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虐待・DV

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 東京都江戸川区で1月、小学1年の岡本海渡(かいと)君=当時(7)=が両親から暴行を受けて死亡した事件で、傷害致死罪に問われた継父で電気工の健二(31)と母親の無職、千草(23)両被告の裁判員裁判の第2回公判が29日、東京地裁(登石郁朗裁判長)で開かれた。被告人質問が行われ、健二被告は「しつけの範疇(はんちゅう)では必要だと思った。今思えば虐待だったが当時は気づかなかった」と述べた。
 健二被告は、海渡君が「素直に謝らなくなったため暴行がエスカレートしていった」と説明。「自分も親にされたように、(手を上げて)教えないといけないと思った」と話した。
 また、健二被告に先立ち、千草被告の被告人質問も行われた。15歳で海渡君を出産した千草被告は「若い母というプレッシャーもあり、海渡に悪いところを直してほしいという思いが強かった。主人の暴行を止めると、甘やかすことになるんじゃないかと思った」と暴行がエスカレートしていった状況を説明。弁護人に海渡君への思いを問われると「強く抱きしめてあげたい」と涙ながらに答えた。
 起訴状によると、2人は1月23日夜、海渡君の頭をこぶしで殴るなどして意識を失わせ、嘔吐(おうと)物が肺に入ったことによる肺炎で翌24日に死亡させたとされる。
http://news.livedoor.com/article/detail/5040990/
(5)支援から逃げる親たち 児相からの手紙、黙殺した母
 児童相談所の職員が残した手紙を23歳のシングルマザーは黙殺し続けた。社会を揺るがした大阪市西区の2幼児遺棄事件。住民から3回の虐待通報を受け、職員が5回の家庭訪問を重ねながら、子供たちの存在さえ確認できなかった。
 4、5回目の訪問の際、職員は連絡を求める手紙を残した。最初はマンション1階の集合ポスト、次はドアポスト。所定の封書に、あて名は不明のため空欄、差出人として児童相談所と職員の名があった。
 手紙は事件後、警察による現場検証で室内の簡易キッチンから見つかった。母親は手紙を手にしても自ら連絡を取ろうとはしなかった。A4判で、2通ともこう手書きされていた。
 《お子さんが泣いているという知らせを聞いたため調査しております。つきましてはお子さんのご様子をお聞きしたいと思いますので当方までご連絡ください》
 児童相談所は「連絡が取れない場合の通常の対応だった」と話すが、東海学院大学の長谷川博一教授(51)=臨床心理学=は「読んだ母親はおびえただろう。子供を放置しているのがばれたんじゃないか、まずい、逃げなければと」。
大阪の事件で明らかになったのは、従来の福祉の「支援」に近づかない親たち、支援から逃げる親たちの存在だった。
 長谷川さんは「支援を求めないのは言われることが予測できるからだ。福祉の指導には『あなたの気持ちは分かるけど』『つらいのは分かるけど』と必ず『けど』がつく。彼らは同じことを親や教師からも言われてきた」。
 岐阜県の主婦(27)は長男の3歳児検診の際、長男が保健師と会話しなかったことから「母親と接する時間が十分ではないのでは」などと注意された。
 「助言のつもりかもしれないが『あなたの育児は不合格』と言われたようだった。支援と言いながら欠点を責め立てられるのでは、母親は孤立するしかない」
 児童相談所の職員は「どんなアプローチの仕方でも支援に防衛的になる親はいる。うちが前面に出ると身構える親には福祉事務所の職員を間に立てるなど工夫しているが、そもそも他人とかかわることが苦手な親もいる。難しい」と話す。
「一線」を越えてしまう親たちの心を考えてきた。だが一線を越えないまでも子育てに迷いは尽きない。育児に悩み、孤立を感じるからといって一線を越えることを正当化する理由にはならない。こんな体験を持つ人もいる。
 東京都の会社員、野村みずほさん(34)=仮名=は25歳のとき夫と離婚した。長男は1歳だった。頼る身内はなく養育費もなかった。正社員の募集は子供がいたため十数社落ちた。
