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伝えたいポイントを3つに絞り込む
私は1977年にホテルオークラに入社して以来、約30年間ホテルマンとして働いてきた。フロントサービス、ベルマンなどを経て社内サービスインストラクターの第一号となり、新規ホテル開業スタッフの指導なども担当し、2000年の九州・沖縄サミットでは外務省の臨時職員として接遇の指導もした。これまでに約3000人の新人を指導した経験をもとに、現在は独立しサービスコンサルタントを生業としているが、ホテルマン新人時代には苦い経験の連続だった。
新人ベルマンだったある日、VIPである一流企業の会長の荷物を持ってエレベーターで客室までご案内しようとしたときのこと。「なんだ、その荷物の積み方は!」といきなり怒鳴られた。会長は台車の上に積まれた3つの荷物のうち2番目が曲がっていることを指摘して怒り出したのだ。曲がったといってもほんの数センチ程度だったのだが、会長は私が新人のベルマンだとわかって「君はこのサービスでメシを食うんだろ。そんな中途半端な仕事をしていたら一人前にはなれないよ」とあえて厳しく叱り、プロとしての心構えを教えてくれたのだった。
良いサービスを提供するためにまず「自分自身が商品だ」と言い聞かせて、ホテルマンとしての身だしなみ、話し方、行動の仕方にもプロとしての仕事のやり方を考えるようになった。特にコミュニケーションのとり方は大切で、これが仕事の基本だと確信している。
何かを「相手に伝える」ということは、自分が理解していることをそのまま伝えることとは全然違う。「四の五の言うな」という言葉には「ああだこうだと理屈を言うな」という意味のほかに「1度に多くを言っても覚えられない」というニュアンスもある。人間が1度に覚えられることはせいぜい3つ程度。登場人物が多く時間や場所が複雑な話ならなおさらである。ポイントを簡潔に3つに絞り、第3者にわかりやすく説明できるようにふだんから練習しておくべきである。
営業マンが商品を説明するときも同じである。自社商品をわかっているのは当然で、商品の良さをダラダラ言っても相手には伝わらない。お客様はその商品について何の予備知識もないので、相手の関心度、理解度を見ながら臨機応変に説明の仕方を変えていくことも必要である。表情などをよく見て「ここに興味を持っていそうだな」という部分があれば、そこに的を当ててポイントを3点に絞って伝えること。相手の顔色を見ながら、「このあたりはわかっていないかな」と思うところがあれば、そこをわかりやすく重点的に説明するのである。
どんなサービス業でも、「No」で始まるサービスはない。まず、どんなことであってもお客様の要望は「Yes」で受けるのが基本だ。たとえ「カラスは白い」と言われても答えは「Yes」である。そこには必ず事情や理由があるので、最初から「いや、そんなことは絶対にありません」と答えてしまえば話はその先に進まないし、その時点でサービスはストップしてしまう。「はい」は相手を受け入れる気持ちの表れであり、その人をいちばん美しく、品位を高める言葉なのである。ひとまず「Yes」で受けたあと、お客様の相談内容を聞きながら対応策を考えるようにする。難しいようであれば「Yes,but...」(はい、かしこまりました。しかし……)と続け、できない理由を説明するとともに代替プランを提案してはどうだろうか。
たとえば、明日の花火大会を屋形船から見たいというお客様がいたら、おそらく予約でいっぱいだろうと思っても、「はい、かしこまりました」と応じる。そして空きがないことを確認して「よろしければ、花火がよく見えるこんなレストランがあるのですが……」と代替案を持ちかけるのである。
私がベルキャプテンをしていた頃、お客様が取っ手の壊れたスーツケースをお持ちになり「この取っ手を明日までに直してくれないか?」と相談されたことがあった。私たちは翌日までに直すことはできず、答えは残念ながら「No」でその場は終わってしまった。ところがその後、香港のマンダリン オリエンタルホテルに研修に行ったとき、同じように翌日帰るお客様の取っ手の壊れたスーツケースが持ち込まれたことがあった。コンシェルジュの答えは「Yes」。彼らは修理できる特別なルートを持っていて、翌日どころか2〜3時間で修理して届けてしまった。香港のホテルはチップの習慣があり、コンシェルジュたちは個別にチップをもらう。チップ総額は給料を上回るので、「No」と言えば、収入が増えなくなってしまう。そこで、どんなことでも対応する手厚いサービスを提供しようとするのである。

