先の一つにすぎない。

 一般的に、多くの企業に融資していれば、1つぐらい悪い企業があって、それが倒産してしまうことはある。問題は、それだけで、銀行が危機になってしまうことだ。

 銀行が危機だからということで、今回の対策の目玉となっているのが、銀行の資本増強である。しかし、実は資本増強だけでは足りない。日本の90年代の銀行危機を思い出してもらいたい。日本経済が回復したのは、資本注入によるものでも、その後の不良債権処理によるものでもない。2002年のりそなショック、つまり、りそなが公的資金を受け入れたことをきっかけに日本経済が浮上したと思われているが、それも違う。

 実際には、アジア経済が急成長し、バブルぎみではあったが、多くの需要を日本経済にもたらしたからであった。企業は輸出を伸ばし、アジアへ進出した。アジアにとどまらず、東欧をはじめ世界中の新興国が大きく成長し、そが日本経済の回復につながった。

 日本の銀行はこの流れに乗り、強くなった日本のグローバル製造業の海外進出に伴って、海外へ進出し、1980年以降失われていた、成長企業への融資モデルを再度確立した。つまり、日本の銀行危機が解決したのは、資本注入によるものでもなく、不良債権処理によるものでもなく、バブルに踊らされ、まともなビジネスモデルを失ってしまった金融機関が新しい健全なビジネスモデルを確立したためなのである。

 欧州の銀行は、かつては日本の商業銀行のモデルだったし、ごく最近まで日本は遅れていると思われていた。ところが、いつの間にか、彼らは単なる証券投資家に成り下がってしまっていた。企業の目利きも、融資による成長支援もできないし、やる気もなくなっていたのである。

 日本を見習って、欧州の銀行が原点回帰することが、欧州銀行危機を解決する抜本的な対策であり、これは政策対応ではなく、個別の銀行の努力にかかっている。

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