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父が死んだ。 うちの一人息子にとっては、母方の祖父だ。 一人息子はインカレの最中で東京に行っていた。 相変わらずベンチを温めているが、大学時代最後の全国大会。 黙っておく事にした。 結局、じいちゃんが死んだ事を告げたのは、一週間も経ってからの事となってしまった。 試合に勝ち進み、全国三位になったからだ。 お通夜もお葬式も済んでしまっていた。 そして、その事を知らないのはうちの一人息子だけだった。 今度のバレンタインデーが来たら、くも膜下出血で倒れて、まる五年になるところだった。 ずっと寝たきりで、回復の見込みも無かった。 父の人生に、起き上がることも出来無いこの五年間は必要だったのか、と思う。 でも、その長すぎる時間のお蔭で、私達はその時への心の準備が出来た。 一人息子を除いた、一人息子の従兄弟連中が久しぶりに揃った。 最近お嫁さんを貰ったのが二人いて、男三人、女二人、お嫁さん二人である。 83歳で五年間寝たきりだった父のお葬式は、涙もあるが笑い声もあった。 従兄弟連中の子供時代の話に花が咲いた。 私の母も耳にタコが出来る程聞いた昔話を、また何度もした。 それでも、お嫁さん達には知らない事ばかりだ。 お葬式が終わった夜、旦那が可愛い事を言った。 「うちの一人息子の従兄弟連中は、皆いい子で、お嫁さんもいい子で、楽しかった・・・アレ?」 お葬式なので、楽しいは不適切だ。 「面白かった・・・アレ?」 面白いも不適切だが、その通りだと私も思った。 そこにうちの一人息子が居なかったのが、とても残念に思えた。 年末にやっと帰ってきたうちの一人息子。 やっと皆に会えると思ったら、今度は年末年始を海外旅行に出掛けてしまったのがいて、結局揃わなかった。 「絶対、誰かは居ないのよねぇ・・・」と姉達と話した。 こんな遣り取りを父はどっかから見ているのだろうか。 後一週間もすれば、四十九日が来る。 by母 |
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夢を見た。 夢と言えば、うちの一人息子の大地震の夢で右往左往した事があるので、「またか・・・」と言われそうだが、 今度は私、母の見た夢の話だ。 私のふくらはぎをかすめて、直径4〜50センチくらいの大蛇が通り過ぎた。 「うわあぁぁ・・・」とふりかえると、 白地に赤と黄色の幾何学模様の大蛇が、スルスルと通り過ぎようとしている。 次ぎの瞬間、小学生が走ってきて、その大蛇の上にころげてシリモチをついた。 大蛇の目は漫画の様にペケ印になって、とぐろを巻いてダメージを受けている。 小学生はその上で、ジタバタしている。 うちの一人息子だと思った私は、「あんた、何しよん!」と叫んで・・・ 目が覚めた。外はまだ暗い。 あの小学生って、うちの一人息子だったのかしら?と思いながら、また眠った。 目が覚めても、その夢が鮮明だったので、私は旦那に言った。 「今度、宝くじ買うわ。」 丁度、一人息子の所に行く予定があった。 私のなかでは、家族三人揃って購入したかったのに、一人息子は相変わらず忙しく、旦那と二人で買った。 旦那は一千万コースを私は三億円コースを。 その夜街に出て三人で食事をした時、やっぱり一人息子にも係わって欲しかったので、私の買った宝くじを一人息子にやった。 一人息子はラッキーとばかりに自分のバッグにしまいこんだ。一人息子にとっては、はじめての宝くじだ。 私は、もしかしたらこれが当るのかもしれないなと思った。 当選発表の日、旦那が宝くじを持って来て「見てみ・・・」と差し出した。 見ると、5〜6個ある数字の真ん中辺りの数字が一個だけ外れた宝くじだった。 それも、6と9。一瞬当りかと見間違えるような。 やっぱり、大蛇は私の足をかすめて通り過ぎたのだった・・・ じゃあ・・・一人息子にやった宝くじが当たり??? 大蛇は私の足をかすめた後、小学生にのっかられてたし。 うちの一人息子が電話してきた時、聞いてみると、 「ああ・・・あれ、外れとったよ。」 やっぱり、夢や予感なんてアテにならないのかしらと思ったが、 「でも、俺、また買った。オータムジャンボ。」 それだ!それが当るんだと、私は確信した。あの小学生はうちの一人息子だったんだ・・・ それから、どんどん当る予感は大きくなった。 当ったら、うちの一人息子は考え無しに皆に言って、大変な事になるだろう。 