2次提案、3次提案がサッとできる感性を磨け
私はこの体験から強烈なプロ意識とホテルマンとしてのプライドを学んだ。まず「Yes」で引き受けてとにかくベストを尽くす。それでもできなかった場合でも「No」ではなく2次提案、3次提案をする。もし、修理できないのなら、「私どもでお貸し出しできるスーツケースをご用意しております。取っ手の壊れたスーツケースはお預かりしまして、次回、ご来館されるときまでにきちんとお直ししておきますが、いかがでございましょうか」。もし、しばらく来館の予定がなければ、「それでは私どものエンジニアに応急処置をさせます。それでよろしければお預かりいたしますが」。「重い書類を詰めていくので、それでは心もとない」という返事なら「それでは、取っ手の応急処置をいたしますので、それに荷物をお詰めください。そのうえで、安心してお持ち帰りいただけるようにロープを張って処置をいたしますが」。「そうか。それじゃ、取り急ぎそれで頼む」というときに初めてお客様のご要望に対して答えを出すことができる。
2次提案をすれば、そのあとはお客様の返答しだいでまた新たな提案が考えられる。ホテルマンに限らず、どんな提案ができるかは、サービスをする者の力量にかかっている。豊富なアイデアを常に持っておくためには頭を柔らかく、感性を鍛えていなければならない。通勤の際も、毎日同じ道を歩くのではなく、違う道を歩いて新しい発見をする。それだけでも感性が磨かれる。たとえ100%でなくても、最大限お客様の要望に応えていく方法を考えるようにしたいものである。
情報提供や確認を的確にしておくことも大切なことである。お客様にいろいろなことを尋ねられる。たとえば、「近場でおいしい焼き肉レストランはないか」「ハイ、この店はいかがでしょうか」。すると、「あんた、行ったことあるの?」と問われる。ホテルマンの給料では、高級な店に行けないことも多い。「いえ、ほかのお客様が行かれておいしかったとよく聞きます」。「それはおまえの情報ではないじゃないか」と言うお客様がいる。いまはインターネットで何でも調べられるが、自分自身がサービスであるという自負があるなら、自身で確認した情報をお伝えできるようにするべきである。
私がベルマン時代にこんなことがあった。外国人のお客様がタクシーに乗るときにメモを渡したので、私が日本語でその場所を書いて運転手に渡した。しかし、30〜40分ほど経って戻ってきて、玄関先で2人が口論していた。聞けば運転手が道に迷って目的地に到着するのが遅れ、お客様が行きたかったクラブはすでに閉店してしまっていたとのこと。お客様は「目的を達成していないのだからお金を払わない」と言って怒り出し、私にも「ここに電話番号が書いてあるのに、なぜ店に電話を1本入れて営業時間を確認しなかったのか」と言う。お客様の言い分は自分の案内に責任を持たなかったベルマン、道に迷ったタクシードライバーはプロとして失格だというのである。
結局、お客様の提案でタクシー料金をそれぞれ3分の1ずつ払うことで話は収まった。このとき、情報は単に右から左に伝えるだけではなく、1つずつ確認して初めて役に立つのだ、ということを痛感した。これは、資料作成、データ作成など何事についても情報を取るときは同じではないだろうか。
ホテルオークラのスタッフは自ホテルを「わざわざホテル」と言っている。それは、他の一流ホテルが人の集まる場所に立っているのに対し、ホテルオークラは東京の虎ノ門のオフィス街にある。ホテルオークラに来られるお客様は何かのついでに来られるのではなく、ホテルオークラに来る目的があって来られるお客様ばかりで、わざわざここまで来てくださるお客様に対して我々は「紙一重上のサービス」を提供しようとしてきた。