 「この子さえいなければと思う夜が何度もあった。でも一方で、この子のために頑張ろうと思う夜もたくさんあった」
 シングルマザーが借りられた部屋は小さなアパートだった。右隣に30代のエンジニアの男性が暮らしていた。野村さんは郵便受けに手紙を入れた。
 《子供の夜泣きでご迷惑をおかけしてすみません。気になることがあれば言ってください》
 数日後、ドアのノブに風船がくくられ、小さなメモが添えられていた。
 《全く問題ありません。よかったらお子さんにどうぞ》
 直接話したことはない。りんごや柿をおすそ分けし合う、ドアノブのつき合いが続いた。長男は今年10歳になった。自身は設計事務所で正社員として働く。
 「ここまで来られたのは他人だけど身近な人の励ましのおかげだった。人とのつながりのためだった。周りに目を向けてほしい。目を閉ざさないでほしい」

「お尻ぺんぺん『正解』か自信ない」「叩かれた娘、大人の顔色観察」…読者の声
児童虐待の問題を考える連載の第4部「なぜ親は一線を越えるのか」へたくさんのメールやファクスをいただいた。しつけと虐待をめぐる社会的合意があいまいな中、連載で紹介した以上に幅広い意見が届いている。
 東京都の41歳の男性は《3歳の息子にお尻ぺんぺんをしたことがある。お尻ならけがをしないだろうという昔の知恵だと思い、決して感情的にならないよう安全に配慮しているつもりだが、正解か自信はない》。
 北海道の44歳の女性は《虐待か否かの線引きという微妙で意見の分かれる領域は、性急に線引きしない方がいい。親が自分のしつけが虐待に当たらないかと過敏になり、萎縮(いしゅく)しかねない》とし、こう続けた。
 《体罰を使わずしつけられればなおいいのかもしれず、その工夫は考えた方がいいが、人間は完全無欠ではない。程度がひどくならない限り親の多少の逸脱を許容するゆとりがあってもいい。過度に甘やかし分別のつかない子供にしてしまうことが有害であることも忘れてはいけないと思う》
 小学1年の男児を育てる未婚の母は《息子が他人を傷つけたり心の痛みが分からないときたたくこともある。何をしても謝ればいいという、痛み知らずの大人になってほしくないから。口で言えば分かるという人もいるが、果たしてそうでしょうか。これも合理化、正当化なのでしょうか》。
 東京都の35歳の女性は夫が「しつけのためにたたけ」との方針の上、生活費を入れず、7歳の長女が3歳のとき離婚したという。
 《娘はいまだに「お父さんは怖いからいや」と言う。しつけと称して暴力を使うのは親の都合だと思う。娘は素直で優しい子に育っているが、今も大人の顔色をよく観察している》
 3歳の娘がいる東京都の44歳の女性は《学校で体罰があれほど問題視されるのに、「親だから」と容認され、親も当然の権利と思うのもおかしな気がする》。
 中学3年の長女と小学3年の長男がいる38歳の主婦は育児教室で教わったというこんな言葉を紹介した。
 《いうなれば、乳児は魚。寝る、飲む、泣くしかできない。幼児は犬や猫。寝る、飲む、泣く、遊ぶ。小児はサル。ここまできて人まねができる。子供に多くを求めないほうがいい》
 主婦はこうつづった。
 《子供が言うことをきかないときは、自分の成長不足を疑ったほうがいい。度を過ぎたしつけはしつけではない。愛情表現の一環? 将来を心配して? 子供にたたいて教えても、痛い悲しい記憶しか残らない》
 
(3)親の「懲戒権」 虐待正当化に使われる112年前の法律
「親が子供にしつけをして何が悪い」。わが子を虐待しながら、開き直る親たち。こうした親に強く出られない児童相談所の職員たち…。112年前の法律が現代の児童虐待対応をためらわせている。明治31(1898)年に施行された民法の822条に親権の一つとして規定された、親の子供への「懲戒権」。
 駿河台大学の吉田恒雄教授(60)=児童福祉法=は「懲戒とは、言葉としては懲らしめ、戒めだが、中身としてはしつけを意味してきた。しつけの方法として体罰が社会的に容認され、しばしばエスカレートして虐待となる中、懲戒権は虐待する親たちに自身の行為を正当化する口実として使われてきた」。
 虐待の問題に詳しい磯谷(いそがえ)文明弁護士(42)によると、インターネットなどで懲戒権を知り「法律にあるじゃないか」と児童相談所の職員に迫る親もいるという。磯谷さんは「職員も民法に規定されている以上、どうしても対応が弱腰になってしまう」と話す。
