|
●不安→疑念→絶望……うつ状態に
チリの落盤事故発生から1カ月半あまり。救出を待つ作業員33人の精神状態が心配されている。「4分の3症候群」だ。地球の裏側の出来事は他人事のようだが、実は職場でも起き得る、ありふれた現象なのだ。
●南極観測などで“発症”
4分の3症候群、別名「4分の3現象」。南極観測での長期滞在などで指摘されるようになった症状だ。閉塞された環境の下、すべての日程を折り返したあたりで緊張の糸がプツリと切れ、精神的に不安定になる状態を指す。
地下深くに閉じ込められているチリの作業員たちも、いつ陥っても不思議ではない状況だ。米NASAの専門家4人が現地入りしてサポートに当たっているが、すでにカメラでの撮影を嫌がったり、露骨に不機嫌そうな表情を浮かべるなど、不調がうかがえる作業員が出てきている。
心理学博士で経営コンサルタントの鈴木丈織氏はこう言う。
「4分の3症候群が表れると、悲観的な感情に支配されます。チリのケースなら、〈助からないんじゃないか?〉という不安、〈支援をやめたのでは?〉という疑念、〈この状況が続くのでは?〉という絶望、〈生き抜く意味があるのか?〉という無気力、〈これだけ頑張ったのだから、もう楽になっていいだろう〉という自信喪失――です。こうした感情が消えては浮かび、浮かんでは消える。頭の中で駆け回る。次第にうつ状態に陥ってしまうのです」
アナタも心当たりがあるんじゃないか。
というのも、特殊な環境に置かれた人間だけが襲われる症状じゃないからだ。期日を抱える人間は、常にこの4分の3現象と隣り合わせの生活をしているといっていい。
とりわけ危ないのは、ひとりで仕事を抱え込んでいるケースだ。
●ひとりで仕事を抱え込むと危ない
システムエンジニアのAさん(49)は、部下にトンズラされた経験がある。数年前、勤務先のIT企業が金融機関のシステム構築を請け負った。大きな仕事だが、納期までの時間的余裕はない。数人編成のチームで、それぞれが脇目も振らずに没頭した。
ゴールが見えてきたある日、後輩が無断欠勤。ケータイはずっと留守電で、自宅の電話を鳴らせど反応なし。数日後に退職願が郵送されてきたという。
前出の鈴木氏が言う。「ひとりで回している作業が中盤に差し掛かったあたりが、最も危険です。〈このままでは仕上げられそうにない〉と感じた瞬間に感情が暴発する。〈誰もサポートしてくれない〉→〈いつまでやればいいのか〉→〈やり続ける必要があるか〉→〈十分頑張ったからもういいや〉というふうに、精神的に逃避してしまうのです。これを回避するには、気持ちの初期化が効果的。物事に取り組む姿勢はやる気に満ちあふれた初期、惰性に見舞われる中期、意欲が再びわき上がる後期に大別される。中期に入ったところで、強制的に初期に戻せばいいのです」
難しく考える必要はない。最も簡単な方法は環境変化だ。仕事に惰性を感じ始めたらデスク回りのレイアウトをいじる、イスの位置を変える、近くの席に移る――この程度のことでいい。いつもの景色は消え、視界が新鮮なものになる。雑談をしたり、連れ立って飲みに出るのも効果的だ。
周囲から見れば時間の浪費に見えるかもしれないが、物理的にも精神的にも〈閉塞された環境〉が打ち破られる。すると気持ちがリセットされ、やる気に満ちあふれた初期状態に戻るからだ。
ワインを飲んでいる時間をムダな時間だと思うな――。ユダヤの格言には、そうある。
●麻生も安倍も“4分の3”?
道半ばにして果てる。聞こえはいいが、見方によっては「投げ出し」と同義だ。まあ、部屋の掃除なんて4分の3もできたら、投げ出したくなってくる。
閑話休題。投げ出しといえば、わが国の総理大臣の“決まり手”になりつつある。短命首相は当然、人気がない。朝日新聞の「最も評価しない戦後の首相」アンケート調査。1位は三つ指スキャンダルで消えた宇野宗佑だ。以下、(2)麻生太郎(3)森喜朗(4)安倍晋三(5)小泉純一郎(6)福田康夫(7)村山富市(8)田中角栄(9)細川護煕(10)岸信介――という顔ぶれだった。昨年9月の調査のため、政権交代以降は対象外。
一方、人気ベスト5は(1)田中角栄(2)吉田茂(3)小泉純一郎(4)三木武夫(5)佐藤栄作――という結果だった。回答者の多くが中高年だったのか?
(日刊ゲンダイ2010年9月22日掲載)
|

- >
- Yahoo!サービス
- >
- Yahoo!ブログ
- >
- 練習用