ベルマンは初めてのお客様が来ると、まず荷物のネームタグをさっと見て名前を確認する。「○○様、いらっしゃいませ」。こう名前を呼びかけることで、それは画一的なサービスではなく、そのお客様ひとりへのサービスに変わる。チェックアウトのときに雨が降ってきたので「傘をご用意いたしましょうか」「イヤ、あとは新幹線に乗るだけだから、ぬれないところまでタクシーに乗せてもらうからいいよ」「そうですか。ありがとうございました。行っていらっしゃいませ」。そして、1カ月後に同じお客様がみえたとき、「あ、そういえば、雨、大丈夫でしたか?」とサッと言えれば昨日のことのように話を続けることになり、スマートなコミュニケーションが可能になる。このお客様は初めて来日したのでこんな話から切り出していこうかと考えたり、足をひきずったお客様がチェックインしたらエレベーター近くの部屋を取るように配慮したり、結婚式で媒酌人がその日の新聞の一節についてスピーチで触れたらサッとコピーを取って皆さんのテーブルにお配りする、などといった気遣いが紙一重上のサービスには必要となる。
きちんと挨拶できる新入社員は10%
百貨店などでも同じで、支払いの際、クレジットカードを出せば必ず名前が入っている。その名前を読み取り「○○様、ありがとうございます」と言った時点で、その人だけへのサービスに変わる。ほんの少しのことでも、お客様が好感を持ってくれたら、そこから会話が生まれるかもしれない。コミュニケーションの少ない現代だからこそ、小さな心配りが大きなサービスの差となって表れると感じている。
お客様に満足感を与えるには、美しい言葉遣いも必要である。コミュニケーションが不足している現在、日本人でありながら、美しい日本語をきちんと話せない人が非常に多い。テレビでも乱れた日本語が飛び交っている。これは対面販売だったお菓子屋さんがコンビニにかわったり、電話よりもメールを使い、人と人とが直接会話をする機会が減少していることも影響しているだろう。私は常々、仕事に欠かせないのは2つのCであると考えてきた。それは「コミュニケーション」と「コンファメーション」である。コミュニケーションの基本は挨拶だ。
しかし、小学生を対象とした全国的な調査によると、いわゆる一般家庭で「おはよう」「おやすみなさい」「行ってまいります」「ただいま」といった基本的な挨拶が交わされているのは全体の60%程度しかなかったという。私が研修を担当している若い新入社員たちを見ていても、きちんと挨拶ができるのは全体の10%程度。つまり、現代社会では、挨拶がきちんとできるというだけで他人と差がつくのである。
コンファメーションには「確認」という意味がある以外に、コミュニケーション(挨拶)の対として、「返事」という意味もある。職場をちょっと離れるときには「行ってきます」「行ってらっしゃい」。休憩から戻ってくれば「ただいま戻りました」「お帰りなさい」。このような会話のキャッチボールこそが、仕事上のささいなミスを防止することにもつながる。ある米国の保険会社の調査によると、朝、「行ってらっしゃい」と家族から見送られた人のほうが突発事故にあう確率が低いという。きちんと見送られる人のほうが、その日1日の精神が落ち着くということの裏づけといえるのではないだろうか。
債権回収のプロと警察のプロのコミュニケーション力
「そんな意見を言っていいのですか。あなたにも家族があるだろう。われわれの意見に反対するとあなたと家族のためにならないよ!」という声が、会議の雰囲気を凍らせた。
私は思わず発言者の顔をまじまじと見た。どちらかというと端正で、一見すると冷静な表情である。ただし、唇と頬に緊張が観察されたので、内心はかなり不安を感じていると判断できた。
この瞬間に「感じが悪い人はなぜ感じが悪いのか」という研究テーマが私の頭に浮かんできた。新しい研究テーマを発見するきっかけを与えてくれたことに若干の感謝を感じているが、あの恐喝者まがいのビジネスパーソンに、私は二度と会いたいとは思わない。

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「感じのよさ」自己チェックシートコミュニケーションを「仲良くなるためのコミュニケーション:friendshipを目指すコミュニケーションという意味でF型コミと省略」と「対立して、相手を説得または屈服させるためのコミュニケーション:confrontation=対立という意味でC型コミと省略」に分けて考えてみよう。
