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うつ病に苦しむビジネスパーソンの増加は、今や深刻な社会問題。政府は、2011年度から、企業で行われる健康診断にうつ病など精神疾患の兆候を調べる問診を導入することを目指している。体の病気に比べ、まだまだ理解が進んでいないと言われる心の病気。企業での「うつ病チェック」について、ビジネスパーソンはどう考えているのだろう。
企業での「うつ病チェック」に
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うつ病に苦しむビジネスパーソンの増加は、今や深刻な社会問題。政府は、2011年度から、企業で行われる健康診断にうつ病など精神疾患の兆候を調べる問診を導入することを目指している。体の病気に比べ、まだまだ理解が進んでいないと言われる心の病気。企業での「うつ病チェック」について、ビジネスパーソンはどう考えているのだろう。
企業での「うつ病チェック」に
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社会から離脱して、引きこもる人たちの中に「負い目ポイント」というものがある。
「負い目ポイント」は、人によって多少の違いはあるものの、主に「履歴」だったり、「社会経験」だったりする。一旦、社会を離脱した人たちが、なかなか復帰できなくなるのも、こうした負い目ポイントを本人ではなくて、社会がつくりだしていることに原因がある。
休めば「なぜ働かないのか」と責められる
結果ですべてを判断する世間への疑問 「他人から評価される“いい所”は、いつも結果で判断されるんです。でも、“いい所”って、本当に結果だけなんでしょうか?」 現在も「引きこもり」状態の生活を続けていて、「発達障害」と診断されたという御堂諦さん(年齢非公開)から、先日、そんな話を聞く機会があった。
御堂さんは、高校卒業後の時点で、人間関係に疲れていた。将来が信じられない。しばらく休ませてほしかった。
「なぜ働かないのか?」と責められる。でも、学校を卒業した後の進路を思い浮かべたとき、会社員として仕事をしている自分が想像つかなかった。
高校卒業後、都内の専門学校に毎日通いながら、大学の教育学部の通信制課程で学んだ。通信制課程は、大学版サポート校のようなシステムだったという。
学校では、詰め込み的なカリキュラムが行われ、友人とのメールのやり取りも、レポートや試験に関することばかり。新聞を読むような余裕がなかった。
当時、大学の総長がある事件で逮捕されて退学騒動が起きた。その少し後、御堂さんは、潰瘍性大腸炎を発症。大学を退学する。
当時、記憶にあるのは、『らき★すたエンディングテーマ集〜ある日のカラオケボックス〜』というCDを購入したこと。また、『月刊ニュータイプ』というアニメ雑誌の付録で、この作品を舞台にした埼玉県鷲宮町(現在の久喜市)の鷲宮神社が話題になっていたことくらいだ。この模様を取材した、フジテレビ系の『NONFIX』というドキュメンタリー番組『オタクと町が燃えた夏』が放送されたのを観た。
「つらければ、いつでも休める」 自分のペースで続けることが大きな自信に 引きこもる人たちの背景は、様々だ。結果的に、受診したところ、精神疾患と診断されるケースも少なくない。 御堂さんの場合、潰瘍性大腸炎になってしまい、「仕事をしよう」と思うだけでつらくなってしまうため、普通の仕事をすることが難しいという。そこで、いまは無償ボランティアとして、週に1〜2回、学校現場やネットの世界などで活動している。
「学校といっても、先生は無理」という御堂さんは、あくまでボランティアのため、交通費も給食費も自己負担で活動。「つらかったら、いつでも休んで構いませんよ」といわれている。気にしないで、自分で決められるから、続けられる。
お金にはならないけれど、教育現場に携わることで、本人にとっては大きな自信につながっているという。周囲に理解があれば、こうした活動に入る道もあるのだ。
学校などの文化は好きだった。しかし、「基準が、他人とは少しだけ違っていた」と、御堂さんはいう。
「生活面で自立」できていれば偉いのか?
