「ドライブに行きたいね!」
「カミさん」がそう言い出した!
間違っても私は言い出さない!
なにしろ「運転免許証」を持っていない!
しかも我が家には自動車もない!
「カミさん」はレンタカーを借りればいいと言った!
世間には単純なアイディアなのかもしれないが
私にはなかなか思いつかないものだ!
私が自動車で思いつく楽しみと言えば
”何人乗れるかチャレンジ”
ぐらいしかない!
なるほど!
レンタカーでドライブというのもきっと楽しかろう!
けど一体どこに行くと言うのか?
我々は散々話し合った結果
「姫路城(ひめじじょう)」
に行くのがいいだろうという結論に至った!
確か現在「姫路城」は大改修工事中との事!
しかし!
その改修工事を
有料で見せてしまおうという
なんともヨーロピアン・ビジネスな行為に
日本中の「キャッスラー」達が沸いていると言うのだ!
我々は「キャッスラー」ではないが
それはなんだか面白そうではないか!
「夫婦で”姫路城”に行こうと思うのですが
”キャッスラー”ではない我々には
見所がまったくわかりません!
どうかアドバイスをお願いします!」
私は出発の前の晩に
3通のメールを送信した!
「ドラゴン」こと「藤波辰爾」選手!
「不良落語家」こと「春風亭昇太」!
「うそつき」こと「土田英生(つちだ・ひでお)」!
いずれも私の友人にして
世間にも知られる”城好き”
つまりは「キャッスラー」である!
出発の日の朝にメールをチェックすると
しっかりと”スリー・キャッスラーズ”からの
「姫路城」メールガイドが届いていた!
それをしっかり保存して
我々は「姫路城」へと向かった!
普段は自動車に乗り馴れていない「カミさん」なため
高速道路に乗るなり
分岐路を曲がり損ね
ほんの3kmほど走って
いきなり地上に降りた!
「自転車」でも移動できる距離に900円を投じる!
羽振りのいい芸能人な暮らしを営んでいないため
夫婦でおおいにしょげた!
泣いた!
慰め合った!
長い夫婦生活ではもっとつらい事があったはずだ!
ここは笑ってもう一度900円を払おう!
めったにしない自動車旅行だ!
あまりくよくよするのはよそう!
かくして前日に焼いたCD
『姫路Hitz』全5巻を聴きつつ
2時間ほどで
目的の「姫路城」に到着した!
平日の昼間なので
なかなかの閑散具合で居心地がいい!
奇怪な名物料理
「カツライス」なるものを食して
「姫路城」攻略に備えた!
「城」を”戦略要塞”ととらえてのアドバイスは
意外にも「不良落語家」と「うそつき」から届いていた!
闘う男「ドラゴン」が
普段はいかに平和的人物であるかが伺える!
「行きは攻める側!
帰りは守る側!
その気持ちを抱いて天守閣まで歩くべし!」
わかったべし!
アドバイスに従い城内を歩く我々は
「姫路城」落城を狙う密使の気分だった!
ここを歩けば見つからない!
ここに身を隠せば狙われない!
そんな気持ちでこそこそと天守閣を目指した!
時折立っているボランティアガイドが
特に我々を怪しまないところを見ると
よくそういう「キャッスラー」がいるのだろう!
きっと「うそつき」も「不良落語家」も
やったのだろう!
ふとボランティアガイドの表情を見ると
誰もが余裕に満ちている!
”無理無理”とあざ笑っている!
そんな顔をされると
代々「忍者」の家系である私の心に
先祖が燃やした熱い火がともる!
笑っていられるのも今のうちだ!
帰りには殿の首をお前に突き出してやる!
そうなればお前など
城を追われて
レンタルサイクルの係に廻されるのさ!
しかし!
そもそも普段は他人に見られる職業である我々に
そんな器用な隠れ身の術が備わっているはずもない!
それに考えてみれば我が「後藤家」の先祖は庄屋だ!
ちっとも忍者じゃない!
ふと気づけば周囲360度を
鉄砲や弓矢を射る穴に囲まれており
どきっとしたりする!
驚異的なディフェンス力を持つ「姫路城」!
恐らく我々は
一人につき80本ほどの矢が刺さった状態で
歩き続けた!
100本までは死なないの決めたので
まだ大丈夫だ!
だが行く手には次々と罠が待ち構えている!
天守閣に近づいているようで
あまり近づいていなかったりする道!
天守閣を目指しているのに
まさかの遠回りをさせられる道!
天守閣に近づくにつれて低くなる門!
一番低い門などはこんな状態だ!
くぐればすぐに中に入れるというわけではなく
しばしの洞窟状態になっているため
槍を持った夫婦が押し入るには
しゃがんで一人ずつくぐるしかない!
しかしそうなれば待ち構えたボランティアガイドに
ぶっすり刺されるのだろう!
我々はそれぞれ腹に7本ほどの槍を立てたまま
歩き続けた!
(槍は10本まで大丈夫!)
かくしてあやうく命を落としそうになりながらも
我々は遂に天守閣に辿り着いた!
いよいよ城主のお首を頂戴しよう!
だが!
そこには最大の罠が我々を待ち受けていた!
天守閣が絵なのだ!
これは遠目に見るとこういう状態である!
なんと!
「平成の大改修」と呼ばれる工事は
「姫路城」の天守閣を
かっぽり箱の中に入れて行われているのだ!