企業で実施されているコミュニケーション・スキル研修のほとんどが、F型コミ・スキルの習得を目的としている。マネジャーやエグゼクティブのコーチングでは、「事業部長の鈴木さんは優秀なのだけれど、つぶされる部下が多く問題になっています。なんとかできませんか」という依頼が多い。この場合は、C型のコミュニケーションばかりしていた鈴木さんに、F型コミュニケーションができるようにすることがコーチングの目的になる。
F型コミ志向のトレーニングには2つの前提がある。一つ目は、F型コミをするのか、C型コミをするのかは、状況に関係なく人間が選択できるという前提である。二つ目は、F型コミは人によい印象を与え、C型コミは悪い感じを与えるという前提である。
まず一つ目の前提が怪しい。F型コミとC型コミを人間が選択できるなら、仲間割れは起きないはずだ。たとえば、新たにプロジェクトが発足したとき、たいてい和気あいあいで、未来への希望に燃えている。仲間割れがよいと思う人はほとんどいないだろう。F型コミとC型コミを選択できるなら、ずっとF型コミでいけばよい。ところが時が経つにつれて、お互いの考えや価値観の違いがあらわになってくる。組織を一つにまとめようとすれば、リーダーは反対意見を抑え、リーダーの意思に従わせるため、C型コミをとらざるをえなくなる。
コミュニケーションは、社会的なコンテクスト(文脈や流れ)のなかで発生する。人と人との関係で重要なコンテクストは、仲良くするコンテクスト(接近)と対立するコンテクスト(回避)の2つであろう。当事者同士はコンテクストを選択できない。仲良しコンテクストならF型コミがふさわしく、対立コンテクストならC型コミが有効である。もしコンテクストに関係なく、C型コミかF型コミかを自由に選べば、社会生活は破綻してしまう。
たとえば結婚式の披露宴に招かれた人たちは、仲良くするコンテクストに組み込まれている。そのような流れのなかでC型コミを選択し、「あなたのスピーチは人生の本当の姿を無視していて賛成できないです。そもそも結婚が人間に幸福をもたらす保証などありませんよ」などと言いだしたら、せっかくの披露宴は台無しになるだろう。対立するコンテクストにF型コミをもちこんで「悪い感じ」を与える典型的な例は悪徳業者の愛想笑いコミュニケーションである。つまりF型コミは感じがよく、C型コミは感じが悪いという二つ目の前提も間違っている。留意すべきは、コンテクストに合わないコミュニケーションをすると感じが悪くなるということだ(*注1)。
ビジネスの現場では利害が相反する対立コンテクストのほうが、仲良しコンテクストよりも多いのではないだろうか。そのため「さあ、みんなで仲良くやりましょう」という流れのなかで有効なF型コミよりも、「生き残るためにわずかな利益をいかに自分のものにするのか」という厳しいコンテクストのなかでのC型コミのほうが重要だと思われる。
冒頭の恐喝的な言動をしたビジネスパーソンと私は、利害の相反する対決コンテクストのなかで出会っていた。恐喝的な言動がC型コミの一種と考えれば、あのビジネスパーソンはコンテクストを正しく読み取っていたのである。「二度と会いたくない」と思わせたのはC型コミのスキルに問題があったからではないかと仮説を立てた。
そこで私は究極の対立コンテクストのなかで、C型コミを駆使して、対決する相手から「敵ながらあっぱれ」と心から思わせる人を探すことにした。究極ともいうべき対立コンテクストが存在する職業として債権回収と警察を選び、債権回収に関してトップクラスのビジネスパーソンと弁護士、30年を超える刑事歴を持つ人にインタビューをお願いした。そのインタビューからC型コミの3つの鉄則を抽出することができた。
●鉄則1:相手の立場に立って考える
莫大な借金を背負った債務者は、破産申請してしまえば債権者が自由に財産を処分できなくなることを知っている。犯した罪が重いとき、犯人が死刑を覚悟してしまうと、容易に自供しない。債権回収の現場でも、取調室でも、相手が居直ってしまうとコミュニケーションの目的は達成されない。
