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ナマリ鉄ころりのppoking337さんの紹介で、映画「メメント」を見ました。まだ大好きなスターウォーズエピソード3を見に行けず、またPCが故障してしまったため、いい機会なので時間を埋めるために紹介されたこの映画を見ようと思ったのです。 ストーリーは、妻を犯され殺されたレナードは、脳に傷を負いその出来事以降記憶を10分間しか保つことができなくなりました。そんな彼は、妻を殺した犯人を捜し復讐をするという話です。 この作品は、かなり特徴のある作り方をしていました。主人公のレナードが10分間しか記憶を保てないということから、レナードの行動を10分間ずつのチャプターにしています。そのチャプターの始めには、復讐を始める初期のシーンをモノクロで少しだけ挟み、あとからカラーの本編が続きます。これだけならまだありうることですが、面白いのはチャプターの進み方が時間的に逆なのです。簡単に言えば、結末が最初にあり、起点が最後になるのです。それでいながら、モノクロのシーンのチャプター間のつながりは時間的に順行しています。 このため、見ている側はかなり複雑に感じてしまうのではないでしょうか。ストーリーの流れが、順行と逆行の両面から迫ることになります。結末を最初に持ってきているということは、大事なのは問題のきっかけとなり、それを最後にもって来ました。そこに重要な真実が隠されています。 私はこの映画をビデオで借りて見た際、1回では分かりませんでした。なぜなら私の思考がいつの間にか主人公のレナードと同化してしまったからです。レナードは記憶を10分間しか保持することができず、ストーリーがレナードの記憶によるものなので、見ている側も彼と同じ記憶のストーリーを見ていることになります。各チャプター間で、レナードの記憶は一度リセットされているのです。レナードの記憶がリセットされるように、私の見方もまたリセットされ、そのチャプターが進行される中で再構築されていく、この繰り返しとなります。 リセットし再構築されるストーリー、時間の順行と逆行、虚偽と真実、この狭間で私は揺れ動いていました。これらの二律背反した概念の対立によって、最後のチャプターの話を信用することができず、どこに本当のことがあるのか、分からなかったです。 この謎を解くために必要なものは、DVD版の「メメント」です。DVD版では、チャプターの本編を順行につなぎ合わせたリバースモードがついています。これにより、時間的にストレートに見ることができ、話を理解しやすくします。ただ、このリバースモードは必ず、一回作品を見た後に行った方がいいでしょう。 なぜなら、この作品のメインは「何故この出来事が起こったのか」というところにあるからです。それほど最後のレナードの行動の動機を知ったときの衝撃は、大きかったのです。 ところで、この題名の「メメント」とは、記念品、形見、記憶、という意味があります。レナードの記憶障害は、詳しく説明しますと、前向性健忘といわれるものです。前向性健忘とは、記憶に障害を負った時から先の出来事を記憶することができない障害です。記憶に障害を持つ以前の出来事の記憶は健在ですが、それ以後のことを記憶できません。ちなみに記憶に障害を負った時から過去の記憶を想起できない、いわゆる記憶喪失といわれる場合を逆向性健忘といいます。 記憶の障害は、それが前向性健忘であれ、逆向性健忘であれ、その人の行動に支障をきたします。この映画の場合では、これから先何をすればいいのかを記憶できないわけなので、重要な事柄に対してはメモを取ります。そして自分と関係ある人物や建物に関しては、ポラロイドで写真を撮り、そこに自分との関係をメモするのです。最重要事項に関しては、体に入れ墨でメモをするなど、それは徹底されています。 行動の支障以外に、記憶障害はその人のアイデンティティにも問題を生じさせます。アイデンティティとは、自己同一性と訳され、「自分は何者か」、「自分の目指す道は何か」、自分の人生の目的は何か」、「自分の存在意義は何か」など、自己を社会の中に位置づける問いかけに対して、肯定的かつ確信的に回答できることがアイデンティティの確立を示す重要な要素なのです。 記憶の障害は、前向性健忘の場合、将来への自分に対して確固とした自信を喪失させます。過去の自分の記憶は損傷を受けていないため、以前の自分に対して問題はありませんが、現在の記憶に不連続が生じてしまうことから、アイデンティティを確立することができません。アイデンティティは、過去の自分に対してだけではなく、現在の、そしてこれからの自分を要素としている全体的なものだと、言えるでしょう。この映画の場合では、レナードは現在と、そしてこれからの自分に対してあやふやな状態で、生活していることになります。このあやふやさは、自己の存在のあやふやさに直結するのです。 「メメント」は、先に述べたように時間をリバースして流すという斬新な作り方で、緊張感を醸し出しています。この緊張感は、見ている人の存在を脅かす緊張を生み出しているでしょう。新しい形で映画を作り、映画の可能性を増やしたことに、「メメント」は貢献したといえると思います。
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時間と出来事が順を追っていない〜? というのは、何がなんだかわからない!!と、いう風になりがちですが・・・見応えはありそうな映画ですね〜。ただ、暴力的?なものは苦手なのですが・・・どうでしょう?
2005/8/10(水) 午後 1:44
>あき。さん、コメント、ありがとうございます。暴力的なシーンは少ないですから、安心してください。何がなんだか分からない、とさせるのがこの映画の意図のような気もします。ご覧になられてからこのレビューを参考にされたらいかがでしょう?
2005/8/10(水) 午後 8:00 [ gog*_ni**y_g ]
レビューがすばらしい!あらためて今理解できました(笑)。たまにはこんな切り口の映画も、ブレイクにはいいのかなと思い、gogoさんにお奨めしたわけですね〜。人はいかに記憶を整理し保存しているのかがわかる映画とでも私はしておきます。やっぱりgogoさんの文は勉強になります!
2005/8/11(木) 午後 0:19
>ころりさん、コメント、ありがとうございます。「人はいかに記憶を整理し保存しているのかがわかる映画」、これなんですよね。それを言いたかったんですよ、私も。でもうまくたどり着けなかったです。面白い映画を紹介してくださって、ありがとうございます。紹介されてから、結構気になっていて、見てみたいと思っていたんですよ。
2005/8/11(木) 午後 2:56 [ gog*_ni**y_g ]
こんにちわ!コメントありがとうございました。この映画をこれ程解説できるってスゴイですね。深く読み解けない私にとってはとても勉強になりました!
2005/8/20(土) 午後 2:27 [ cob*lt*crow ]
>cobalt crowさん、コメント、ありがとうございます。そんなにほめて頂けたら、とてもうれしいです。
2005/8/21(日) 午前 0:54 [ gog*_ni**y_g ]
日刊ロケッツの藤丼です。 書き込みありがとうございます。 いやー メメントの事詳しくかいてありますねぇ〜 この作品、複雑すぎてやはり何回もみないといけない。 そしてガイ・ピアースの演技も良いしね!!
2005/8/29(月) 午後 10:37 [ intruder_c_1979 ]
>藤井さん、コメント、ありがとうございます。確かに複雑で、1回で理解するのは難しいですよね。その複雑さに目を奪われ、感想でガイ・ピアーズに触れるのを忘れていました。彼は、演技は上手ですし、かっこいいですね。スーツの着こなしがとても良くて、それが印象的でした。
2005/8/29(月) 午後 11:49 [ gog*_ni**y_g ]