気まぐれ日記

気まぐれグランピーの世相やぶにらみ

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のっけから私的な話で恐縮だが、先日娘に男児が生まれて私も晴れておばあちゃんになった。

赤ん坊というものは何度見てもいつもとても神秘的だ。神業と言う言葉がぴったりの産物ではないか。
その赤ん坊におっぱいを飲ませるしぐさもまた、いつ見てもとても感動的だ。

いつの時代も赤ん坊に乳を飲ませている女の姿は、そのまま一枚の絵になると思う。
というのも、そんな母子の姿を集めた絵画本がある。 編者は窪島誠一郎となれば、また一味違う。

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                熊谷守一「母子像」

窪島さんは周知のように、2歳少しで他家に預けられ養父母に育てられた。
実父母と劇的な再会を果たしたのは35歳の時だというが、この本は
「今は亡き二人の母に向けた一通の恋文」ともいえるものだという。

確かにこの本に紹介されている母子像は、授乳中の絵を始めとしてどれも母子の固い絆、交わりが伝わってくるもので、母親に育てられた記憶のない人にとってみたら、それは「羨望」の一言では片付けられない感情が沸き立つかもしれない。

この本に紹介されている36枚の絵にはそれぞれ窪島さんのエッセイが綴られているが、文面には繰り返し窪島さんの羨望ともひがみとも読み取れる言葉が出ている。まるで幼い日の窪島さんが「おかーちゃん、おかーちゃん!」と母親を求めているようにも聞こえる。

と言ったら、暖かい光あふれる母子の至福のひと時を描いた絵が思い浮かぶであろう。
もちろんこの本には、文句なしに幸せがいっぱいに広がって、見る者の心まで幸せにしてしまうような絵もたくさんあるが、しかしそれだけではない絵もそれ以上に紹介されている。

つまり戦時や被災時、非常時、困窮時にある母子の姿である。 
生命の危機が迫る中、あるいは明日の希望もない中、絶望、恐怖、不安、緊張などの感情に包まれた中での、それでも何物にも代えがたい、犯しがたい母子の絆を現した絵である。

その際たる絵は丸木位里、俊の「自然壕(ガマ)」の絵だ。
ガマで自決を余儀なくされた母子たちの、決行直前の極限図なのだが、”そうした絶望の淵にあってなおを一縷の生を紡いでいた「母と子」の群像図”である。
赤ん坊に乳を含ませている母親がいて、母親に寄り添う幼子がいて、人の営みがしっかりある。

悲惨な、卑劣な、惨い、壮絶な、、と出来合いの形容詞を使っていくら戦争を形容しても、実体験のない我々には共感共苦できないところがある。
しかしたとえば丸木夫妻のガマの絵を見れば、自分事として戦争が伝わってくる。

ここに紹介されている日本人画家が描いた36枚の絵にはそれぞれ物語りが感じられ、また窪島さんの程よいエッセイがハーモニーを奏でている。 どの絵も一度見たら忘れないような印象的な絵である。

取り上げられている絵のいくつか

丸岡比呂史「母と子」      菱田春草「寡婦と孤児」     石垣栄太郎「逃避」
福田豊四郎「秋田のマリア」   大森運夫「国境」        古茂田守介「母子」
東郷青児「渇」         香月泰男「母と子」       斉藤真一「初旅」
中村萬平「霜子」

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