山水臥遊

里山の外れ、谷川のせせらぎをたよりに歩いていくと、忽然と現れる仮想草庵。どうぞ、お茶でも一服・・・。

最期の母

施設にいる母が食事を摂らなくなって2日経ち、胃瘻か看取りかの意思表示をと迫られる。

もしこのままだと平均10日から二週間なのだそうだ。
これが最後かもと思いながら母に会いに行く。

私を産んで、育ててくれてありがとうと肩を抱いて言った。
骨だらけになってはいたが、まだ温かかった。
最後おうむ返しに、「ありがとう」と返してくれた。
意味がわかっているかはわからない。

手を離した時、母が私の前半生のバディ、伴走者であったことを急に理解した。
良きにつけ悪しきにつけ、足がかりを付け 、世界の初期設定をしてくれたのが母だった。
カタパルトから飛び出す飛行機のように、そこから解き放たれた瞬間だと感じた。

本当に遅まきながらだが、ここからは一人で後半生を歩んでいくのだ。そして後ろでその様子を見守っていた息子の前半生の伴走者が私であり、私の後半生の伴走者が息子なのかも知れない。





.


みんなの更新記事