引きこもりを追いつめる周囲の価値観 生活面で自立ができていない人たちに、よく出てくる問いかけが、「あなたが働いていないせいで、親が困っていますよ」というプレッシャーだ。 「収入を得ていることだけが偉いのか?」
と、御堂さんは疑問を投げかける。
“復帰”した社会が、本人の望んだ世界観でなければ、また元に戻ってしまうに違いない。
“社会復帰”というと、既定の路線からズレているから、戻らなければいけないという意味を含んでおり、“復帰”といった時点で、復帰する前のことはマイナスに捉えられる。だから、プラスに戻らなければいけないし、その間の過去は隠さなければいけないというようにも聞こえる。
「大事なのは、一般の人たちが言っていることが、果たして、引きこもりの人たちの望んでいることなのか、ということです」
世の中の世界観を知りたがっている人たちがいる一方で、いまの社会は窮屈だから、「まったりしましょう」といわれて、救われる人たちもいる。まったりしたい、と思っている人たちに、社会に復帰するのがいいんだと押して行ってしまうと、本人の世界観とズレてしまう可能性もあるという。 せっかくすばらしい世界観を持っているのに、外に発言することなく、自分の趣味だけで終わらせてしまう。ウラ言葉みたいなところで固まっているから、世間から「ヘンな人」と見られる。
「本人がどう思っているのか」に寄り添うことが、「本人がどう生きたいのか」という思いにつながっていく。社会的にいいかどうかの評価と、本人が満足する生き方かどうかは違う。
そういう基準の違う人たちの持っているモノは何なのか。そういうことを皆が知る機会をつくっていくことも、必要なのかもしれない。
「引きこもり」でしかできないこともある。何もしていなかったといっていたとしても、他の人たちが仕事をしているとき、ひたすらその時間を考えに使っていた人たちだ。この間に形成される世界観もある。ムダという意見はまったく当たらない。
「本人のクオリティ・プライオリティ(質の向上)を考えたら、まず見てみて、後で仕事のことを考えてもいい。結果的に、学校で活動していたことが、仕事につながることもあるんです」(御堂さん)
「負い目ポイント」に悩む人たちが
働く希望を見いだせる日は来るか 日本の正規雇用への道は、硬直化している。だから、「負い目ポイント」に悩む人たちにとっては、「働く」イメージにつながる希望の道筋が見えにくい。 「引きこもり」の心性を抱える人たちが、一歩を踏み出す勇気も必要だろう。しかし、その前に、政府が雇用システムのあり方を抜本的に見直す対策を検討するなど、社会のほうにも変革を求めるべきなのではないか。社会の流れが変われば、「引きこもり」の概念も変わってくることだろう。
日本人は全能感が好き。あらゆる面で他人より優れていないと、安心できない傾向がある。でも、どんなにまっすぐな線を描こうと思っても、人間なのだから、どこかに歪みが起きてしまうものだ。
実は、万能なものなどあまりない。そういうことを皆が少しずつ気づいて、理解してくれるだけでも、「負い目ポイント」なんて気にすることもなくなり、もっと生きやすい社会になるのかもしれない。
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一口に「引きこもり」といっても、様々なタイプがいることは、これまでも述べてきた。その中でも、年々深刻化しているといわれているのが、自宅や自分の部屋などから、まったく出られないタイプだ。
彼らの中には、何年か経てば、自分から「引きこもり」を抜け出す人もいるし、「不安障害」系の軽い精神疾患を患っているだけの人もいる。しかし、長年にわたって引きこもり続けるなどの重度の精神疾患が疑われるようなケースになると、家族から「どこに相談したらいいのか」「どうやって診療につなげたらいいのか」というような話をよく聞く。
一般的に、本人が自ら医療機関に出向かなければ、状態を診療してもらうことはできない。行政機関や民間の支援団体に家族が相談しても、「対応できない」「年齢が対象外」といった理由からタライ回し状態にされることもある。こうして、本人も家族も長年、社会から置き去りにされたまま、高齢化だけが進んできた。
そんな「引きこもり」の重い症状の人たちを対象に家庭訪問を行い、その結果、彼らの大半が地域で就労など社会的に自立した生活を送れるようになるほどの高い効果を上げているのが、静岡県浜松市にある「ぴあクリニック」(精神科)の新居昭紀院長を中心とするPSW(精神保健福祉士)と近接する「訪問看護ステーション不動平」(精神科専門)サポートチームだ。
退院しても社会は放ったらかしに…