 条文中の「懲戒場」も実在しない。民法という法体系の根幹に、なぜこうした規定が存在するのか。
 ≪家父長制で秩序維持≫
 東京大学の利谷(としたに)信義名誉教授(78)=民法・法社会学=によれば、懲戒権は明治3(1870)年から12年間だけ施行されたわが国初の刑法「新律綱領」にさかのぼるという。
 綱領は、子供が父母の「教令権」に従わなかった場合、「杖一百(じょういっぴゃく)」つまり木の棒による百たたきの刑を科した。利谷さんは「明治政府は家長や親といった家族秩序、師弟秩序により社会全体の秩序を維持しようとした」。民法がフランス法などを参考に作られたときも、この江戸時代以来の思想は受け継がれたという。
 敗戦により、家父長制度は解体されたが、懲戒権は残った。利谷さんは「戦後、人権尊重に立つ憲法の下で懲戒権を認め続けたことは正しかったのか。もっと議論する必要があった」と振り返る。
 法務省は昨年、有識者会議「児童虐待防止のための親権制度研究会」で懲戒権について初めて検討した。今年1月に公表された報告書は「懲戒権を削除すべきとの意見がある」としながら、「削除が社会的にどのように受け止められるかといった点に配慮しつつ、さらに検討が深められることが期待される」と玉虫色の表現にとどまった。削除により親が「しつけができなくなる」と誤解しかねないなどとされたためだった。
 研究会の委員を務めた磯谷さんは「削除しても、必要なしつけは820条の『監護教育権』に基づいて行うことができると解されている。明治以来の懲戒権がなくなることは、親権を子供の利益のためのものという本来、当たり前の姿へ変えていくための大きなメッセージとなる」と話す。
 ≪「親だけができる」≫
 虐待する親が「しつけのため」と口をそろえる背景を探る中で、われわれの社会に多様な考え方があることを紹介してきた。
 2児の母である東京都の派遣社員の女性(38)は「私も子供によかれと思ってしかるが、感情的になっては耳をふさがれるだけで響かない。根気よく同じことを身につくまで千回でも言い続けられるのは親だけです」とし、こう続けた。
 「しつけって、手芸の『しつけ糸』のようなものだと思う。きれいに縫えるラインを大まかに親がガイドする。縫うのは子供自身。多少曲がったり、よれたりするけれど、何となくできる。社会にはルールがあるからあまり外れすぎて他人の不快になるようなことはだめ。そういうことがしつけではないかと思う」

(4)「マムズ・ボーイフレンド」 ママの彼氏…虐待リスクに
23歳の独身男が1歳の男児と長い夜を過ごしていた。堺市で4月、キャバクラで働いていた21歳の母親の長男、岩本隆雅(りゅうが)ちゃんが母親の交際相手に虐待され死亡する事件があった。逮捕され傷害致死と傷害の罪で起訴された男は、調べに対しこう供述した。
 「最初はかわいがろうとしたが、テレビを見ていて泣きやまなかったり、食べものを吐いたりするのを見て、しつけのつもりで頭をたたくようになった。言うことを聞かないとき、いらっとして手を出した」
 男はキャバクラで「母親担当」のボーイだった。出勤を確認したり「仕事がんばれ」と励ましたりする中で、前夫と離婚したばかりだった隆雅ちゃんの母親との交際が始まったという。母親のマンションで同居を始め、自分は仕事を辞めた。虐待は母親が仕事に出ている夜間に起きた。
 しつけと称する虐待に、母親は「怒るときは私が怒る」と一度は抗議したというが、周囲に打ち明けることはなかった。男は調べにこうも供述したという。
 「隆雅には悪いことをした。他人の子だからやってしまったのかもしれない」

母性より「女性」
 「マムズ・ボーイフレンド(ママの交際相手)」
 米国では母子家庭へ同居する交際相手、内縁の夫をこう呼び、高い虐待リスクが指摘されているという。
 「子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク」理事長の山田不二子医師(50)は「母子家庭の女性は一度男性を失っており、わが子もかわいいが新しい男を失いたくないとの心理が働く。男も父親を無理に演じる。男が再婚して継父となれば住民基本台帳にも載るが、内縁関係は外から見えづらく、行政が把握するのは至難の業となる」。
