|
瑞穂のモノローグ 『みんなとの楽しい思い出がたくさん出来た卒業旅行・・・。 紫苑さんや、貴子さん達ともすっかり仲良くなった一子ちゃんを見て、 僕は、ある事を思い付いた。 ・・・それは・・・』 楓 「・・・」(唖然としている) 一子 「初めまして!高島一子で〜す!!」 瑞穂 『そう・・・、楓さんにも、一子ちゃんを紹介する事・・・』 |
第10話「最後の離別」
[ リスト | 詳細 ]
一子ちゃんにとっての幸せとは・・・?
|
(唖然とした表情のままの楓) 瑞穂 「では・・・一子ちゃん、改めて紹介するわね。 こちらは、私の実家で・・・」 楓 「・・・瑞穂さま・・・」 瑞穂 「え?あ・・・はい・・・」 楓 「この様な方が・・・寮に居られたことを・・・、 何故、今まで隠していらっしゃったのですか?」 瑞穂 「ええと・・・それはその・・・ 一子ちゃんは・・・この通り幽霊だし・・・ 楓さんが驚くんじゃないかと・・・」 楓 「(ため息)・・・相手が幽霊だからと一々驚いていては、 鏑木の家政婦は務まりません。 (後ろを向いて小声で独り言)も〜・・・お姉さまったら・・・ 瑞穂さんの居る前には出てこないって約束したのにぃ〜・・・」 瑞穂 「はい?」 楓 「・・・!それより・・・」 瑞穂 「え?そ・・・それより・・・?」 楓 (詰め寄る) 「・・・瑞穂さま、このお部屋でご一緒に・・・と言うことは、 つまり・・・同棲をなさっていた・・・と、いうことですね?」 瑞穂 「ど・・・同棲!?」 一子 「う〜ん・・・同棲ですかあ〜 言われてみればそうですよねえ〜」 楓 「!!」 瑞穂 「!?ちょっ!ちょっと!一子ちゃん!! こう言うのは同棲とは言わないってば!」 一子 「え?でもでも〜 毎日お姉さまとご一緒にお風呂に入ってお背中を洗いっこしたり、 ご一緒のお布団でお休みしたりするのは、 やっぱり同棲とは・・・」 楓 「おを!おぉふぅぅ!?」(驚嘆) 瑞穂 「!!!わあわあ〜一子ちゃん!! そんな事してないしてないしてないってば!!」 一子 「まぁたまたぁ〜。お姉さまったらぁ〜。」 楓 「み・・・みィずゥほォさァあん・・・?」(憎悪の揺らめき) 瑞穂 「あ〜あのあの・・・楓さん冷静に!冷静にぃ〜! 一子ちゃん!一子ちゃんも、落ち着いて、 昨日はどうしてたとか、よ〜く思い出して。ね?」 一子 「え〜?・・・ん〜・・・?」 瑞穂 「・・・。」 一子 「・・・う〜ん〜・・・」(腕組みして考え込む) 瑞穂 「・・・。」 一子 「ん〜・・・ ・・・ん?(しばらく思案して納得) Oh! 夢と現実をごっちゃにしていました〜 ごめんなさいですぅ〜。 テヘッ」 瑞穂 『夢って・・・一体・・・』 「え・・・えっと・・・ほら、 この通り、一子ちゃんは冗談で言っているだけだから。 そんな、楓さんが思っているような・・・」 楓 「・・・間違いをしてはいない・・・と?」(高圧的に) 瑞穂 「間違いとか、そんな・・・事は・・・」 楓 「何事も無いと?」 瑞穂 「何事も・・・無いです・・・。」 楓 「信用しても宜しいのですね?」 瑞穂 「・・・はい・・・」 楓 「・・・ふう〜ん・・・」(いぶかしげに横目でにらむ) 瑞穂 「ううっ・・・」 一子 「ありゃま、お姉さま、たじたじですねぇ」 瑞穂 『一子ちゃんったら・・・もう・・・』 「あはは・・・楓さんは、私の育ての親でもあるから、 同じ家政婦さんでも・・・、ちょっと頭が上がらないのよ。」 楓 「はい、おしめの取り替えに、お風呂のお世話、 子守唄を唄って差し上げたこともありますから。」 瑞穂 「!?ち・・・ちょっと!楓さん!! 何時の話をされているんですか!!」 楓 「何時って・・・私には、ついこの間の事のように思われますが?」 瑞穂 「いくらなんでも友だちの前で言うようなことじゃ・・・」 一子 「・・・うわあ〜・・・なるほどぉ〜。 まさしく親子の会話ですねぇ〜」 楓 「あ・・・いえ・・・私はただ、瑞穂様の身の回りの世話をさせて頂いているだけで・・・。」 一子 「いえいえ、瑞穂お姉さまがこんなに素敵になられたのも、楓さんのお陰なのですよぉ。 