「うなぎ買って来て!」
と「カミさん」に言われて驚いた! 驚いた挙げ句に 「なにするの?」 と尋ねてしまった! 食べるのだと言う!
「カミさん」と言えば 食べ物にものすごく好き嫌いが多い人として 私の中では有名だ! 鶏肉! うに! レバー! セロリ! 納豆! 数えたらきりがないし 私が知らない物も多い!
いや! 多かった!
うなぎ あなご はも といった長い魚も 一切食べない人だった! しかしいつどこで何が変わったのだろう? 今ではなんでも食べるようになり リストに残ったのは「うなぎ」と「はも」だけになった! 「あなご」は食べられるのに 「うなぎ」が食べられないと言うのは 間違いなく何かの偏見によるものである! ならばその好き嫌いを克服させるべく 夫として努力すべきか? まさか! そんな必要はまったくない! 「うなぎ」を食べなければ死ぬ などという栄養学はないのだ!
私は好き嫌いをする人が大好きだ! なぜなら苦手な物を私にくれるからだ! 「カミさん」が苦手だったリストのほとんどが 私の大好きな食べ物だった! なので私は「カミさん」が大好きだった! どうかこの勢いで カレーやハンバーグなども嫌いになって欲しい! と願った事もあるほどだ! そんな「カミさん」がほぼ最後の砦として 自らの口の前に立てたものが 「うなぎ」だった! 二人で「うなぎ」を食べた事は一度もないが お弁当などに「うなぎ」が入っていると それは無条件で私のものだったのだ!
「たっ!食べる? うなぎを食べるのですか?」
「うん! 食べるよ! 買って来て!」
「いっ!いつから食べていますか?」
「もう3年ぐらいなるかなぁ! 買って来て!」
「さっ!3年? そんなに前から?」
「食べたいわぁ! 買って来て!」
「・・・へい。」
大好きな「からほり商店街」の事など 知り尽くしているものと思っていたが ”川魚専門店”などというお魚屋さんがあった事を 本日初めて知った! 看板を見ればそこの名物は「うなぎ」だそうだ! 普段は何を売っていたのかすら覚えのない店なのだが 土用の丑の日である今日は お店いっぱいに「うなぎ」の蒲焼きを広げ 店先にはお客さんの列ができていた! ”今年はうなぎが高い”と聞いてはいたのだが 普段家庭では絶対に食べない物なので 安かった頃の値段を知らない! しかしなにしろ1匹2千円の魚というのは 間違いなく高い! 17世紀であればマンハッタン島が買える価格だ! けどまぁ土用の丑の日だから・・・
ところで何なんだ「土用の丑の日」とは! そもそもそこで「うなぎ」を食べる習慣は 平賀源内がうなぎ屋を助けるべく作り出した 根拠のないキャンペーンだったと言われている! 他にも説はあるようだが あまりにも有名な平賀源内が登場する説を 世間は信じたがっている! それはそれでいい! それよりもまず 「土用の丑の日」とはなんぞや? 私はさっそく調べてみた!
”土用の間の十二支が丑の日”
やられた! まずはなにしろ「土用」が何なのか知りたかったのに 説明文に「土用」が使われていた! これはずるい! コマンドサンボの必殺技 「ビクトル式膝十字固め」を調べようとしたら ”膝を十字に固める関節技でビクトル式のもの” と教えらたようなものだ!
あまりに悔しかったので 私は次に「土用」を追いつめる事にした! 「土用」とは!
”五行に由来する暦の雑節”
・・・ぐっ! ひ、卑怯なり! 「五行」! 「雑節」! 一つの知らない言葉を 二つの知らない言葉で解説された! これはもはや ”ミクラスとは何か?” と尋ねている人に ”ウィンダムとアギラみたいなもの” と答えるような無礼さに満ちているではないか! X=Y+Z という式からどのようにXを知れと言うのか?
なんだか怖くなった私は 恐る恐る「五行」を調べた!
”西洋四大元素説と比較される古代中国思想”
やめた! なんだか圧倒感にあふれている 「西洋四大元素説」という言葉に 私はもう降伏した! 調べればきっと四つの知らない言葉を見る事になる! ははーん! これか! ぬるぬるすべる「うなぎ」を捕えようと 上へ上へと掴むうち 天まで昇ってしまう昔話がある! 「土用の丑の日」を調べ続けると 私もやがてあらぬ方向へと進んでいくのだろう! そうはいかない! 私はこれ以上 「土用の丑の日」を追いつめる事をやめた!
「土用の丑の日にはうなぎを食べよう!」
「土用の丑の日」! それはふだん目にとめない 「からほり商店街」の魚屋さんが 思い切り目立つ日の事だ! 私はその目印を「土用の丑の日」と定める!
買って来てと言った割に 「カミさん」は訳あって体重調整中らしく たった2きれしか食べなかった! やっぱりいい奴だ!
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