当っても、誰にも言ってはいけない事を、教えておかないと・・・ そんなある夜、パソコンのニュースを見ていたら、『宝くじの当選番号』とあった。 「ヤバッ!もう当選発表あったんだ・・・」と思っていたら、電話が鳴った。一人息子からだった。 当選発表があった事と、「当ってもお母さんにだけ言ってね。」 と言って電話を切った。 その後お風呂に入っていると、旦那がまた一人息子と電話している声が聞こえた。 当ったんだなって思ったが、結構静かだ。 お風呂からあがって、旦那に聞くと、やっぱり当っていた。下四桁、五万円。 嬉しくないわけではないが、微妙な金額に苦笑した。 でも、あの夢を見ないと、一人息子は宝くじを買わなかっただろうし、 若い一人息子の事を考えると、微妙と言うより多すぎず少なすぎず絶妙な金額だったろう。 次ぎの年末ジャンボも買ったと言っていたが、私の夢にあれからあの大蛇は出て来ない。 多分、これから五万円分宝くじを買ってチャラになるんだろうなあ。 今度は見上げるような大きな大きな蛇の夢を見て、抱きついたら絶対離さないと思っている母である。
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うちの一人息子、数日前に21歳の誕生日を迎えた。 結婚して一年が経った頃、女の子二人を予定して、産み分けの本を購入。 読み終えて、さあ・・・と思った矢先に・・・ 体調不良。 妊娠していた。産み分けの知識を実行する事なく・・・ 産院の検診で、『男の子ですよ。』と言われたときは、正直、落ち込んだ。 今思うと、何故あんなに落ち込んだのかわからない・・・ 『骨盤が小さいので、赤ちゃんが通れないかもしれない。レントゲンを撮ってきて欲しい』 と、出産予定日一ヶ月前頃、言われた。 その支度をしていた時、足を伝う、異様な感覚・・・ 破水していた。 羊水は、生暖かく、少し濁って、ぬるぬるしていた。 そのまま、入院。薬で陣痛を起こさせた。 陣痛のさなか、やっぱり、レントゲンを撮ってきて欲しい、と言われ、 旦那の運転で、母と街の施設に向かった。 T字帯と呼ばれる、褌のような布一枚で、スイカのようなお腹とドッチボールのような胸。 機械の上に正座して、下から、レントゲンを撮る。その間にも定期的に陣痛がやってくる。 40代前半位のレントゲン技師の方は、優しかった。 こんな格好で、見知らぬ人の前に立つのは、とても我慢出来ない事なのだけど・・・ 彼が、事務的で冷たかったら、まだ若かった私はとても傷ついただろうと思う。 病院に帰って、更に陣痛を起こさせる点滴をうつ。 後から入院してきた人が次々とお産を終えていく。 その夜は睡眠薬をもらった。眠ったのかどうか分からない。が、眠ったのだろう。 そして、次の日の夜、午後8時30分。やっと一人息子はこの世に生まれた。 予定日より、19日も早かったのに、 体重3352g 身長48.2cm 胸囲31.5cm 頭囲32.5cm と大きめだった。 母子手帳には、分娩所要時間36時間とある。 先生の見立てでは、産まれるのは更に12時間後、次の日の朝方だろうという事だったようだ。 私は、力み方がうまいと褒められた。後半は、陣痛一回を一息で力んだ。 息してもいいのよ。と言われたが、痛すぎて、息も出来なかった。 分娩時間が長すぎて、感覚が麻痺していたので、私にはいつ生まれたのか分からなかった。 自分の周りから、看護婦さん達がいなくなり、それから、しばらくして、うちの一人息子の産声を聞いた。 綺麗になって、私の枕元に連れてこられた、うちの一人息子を見て私は驚いた。 頭が、工事などで使うコーンの様に尖がっていて、その先が産道の出口の形に赤黒く鬱血している。 それでも、何故かよく分からないけど、産まれたての一人息子を見ていたら、涙がでてきた。 分娩室に一人寝かされていると、旦那が泣き顔で入ってきた。 感動のシーンだったのだろうけど、丸二日食事出来ず、薬を飲んでいたせいか、急な吐き気。 人間の体からこんな物出るの?と聞きたくなるような、真っ黒い物を出してしまった。 次の日になると、コーンヘッドは、かなりましになっていて安心した。 『良かったね〜、ちゃ〜んと下から産めて。』年配の助産婦さんに言われ、不審に思った。 レントゲンの結果は、私には普通分娩OKと知らされていたが、 とりあえず産んでみて、もし無理だったら、手術に切り替えるつもりだったようだ。 旦那に母に姉、みんなで私が気弱になるからと、秘密にしていたらしい。 『もし、手術になったら、いつ呼び出されるかと思って、待っとったんよ〜 下から産めるなら、下から産んだ方がいいのよ。後が違うからねぇ・・・』 こうやって、私の傑作、うちの一人息子は、生まれてきた。 私にとっては、今までの人生で一番の出来事。 産まれ立ての一人息子は、小さいのに、ずっしりと重く感じられた。 退院してみると、産院にいる間に、菜の花や桃の花が満開になっていた。 by母 |