悲観的な考え方をするギャンブラーは、負けが込むと絶望にかられ衝動的になり、一か八かの大勝負に出る傾向が高いという研究結果がある(*注2)。
債権回収と警察のプロの人たちに、仲良しコンテクストと対立コンテクストの状況で、自分がどんな感情を感じるかを評価してもらったところ、日本で有数のC型コミのプロですら、対立コンテクストでは、緊張と不安が2〜4倍倍も高まることがわかった(*注3)。
彼らと対立している債務者と被疑者は不利な立場にあるため、さらに緊張と不安は大きく、おまけに悲観的になっているはずだ。負けが込み、やけを起こしたギャンブラーの心境に近くなっている。
債権回収と警察のプロは共通して、対決カードをやたらと切ってはいけないと言う。
刑事歴30年のベテランは「何日も口を利かない暴力犯を取り調べたことがある。ある寒い朝、彼がずっと着の身着のままであることに気付き、黙って温かい衣服を渡したら、翌日から素直に取り調べに応ずるようになった」というエピソードを披露した。
債権回収で辣腕をふるった銀行家は、「三途の川を渡るところまで見届ける」ことを信条にしている。企業が倒産に瀕したとき、善意の経営者は長年働いた従業員の給与だけでも、倒産を前に払ってやりたいと思っている。給与の支払いに充てる資金を貸すと、恩義に思った経営者は、融資してくれた銀行に対して債権回収に協力してくれるようになるという。ともに、C型コミにおいて、相手の立場に立つことの大切さを物語っている。
しかしC型コミのプロたちが対決カードを出さないのではない。C型コミのプロたちは、対決の場面で、相手を「おそれさせ」「恥ずかしい思いをさせ」「罪悪感を抱かせる」行為を仲良しコンテクストに比べて2〜4倍の頻度で行っていることがわかった。太陽だけでなく、北風も吹かせている。しかし相手の立場に立って考えずに、北風だけを吹かせると、プロではなく、単なる感じの悪い人になってしまう。
●鉄則2:考えを明確に表現する
 C型コミのプロたちは口をそろえて、「相手が何を考えているのかわからないとき、相手に不快感を持つ」という。
対立コンテクストのなかで、プロたちも「次に起こることへの不安」を強く感じている。そのような心理状態にあるとき、相手が何を考えているのかがわからないと、不安を超えて、不気味さまで感じてしまうだろう。まして交渉の最終段階になって隠されていた意図があらわになったとき、「だまされた!」という思いしか残らず、交渉のプロでも、「あんな奴の顔を二度と見たくない」という思いにとらわれる。
取調室で、被疑者と初めて対面するとき、刑事はまず、自分はどこに住んでいて、どんな趣味を持っているかなど、自分がどんな人間かを示すと、被疑者は口を開きやすくなるという。債権取り立てのトップ弁護士は、債務者またはその代理の弁護士と、共通の目標とマイルストーンを設定し、粘り強く交渉するうちに、双方でなんとなく社会的に意義あることをしているという協働意識が芽生えてくるという。
対立コンテクストでは、ウィン−ウィンの結果で終わることはない。借金の取り立てに成功すれば債権者の勝利であり、債務者はその交渉に関していえば敗北である。したがって共通の目標とは幻想とよぶべきものだが、それでも共通の目標設定をしていくのがC型コミュニケーションの極意である。意図を隠してしまうと共通の目標を設定することができない。感じが悪い人は、自分の意図を隠し、共通の目標設定をする努力をしない人であるといってもよいだろう。
●鉄則3:ネガティブな情動の制御
 F型コミュニケーションの達人といえる人にもインタビューをした。一流のホテルパーソンなど接客を職業にしている人たちである。接客業では仲良しコンテクストのなかで、F型コミを使うことが主な仕事である。
債権回収と警察のプロと、ホテルパーソンのそれぞれが、仲良しコンテクストで感じる情動の強さを一として、対立コンテクストでは何倍の強さを感じるかを調べたところ、債権回収・警察のプロは、接客プロに比べて、緊張や不安を感じる度合いの変化が少ないことがわかった。つまり債権回収・警察のプロはネガティブな情動を接客のプロに比べて強くコントロールできていると考えられる(*注4)。反対に接客プロは仲良しコンテクストでは、債権回収・警察のプロよりも楽しさを感じやすい傾向が見られる。