では天守閣をどうやって見るのか?
なんとエレベーターに載せられ
そのまま頂上まで行けと言う!
そしてエレベーターを出ると
ガラス張りの中では!
驚いた!
こんな城見は生まれて初めてだ!
そしておそらく生涯ないだろう!
城の頂上を平行視線で見るなど
鳥か虫にしかできない荒技だ!!
ガラスの中では職人達が
見事な手つきで漆喰を塗り
屋根や壁を修理している!
普段は「白鷺城(しらさぎじょう)」の異名を持つ事から
この特殊な見学方法は
『天空の白鷺』と名付けられている!
これはたいそう珍しく面白い見せ物である!
「今回の改修によって初めて発見された
”謎の天窓”にご注目下さい!」
「ドラゴン」からのアドバイスに従い
”謎の天窓”をひろいだ!
かなり不可解で面白い物だった!
改修のために壁をはがした所
そこに埋め込まれた窓が
いくつも現れたのだ!
これは改修工事の最後には
また埋められるそうなので
『天空の白鷺』ツアーでしか見る事はできない!
敢えて写真も載せないので
是非ご自分の目でご覧いただきたい!
「いいなー!
いいなー!
いいなー!」
「うそつき」は
まだこの『天空の白鷺』ツアーを体験していないとの事!
きっとこの『ひろぐ』を読んで
あわてて姫路に向かう事だろう!
ついでにしゃちほこと背くらべもした!
負けた!
帰りは指示通り
守る側に廻って城内を歩く!
なんとも心強い城である事が
とんでもなく実感できた!
「僕が好きなのは”姥が石”です!
是非見つけて下さい!」
「ドラゴン」お薦めの「姥が石(うばがいし)」は
城壁の中にひっそりと納まっている!
なんでも城下でお餅を売っていたばあさまが
「城壁を作るのにこの臼も使ってください」
と言って商売道具を差し出したのだと言う!
普通そんな事をするはずがないので
本当は違う話のような気もする!
しかしその美しい話を愛する「ドラゴン」に
やっぱり心惹かれる私なのだ!
「城内への入り口となる”菱の門”に注目して下さい!」
「不良落語家」からのガイドだった!
「”菱の門”の鍵はどちらに付いていますか?
ええ!
外側にしか無いのです!
内側に鍵が無い!
それはつまり
姫路城はあくまでも戦略要塞であり
中に人は住んでいなかったと言う事を示しています!
城主すらも”菱の門”の外である
城下に住んでいたとされています!」
なんと!
夫婦であれほどの矢や槍を受けて
命からがら天守閣まで辿り着いたと言うのに
中はもぬけの殻だったと言うのか!
だとすれば
それこそが「姫路城」最大の防御システムとしか
言いようがない!
ボランティアガイド達め!
だからあの余裕の笑顔だったのか!
「姫路城」攻略に玉砕した我々は
静かな場所で心を癒そうと
「好古園(こうこえん)」なる庭園にお邪魔した!
やはり平日であるため
観覧者は少なかったのだが
その少ない中には外国人観光客が多かった!
500円のお茶券を購入すれば
茶室でお抹茶など頂ける場所があったので
さっそく上がり込んでみると
3人の屈強そうな外国人男性達が
着物姿の女性を写真に撮影したりして
わいわいとにぎわっていた!
お茶をたててくれた女性に
彼らはどこから来た人達か?
と小声で尋ねると「チェコ」だと言う!
しかしそれを耳にした外国人は
違う!
と猛烈に反論した!
彼らはスロバキア人だった!
20年前
激しい政治論争の末に分離した2国
「チェコ」と「スロバキア」!
お年を召した方の中では
今でも両国は1つの国なのだろう!
それを否定すべくなんとか説明しようとする
スロバキア人達だったが
全く会話にはなっていないようだった!
しばしほったらかしてひろいでいたのだが
やがてスロバキア人が
「誰か英語は話せないのか?」
と言い出したので
ここは国際理解に貢献すべく
助けてあげる事にした!
着物の日本人女性に
スロバキア国家を理解させる手伝いをした事で
私はスロバキア人達から
ずいぶんと感謝された!
「スロバキアの事は知ってるよ!
いいサッカー選手がいっぱいいるもの!
えーっとね!
誰がいたかな?」
「ハムシクの事かい?」
「そうそう!」
「シュクルテルだっているぞ!」
「いいねぇ!
リバプールのディフェンダーだ!
こないだのマンチェスター・シティ戦では
いいシュートを決めたね!」
「ヴィッテクも忘れないでね!」
「それより今期からイタリアリーグに移った
ヴァイスが最高だよ!」
「うわー!
ヴァイスって日本でも知られてんの?」
すごいものだ!
「サッカー」に詳しくなると
突然「スロバキア」人と会話する事になっても
話題が尽きない!
やがて彼らと別れて「好古園」を巡ったのだが
内部が複雑過ぎて
我々は道に迷ってしまった!
そこで出会ったのが
先程の「スロバキア」人達だった!
「どうしたの?」
「道に迷っちゃったよ!」
「あはは!
出口はね!
あっちだよ!」
助かった!
「スロバキア」人を助けたおかげで
「スロバキア」人に助けられた!
これで両国間の貸し借りは無しだ!
『天空の白鷺』を見学されたい方は
土日休日などはたいそう混雑するそうなので
下記ページからのネット予約をお薦めします!
『天空の白鷺』ホームページ