 虐待死を検証する厚生労働省の専門委員会によると、平成21年3月までの2年3カ月間に死亡した145人のうち主な加害者が実父母の場合は115人と8割を占めた。交際相手と実母は15人で1割にすぎないが、しばしば重大な結果を招いているのが実情だ。
 東京都葛飾区で1歳の長女を虐待により死亡させた母親も、きっかけは一緒に起訴された男との同居だった。東京地裁の裁判長は判決で「共犯者に気に入られたい一心で、共犯者と理不尽な暴行を繰り返した」と指摘し、こう述べた。
 「被告は共犯者に嫌われたくないとの思いから、いわば『女性』を『母性』に上回らせ…」
 血のつながっていない子供を虐待するのは、動物的な本能なのだろうか。
 動物行動学研究家で作家の竹内久美子さん(54)によれば、動物にも「交際相手」による虐待がある。サルのハヌマンラングールやライオンではオスが群れを乗っ取った際、メスを一刻も早く発情させるため、先代のオスの乳飲み子をすべて殺してしまう「継子殺し」がよく知られている。
 竹内さんは「こうしたオスの行動は、動物が自分の遺伝子を残すために行動するという進化論の『利己的遺伝子』の考え方から説明できる。メスもそれを受け入れる」と説明する。
 だが、動物と人間には決定的な違いがある。
 竹内さんは「人間という動物は複雑な社会生活を営んでおり、世間の評判や報復も考慮している。そのためもあり、継父や交際相手はほとんどの場合、母親の子供を立派に育てている」とし、こう続けた。
 「動物は子供を虐待している意識もなければ防ごうともしない。子供を傷つけてしまうのも人間ならば、虐待を回避するため努力するのもまた人間なのです」

 
(1)「しつけのため」口そろえる虐待親たち 便利な言葉で正当化
 
「正直、私は虐待だと思っていません。彼は子供が憎くてやったわけではない。それなのに、私は彼を犯罪者にしてしまった」
 川崎市高津区の無職女性(38)はあの日以来、どこにもぶつけられない気持ちを抱えて生きていた。
 8月16日夜。アパート1階の女性宅で、女性と市立小1年の双子の長男(6)、次男(6)、42歳の土木作業員の男性が4人で食卓を囲んでいた。男性は1年ほど前に携帯電話の「出会い系サイト」で知り合い、静岡県三島市から月に1度、女性宅を訪ねていた。
 食事中、子供たちがふざけて、言うことを聞かないことがあった。男性はプラスチック製の結束バンドで2人の両手と体、両足首をそれぞれ縛り、体操座りをさせた。バンドは体に食い込んだ。
 近所の住民が「あまりにひどい泣き方をしている。児童虐待ではないか」と110番通報した。暴行の現行犯で逮捕された男性は調べに対しこう供述した。
 「母親の言いつけを守らないため、しつけのつもりでやった」
 女性も調べに「男の人にしつけをしてほしかった」と話した。子供2人にけがはなく、あざもなかった。男性は今月3日、恒常的な暴行はなかったとして不起訴(起訴猶予)となった。
 女性は未婚の母だった。父親となる男は妊娠を知ると逃げていったという。
 「1人で育てるのは無理だと思い、不安はいっぱいあったが、母親として子供たちと一緒に頑張っていこうと決めた」
 当初こそ順調だったが、やがて成長し今春、小学校へ上がると目立ってやんちゃになった。女性は「いろいろなやり方を試した。叩いたりもした。でも叩きたくて叩いたのではなく、痛みが薄いと思ってお尻を選んだ。かわいいわが子を好きで叩く母親なんていない」とし、こう訴えた。
 「児童相談所へ相談しても、『大変なのは分かるけれど』と事務的な返事しかなかった。逮捕された彼は、母子家庭のことを思って、子供たちをしつけてくれただけなんです」
 東京都江戸川区で今年1月、小学1年の岡本海渡君が虐待後に死亡した事件でも、継父は「しつけだった」と話した。
 しつけ。本当にそういえるのだろうか。虐待する親たちは、なぜ「しつけのため」と口をそろえるのか…。
 ■お前じゃしつけられない
 《被害児が手づかみで食事をしたとき、ユニットバスに連れて行き『何で分からんのよ』と怒鳴り、浴槽壁面に体を打ちつけるなどの暴行を加えた》《自分で靴を履かなかったことから怒り、ユニットバスに閉じ込めたまま外出した》…。
