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[環境ルネサンス]水都再生(1)遊歩道、道頓堀に安らぎ


◇No.45
 大阪・ミナミを流れる道頓堀川。戎橋―太左衛門橋間両岸の川べり約170メートルに設けられた幅8メートルの遊歩道に降りてみた。行き交う観光クルーズ船。原色のネオンに染められた水面が揺れると、幻想的な光の波が広がる。大都会の夜の喧騒(けんそう)が、ふと安らぎに変わる。
 「ずっと川に背を向けて商売してきたが、これからは川もミナミの顔になる」
 遊歩道でカフェやイベントを開く「とんぼりリバーウォークの会」事務局長で、飲食店経営の岡田省三さん(52)は自信ありげだ。同会は2004年12月、遊歩道の完成を機に地元店主らが結成した。
 巨大なフグやカニ、エビ……。派手な宣伝モニュメントは、店先となる道路側で客を呼び込み、店裏の川側には、室外機や排気口が並んでいた。が、遊歩道ができると、川側にも入り口を設ける店が出始めた。
 土産物店の店員(25)は「憩いの場として、年配の方やカップルが目立ちますね」と、開け放った入り口から川面を見やる。
 4年後、遊歩道は1キロまで延びる予定だ。
          ◇
 江戸時代、水運が支えた「天下の台所」は、「水の都」とも呼ばれた。戦後、網状に張り巡らされていた水路は埋め立てられ、残った川の水質も悪化。子供たちが泳いでいた道頓堀川は一気にどぶ川に化した。
 低迷が続く大阪。自らの歴史、文化を見直そうという機運の中、2001年12月、普段は不仲な大阪府と大阪市の共同提案「水都再生」が、政府の都市再生事業に指定され、水辺でつち音が聞こえ始めた。
 市内には、都心部を「ロ」の字に囲む「水の回廊」など面積の約1割を占める水面が、まだ残されていた。事業推進の旗振り役で産官学でつくる「大阪21世紀協会」理事長の堀井良殷(よしたね)さん(70)は「何をやるにもバラバラな大阪が、水への思いではすぐに一致した。水運で栄えた大阪が、川をないがしろにしたことで街の魅力を失ったという反省があった」と振り返る。
 今秋、大川沿いの八軒家浜(中央区)でも、船着き場の復元工事が始まる。かつて「三十石船」が帆を並べた水都の中心地だ。
 09年春には、水都再生の起爆剤となるシンボルイベントの開催も決まった。堀井さんは「一過性の博覧会ではなく、イベントを基盤として、官民一緒に地道な取り組みを続けるための第一歩にしたい」と言う。
 まだ、市内の川は濁り、ゴミも浮かぶ。水の回廊も、高速道路やそびえる護岸に視界をふさがれる殺風景な場所が目立つ。
 そんな川べりに、1000本のサクラを植えるプロジェクトも進行中だ。サクラの名所を広げてゆく計画に、市民から2年間で予想を超える約3億9000万円の寄付が集まった。
 呼びかけ人で建築家の安藤忠雄さん(64)は、水都再生に大阪再生の夢を託す。「金にシビアな大阪人が、サクラにこれほど寄付をしてくれるのは、水都の遺伝子が組み込まれているから。水辺のある暮らし、美しい大阪を作りだすことで、活気ある大阪を取り戻したい」(大阪・社会部、小林健)
          ◇
 河川や池を汚し、埋め立て、護岸を造り、人々を水から遠ざけてきた都市が、今、親水空間の創造や自然再生に動き始めている。新たな街と水のつき合い方を探った。

2006年8月8日 読売新聞


[環境ルネサンス]水都再生(2)見直される都会の地下水

台風一過の朝、ふと橋の上から池をのぞいた原幸夫さん(74)は目を疑った。
 普段はどす黒い水に隠れて見えない小魚の群れが気持ちよさそうに泳いでいる。深さ1・8メートルの池の底がくっきり見え、湧(わ)き水があちこちで勢いよく砂を噴き上げていた。いつも鼻につく生臭いにおいもない。
 2004年10月、井の頭恩賜公園(東京都武蔵野市)の「井の頭池」が突然、きれいになったのだった。
 池のほとりで茶店を営む原さんの知らせで駆けつけた公園管理所の職員は、捨てられた自転車を池の底から引き揚げて回った。30台もあった。池はそれから1か月間、澄んだ状態が続いた後、再び透視度十数センチの濁った水に戻った。
 なぜ池の水が急に透明になったのか。東京都西部公園緑地事務所によると、原因は直前の豪雨だった。雨で地下水位が4メートルも上昇、きれいな水が池に流れ込んで一時的に浄化したのだ。
 池の水源である湧き水は1960年代半ば以降、相次いで枯れた。宅地開発で一帯の農地が減少し、雨水が地中に浸透しなくなったためだ。地下水の異変は地上の変化に直結する。水量が落ちた井の頭池はよどみ、年々濁っていった。
 「瀕死(ひんし)の池のすぐ下で、地下水という巨大な『ダム』が豊かな水をたたえている。きれいになった池が、それに改めて気づかせてくれた」と、小口健蔵事務所長は語る。
 関東平野はもともと地下水が豊富な土地だ。特に武蔵野台地の地中10〜25メートルに広がる砂利の層は水がたまりやすく、貯水タンクのような機能がある。しかし高度成長期、工業用水を大量に地下から取水した結果、地盤沈下が深刻化した。都は70年代に地下水のくみ上げ規制に着手。そして現在、墨田区などの地下水位は65年当時に比べて50メートル上昇している。
 その水位の回復が、地下施設では困った事態も招いている。
 東京の玄関口・JR東京駅では99年、増え続ける地下水が駅舎を浮き上がらせる恐れがあるとして、70本の錨(いかり)を地中に打ち込んだ。上野駅でも鉄板を積むなどの対策を講じている。東京駅の最深部は地下27メートルにある総武線ホーム。40年前、はるか下を流れていた地下水は地下15メートルにまで上がり、現在、駅の地下部分のほぼ半分が“水没”した状態だ。
 都内8路線の地下鉄を運営する東京メトロによると、トンネルから漏れ出す地下水は年間240万トン。JR東日本では東京〜錦糸町駅間のトンネルから漏れる日量4500トンの地下水を立会川に流し、水質改善に役立てている。
 一方で、地下水の回復を願う街も多い。小金井市では、雨水で地下水を潤そうという取り組みを始めた。雨水を下水道に流さずに地中に逃がす「雨水浸透ます」の導入を市民に呼びかけている。1軒あたり上限40万円の設置補助に後押しされ、個人宅などで計5万基が設置された。いったん枯れた市内3か所の湧き水で水量が戻り、効果も上々だ。
 水がきれいになった「怪現象」をきっかけに地下水への関心が高まった井の頭池でも、9月、小金井市長を招いて地下水回復のシンポジウムが開かれる。同じ浸透ます設置を、三鷹、武蔵野両市民に働きかける計画だ。
 井の頭池の下に眠る巨大な「ダム」が復活する日は来るのだろうか。(地方部 高倉正樹)