つまりこれは楓さんが母親としての務めを成し遂げたと言う証であって それは即ち楓さんはもはや瑞穂お姉さまの母親そのものだということのなですよ。」 瑞穂 「・・・。 ウフッ、そうね。 ありがとうございます。 楓母さま。」 楓 「み・・・瑞穂・・・さ・・・」(顔を赤くする) (笑顔で楓を見つめる一子と瑞穂) 楓 「・・・わ・・・私、お夕食の用意がありますので、 これで・・・失礼させて頂きます。」 瑞穂 「ウッフフフ」 一子 「形勢逆転ですね?瑞穂お姉さま。」 瑞穂 「ウフッ・・・ありがとう、一子ちゃん。」 一子 「いえいえ、失言のお詫びに礼など・・・」 瑞穂 「ううん・・・私ね、 いつだったか、小さい頃に一度だけ、 楓さんに『母さま』って言った事があるの・・・」 一子 「はあ・・・」 楓 「瑞穂・・・さん・・・」 (喪服を着ている楓、幸穂の椅子の上で丸くなって眠っている瑞穂) 楓 『こんなに裕福な家庭には・・・ 私の様な境遇など・・・無縁だと思っていた・・・。 ・・・? (眠っている瑞穂の目から涙が零れる) ・・・瑞穂様・・・
この涙は・・・私が何時も見てきた、施設のみんなと同じ・・・』
瑞穂 「母・・・さま・・・」(寝言) 楓 「!」 『葬儀に出ていなくても・・・分かるのかしら・・・』 瑞穂 「ん・・・む・・・」 楓 『時が来れば話すと、慶行様は仰っていたけど、 私には・・・それまで黙り通す事など・・・』 (瑞穂、目を覚ます) 瑞穂 「ん・・・?あれ・・・? 母さまは?」 楓 「!・・・」 瑞穂 「・・・あ・・・そうか・・・」 楓 「・・・?」 瑞穂 「あのね、ボクね、さっき、母さまとサヨナラしたの。」 楓 「ええっ?」 瑞穂 「母さまがね、 これからみんなをしあわせにするおしごとにいくから ボクとはサヨナラなんだって。」 楓 「・・・。」 瑞穂 「ボクもついてくっていったんだけど ボクまでいなくなったら、お祖父様や楓さんががさびしがるから 母さまの分までちゃんとおそばにいてあげなさいって」 楓 「瑞穂様・・・」 瑞穂 「ええと・・・う〜ん・・・あとはね・・・。」 楓 「!・・・。瑞穂様・・・!」(瑞穂を抱き寄せる) 瑞穂 「!?・・・楓さん?どうしたの?」 楓 「楓は・・・嬉しゅう御座います。」 瑞穂 「・・・あ、・・・そだ」 楓 「・・・?」 瑞穂 「これからは、楓さんがボクの母さまだから 楓さんの言うことをよく聞きなさい、だって。」 楓 「え?・・・」 瑞穂 「よろしくおねがいいたします。母さま。」 楓 「瑞穂様・・・。 (瑞穂の両肩を掴む) 瑞穂様、楓は・・・修行の身です。」 瑞穂 「しぎょーのみぃ?」 楓 「はい。ですから、これまで通り、楓とお呼びください。」 瑞穂 「でも・・・」 楓 「幸穂様は、私の言う事をよく聞くように、 ・・・と仰ったのですよね?」 瑞穂 「・・・うん・・・」 楓 「それでは、その様にお願い致します。」 瑞穂 「ん〜・・・。」 楓 「・・・瑞穂様。」 瑞穂 「・・・ん、分かった・・・。」 楓 「ありがとうございます。瑞穂様。」 瑞穂 「こちらこそよろしくおねがいいたします 楓さん」(瑞穂、満面の笑み) 回想終了 楓 「楓は・・・嬉しゅう御座います。」 瑞穂 「・・・その時は、しゅぎょうの実って何の木に生るのかな・・・ なんて思っていた位で、それが何なのか、考えても居なかったわ・・・。 (一子、思わず吹き出しかけて手で塞ぐ) 小学校に入ってから、母さまは亡くなってもう居ないことが理解できるようになって、 そんな私には、家政婦さん達が自分の世話をしてくれる事を 当たり前のように思っていたから、もうその時の事はすっかり忘れていた・・・。 そんな時だった・・・授業で『修行』の意味を習って、 その時のことを思い出して分かったの・・・ ああ・・・楓さんは、私の為に・・・私の母さまに成ろうと頑張っていたんだ・・・って。 でも・・・、改まって楓さんを『母さま』って言うのがなんだか恥ずかしくて、 なかなか言い出す切っ掛けが作れなかった。」 一子 「瑞穂お姉さま・・・」 瑞穂 「だから、一子ちゃんのさっきの言葉で、 そのきっかけが出来たわ。」 一子 「なるほど・・・。」 瑞穂 「母さまが居なくても・・・、 私が辛い思いや、 悲しい思いをあまりしないでやって来られたのは、 楓さんや・・・皆が・・・ ・・・!」(何かに気付く) 一子 「?瑞穂お姉さま?」 瑞穂 「あ・・・ううん・・・こんなことなら、 もっと早く紹介すればよかったかな・・・って。」 |
