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[環境ルネサンス]自然再生(4)鉄鋼スラグでコンブ「養殖」
バス停「鰊(にしん)御殿」。その前には、がっしりした2階建ての建物があり、今も旅館として使われていた。北海道の南西部、日本海に面した寿都町。「町がニシンの大漁に沸いたのは明治の話です」と寿都町漁協の木村親志(ちかし)専務(49)は話す。
人口3700人の町にとって、漁業は産業の柱。近年はカキやホタテの栽培漁業が軌道に乗り、昨年は7000トンを超えるホッケの豊漁に沸いた。だが、先行きは明るくない。
「白くなっているのが見えるでしょう」。木村さんが数十メートル先の海を指さす。沿岸部の海底が、石灰藻と呼ばれる白く硬い殻のような海藻で覆われる「磯焼け」だ。
磯焼けや不漁の原因の一つには、ダムなどで川が分断され、森から出た腐植土や鉄分が海まで届きにくくなっていることが挙げられている。森や川から切り離されたら、海は死んでしまう。弘仁12年(821年)の太政官符は、農民による山の樹木伐採を一部禁止しているが、日本人は昔からこうした関係をよく理解していた。
町や漁協が手をこまぬいていたわけではない。「国や道の支援を受け、総額数十億円の対策を行ってきた。ウニやアワビが増えるだろうと、ブロックや石を沈めたりしたが、効果は続かなかった」と木村さん。そうした中、期待のかかる事業が10月から始まった。
話は昨年の夏にさかのぼる。片岡春雄町長(58)は、東京駅近くの新日鉄本社を訪ねていた。鉄鋼スラグと、発酵させた木材チップの混合物を、北海道増毛町の海岸に沈めたところ、沿岸域にコンブが豊かに育った――と報じた地元紙の記事が頭から離れなかった。コンブはウニの餌になり、ニシンの産卵場所としても重要だ。
事業を担当する3人と向き合った片岡町長は「いいことは何でもまねしたい。寿都でもお願いしたい」と頼み込んだ。
増毛町の海に、新日鉄などのグループが鉄鋼スラグを設置したのは2004年10月。スラグには腐植土が混ぜられており、ヤシで作った袋に詰めて25メートル幅に配置した。半年後、沖合30メートルほどの範囲に1平方メートル当たり1・6キロのコンブが繁殖した。何もしなかった場合の220倍の量だ。
鉄鋼スラグは鉄鋼の製造工程から出る副産物。アルカリ性で鉄、カルシウムを豊富に含み、赤潮の原因になるリンや硫化水素を吸着する働きもある。北海道大の本村泰三教授(藻類学)は「環境に配慮しながら行われており、漁獲高の不振に悩む他地域でも、試す価値はある」と評価する。
一見遠回りだが、寿都町漁協は10年ほど前から、海のための植林も行ってきた。10月にもイタヤカエデを80本植えた。木村さんは話す。「すぐ成果が出るわけではないが、植樹は、人の心に木を植える作業でもある。海から恩恵を受けている町なんですから」(室靖治、写真も)
2007年 11月2日 読売新聞
[環境ルネサンス]自然再生(5)ヤマネの森 つなぐつり橋
◇No.158
山梨県北杜市・八ヶ岳連峰の南麓(なんろく)、清里高原。森林を割るように延びる市道の上に、一本の「橋」が架かっている。全長14メートル、幅25センチのつり橋で、人は渡れない。利用するのは、国の天然記念物ヤマネやヒメネズミたちだ。
周辺では、リスがよく車にひかれた。ヤマネも、この道路によって生活圏が分断されている可能性が高かった。「アニマルパスウエイ(動物の通り道)研究会」が彼らのための橋を設置したのは7月下旬。自慢の改良型で、1か月に70回の往来が確認されている。
研究会のメンバーは国内のヤマネ研究者と清水建設、大成建設など。3年前に結成を呼び掛けたのは、同市などで環境教育活動を展開している「キープやまねミュージアム」館長の湊秋作さん(55)。湊さんが小動物を守る活動を始めたのは、和歌山県で小学校教諭をしていた10年前にさかのぼる。
当時、清里高原ではヤマネが生息する森を切り崩して有料道路を建設する計画が進んでいた。ヤマネは体長10センチ未満と小柄だが行動範囲が広い。地上を歩くのは不得手で、木の枝を移動する。現地でヤマネの生態研究を続けていた湊さんは、道路設置者の山梨県道路公社に猛烈に抗議した。
「ヤマネは夜間に樹上で生活していて、普段は観察の目が届きにくい。この特性がわかっておらず、配慮がまったくない」
この発言をきっかけに、道路に橋を架けることが決まったが、公社も動物用の橋作りは未体験。苦労の末、高さ1・5メートルと大ぶりな金網製のトンネルができた。ヤマネやリスが渡る姿が確認され、効果は実証されたが、建設費は2000万円にのぼった。
全国に普及させるには高すぎる。「もっと安く、いろんな小動物が行き来できる汎用(はんよう)性の高い橋はできないものか」と悩んだ湊さん。建設会社も巻き込み研究会を設立し、ヤマネを使った実験を繰り返し、橋の形状や材質を絞り込んだ。
完成したのは、金網をつなげた三角形の筒状の橋。幅が25センチと小型化された。三角形にしたのは、狭い隅っこが好きなヤマネでも、閉所恐怖症のリスでも渡れるように配慮したから。雪の重みにも強い。
北杜市が負担した建設費は210万円。「初号機」の10分の1だ。清水建設地球環境部の岩本和明部長は「商売は度外視。それぞれの生態に合わせた設計を心がけた」と話す。湊さんらは今後、国や鉄道会社などにも働きかけて普及を図っていきたいという。
交通事故に遭う野生動物が多い北海道の帯広市で2002年、道路下にトンネルのある高規格幹線道路が開通した。トンネルはエゾモモンガやコウモリ用の通路で、この設置を提案したのは帯広畜産大学の柳川久・准教授だった。
これらの夜行性動物が生息する防風林を分断するルートだったのに、当初計画には対策がなかった。柳川准教授は指摘する。「夜行性動物の生態は、環境調査でも見落としがちになる。これからは、夜の生態系へも十分配慮する必要がある」(科学部・野依英治、写真も)(おわり)
2007年 11月3日 読売新聞
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はじめまして。。。。
いろんな人のブログを見ていました。
参考にしたいと思います。
私のブログも見てください。
興味がなければ、すいません。スルーしてください。
2008/6/23(月) 午後 10:26 [ ただ ]