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ダートって、地味じゃないですか?
なんだか敗者復活戦、みたいな扱いじゃないですか?
だいたいG1なのに、2月開催ってなんですか?
……そんな不平不満をフェブラリーS出走馬達に語っていただきましょう。
It’s Show Time!
「こんばんは。『ここが変だよ日本競馬』のお時間がやってまいりました。司会は私、無事阪神競馬場で乗馬になる事が決まりましたアドマイヤモナーク、そしてコメンテーターとして、先日引退を発表されましたアサカディフィート氏でお送りしたいと思います」
「ちょっと〜!今日はダートのお話なんでしょ?私達全然ダートと関係ないじゃな〜い!!」
セン馬のアサカディフィートが、身をよじりながら抗議する様を見ながら、アドマイヤモナークは大きく溜息を吐きました。
「そうは仰いますが……。確かディフィートさんも何度か出走していらっしゃいますよね。あ〜、『かしわ記念』とか」
「ちょっと〜、そこ!私の黒歴史だから!」
いきなり今回のパネラー達に喧嘩を売る様な科白を吐いたアサカディフィートに、モナークは青くなりました。
「あ〜、かしわ記念といえば、地方競馬G1。十分立派な出走経験だと思われますがねえ」
「だって地方よ!ドサよ!春競馬の真っ盛りに、なんで私が船橋なの!?って正直思ったもーん!」
……カーテン越しに、どんどん冷え切る空気を感じながら、モナークは必死に場を取り成そうとしました。
「いえ。ダートというのは、資質を大きく問われるものですからねえ。現にこの私!アドマイヤモナークは、ダート戦で惨敗!!……しかも特にたいした相手とも思われない馬達に、後塵を拝している訳でして……」
「それはあんた、若い頃の話でしょ?」
「へ?」
「あんた晩成馬じゃない。要はまだ実力が備わっていない頃に無理やりダートに出さされた、ってお話でしょ?」
(……誰だよ、このコメンテーターを呼んだのは!!)
内心で悪態を吐きながら、アドマイヤモナークは声を振り絞りました。
「そ、それではご登場いただきましょう!今回特にレヴェルの高い馬達が集結いたしましたフェブラリーSに出走されるご面々です!」
剣呑な空気にあおられる様に、するすると紫色のカーテンが引き上げられました。
「おお!さすがにG1出走のご面々!いや〜、オーラからして違いますねえ♪」
「そう?スイープちゃんなんて、まるで『ベルベットの輝き』なんて言われるほどつやつやしていたけど」
「……」
お前はお○ぎと○ーコか!
その場にいたほとんど全員が、アサカディフィートに険悪な視線を向けましたが。当の本馬(ほんにん)は全く意に介した様子がありません。
「いや……。ディフィートさんが言うのも一理ありますよ」
大人な一言に、思わず周りの視線がその馬を注視いたしました。
「……おお!屈腱炎から奇跡の生還を果たし、現在ダートG1で7勝を誇るカネヒキリさん!」
「……父は未完の大器と言われたフジキセキ。どこをどうやったって本来ダート適正のある馬になるはずもない私が、何故『ダートのディープインパクト』なんて呼ばれる事になってしまったのか……。正直私にもよく分からないんです」
……ええ?ダートを全否定???
その場にいる全員が、カネヒキリの発言に凍りつきました。
「あ、まあ……。それは祖父であるサンデーサイレンスの血統ですからダート適正は……」
「でもSS産駒って、日本ではターフ主流ですよね」
……言い返せない!
更に畳み掛ける様に、カネヒキリは言いました。
「たとえば一見華やかなG1。でも戦い終わってテレビで大写しになった瞬間って、……いつも砂をかぶって泥だらけの見苦しい姿なんですよ」
「……それはありますねえ」
うんうん、と感慨深そうにうなずくのは……。燃え上がる炎の色を名に冠したヴァーミリアンです!
「僕なんか、最初芝でいい感じに走っていたんですよ」
遠い過去を思い出すように、ぼんやりと中空を見つめるヴァーミリアンの様子を回りの者達は固唾を呑んで見守っています。
「それが……皐月賞で惨敗し、その後の菊花賞トライアルでも何故か泣かず飛ばず……。呆然と日々を送る僕に、ある日調教師さんが肩を叩きながら言ったんです。『……君、良かったらダートを走ってみないか』って……」
「……」
「魔が差した…、って言うんですかねえ」
ふう、と深く溜息を吐いたヴァーミリオンが、足元の影を見つめました。
「ダートだったらまたユタカが乗ってくれるよ、なんて甘言に乗せられて、僕はエニフSの舞台に立っていました。……あの時の事はよく覚えていません。気がつくと僕は先頭に立ち……。引き綱を取られて記念撮影を行っていました……」
「ヴァーミリアン君」
「……それで僕悟ったんです。ああ、僕はもうこの道で生きていくしか、ないんだな……って」
うわーん!
辺りに号泣が響き渡り、円陣を組んだ馬達が肩を叩き合っています。
「大丈夫だよ!俺達一頭(ひとり)じゃないんだよ!」
「皆で頑張ろう!そして笑おう!な!」
「ああ!あれがいけなかったんだー!あの時芝で惨敗さえしなければー!!!」
カフェオリンポスの絶叫が響き渡ったその時!
「ねえ、芝って美味しい?」
無邪気な発言に、一同の視線が集まりました。
「……カジノドライヴ」
「あのね、砂ってとってもサクサクしているの。でも食べられないんだよ?昔アメリカにいた頃、調教師さんに聞いた事があるんだ。あの内側に生えている緑色のものは何?って……」
「……」
「そしたらね、調教師さんが言ったんだ。あれは“食べ物”だから、踏んだら駄目だよ♪って……」
ターフ、それは禁断の果実……。
一度味わってしまったなら、もう離れられない魅惑の触感!!
そっとカジノドライヴの肩を叩いたカネヒキリは、厳かに口を開きました。
「知らなくていいから。……君はこのまま砂の王者を目指せばいい」
「……はい♪尊敬するカネヒキリさんがそう言うなら、そうします!」
呆然と事態を見守るアドマイヤモナークが、震える手でマイクを握りました。
「……あ〜、本日の『ここが変だよ日本競馬』。日本のダート最高峰フェブラリーSに向かう方達に、ダートに対する熱い思いを語っていただきまし、た……」
「痛いわね。正直」
アサカディフィートが辛辣なコメントを吐きました。
「……誰のせいだよ?」
「は?私?関係ないわよ」
するするとカーテンが下りる中、アドマイヤモナークがアサカディフィートに掴みかかりましたが、放送時間内では無かった為、放送事故は免れました。
でもね、俺も1回しか芝を走った事ないんだよ。
サクセスブロッケンがそう呟いたのも放送時間内に収まりませんでした(笑)
痛すぎるがな!!!
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