置き去りにされた人を救う「訪問診療」 「我々が扱うのは、医療が途切れて引きこもってしまった人や、気がついたら呼吸困難な重度の精神障害になっていた人たち。我々が往診専門という形で関わりを始めなければ、彼らは社会から置き去りにされてしまう。そんな埋もれた人たちがたくさんいると実感したのです」 こう振り返る新居医師は元々、近くにある総合病院の院長だった。そもそも、病院を退職後は、悠々自適の生活を送ろうと思っていたのに、自分がかつて受け持っていて治療が少しもうまくいかず、医療が中断し、地域に埋没していた患者に何らかの訪問支援をしようと、看護師の妻と2人でボランティアを始めたことがきっかけだったという。
「入院した精神障害者は、一旦、退院すると、本人がどんな状態になろうとも、家族に委ねられてしまう。病院からいわせれば、地域や福祉体制が面倒を見ればいいという発想だからです。しかし、彼らは自宅に帰されると、自閉、無為になり、布団を被って寝ているのが実態。重い人たちほど、退院後のサポートが大事なのに、何もされていないケースが多いのです」
こうした彼らの存在を見過ごせなくなった新居医師らは、2004年4月に、「カンガルークラブ」という訪問型支援のボランティアグループを設立。当初は「面白くて、ハマっていた」活動が、次第に共感を呼び、対象者が40人近くまで増えてしまったという。
システムとしてはまず、家族が相談に来るところからスタート。往診の対象になるような人は、ただ部屋から出てこないという状況だけでは判断してはならない。周囲の情報や過去の生活歴を見て、重い精神障害者であることが間違いないだろうという人たちだけを調査し、往診を始める。 とはいっても、基本的に新居医師らは、本人が最初はまったく歓迎しない訪問診療に向かう。
「具合が悪ければ、病院や施設へ入れればいいというのでは、彼らの自由に生きていく権利を奪うことになる。それは、奇人・変人は、隔離・収容すべきだという差別や偏見に基づく体制側の発想です。しかし、対人不信の強い人たちですから、行っても拒絶されるのが当たり前。会ってくれないし、まったく話してくれません。やっと会ってくれても、部屋はゴミ屋敷。“着替えましょう”と不用意に触ると、叩かれたり、蹴飛ばされたりします。何十回無視されても、拒否されても、コンタクトを求めて訪問し、語りかけ続けていると、ふとしたきっかけで、こちらを向き始めるんです。共有できる世界ができる、もしくはコンタクトできる一筋の道が開けることは、すごい感激です」
やがて若いスタッフを雇い、訪問指示を出して、4人のPSWなどを派遣。連日サポートできる体制をつくるために、クリニックを立ち上げた。退職後のボランティアで始めた「面白いこと」が、いつしか事業として成り立たせようという話にまでなってしまったのだ。
「大事なのは、相手とどういうつながりを作れるかということです。医師目線で行くと、つい薬飲ませたり、入院させたりしたくなる。しかし、我々は治療者ではない。対等な人間同士のぶつかり合いです。むしろ、地域では、相手を上に置いて尊敬しなければいけない。向こうの土俵に入っていくのですから、相手のやりたいこと、できることをどう見つけるかがポイントです。病的な部分を見ても、何もうまくいかない。その人のいちばん楽しいこと、興味をもつことでしか通じないのです」
そんな新居医師らの「治療」にはレールがない。クリエイティブに、何を仕掛けようかと、いつも考えているという。治療というより、ユニークな生活支援といったほうがよい。
家族がサポートの障壁になるケースも
「自立」には1人暮らしが必須? まったく自室から出られないようなタイプの「引きこもり」の人たちにアウトリーチ(自宅訪問)が有効なことは、当連載でも紹介してきた。では、新居医師らのアプローチに対し、本人たちの反応はどうなのか? 「布団をかぶったままだったり、浴室のガラス越しに籠城してしまったりする人もいます。“帰れ!”といわれたら、帰らなければいけない。半年、1年と、そういわれ続けても、“わかりました”“また来させてください”というのです」
彼らの中には「なんで、あんなヤツらをよこすんだ!」と家族にあたったりするケースも少なくない。そのうち、家族のほうが耐えられなくなって、逆に「もう来なくていいです!」と断ってくるケースまであるという。 「家族がサポートしてくれないと、我々は中断せざるを得ません。家族が暴力を振るわれ、“こんなに本人が嫌がっているんだから、もう止めてください!”“この子の性格だから、もう治りません。結構です!”などといわれると、私たちも止めないといけない」
このように、当事者やその家族が社会から放置され、地域から孤立していく背景には、家族が障壁になっているケースもある。
これから歳をとり、自分が亡くなってしまったら、彼らを施設に預けるしかないと考えている親もいる。しかし、親が亡くなったとしても、そのような状態にある本人を受け入れてくれる施設などない。
