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後藤ひろひと OFFICAL SITE ひろぐ

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中島らもに昨日会った

「吉本興業」のちょいとした極秘作戦に加担すべく
大阪本社に出向いて会議に出席した!
それは呼び出されたものではなく
むしろ私が招集した会議だった!
着々と進む極秘作戦にひろぐ日々である!

その帰りに朝食と昼食を同時にとるべく
中華料理屋に入った!
以前の『ひろぐ』
『ここはまずいですか?』
で入店した店である!
私は前回とほとんど同じ位置のカウンター席に座り
定食を注文した!

そうそう!
前回は中国人店員と老人客による
たいそう面白い会話をひろいだ!
ひょっとしたら今日も面白い事が起こるかもしれない!
そんな無意味な期待を抱きながら
食事をしていると!
背後のテーブル席から驚くべき声が聞こえた!

その声はほとんど故・中島らも氏の物だった!
鼻と口から同時に息を抜くような喋り方!
時折からまる舌!
そしてゆっくりのんびりとした
あまり感情のないテンポ!
30代ぐらいの男性と共に話す人物のその声は
どう聞いても中島らも氏が話してるように思えた!

しかし私がなによりも驚いたのは
その話の内容である!
「らも」はこんな事を言い出した!

「友達が居酒屋で餃子を食べる時にな。
 ラー油だけで食べたんや。
 ちょっとちょっとそんな食べ方あんの?
 て聞いたらな。
 アホやなぁ自分。
 通はこないして食べるもんやで
 言いよんねん。
 なんかめっちゃ悔しなってな。
 お前こそアホじゃ。
 僕ぐらいの通になると餃子はソースで食べんねん。
 言うてな。
 ソースかけて食うたった。」

その後沈黙が訪れた。
おかしい。
聞くべき事が聞かれない。
先程から聞いていれば
「らも」はとにかく会話のテンポが取りにくい人物だ!
恐らく「30代」は「らも」が言葉を続けるのかどうか
迷っていたのだろう!
そのために生まれた沈黙だったのだろう!
しかしやがて「30代」は
「らも」がもう話す気がない事を悟った!
そして私が聞きたい事を聞いてくれた!

「ソースで餃子食べてどうやったんですか?」

すると「らも」が即答した!

「思い出させるな馬鹿者。」

どうだこの会話は!
しかも「30代」はその後にちょいと間を開けて
こう言ったのだ!

「あ、そうか。」

「らも」の論法もすごいが
「30代」の「あ、そうか」がまた冴えている!
私はなんだか恐ろしくなって来た!
話す内容までもが完全に故・中島らも氏に
あまりにも似ている!
私はこの死者の会話に再び背中で集中した!

続く話題はマリンスポーツだった!
ほとんど「30代」が話しており
「らも」はいるのかどうかもわからないほど黙っていた!
やがて「30代」は
昨年のお盆にスキューバダイビングか何かをして
それがとても楽しかった
というような事を話していた!
それを聞いていた「らも」は
遂に沈黙を破り
独特の口調でこう言った!

「なんでそんな楽しい事に僕を誘わへんのや。」

「30代」は驚いて応えた!

「え?
 誘ったら一緒に行ってました?」

「らも」は言う!

「行かへん。
 わしは長男や。」

しばらく沈黙があった!
この沈黙が怖い!
これほど不可解な言葉の後であれば
当然「らも」は何らかの補足をするべきだ!
なのにしない!
それが「らも」だ!
それでこそ「らも」だ!
「30代」は「らも」の言葉を待ち続けたが
やがて観念して尋ねた!

「長男はスキューバダイビングしたらあかんのですか?」

ありがとう「30代」!
私もそれが聞きたかった!
しかしそれに対する「らも」の応えは
とんでもない破壊力を持っていた!

「アホか君は。
 長男はお盆にご先祖様を迎えるのが仕事や。」

知らない!
そんなルールは知らないが
きっとそうなのだろう!
長男である「らも」が引っかかっていたワードは
マリンスポーツではなく
お盆の方だったのだ!
しかもその後!
「30代」の締めの一言だ!

「あ、そうか。」

これはもう大変な事になって来た!
間違いなく死んだはずの中島らもが
私の背後で食事をしている!
私はある種の超常現象に巻き込まれている!
私の混乱がピークに差し掛かろうとした時!
「30代」が「らも」にまつわる衝撃の背景を暴露した!

「あれ?
 けど。
 おうちキリスト教徒ですよね?」

私はカウンターの椅子からずり落ちそうになった!
しかし本当にすごいのは
これに続く「らも」の言葉である!

「君はどれだけひどい男なんだ。」

「なんでですか?」

「それは
 仏教徒の子供はどんだけええ子にしててもサンタは来ない。
 そう言うてんのと一緒やぞ。」

私の中からありったけの「しりこ玉」が飛んだ!
なんという説得力だ!
日常会話的には完全に間違っている「らも」だが
語っている内容は実に納得のいく真実だ!
しかもその後で例の必殺技が出る!

「あ、そうか。」

何より驚いたのは
彼らが会話の間一切笑わないという事だ!
二人はここまで完成された問答を成しておきながら
くすりとも笑わない!
なんならあまり楽しくすらなさそうだった!

私は決意した!
帰りにレジに向かう際
「らも」の顔を見るのはよそう!
亡くなった中島らも氏が
私の背後で食事をしていた!
そう思い続ける事が
私の中に貴重な時間として残り続ける!

絶対に!
絶対に振り返らないようにして
私は店を出たのであった!



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