2006年8月9日 読売新聞


[環境ルネサンス]水都再生(3)「洪水ない川」のジレンマ

「やっぱりいなかった。これが淀川の現状です」
 7月17日、大阪市旭区の淀川左岸「城北わんど」で行われたクリーン作戦。淀川水系イタセンパラ研究会会長の高校教諭、小川力也さん(44)はため息をついた。
 本流の脇にできた入り江のような池が「わんど(湾処)」だ。研究会は清掃と共にわんどの生態系を調べてきたが、今回、天然記念物の淡水魚、イタセンパラ(コイ科)の姿はなく、網に入ったのは外来魚のブルーギルやオオクチバスが数十匹。在来魚はニゴイとヨシノボリが各1匹。
 富山平野や濃尾平野、淀川水系などに広く分布していたイタセンパラは、河川環境の悪化で激減。今や、まとまった生息地は城北わんどだけになっていた。
 今年5月、国土交通省淀川河川事務所などが行った調査では、初めて1匹も見つからなかった。5年前の確認数は7839匹。「わんどが沼化して環境が悪化したところに、外敵の外来魚がとどめを刺した。もう絶望的です」と、小川さんは悔しさをにじませる。
 イタセンパラの特異な生態は、わんどの水の動きに支えられている。秋にイシガイなどの二枚貝に産み付けられた卵は、冬場にわんどが干上がっても貝の中で生き続け、春先に増水すると、稚魚は貝から一斉にわき出し、外敵が入り込みにくいわんどで成長する。
 淀川には1960年代、約500のわんどがあったとされるが、70年以降、河川改修で次々とつぶされ、現在は55か所しかない。
 さらに、83年に城北わんどの下流約1・5キロに淀川大堰(おおぜき)が完成。大堰の上流約15キロまではダム湖状態となり、3メートル以上も変動していた水位は、約50センチに抑制された。集中豪雨があっても河川敷への氾濫(はんらん)はまれで、本流からわんどへの流れが途絶えてしまったのだ。
 今、城北わんどには、沼に育つヒシが密生する。泥地では、砂礫(されき)層を好むイシガイは育ちが悪く、外来魚のすみかにもなる。
 イタセンパラの天然記念物指定に奔走した木村英造さん(84)は「大堰による環境悪化は明白だったのに、国の対策は後手後手に回った」と嘆く。
 しかし現在、国交省が淀川で進める自然再生事業は「先駆的な取り組み」として評価されている。
 97年の河川法改正で河川行政は「環境保全」に方向を転換。淀川河川事務所は有識者による環境委員会を発足させ、陸地化した河川敷に10の人工わんどを作ったほか、人工干潟やヨシ原も再生してきたからだ。
 「固有種や希少種の宝庫だった淀川は、保護運動の歴史も古く、地元専門家が委員となってアイデアを出し合った」と、委員の綾史郎・大阪工業大教授(56)(河川工学)は振り返る。
 イタセンパラ「消滅」を受け、同事務所は本流との間に水門を設け、わんど内に人工的な流れを作り出すことを検討しているが、効果は未知数だ。
 大堰がせき止めた水は、約100万人の水道水を賄う。同事務所は「治水と利水の両面からみて、これ以上、水位を変動させるのは難しい」と強調するが、綾教授は「人間のためだけを考えたら、水の流れは安定的な方が良いが、それでは川の生態系は損なわれる。洪水が起きない川は、本来の意味では川とは言えない。自然を再生するには限界がある」と言い切る。
 淀川のわんどに生息する天然記念物の淡水魚「アユモドキ」も、ここ数年、姿が確認されていない。(大阪・社会部 小林健)


2006年8月10日 読売新聞

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はじめまして、よろしくです。

気分転換に、僕のブログでもみてくださ〜い。

2008/5/26(月) 午後 8:55 [ おそうじパパ ]

こんにちは。アユモドキの保護活動をしているまったけと申します。アユモドキの記事を投稿しましたところ、「こんな記事もあります。みんながどういう記事を書いているか見てみよう!」で紹介されましたのでトラックバックをさせていただきました。

2009/1/16(金) 午後 2:05 まったけ館長

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