「結局、親が死んでも、当事者が自分の住み慣れた環境で、自分の身の回りの生活ができるようにしていかないといけないことを親にわかってもらうのです」
実際、同クリニックでは、親が亡くなって単身になった人たちを10人くらい、それぞれの地域でサポートしているという。
例えば、ゴミ屋敷のような部屋の中で時空を絶するような生活をしていた人が、いまや大手スーパーに勤めていたり、短時間就労と(障害者)年金で、結構自由な生活を満喫していたりしている。
「どんなに重い症状を持っている人でも、健全な能力を引き出せれば、食事づくり、買い物、金銭管理、最低限の近所づきあいなどの生活の訓練ができていない人が多い。だから、それを覚えてもらう期間が必要です」
そんな長年住み慣れた地域で、自立を目指している単身者があちこちに増加。訪問看護や訪問ヘルパーが連日、彼らの1人暮らしをサポートしている。
しかし、それらをカバーしていくには、ボランティア精神を持ったかなりの人手がいる。でも、ハッキリしていることは、どんな当事者も1人暮らしをすると、皆、良くなるという。
「ヘルパーやが連日、訪問看護師が訪問して、だんだん状態が良くなると、彼らは外来受診もできるようになります。自由こそ治療という言葉があるけど、彼らは自由に自分自身が選択していく中で、確実に生き生きと生きていけるようになるのです」
人は皆、人間関係の中で生きている。精神疾患があってもなくても、孤立無援になれば、誰でも不安や恐怖に陥れられる。人は、独りでは生きられない。
死さえ考えた「引きこもり」が会社員に! 社会的な“居場所”によって変わる人生 「秋葉原の無差別殺傷事件を引き起こした被告の気持ちがわかる」 そう明かす、10年余り引きこもった当事者はかつて、毎日のように「バイオハザード」のゲームの中で、人を殺していた。「実は、自分も死にたかった」と、ずっと思っていたという。
彼は当時、何度も死に方を考えた。しかし、結局、死に切れなかった。
同クリニックのスタッフが、そんな彼を“孤独地獄”の中から救い出した。クリニックに併設していた「虹の家」という当事者のフリースペースに、ある末期がんのそううつ病の当時者が通ってきていて、その後、知り合いになった。
彼は、「虹の家」のミーティングで、その末期がん当事者が一生懸命生きようとしている姿を見て、
「自分は死にたくてしょうがなかったのに。死って、そういうものではないんだ」
と肌で感じたという。
彼は、そんな人との関わりの中で、20年ぶりに桜の花を見て、思った。
「桜って、こんなにきれいなんだ」
以来、彼は希死念慮から抜け出し、仕事を見つけ、現在は会社員として働き続けている。
新居氏は、こういう。
「本人を支えるグループがあれば、どんな人でも、社会生活していけるようになります。少々おかしくたって構わない。それでいいんだと、認めてあげれば、いいのです。お互いフレンドリーなまま、その人の奇妙さとこちら側の奇妙さと、お互いどっこいどっこいではないですか」
同クリニックの訪問診療は、浜松市周辺で行われている。しかし、このような取り組みが全国に普及すれば、地域の中に潜在化していく多くの人たちを救いだす効果があるのかもしれない。
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まもなく40歳になるヨシムラさん(仮名)は、中学時代、生徒会や放送委員を務めるほどの目立ちたがり屋で、将来、テレビ局のアナウンサーか政治家を目指していた。そんな性格から、当時は、生徒会の先輩に対しても、物おじせずに意見を言ってしまうところがあった。
ある日、ヨシムラさんは、先輩から体育館の裏に呼び出されて、「おまえは、後輩のくせに生意気だ!」と“焼き”を入れられた。それを機に、彼はどもって声が出なくなったり、人前に出ると緊張して手に汗をかいたり、動悸がするようになった。
しかし、学校の成績は良かったため、都内の一流私立大学を難なく卒業した。その後、司法試験を受け続けたものの、なかなか合格できずにいた。
生活に支障をきたすようになったのは、30歳のときに学習塾の講師になってからのこと。とくに父兄を前にすると、どもって声が出なくなり、手に汗をかいた。自分のパフォーマンスを最大限に引き出すことができないため、職場では、マイナスのイメージを受け、年収などの社会的地位も下がったという。ヨシムラさんは、職場に出勤するのが苦痛になり、「うつ病ではないか」と言われた。
強気と弱気が混在!? 大学卒業まで見過ごされる症状 「うつ病と診断されている裏側に、実はそもそもの要因である『社会不安障害』が隠されているケースも多いことが、最近わかってきたのです」 こう指摘するのは、JR巣鴨駅近くで、「ひもろぎ心のクリニック」(東京都豊島区)を開業する渡部芳徳理事長(医学博士)。うつ病の患者に、自分自身を客観的に観察して理解してもらうために開発した『うつ病が快復するノート』(主婦の友社)の著者でもある。