|
楓 「短い間でしたが、至らぬ点が多々有りましたこと、 改めてお詫び申し上げます。」 奏 「とんでもないのですよ。 奏、楓さんが来てくれてとっても楽しかったのですよ。」 由佳里 「また来てくださいね。」 まりや 「こおら、楓さんは本業がとても忙しい人なんだからあ」 楓 「そうですね・・・次に来られるとすれば・・・卒業式ですね。」 瑞穂 「えっ!?卒業式に来られるんですか?」 楓 「私は・・・瑞穂お嬢様の保護者の代理として、 当然参席出来るものだと思っておりましたが・・・ 私では・・・参席の資格は無いのでしょうか?」(拗ねる) 瑞穂 「あ・・・いや、そうじゃなくて・・・アハハ・・・ その・・・あれ?一子ちゃんは?」 由佳里 「あ・・・っと、私の部屋で寝ています。 起こそうとしたのですが、完全に夢の中みたいで・・・。」 瑞穂 「・・・しょうがないわねぇ・・・。 それじゃ、正門の前まで送ります。」 楓 「いえ・・・、此処で結構です。それでは・・・」 (楓、退出。一同、そのままで楓を見送る。奏と由佳里は手を振っている ドアが静かに閉まる) 楓 「・・・。」(寮を見上げる) 『お姉さまの未来に・・・、幸、多からんことを・・・。』 (深くお辞儀をして立ち去る) まりや 「な〜んか、急に静かになった気がするわねぇ」 瑞穂 「ウフッ、そうね。 ・・・ 奏ちゃん、由佳里ちゃん」 奏、由佳里 「はい?」 瑞穂 「私たちが卒業しても、一子ちゃんの事、お願いね。 月に1度くらいは、私も会いに来られるようにするから。」 由佳里 「もちろんです!」 奏 「新しい寮生の方々が来ても、 きっと楽しくやっていけると思うのですよ。」 まりや 「いっそのこと、 全校生徒に教えちゃったらどう?」 瑞穂 「ア・・・それはちょっと、どうかな」 由佳里 「そうですよ!そんな事をしたら、 学院中大騒ぎになっちゃいますよ」 まりや 「そんなのは最初だけよ。 それに、圭も言っていたんでしょ? 外に出たがるのは良い傾向だって。 もっと多くの人と出会うことが、絶対に一子ちゃんの為にもなるわよ。」 由佳里 「う〜ん・・・」 瑞穂 「・・・。」 『一子ちゃんの・・・為に・・・か・・・。』 まりや 「え? 何かお願い事?」 一子 「はぁい!一子が最近身に付けた超能力で、 お世話になったお礼に、まりやさんのお願い事を、 何でも叶えちゃうのですぅ。」 まりや 「(苦笑)最近身に付けた超能力って・・・ う〜ん・・・、別に・・・無いわよ。」 一子 「そぉんなぁ・・・何でも良いんです。 あ〜、でもでも、ハンカチから鳩を出すとか ショートケーキ100人分とか 世界征服とかそーゆーのはムリですよ。」 まりや 「フ・・・(苦笑) それじゃあ何でも、じゃないじゃないのさあ」 一子 「あう・・・」 まりや 「ん?どうしちゃったのよ、急に」 一子 「・・・」 まりや 「そう言えば、お世話にって・・・!? 一子ちゃん・・・ひょっとして・・・」 一子 「・・・」(軽く頷く) まりや 「そっか・・・。帰る方法、見付かったんだ。」 一子 「・・・はい・・・。ですから、お礼がしたいんです。」 まりや 「お礼・・・って、別にあたしは何もしていないけど・・・」 一子 「いいえ、まりやさんのお陰です。 まりやさんが、ご自分の未来を見付けようとなさっている姿を見て、私、判ったんです。 私は、此処に居たいって思い続けていたから・・・ いつまでも瑞穂お姉さまのお側に居たいって言う甘えが有ったから・・・ だから・・・。」 まりや 「・・・なるほどね・・・で? その事、瑞穂ちゃんには話したの?」 一子 「いいえ・・・」 まりや 「え?