 東京都葛飾区のマンションで1歳10カ月の長女を虐待により死亡させたとして傷害致死罪に問われ、懲役6年の判決を受けた無職の母親(23)の裁判員裁判。7月下旬、東京地裁の裁判長は一緒に起訴された交際相手の無職の男(33)による虐待行為を詳述した判決文を読み上げた。
 母親は前夫と離婚し、出会い系サイトで知り合った男と同居を始めた。翌日から、主に男による長女への身体的虐待が始まった。ユニットバスから長女の「ギャー」という叫び声が響いた。布団たたきの持ち手で叩かれたおなかには、持ち手の形をしたあざがはっきり残った。
 これほどまでの暴行も、しつけの名の下に行われた。男は、母親が長女に口で注意するだけなのを見てこう言ったという。
 「甘いんだよ。お前じゃしつけられない。おれは怒り役をやるから、お前はなぐさめ役をやってくれ」
 ■便利な言葉で正当化
 なぜ「しつけ」と言うのか。米国と日本で30年近く虐待防止に取り組む民間団体代表、森田ゆりさんは「ほかの説明の仕方が分からないからだろう。子供へ暴力を振るうとき親は思考停止状態になっている。あえて説明を求められた際、親自身がなぜやったのか分かっていないため、しつけという日本社会に以前からある便利な言葉を使う」。
 数百人の母親のカウンセリングをしてきた東海学院大学の長谷川博一教授(51)=臨床心理学=は「虐待する親は、本気でしつけのつもりでやっている」とし、こう続けた。
 「こうした親は、問題があるのは子供のほうで、どんなに重大な結果を招いても『この子が悪いからだ』と考える。このように自分の行為を正当だと認識する心の働きは『合理化』と呼ばれ、せりふでいえば『しつけのため』であり、『あなたのために』となる。また『叩かれるあなたより、叩くママのほうがつらいのよ』と必ず言う」
 児童虐待の問題に詳しい磯谷文明弁護士(42)は「いずれにせよ、自分の行動を正当化する言葉のうち一番使いやすいのがしつけという言葉だ」としながら、「一方で、子育てする親たちの気持ちと、しつけというものが全くかけ離れたものでもない」と話す。
 ■子育て分からなくなる
 1歳2カ月の長女を育てる大阪府の母親(29)は「最近、虐待のニュースを見ていると子育てが分からなくなる。どうやってしつけていいものか。叩いてもいいものなのか」。
 長女は食事の際、何でも自分でやってみたいのか、スプーンを持たせないと火がついたように泣き続ける。自由にさせると食べ物をまき散らし、満足そうにしているが、ほとんど食べられていない。
 「再び準備して食べさせようとしても、また同じことを繰り返す。どうすればいいか途方に暮れている。それでも、このまま好きにさせていたらわがままに育って将来、本人が苦労するだろうと心配にもなる」
 虐待により子供を死なせたり、けがを負わせたりした親と自分は何が違うのか。どこまでがしつけで、どこからが虐待なのか。その境はどこにあるのか。
 児童虐待の問題を考える連載の第4部は、子供を傷つける親たちの心の奥底にあるものを、さまざまな角度から考えてみたい。
 
(2)しつけと虐待の線引きは? 「体罰」容認で判然とせず
いやがる娘を引きずり出して鍵をかけた。泣き声が家の中まで響いていた。東京都の会社員、福岡由美子さん(45)=仮名=は長女(21)が小学生だったころ、しつけのつもりで玄関の外へ出していた。
 「おもちゃを片づけなかったり、ほしいものをしつこくねだったりしたとき外へ出していた。殴っていないから虐待ではないという安心感もあった」
 通院した精神科の病院で虐待の勉強会が開かれた。「自分の行為が虐待に引っかかると知ってびっくりした。でも、あとで大学のセミナーでしつけと虐待の境目を尋ねたら教授も言葉に詰まってしまった。専門家でも難しいのでしょうか」
 「子どもの虹情報研修センター」研究部長の川崎二三彦さん(59)は「しつけは子育てに必要とされるものであり、虐待は明確に禁じられている行為だ。両者は本来、交わるはずがないのに、線引きが難しいといわれるのはなぜか」と自問し、こう述べた。
 「それは、しつけと虐待の境界に『体罰』が割り込んでくるためだ。体罰によって、明らかに別物であるはずのしつけと虐待の区別がつかなくなってしまう」
 ■「尻や手たたく」「大声でしかる」はOK?