社会不安障害は、「パニック障害」、「全般性不安障害」、「強迫性障害」と並んで分類される「不安障害」の1種だ。
「社会不安障害の共通する特徴は、引っ込み思案の目立ちたがり屋。強気と弱気が混在しています。元々の発症年齢は比較的若く、人前に出ると緊張する、赤面恐怖、視線恐怖といった症状があります。ただ、大学を卒業するまでの間は、人前で緊張することがあっても、問題なく卒業することができるため、見過ごされてきました。他人と接しなくても、試験さえできれば、卒業できてしまうからです。ところが、こうした人たちは会社に入ってから、職場で不適応を起こしてしまいやすいのです」(渡部理事長)
統合失調症と誤診されやすい 社会不安障害 統合失調症と診断される中にも、実は社会不安障害と識別しきれていないようなケースが少なくないという。 出版社に勤務していた30代女性のカオリさん(仮名)は、小学生の時、ミュージカルの主役を張るなど、いつも明るくて目立っていた。しかし、主役を張ってからは、同級生などから「生意気だ」などといじめられ、ボコボコに殴られたという。
翌年の舞台では一転、裏方に回ったが、人前に出ると、とても緊張するようになり、まったく別人のように変わってしまった。
彼女は、それでも友人たちに支えられ、一流私立大学を卒業した。しかし、出版社に勤務してから、人間関係につまずき、恐怖心で出社できなくなる。以来、5〜6年にわたり、家に引き込もった。 同クリニックの医師が、父親に連れられて来たカオリさんを診たところ、社会不安障害と診断された。 ところが、カオリさんは最初に行ったクリニックでは、「統合失調症」と診断されていた。「人の視線が気になる」「自分の悪口を言っているのではないか」など、いかにも統合失調症を思わせる症状が出ていたからだ。しかし、統合失調症として抗精神薬などの投与を受けたところ、副作用などで具合が悪くなって、病院に入院までさせられたという。
「実は、社会不安障害と、もっとも識別しなければいけない疾患は、妄想型障害であり、統合失調症なのです。社会不安障害と統合失調症は勘違いされやすく、見た目で判断するのは難しい。もちろん診たところ、本当に統合失調症の方も結構いらっしゃいますが、全国には誤診されている人も、かなりいるのではないでしょうか」(渡部理事長)
こうした様々な心の病に明確なエビデンスがないことから、同クリニックは2年くらい前に、前頭葉の血流を図る医療機器「光トポグラフィ」を導入。疾患ごとに波形が違うという説に基づき、診断の補助材料とした。事前説明の同意を得られた患者にはこの検査を実施し、以降も定期的に経過観察している。 すでに同クリニックでは2000例以上の患者データを集積しており、特定の疾患の診断補助、あるいは治療経過や薬の効果の判定に利用できそうなことが解かってきている。そこで、初診者にはCT、問診、各種テストを受けてもらった後、診察を実施。必要に応じて、光トポグラフィや血液検査なども行って、診断を行っているという。ちなみに、この3か月間の診断内訳は、約1100人の外来患者のうち、「うつ病」が635人と最も多く、「双極性障害」313人、
「社会不安障害」68人、「パニック障害」62人と続く。 「診断が違ってしまうと、その人の人生が変わってしまいます。引きこもりの問題も、職場不適応を起こすからといって、人格が未熟なわけではない。元々気配りの効く人が、統合失調症などと誤診されているのは、とてもかわいそうなことなのです。僕ら精神科医は、うつ病、社会不安障害、パニック障害などと、診断を明確に示して、患者には薬の副作用も含めて、きちんと治療方針を説明し、納得してもらうことが重要です」
「他人が自分の悪口を言っている」 ように感じる“視線障害” IT企業に勤務する40代のノグチさん(仮名)は、出世したとたん、会社を休職した。部下を持つようになってから、職場に行くと、人の視線が気になって、自分の悪口を言っているように思えるからだという。 それまでは、言われるままにパソコン業務などをこなしている限りは、抜群の能力を発揮してきた。ノグチさんも仕事も楽しかったし、会社でも評価されていた。
ところが、マネージャーになると、部下ができて、皆の前で挨拶や報告もしなければならない。スピーチしようとしたとたん、緊張のあまり、心臓がドキドキして、声が出なくなり、汗をダラダラとかいた。
本人は自信を喪失。クライアントとのソフトの調節に行くのも辛くなり、街頭を1人で歩くことすら、ままならなくなった。 同クリニックにも、ノグチさんは1人では不安なため、妻に連れられて受診。一見、統合失調症のようにも見えるものの、「視線恐怖」の症状だった。