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うちの一人息子が隣の県の大学生になってから、1〜2ヶ月に1回くらいのペースでお掃除に行っている。 ちょっと甘いとは思うけど、片付けはうちの一人息子の最も不得意とする事だからだ。 その後、夜の街に出て、3人での食事を楽しむのが、一番の目的ではあるのだけど。 大抵は一人息子はいないので、入ることを先に報告しておいて、勝手に掃除する事が多い。 大学生になって間もない頃、お掃除に行った時の事。 洗面所をお掃除していて、驚いた事があった。 『お父さん!お父さん!!歯ブラシが2本あるよ!!!』 歯ブラシ立てに歯ブラシが仲良く2本並んでいる!ビックリした。 と同時に、彼女か?と期待した。 と旦那が気の無い声で、 『あ〜それ、わしの・・・』 そう言えば、その少し前、旦那が釣りに来て、一人息子の部屋に泊まったのだった・・・ そして、つい先日もお掃除に行った。 そして、歯ブラシ立てにやっぱり歯ブラシが仲良く・・・3本・・・ たまたま、部屋にいた一人息子に聞くと、 『黄色いのは、○○の・・・緑のは、△△の・・・』 と野郎二名の名前を言った・・・ 只今、両足負傷中で、ここ何ヶ月かロクに練習出来ていない。
春休みで、時間も普段より取れるだろうに・・・ 相変わらず、ひどく汚い部屋だった。 by母 |
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今年もセンター試験が始まった。 うちの一人息子が受けたのは、もう3年も前の事になった。 浪人上等!と最後までサッカーをさせたので、あまり期待もしていなかったのか、当日の事はよく覚えてない。 センターが終わって、まだ結果も出てない頃。 近所の友人の家で、一人息子のクラスメイトのお母さんと会った。 あちらは女の子の一人っ子。 女の子だからか、クラスのいろいろな情報を、話てくれるようだ。 うちの一人息子からは、その女の子の話は、聞いた事がない。 そのお母さんが言うには・・・ 『○○君は・・・ノート取らないんだって。』 うすうすは気がついていたけど・・・他のお母さんから聞く程、有名なのか・・・? 『○○君はサッカーの話しかしないんだって。』 ・・・そうかもしれん・・・きっと周りをうんざりさせてるんだろうなぁ・・・ 『○○君は提出物出さないんだって。』 え〜〜〜〜〜忘れて出さない事もあるとは思ってたけど・・・まるで出してないのかぁ〜〜〜 驚きの三連発だった。 しかし、センターも終わってしまっていて、後の祭り・・・ 怒る気にもなれず、母の予想を超える一人息子の変人ぶりを、大笑いしてしまった。 帰ってうちの一人息子に話すと、 『俺はな〜頭の中にノートするのよ。出来んかったら・・・友達のノートを見るのよ、ハハハ・・・』 高校3年間クラブチームユースに入っていた為、学校が終わると練習の日々。 家で勉強しているのを、殆んど見る事がなかった。 確かにノートを取っても、見返すなんて事しないから、それは無駄な事。 ちょっとでも、その時に頭に入れてしまったほうが、効率がいいだろう。 提出物については、最近聞いたのだが、 『だって、訂正ノートって意味ないと思うんよ。説明を聞いて理解出来た事を、また書くのって・・・ ポカミスも、ケアレスミスでしたって書かんといかんので〜〜〜無駄やわ〜 俺のやり方でさせて欲しいんよな〜』 確かに・・・母もそう思う。 理解出来たことより、出来てないことに時間を使いたい。 今思えば、自分のやり方を通したから、行きたい大学に、一ヶ月半の受験勉強で、受かったのかもしれない。 なので結局、私の受けた驚きの三連発は、笑い話で終わってしまった。 センター試験が始まったってニュースを聞くと、毎年思い出す笑い話だ。 by母
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