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先日の記事で読書感想文について書きましたので、私が読んだ名作について読書感想文を書いてみようと思います。ただ単に最近の現代小説で、私が読みたいと思う本が見つからなかったため、読む本が無くなり、苦肉の策で名作を読むことにしただけなのですが。一番初めに取り上げるのは、夏目漱石の「三四郎」についてです。

私は、学生時代にほとんど夏目漱石を読んだことがありませんでした。理由は、あまり親しみがなかったからです。大抵この辺の大物作家の作品は、学生時代の教科書に一度くらいは載っていたことが多いと思いますが、私が通っていた学校では小・中・高とことごとく載っていなかったのです。なので、夏目漱石の長編小説を読むのは、これが初めてでした。

「三四郎」のストーリーは、次のとおりです。
東京帝国大学に入学するために九州から上京してきた小川三四郎は、初めての都会を目にして驚き、惹きこまれていきます。東京で出会った与次郎を初め、偉大なる暗闇こと広田先生、世界では有名であるが日本では埋もれた存在の野々宮君、三四郎が恋する自由に行動する美禰子らと交流すること、明治という価値観の変動などを通じた怒涛の時代であることなどにより、戸惑いと感動、新しい世界を感じていくという、話です。

文庫本サイズにして284ページ。量としては、たいしたことが無いでしょう。ですが、私はこの本を読み終わるのに、3週間近くかかりました。理由は、なかなか読み進まなかったからです。面白くなかったわけではありません。それどころか、とても面白いと思って読み進めました。それにもかかわらず読み進まなかったのは、私自身も不思議なところです。

「三四郎」はありていに言ってしまうと、青春小説となってしまうことでしょう。新しい世界に身をおいた三四郎の日常を、恋を描いていますから。しかし、青春小説として終わらすには、あまりにも哲学的な内容になっています。その哲学の部分を引き受けているのが、先に挙げた偉大なる暗闇である広田先生です。

広田先生とは、高等学校で英語の教師で、与次郎の師匠的存在でした。与次郎は、広田先生が高等学校の教師で終わる人ではないと思い、広田先生を帝国大学の講師にしようといろいろと画策するのです。そのくらいの知識、物事の考え方、冷静さを広田先生は持ち合わせてはいました。作品の中でもところどころで、広田先生は自説を繰り出し、物事を哲学的に披露しています。それこそ、道端で出会った物乞いにお金をあげない理由から、女性論、現代の若者についてなどなど。この小説は1908年(明治41年)に書かれましたが、その考えは現代にも通ずるところもあり、人間の普遍性を感じさせられます。

解説において柄谷行人は広田先生について、
「われわれが受けとるのは、広田先生の文明批評や人生認識よりも、あるいは"筋"よりも、『一種の感じ』のはずである。もしそれを"俳味"とよんでよいとするれば、「三四郎」の"俳味"は、登場人物たちが本来かかえているかもしれない鬱屈や苦悩を距離を置いて自然の景物のように眺める『非人情』(『草枕』)の文体によっている。
と評しています。これは、なかなか的を射た解説だと思いました。広田先生で大事なのは、何をどう考えたか、ということではないのです。それよりも彼はどういうスタンスにいるのか、ということでしょう。解説のとおり、彼は物事や感情から距離を置いて客観的に思考しています。

夏目漱石は、後期の作品において「則天去私」をテーマとしました。「則天去私」とは、夏目漱石自身が次のように説明しています。
「『天に則り私を去る』と訓む。天は自然である、自然に従うて、私、即ち小主観小技巧を去れといふ意で、文章はあくまで自然なれ、天真流露なれ、といふ意である」
ここでは文章の書き方に対して説明していますが、夏目漱石にとっては生き方の問題として捉えていたと思います。自我を捨て、天(自然)に身を任せるという一種諦観にも似た心象ではあるが、自然との調和を考えれば一番なのだろう、と思ったのでしょう。私はまだ読んではいませんが、夏目漱石の晩年の作品である「明暗」において、この境地にたどり着いたそうです。

広田先生は、準主役的存在でこの作品の色を決定しているでしょう。私は「三四郎」を読んでいて、彼の存在がいやおう無く気になりました。それは、この「則天去私」の雰囲気に慣れ親しんではいないからなのだと思います。

(次回に続きます)

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『三四郎』の登場人物の中では、広田先生は非常に重要な存在ですよね。さまざまな物事に対する広田先生のすぐれた洞察力こそが、『三四郎』を単なる青春小説としてだけではなく、すぐれた哲学小説にもしていますね。

2005/8/29(月) 午前 11:54 マーキュリー

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>マーキュリーさん、コメント、ありがとうございます。読んでいる最中、広田先生の言動をいつも気になっていました。彼の独特の考え方は、とても深いものがありますね。続きは明日更新しますので、またご覧ください。トラックバックを返してくださり、ありがとうございます。

2005/8/29(月) 午後 3:21 [ gog*_ni**y_g ]

すいません、『三四郎』は読んでません。。。でも漱石なら『夢十夜』が好きです。何か不思議な感じの話なんですよ。

2005/8/30(火) 午前 1:46 [ - ]

ほぉ〜いつもながら、奥深く思われ勉強されているのですね〜次回も楽しみにしています。

2005/8/30(火) 午前 8:24 mam*ob2**5

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ページが進む本と進まない本がありますよね〜。何故なんでしょう?読書の秋・・・古本屋さんにでも行ってみようかな(^^)

2005/8/30(火) 午前 11:37 [ yumeneko ]

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>ウリウリさん、コメント、ありがとうございます。私も「夢十夜」は読みました。「三四郎」を読む前は、これが唯一の夏目漱石の小説で読んだものです。面白くはありますけど、「夢十夜」は難しいというか感性に訴えかける内容ですよね。

2005/8/30(火) 午後 1:47 [ gog*_ni**y_g ]

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>ウリウリさん、コメント、ありがとうございます。私も「夢十夜」は読みました。「三四郎」を読む前は、これが唯一の夏目漱石の小説で読んだものです。面白くはありますけど、「夢十夜」は難しいというか感性に訴えかける内容ですよね。

2005/8/30(火) 午後 1:48 [ gog*_ni**y_g ]

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>あき。さん、コメント、ありがとうございます。あき。さんは、「三四郎」をお読みになられたことはあるのでしょうか?もしなければ、お勧めしますよ。

2005/8/30(火) 午後 1:50 [ gog*_ni**y_g ]

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>あき。さん、コメント、ありがとうございます。あき。さんは、「三四郎」をお読みになられたことはあるのでしょうか?もしなければ、お勧めしますよ。

2005/8/30(火) 午後 1:50 [ gog*_ni**y_g ]

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>yume_neko3さん、コメント、ありがとうございます。読書の秋というには、まだ暑いですね。私も、古本屋まわりは好きですよ。

2005/8/30(火) 午後 1:51 [ gog*_ni**y_g ]

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まずい・・・まったく読んだことがございません。しかも柔道にかんするものだと思っていました。。。柔道だと。。

2005/9/5(月) 午後 11:44 ppo*ing**7

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