「視線恐怖のような対人恐怖と社会不安障害は、オーバーラップしています。ただ、発症年齢が30〜40歳と罹病期間の短い人は、長い人に比べると治りやすい。ノグチさんも、SSRIを飲むうちに、会社に再び行けるようになりました」(渡部理事長)
社会不安障害の重症度を
「LSAS―J」でチェック! また同クリニックは、社会不安障害が疑われる場合、症状を評価する「LSAS―J」(Liebowitz Social Anxiety Scale 日本語版=監修:北海道大学保健管理センター・朝倉聡講師、北海道大学大学院医学研究科神経病態学講座・小山司教授)というスケールを使っている。 この調査票では、以下の24の項目の質問について、それぞれ恐怖の程度と回避の頻度を回答する。(『恐怖感/不安感』と『回避』の度合いに最もよく当てはまる番号を項目ごとに1つだけ選ぶ)
≪『恐怖感/不安感』0:全く感じない 1:少しは感じる 2:はっきりと感じる 3:非常に強く感じる≫
≪『回避』0:全く回避しない 1:回避する(確率1/3以下) 2:回避する(確率1/2程度) 3:回避する(確率2/3以上)≫
1、人前で電話をかける
2、小人数のグループ活動に参加する 3、公共の場所で食事する 4、人と一緒に公共の場所でお酒(飲み物)を飲む 5、権威ある人と話をする 6、観衆の前で何か行為をしたり話をする 7、パーティーに行く 8、人に姿を見られながら仕事(勉強)する 9、人に見られながら字を書く 10、あまりよく知らない人に電話する 11、あまりよく知らない人たちと話し合う 12、まったく初対面の人と会う 13、公衆トイレで用を足す 14、他の人たちが着席して待っている部屋に入っていく 15、人々の注目を浴びる 16、会議で意見を言う 17、試験を受ける 18、あまりよく知らない人に不賛成であると言う 19、あまりよく知らない人と目を合わせる 20、仲間の前で報告をする 21、誰かを誘おうとする 22、店に品物を返品する 23、パーティーを主催する 24、強引なセールスマンの誘いに抵抗する 2つの項目の合計点が、30点で境界域。40点以上あった場合、軽度の社会不安障害が生じている可能性があり、診てもらったほうがよいという。60点以上は、要治療となる。 冒頭のヨシムラさんは、初診時87点だった。しかし、SSRIの投薬を12週間続けると24点までに低下。その後、約5年間服薬している。現在、議員秘書の仕事をしていて、街頭の立会演説やチラシ配りまでこなすことができるようになった。そして、来年の4月の統一地方選で、市議会議員選挙に出馬する予定という。出馬を決意したときに改めてチェックしたところ、3点にまで下がっていた。
「大事なのは、薬を3か月くらい続けると、不安を取り除けて、比較的問題なく行動できるようになります。ところが、脳に染み込ませるためには、積極的に外に出て行って、自信を構築する期間が1〜2年必要。そうしないと、また引きこもり生活に戻ってしまいます。ヨシムラさんは、こうしたことを繰り返すことによって、昔持っていた夢である政治家の第一歩を踏み出すことができたのです」
誤診によって引きこもりになる人も 正確な診断と治療で克服は可能 他に誤診されやすい社会不安障害を見分ける特徴について、渡部理事長はこういう。 「ふだんは不安そうなのに、お酒を飲むと、人が変わったように朗らかになる人たちが結構多いんです。お酒を飲むと、気持ちが大きくなるので、アルコール依存症になりやすい。逆にいえば、SSRIを飲んで、アルコール依存症が良くなるタイプの人は、元々の素因が社会不安障害なんです」
症状がひどくなると、引きこもって、自信を失い、うつの症状が出てくる。引きこもりとうつは併存した関係なのだという。
一方で、「僕らが診ていない重度の社会不安障害の人がいる。そういう人たちは、家で引きこもってしまって、僕たちの前に現れてこない。引きこもっていても、あきらめないで受診したり、統合失調症と1度言われた人でも、きちんと診断してみると、中には、社会不安障害の人もいるかもしれない」と、渡部理事長は指摘する。 一般的に、不安障害の人たちは、気配りが効いて、いい人たちが多いといわれている。他人の視線を気にするということは、皆の目の動きをよく見ていて、相手の思っていることを察知し、先取りして対応できるからだ。
渡部理事長によると、こうした一面は、「日本人の美徳でもあり、日本の社会の中で認められるから、特殊な能力が発揮されれば、社会的地位も高くなる傾向があるのではないか」と推測する。
「不安障害は、薬物療法と認知行動療法の併用が効果的で、治療が可能な疾患なのです」(渡部理事長)
様々な理由から、地域に潜在化して引きこもってしまい、あきらめてしまった人たちの中にも、正確な診断を受ける機会が与えられれば、治療に結びつけることができるかもしれない。
