5月緑フォーラム開催報告
問われる加害責任
日本軍『慰安婦』問題の今
講師: 梁 澄子(ヤン チンジャ)さん
日本軍「慰安婦」問題解決全国共同代表
「1992年1月8日、日本軍「慰安婦」問題解決のための水曜デモが、ここ日本大使館前ではじまった。2011年12月14日、1000回を迎えるにあたり、その崇高な精神と歴史を引き継ぐため、ここに平和の碑を建立する。」
韓国に建てられている「平和の碑」に刻まれた言葉である。「平和の碑」は2011年12月14日に韓国挺身隊問題対策協議会(挺身協)が建立したもので、「少女像・おばあさんの影・椅子・碑文」の4つを合わせて「平和の碑」としている。
ここには、「反日」の言葉もなければ、日本人に対する憎悪もない。ただただ、日本軍「慰安婦」問題解決のために、毎週1回水曜日に、黙々と10年、1000回の長きに亘って(わたって)デモと集会を行って来た人々の記録を残したものである。
韓国では「平和の少女像」と読んでいるが、日本政府は敢えて悪意を込めて、「慰安婦像」と呼ぶことに正式決定している。日本のマスコミもほぼ右倣え(ならえ)の状態である。本当に右へ右へとなびいて、「反日」「反日」と叫んでいるのである。心にやましさがある者は、冷静さを失って、あたかも自分が非難されたと思い込んでしまうものである。
講演の時間の関係上やむなく、梁さんは、日本軍「慰安婦」問題の長い歴史をカットして2015年12月28日の「日韓合意」から今日までの期間にしぼってお話をしてくれた。この「日韓合意」は、日本政府が過去に表明して来た薄っぺらい形ばかりの謝罪を繰り返し、もう十分謝ったのだから、10億円出して終わりにしますという身勝手なものだったのである。しかも、両国の公式な文書はなく、あるのは共同記者会見だけという、前代未聞の「合意」だった。
参考までに、次は日本側、岸田文雄外相の記者会見の全文です。
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(1)慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。
安倍晋三首相は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。
(2)日本政府は、これまでも本問題に真摯(しんし)に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。
(3)日本政府は上記を表明するとともに、上記(2)の措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
あわせて、日本政府は、韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。
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それでは、どうして時の朴 槿恵(パク クネ)政権は、こんないい加減な「合意」を行ったのかと言えば、強力なアメリカの圧力があったのだろうと推測されている。中国に対抗するために、子分である日韓が争っている場合でないぞ、というわけである。しかも、その内容は兄貴風を吹かせている日本の言い分を通したというわけである。無理を通せば道理が引っ込むとはこのことである。
この「合意」の問題点を梁さんは、
①被害者不在
②8ヵ国の被害者・支援者が作成した2014年の「日本政府への提言」が全く反映されていない。
③重大人権侵害問題に「最終的・不可逆的解決」はありえない。
④韓国以外の被害者が全く考慮されていない。
を挙げている。
被害者の金福童(キム ボクトン)ハルモニは、「一番悪いのは、歴史を売ったことだ」と鋭い指摘をしている。李容洙(イ ヨンス)ハルモニも「『慰安婦』ハルモニたちのために、という考えがないようだ。天国に逝かれたハルモニたちに対し、面目がない。金で解決しようとするのであれば受け取らない。私はまだ88歳。運動するにはちょうど良い年頃だ。日本が真に罪を認定し、法的な賠償と公式の謝罪をさせるために、私は最後まで闘う」と述べている。
朴 槿恵(パク クネ)政権が退陣したあとを受けて当選した文在寅(ムン ジェイン)大統領も、「この合意では慰安婦問題は解決しない」「被害者中心の解決という原則の下、早急に後続措置を用意してほしい」と韓国政府に指示している。
噴飯ものなのは、またまた日本政府である。
安倍首相「日韓合意は国と国との約束だ。これを守ることは国際的かつ普遍的な原則だ。韓国側が一方的にさらなる措置を求めることは、全く受け入れることはできない」「日本側は約束したことは全て誠意をもって実行している。韓国側にも実行するよう、強く求め続けていきたい」
菅官房長官「1ミリたりとも合意を動かす考えはない」
河野外相「韓国側が日本側に対して、更なる措置を求めることは全く受け入れられない」
どうしてこんな態度で、誠実に対応しているなどということが言えるのだろうか。情報統制によって、日本国内世論はだませても、世界のどの国にも受け入れられない。
康京和(カン ギョンファ)外相は、国連人権理事会で、韓国政府が被害者中心的なアプローチを欠いていたことを認め、「過去の過ちが繰り返されないよう、現在と未来の世代が歴史の教訓を学ぶことが重要である」と述べている。
最後に梁さんは、フィリピンに建立された「日本軍『慰安婦』被害者像を撤去させた日本政府の恥ずべき行為に触れて講演を終った。在比日本大使館は「撤去はフィリピン政府側の判断」とうそぶき、野田聖子総務相兼女性活躍担当相も「(被害者像の建立は)非常に残念だ」と、いつからフィリピン担当になったのか、しゃしゃり出て述べている。とんだ女性活躍担当だ。
私達は、
『記憶されない歴史は繰り返される』
ということを忘れてはならない。
今回の講演でとりわけ印象に残ったのは、週1回の水曜日デモの場所に、世界の紛争地域で性暴力の被害にあった女性が訪れて、ハルモニ達と会い、自分の思いを話して行く場になって来たということだ。ユーゴスラビアの紛争、コンゴの紛争、ベトナム戦争で韓国の兵士に性暴力を受けたという女性たちも、長い時間をかけてやって来たそうだ。しかも、ハルモニは、自分達は十分支援を受けているから、他国の被害者のために「ナビ(蝶)基金」を作って支援しているということだ。被害者が組織者として成長しているのである。深い感銘を受けました。
文責 編集部