感じの悪い人は、彼らとは逆に、仲良しコンテクストではあまり楽しそうではないし、対立コンテクストではネガティブな情動のコントロールができない人であるといえそうである。
感じのよいビジネスパーソンとして成長するための第一歩は、まずコンテクストを正しく読み取ることだ。次に、対立コンテクストではネガティブな情動をコントロールしつつ、相手の立場を理解し、こちらの意図をわかりやすく伝え、幻想でもよいから共通目標をつくりだす対話スキルを習得する。最後の仕上げとして、仲良しコンテクストでは、ポジティブな情動を解放するすべを身につける。この成長プロセスを経ることで、あなたはビジネスの修羅場で対立した相手から「敵ながらあっぱれ。もう一度あいつに会いたい」と賞賛されるビジネスパーソンになれるだろう。
*注1:James J. Gross“Handbook of Emotion Regulation”p140
 *注2:前掲書 p172
 *注3:アセスメントはBartlettとIzardのDimensional Rating Scale(DRS)とthe Differential Emotions Scale(DES)を使用
 *注4:サンプル数がまだ少なく、データの信頼性と妥当性は未検証である。しかしSeligmanたちが2001年に行った研究“Why lawyers are unhappy”などを考慮すると、弁護士など対立コンテクストのなかで仕事をする人たちは、ネガティブな情動に慣れていると推察できる
未曾有の経済危機のなかで、採用を減らしている企業にとっては、いかに良い人材を見分けるか、眼力が問われます。
そこで、企業に応募してくる人間をいかに峻別するか、私なりのノウハウをお伝えしていきたい。それは、私が総理首席秘書官の時代に行った閣僚候補のいわゆる「身体検査」とは、やり方は違いますが発想は一緒です。
まず、最初に「履歴書のウソ」の見抜き方です。
再就職しようとする人間は、自筆の履歴書を提出します。仮に過去の職歴がA社に5年、B社に4年と記してあったとしましょう。しかし、その内容はあくまでも自己申告です。もしかすると、実際はもっと頻繁に会社を替わっていて腰を据えて仕事をしたことがない、問題がありそうな業界で働いていた、あるいは何もせずにブラブラしていたということもありうる。その部分は省いて、無難なA社の社名だけ書き、空白期間を埋めるために本当は2年なのにA社に5年勤務と誤魔化している可能性があるのです。
採用する側としては、直近の職場以前のことについてチェックするのは難しいもの。結局、その履歴書の内容を前提に「字がきれいで几帳面そうだ」などといったことを判断材料にして、その場の雰囲気で採用するのが現状です。
そこで、私ならどうするか。まず履歴書を提出してもらうまでは同じ。次に、それを受け取ったあとで、こう指示を出すのです。「次の面接までに社会保険事務所に行って、年金記録台帳のコピーをもらってきてください」。
持ってきてもらった記録を見れば、過去の職歴は一目瞭然です。実際には1〜2年ごとに会社を替わり、過去に5回も6回も転職していたとわかれば、仕事に対する姿勢に疑問符がつきます。
同時に、その記録で年金保険料の事業者負担額と本人負担額もわかるので、過去の所得状況も把握できます。「前の職場では年収○○万円を得ていたので、その程度は欲しい」という本人の希望額が妥当かどうかもチェックできるというわけです。
ポイントは履歴書を受け取ったあとに提出してもらうこと。第二次書類選考と称して、「次回の面接時に提出のこと」とするのです。すると、履歴書にウソを書いた人は「しまったッ!」となります。履歴書の内容とツジツマが合わないので、指定の面接日に来社しないかもしれません。政府関係者も、すべてをオープンにすれば何もかもが解決すると考えるのでなく、慎重に政策決定をしなくてはいけないという好例でしょう。
自動車免許証からもさまざまな情報を手に入れることができます。その人の性格や仕事への姿勢が判別できるかもしれません。