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自らの「発達障害」に気づかない40〜50代の大人が増加している。
厚労省が2010年に公表する新しい「ひきこもり支援ガイドライン」の中でも、引きこもる要因の第1位(27%)に挙げているのが、前々回で指摘した、この「発達障害」だ。
大手銀行員のコバヤシさん(仮称)もその1人。コバヤシさんは、朝起きるのが苦手で、定刻に出勤できずに遅刻してしまうことがたびたびあった。一旦、寝ると、14〜5時間も寝てしまうことがあり、目覚まし時計をかけても起きられない。高校生のときまでは親に起こしてもらっていたので問題にはならなかったが、1人立ちしてから、頻繁に寝坊するようになってしまった。
取引先などと待ち合わせしても、つい遅刻を繰り返してしまう。出かける前になると、別の仕事のことが気になって、あちこち資料を探し回っているうちに、出るのが遅れてしまうからだ。先方を待たせないように待ち合わせの約束を優先しなければいけないはずなのに、気になりだすと、どうしてもやめられないのだという。
仕事の手順がわからないときも、上司や同僚などに聞けばいいのに、自分の判断で勝手に進めてしまうところがあった。その結果、ミスや失敗をして、周囲に迷惑をかけることになる。次第に「信頼できないヤツ」と評価されるようになった。
また、コバヤシさんは整理整頓が苦手で、机の周りは書類などが散らかり放題。必要な資料がどこにあるのか、自分でもすぐに見つけることができない。片付けようにも、どこから手を付けていいのかわからず、仕事の効率は悪くなるばかり。さすがに、自己評価も低くなって、気分が落ち込むことが多くなった。職場では孤立し、軽いうつ状態に陥ったという。
「落ち着きがない」「ミスが多い」 子供特有じゃない“大人の発達障害” やるべきことを先延ばしにする。仕事のミスが多い。時間に遅れる。人の話を聞かない。人付き合いがうまくできない。場の空気が読めない。キレやすい。落ち着きがない。片づけられない――そんな“大人の発達障害”が問題になっている。 発達障害といえば、衝動的な行動をとることがある「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」や、対人スキルや社会性に難のある「自閉症」と「アスペルガー症候群(AS)」、特定能力の習得に難のある「学習障害(LD)」などの総称。これまでは、生まれつきや何らかの理由で脳の発達が損なわれ、子供特有の障害だと思われていた。しかし、「大人の発達障害」の場合、うつ病や依存症を併発するなど、より大きな問題を引き起こしかねないことが明らかになってきたのだ。
『発達障害に気づかない大人たち』(祥伝社新書)の著者である福島学院大学の星野仁彦教授(児童精神医学)は、「トップクラスの成績のいい人が多いので、人付き合いが苦手でも、大学などの学校を卒業するまで、発達障害と気づかずに見過ごされてきた」と、大人にも数多い理由を説明する。 「会社に入ってから困るのは、会話や対人スキルが上手くいかなくなること。一方的に自分の気持ちをまくし立てるんだけど、人の話を聞かないんです。さらに問題なのは、朝の起床を始め、夜の睡眠、お金、時間、食事、整理整頓、提出物などの管理ができない。しかも、感情のコントロールができないため、些細なことでもカーッとなってしまい、仕事上では致命的になりかねないのです」
成績優秀、突出する才能があっても 人間としてのバランスが欠けている 一方で、発達障害の症状は、何かにのめり込みやすいのも特徴の1つ。酒やタバコ、ギャンブル、買い物、セックスなどの依存症に陥る傾向が強い。だから、自宅に引きこもってしまうと、ゲームやインターネット、携帯電話などにのめり込んでしまい、社会生活が送れなくってしまうのだ。 最初は「子供の落ち着きがない」などと、子供の症状のことで相談に来る両親が、実は、自分のミスを棚に上げて、部下や妻(夫)を怒鳴る、体罰を加える、人の話を聞かないといった問題を抱えている――星野教授が勤務する福島県郡山市の「星ヶ丘病院」などの外来には、そんな大人の発達障害者が全国から訪れるという。 「英語、数学、国語がトップクラスの成績だった人は、多少、自己中心的でわがままでも、親や学校の先生たちは何も言いません。ある才能については突出していながら他はダメといったように、バランスが取れていない。職業的には、ITやシステム関係、教師、学者、医師、マスコミ、芸術家などの専門職、技術職に発達障害の人が多い傾向にあります。」
うつ、引きこもりの背景には