 愛知県豊橋市が平成19年、市内の成人1892人に調査したところ、「しつけのため子供を強くたたく」行為は51%が、「家に子供だけ置いて外出する」行為は62%が、虐待には当たらないと考えていた。
 岡山大学の李○(=王へんに景)媛准教授(49)=家族社会学=らは児童虐待防止法が施行された12年、宮崎市の父母802人に22の行為についてしつけと虐待の線引きを尋ねた。「しつけとして行ってよい」との回答が父母ともに6割を超えたのは「お尻をたたく」「大声でしかる」「手をたたく」の3つだった。一方、「どちらともいえない」が3割以上と判断が分かれた行為は「頭をたたく」「顔をたたく」「ベランダなど家の外に出す」「押し入れなど一室に閉じ込める」などだった。
 わが国の児童虐待対応の先駆者の一人、故坂井聖二医師によれば、児童虐待の本質は次の2点だという。
 「加害者の動機・行為の質によらず、子供が安全でないという状況判断」
 「あるコミュニティーの中で最低限、親に要求される育児の範囲を逸脱したもの」
 川崎さんは「2つの調査が示すのは、日本社会というコミュニティーがしつけの手段として体罰を容認していることだ。むろん体罰イコール虐待ではないが、社会の中に体罰を肯定する考え方がある限り、しつけや愛のムチと主張される暴力を毅然として否定することは難しくなる」と話す。
 ■「温かみあれば…」
 夫と離婚し母子家庭で小学生の娘2人を育てる東京都の公務員、山川陽子さん(36)=仮名=は「しつけで子供に手を上げたことのない親は、それこそネグレクト、育児放棄だと思う」と話し、こう続けた。
 「けれど、同じ手を上げるにしても、子供に説明して納得させる親は虐待にはならないと思う。それがないと威圧と恐怖だけが積み重なり虐待になっていく。子供から見て、しかられている中にも温かみがあれば虐待にはならないのではないか。うちの子は『お母さんは怒ったら怖いけど、でも優しい』と言ってくれる」
 虐待防止活動を続ける民間団体代表、森田ゆりさんは「体罰は、大人の感情のはけ口であることが多く、恐怖感を与えることで子供の言動をコントロールする。即効性があるため、ほかのしつけの方法が分からなくなり、しばしばエスカレートして虐待になる。ときに取り返しのつかない事故を引き起こす」と話す。
 
2010年08月19日00時44分 / 提供:産経新聞
  「本当に反省しているなら、最低でも3年間ぐらいは刑務所に入っていてほしいです」。東京都練馬区の自宅で2月、当時中学3年だった次男(15)をトイレに計約10日間閉じ込めたとして、監禁罪に問われた母親で無職、中島まゆみ(47)と、交際相手の音楽教室経営、川崎輝久(34)両被告の初公判。母への思いを次男は陳述書にこうつづらなければならないほど、受けた虐待行為は残忍だった。
 幅約1・26メートル、奥行き約0・95メートル、高さ約2・24メートルのトイレ。寒さの厳しい2月、唯一、温(ぬく)もりを感じさせてくれるはずの暖房便座も取り外されていた。
 狭く寒い空間に、Tシャツと下着にパジャマを羽織っただけの次男は計約10日間、閉じこめられた。扉は横約6センチ、縦約3センチの木片で外から固くねじ止めされた。飢えをしのぐための食料は、与えられた食パン6斤と500ミリリットルのペットボトルの水1本だった。
 「寒い。いつになったらここから出られるんだろう。死んでしまうんじゃないかと思った」
 次男は調書の中で、監禁の恐怖をこう振り返った。
 虐待のきっかけは、母の中島まゆみ被告が、川崎輝久被告にしつけを依頼したことだった。寄り道や居眠り、つまみ食いを理由に、暴行はエスカレートしていった。次男は電気コードやハンガー、金属の模擬刀、車のアンテナと、あらゆるもので全身を殴られた。
 「体でわからせなきゃ、わからない」という川崎被告に呼応するように、中島被告も角材で約80回殴るなど、暴行に加担。昨秋からは食事も食パンしか与えなかったが、2人はそばで鍋をつつき、酒を飲んでいたという。監禁も、空腹に耐えかねた次男がスーパーで試食品を食べ、帰宅が遅れたことなどが理由だった。
 「次男は時間や金銭感覚にルーズで、就職する前に直したかった」「学校にも何度も呼び出され、(世間から)後ろ指をさされたくなかった」。中島被告は被告人質問で、暴行の背景に次男の養育への悩みがあったことを明かし、「もっと抱きしめてあげればよかった。後悔ばかりしています。ずっと愛しています」という、次男にあてた手紙も涙ながらに読み上げた。
 しかし、暴行と監禁の結果、次男は救出されたとき、身長約165センチに対し、体重は40キロに満たないほど衰弱。自分で立てないほどだった。暴力へのおびえから、「またトイレに入れてほしい」と助け出した長男に懇願したという。
 「たたいているとき、トイレに閉じこめているとき、どんな気持ちだったのですか」。次男が陳述書に込めた叫びは、2人にどう響いたのだろう。

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