免許証には、氏名や生年月日、本籍、住所、有効期限等々が書き込んであります。しかし、交付年月日欄の日付の右に、5桁の数字が並んでいることを意識している人はほとんどいません。実はこの数字を見れば、どんな時間帯に免許の更新に行ったか容易に想像がつくのです。先頭の数字は免許更新センターの撮影装置の番号で、「15」ならNO.15のカメラで顔写真を撮ったということ。問題は下3桁です。この数字が「258」なら、NO.15のカメラで258番目に受け付けたということを表しています。
258番目ということは、当日だいぶゆっくり出かけていったということです。少なくとも、朝一番の受け付け開始早々には行っていない。土・日や休業日でもなければ、サラリーマンが免許証を更新する場合、「明日、免許証の更新手続きをしなければいけないので」と会社や上司に「遅刻の許可」などをもらうことになるはず。
営業職を志望する人間で、もし平日にゆっくりと免許センターに行くことができているというのであれば、ちょっと業務を遂行する姿勢に問題ありです。仕事をサボっている、または適当な理由を見つけるのが得意な人材である可能性がある。会社や職種によって勤務形態はいろいろなので一概には言えませんが、番号一つで、その人がどんなライフスタイルを送る人間なのか、判別するための材料になるのです。もちろん土日を利用した、または警察署で免許証を更新するという抜け道にも着目しなくてはなりません。抜け道を利用して極端に若い番号をとったうえで先ほどの情報を流せば、あなたは労せずして周囲からの信頼を勝ちえるでしょう。
2010年08月19日00時44分 / 提供:産経新聞
  「本当に反省しているなら、最低でも3年間ぐらいは刑務所に入っていてほしいです」。東京都練馬区の自宅で2月、当時中学3年だった次男(15)をトイレに計約10日間閉じ込めたとして、監禁罪に問われた母親で無職、中島まゆみ(47)と、交際相手の音楽教室経営、川崎輝久(34)両被告の初公判。母への思いを次男は陳述書にこうつづらなければならないほど、受けた虐待行為は残忍だった。
 幅約1・26メートル、奥行き約0・95メートル、高さ約2・24メートルのトイレ。寒さの厳しい2月、唯一、温(ぬく)もりを感じさせてくれるはずの暖房便座も取り外されていた。
 狭く寒い空間に、Tシャツと下着にパジャマを羽織っただけの次男は計約10日間、閉じこめられた。扉は横約6センチ、縦約3センチの木片で外から固くねじ止めされた。飢えをしのぐための食料は、与えられた食パン6斤と500ミリリットルのペットボトルの水1本だった。
 「寒い。いつになったらここから出られるんだろう。死んでしまうんじゃないかと思った」
 次男は調書の中で、監禁の恐怖をこう振り返った。
 虐待のきっかけは、母の中島まゆみ被告が、川崎輝久被告にしつけを依頼したことだった。寄り道や居眠り、つまみ食いを理由に、暴行はエスカレートしていった。次男は電気コードやハンガー、金属の模擬刀、車のアンテナと、あらゆるもので全身を殴られた。
 「体でわからせなきゃ、わからない」という川崎被告に呼応するように、中島被告も角材で約80回殴るなど、暴行に加担。昨秋からは食事も食パンしか与えなかったが、2人はそばで鍋をつつき、酒を飲んでいたという。監禁も、空腹に耐えかねた次男がスーパーで試食品を食べ、帰宅が遅れたことなどが理由だった。
 「次男は時間や金銭感覚にルーズで、就職する前に直したかった」「学校にも何度も呼び出され、(世間から)後ろ指をさされたくなかった」。中島被告は被告人質問で、暴行の背景に次男の養育への悩みがあったことを明かし、「もっと抱きしめてあげればよかった。後悔ばかりしています。ずっと愛しています」という、次男にあてた手紙も涙ながらに読み上げた。
 しかし、暴行と監禁の結果、次男は救出されたとき、身長約165センチに対し、体重は40キロに満たないほど衰弱。自分で立てないほどだった。暴力へのおびえから、「またトイレに入れてほしい」と助け出した長男に懇願したという。
 「たたいているとき、トイレに閉じこめているとき、どんな気持ちだったのですか」。次男が陳述書に込めた叫びは、2人にどう響いたのだろう。

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