発達障害が隠されている? かくいう星野教授自身も、かつて発達障害に悩んだ経験者だった。 35年以上にわたって、発達障害を調査研究している星野教授が最近、精神科や心療内科クリニックの外来を受診した80人の大人の発達障害者を調べたところ、約86%にも上る69人に、何らかの合併症が認められたという。とくに、うつ病を併発している人が最も多く、不安障害やパーソナリティ障害、依存症などの複数の合併症を示す人もいた。さらに、引きこもりなどの社会適応が困難な要因の中に「発達障害が隠されているのではないか」と、星野教授は考える。 「発達障害の症状は、ソワソワと落ち着きがなくてキレやすい『ジャイアン型』(多動・衝動性優勢型)ばかり目立ちます。しかし、一見、落ち着いていても、気が散りやすく、仕事や会議、読書中でも“心ここにあらず”で、相手の話をきちんと聞けない『のび太型』(不注意・注意散漫型)が、見過ごされる傾向にあります。この混合型も少なくありません。モンスターペアレントや、虐待の連鎖も、発達障害が要因になっているのです」(星野教授)
“怠け者”“自分勝手”なのは 心ではなく「脳」の問題 こうした発達障害が、一般に注目されるようになったのは、ここ最近のことだ。 2005年4月、発達障害者の自立と社会参加を目指す「発達障害者支援法」が施行。07年4月には、学校教育法に「特別支援教育」が盛り込まれ、大学でも発達障害のある大学生への支援を強化する動きが出ている。
星野教授は、「職場などにも、想像以上に発達障害者が多いことがわかってきたからではないか。しかも、大人になってから引きこもるような、うつ病や依存症などの2次障害につながる要因であることがわかってきたことも大きい」と指摘する。
発達障害は、とてもわかりにくく、見えにくい障害。だから、当事者は、怠け者とか変わり者、自分勝手でわがままな人間と思われることが多い。このため、周囲の理解を得られず、ガンバリが足りない、親のしつけが悪い、学校の教育が悪いなどと責任追及されてきたという。
このように、発達障害が誤解を招きやすいのも「原因が、脳の機能障害にあるから」だと、星野教授はみている。
「発達障害は、脳の中枢神経系の発育・発達が、何らかの理由で、生まれつき、または乳幼児期に損なわれ、言葉、社会性、協調運動、基本的な生活習慣、感情や情緒のコントロールが、アンバランスになるために引き起こされると考えられています。本質的な原因は脳であり、心の問題ではないのです」
発症するのは、脳内の前頭葉のドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンの代謝がうまくいっていないことが原因。前頭葉には、人の話を集中して聞いたり、新しいものをつくったりといったイマジネーションを司る。一方で、酒やギャンブル、セックスなどの欲望も、前頭葉の抑制が関わっているため、前頭葉の違いが、社会生活を大きく左右しているというのだ。 40〜50代でも間に合う!
障害を受け入れ、薬物療法を とはいえ、すでに大人になっていても、40〜50代になっていても、「治療を始めるのに遅すぎることはない」「発達障害は治療できる」と星野教授はいう。 一般的な対応としては、(1)心理教育と環境調整療法、(2)認知行動療法、(3)心理療法(カウンセリング)、(4)自助グループへの参加、(5)薬物療法などを中心に行う。 そこで、「まず本人が、発達障害であることに気づいて、受け入れること。そして、周囲も適切な支援やサポートを行うことが、克服するために必要」だと指摘。「大人の発達障害には、薬物療法が極めて有効」という。
欧米の薬物療法研究の論文では、発達障害と診断された大人の患者60%が、中枢刺激剤の投与で改善を示したという。
実際、星野教授は、先ほどの80人の外来患者に、中枢刺激剤の「メチルフェニデート」(以前はリタリン、現在はコンサータ)を使用したところ、衝動的行動、不注意、ストレス耐性の低さなどの症状が劇的に改善。合併症であるうつ病や依存症、不安障害も軽減したと報告している。ただ、現在、大人の発達障害へのコンサータ使用は、認可されていない。
他にも、症状に合わせて、SSRIやバルプロ酸、アトモキセチンなどの適切な使用は効果があるという。
最近では、こうした発達障害を引き起こす原因として、前頭葉がつくられる妊娠2〜3か月の間に母親が、水銀や鉛などの重金属、PCB、ダイオキシンなどの環境汚染の影響との関連が、アトピー性皮膚炎などのアレルギーとともに注目されている。厚労省は10年4月から、出生した子供10万人を対象に、15年間にわたって、胎生期の重金属や環境ホルモンの汚染と、出生後の発達障害やアレルギーとの因果関係を大規模追跡調査していく方針という。
自分の評価を大きく低下させる要因の発達障害が、なぜ起こるのか。その実態が明らかにされるまで、あと15年の歳月を待たなければならない。
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