郷友福岡のブログ

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 聡明な頭脳を持ち、幾多の著作を世に出されている日下公人氏は、母国日本の先進性を指摘され、それには読者は大いに勇気づけられ自信を不えられます。その日下公人氏が一読を薦められたのが、元駐米大使、外務次官を務められた故村田良平氏の「村田良平回想録」です。その、回想録の中で村田氏は、先の大戦を考える一助として小松真一氏(故人)という陸軍軍属で醸造技術者が書かれた「虜人日記」と、故山本七平氏の「日本はなぜ敗れるのかー敗因21カ条」いう本を薦められています。
 早速、二冊を取り寄せて読んでみましたが、非常な衝撃を受けました。それは経験者のみが語れる事柄とその重みに押し潰されそうな内容の質量でした。戦後生まれの我々はそこに描かれている様々な出来事や心理を、共有することも追体験することもできません。しかし、私にはこの二冊の本の中に「風化しない記憶」が残されているように思えます。
  
 実際に、戦場で実戦を経験した父から聞いた体験談(強かった日本陸軍)、世界を驚嘆させた海軍の零式戦闘機や真珠湾攻撃等々の昔日の日本の精華の面は、我々の誇りとするところであり、無条件で日本は素晴らしかったと思いたいのは当然の人情でしょうし、それは一面の真理である事は間違いありません。
 一方、人に長所、短所があるように、民族や国民にも両方の性質を内蔵していることもまた事実です。零式戦闘機や真珠湾攻撃が日本の優秀さと精強さの面だとしたら、この二冊に描かれているのは、聞きたくない、見せつけられたくない、指摘され、正視するに堪えられない、日本の欠陥、脆弱さが冷静な、技術者の目を通して描かれ、それを山本七平氏の怜悧な分析が数学的な手法でなされています。
  
 我々は、ナチスドイツが行ったアウシュヴィッツをはじめとする、ユダヤ人収容所での大量虐殺はその冷徹に計算された非情さに総毛立ち、ドイツ人の怖さを垣間見る思いで、日本人は違うと思っていますが、山本氏はバシー海峡での兵員輸送での輸送船沈没の量と兵員の死亡数は、死のベルトコンベアに乗せられたという点では、同じ本質であるということや、インパール、ニューギニア、フィリピン等の戦線での飢餓街道と言われた地獄図の出現が何故に起こったのか、ということを硬直化しやすい日本人の思考、責任者が.在の行動様式、アメリカはあの手が駄目ならこの手常に方法を変えたのに対し、馬鹿の一つ覚えのように何回も機械的に繰り返し自滅した心理的特性、「戦略を月.位で計算する」民族の持つ行動様式、それらを容認する国民性の観点から鋭い指摘をされています。
 読んでいながら「もうそれ以上抉るのはやめてくれ」と我々の感性が耐えられないほどの欠点を見せつけられます。
  
 その他にも、海軍パイロットの卓越した操縦技能も、戦力という面からみれば「客体化できる技術」というより「個人の絶対的武芸」と言えることや、統治下においたフィリピン、インドネシア、マレーなどでの統治が独りよがりの押しつけの面が否定できないこと、自分と違ったものに対する同情心がない事、独善的な思い込みを相手に対する理解だと錯覚しやすい事など、個人の修養や心構えを超えた文化に起因する錯誤によって悲劇が起こったことを理路整然と述べてあります。
 更には捕虜収容所での、暴力が支配する民族性、自治が出来ない国民性なども我々の持つ欠点として描かれています。その分析の中には、アメリカの技術と日本の技術を比較して、そこに流れる設計思想や何を重視するかといった着目点、更には何が一番大事かといった効率の視点から見ての彼我の違いが浮き彫りにされています。
  
 最後に、その違いはあれ欠陥と脆弱さなどはどこの国民にもあるのもだが、何故日本の場合は決定的な崩壊となって現れたのかを、山本氏は、明治維新以来日本はその制度技術、思想を「ものまね」せざるを得なかったからだと結論付けられています。自分で創作したものなら、新たに創作しなおすことができる、歴史とは創作しなおしの積み重ねであるが、「ものまね」として輸入したものにはそれができない、そこに「権威」としての格を持たせたら動かせなくなるというのです。したがって、組織、制度としてみると超合理的でありながら、現実から遊離した完全に.合理な行動が強制され、その組織を規制するものはそれを生み出した社会の常識であるということが、「ものまね」であるがゆえに通用しなくなると書かれています。ということは、「ものまね」の組織の前には独自の伝統に基づいた常識は捨てなければならないということでしょうか。
  
 以上のことは、「なあに、昔のことだよ。今の日本は違う。もっと開けていて科学的だから同じことは起こらんよ。」とあしらうことができるでしょうか。国会はどうでしょう、経済界、企業での.祥事や内実の.協和、無責任体制はちっとも変っていないのではないでしょうか。逆に居直って「わかっちゃいるけどやめられない」で済むでしょうか。山本氏はこうした欠陥は克服しない限り、日本は再び敗れると断言されています。そこには、いざ、中国と事を構えたときに言えるのではという暗示にも思えます。
 一例をあげると、大森義男氏によると硬直した行動パターンというのは、白村江の戦いに既にみられ、西.の役の西郷軍の戦い方も変わるところがないそうです。
  
 英霊や先人が残された事実を我々は、都合と好みで「臭い物には蓋」では許されないと思います。英霊や先人はきっと言われるでしょう。「子らよ、正視せよ」と。
平成24年3月6日
守山善継

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