・・・って、まさか、一子ちゃん・・・」 一子 「はい・・・」 まりや 「どうしてぇ?黙って居なくなっちゃったりしたら、 瑞穂ちゃん・・・」 一子 「それは・・・まりやさんがアメリカに行かれる事を 皆さんにお話ししないのと同じです。」 まりや 「!あたしがアメリカへ行く・・・って、 どうして? 明日、先生に・・・」 一子 「はい、ですから、超能力なんですってば。」 まりや 「・・・ふう〜ん・・・ それじゃあ・・・、有効活用をしないとねぇ。」 一子 「はぁ〜い。それじゃあそれじゃあ?」 まりや 「・・・それじゃあ、あたしにお礼をする分、 由佳里や奏ちゃんにしてあげて。」 一子 「え?・・・でも・・・」 まりや 「あの子達、瑞穂ちゃんが卒業した後も あなたの面倒を見るんだって張り切っているんだから。 急に一子ちゃんが居なくなったりしたら、二人は絶対に寂しがる。 妹たちのそんな姿、あたしは見たくない。」 一子 「・・・」 まりや 「あたしが嬉しい事は、 妹たちの笑顔を見られること。」 一子 「まりやさん・・・」 まりや 「ん・・・(頷く)」 一子 「・・・(納得して頷く) ひとりがみんなのために・・・ みんながひとりのために・・・」 まりや 「え?」 一子 「バレンタインの時の・・・。 一子、この言葉、とっても感動しました。」 まりや 「・・・って・・・あ・・・ああ・・・ そんなの・・・只の思い付きよ。」 一子 「いいえ、これは、まりやさんの心の言葉です。」 まりや 「・・・一子ちゃん・・・。」 (一子、笑みで返す) 瑞穂 「結局、夕べ一子ちゃんは、 由佳里ちゃんのお部屋にお泊りしていたの?」 由佳里 「!!あっ!いえっ!あ・・・はいっ!」 まりや 「どっちなのよ」 由佳里 「あの・・・部屋に戻ったら、 一子ちゃんはいなかったのですが、 今朝、起きたら、隣で寝ていて・・・」 まりや 「・・・一子ちゃん、気が緩んでるわね。 明後日には寮母さんが戻ってくるから、粗相の無いように、 瑞穂ちゃん、きつ〜く言っておいた方がいいわよ。」 瑞穂 「アハハ・・・さすがに一子ちゃんもその辺は心得ていると思うけどね・・・?」 由佳里 「!・・・。」(瑞穂を見ていたが、目が合って慌てて赤面したままうつ向く) 瑞穂 「・・・?」 (寮内を感慨深そうに散策する一子) 一子 (寮に向かって元気良く) 「・・・私、高島一子は、明日、此処を去ることにしました。 ・・・ 22年間、長い間大変お世話になりました。」 (深く一礼) 「・・・さて・・・由佳里ちゃんと奏さんに御礼の準備をしないといけませんねぇ〜」 由佳里 「お願い事?」 一子 「はあい。行きたいところや会いたい人とか、 由佳里さんのお願い事を叶えて差し上げるのですぅ」 由佳里 「アハハ・・・(苦笑) 行きたいところ・・・かぁ・・・ そうだなぁ・・・実家に行きたい・・・かな」 一子 「御実家?御実家には冬休みに行かれたのではないですか?」 由佳里 「うん・・・、そうなんだけど・・・、 お姉さんに報告が出来なかったから・・・。 自分のやりたいことがはっきりした事や、 聖應を薦めてくれたことを、ちゃんとお礼をしたいな。」 一子 「うん!それならわざわざ行かなくても、今から御報告しちゃいましょぉう。」 由佳里 「ええっ?そんなの無理よ。」 一子 「大丈夫です。一子におまかせですぅ。」 由佳里 「・・・。」 一子 「それでは由佳里ちゃん、良いですかぁ? 次に名前を呼ぶまで、しっかりと目を閉じていて下さいね。」 由佳里 「え?・・・う・・・うん・・・」 (一子が光りだし、部屋が光に包まれる) 由佳里 「い・・・一子ちゃん!?」 一子以外の声 「由佳里・・・」 由佳里 「?・・・ん・・・一子ちゃ・・・(目を開く) !? ね・・・姉さん! ・・・由紀恵お姉さん!!」 (由紀恵、微笑む)
|
|
まりや 「ん、あれ?由佳里は?」 奏 「一子さんと楽しそうにお話をされていたようなのですよ。」 まりや 「ふうん・・・一子ちゃんとね・・・」 奏 「奏、呼んで来るのですよ。」 まりや 「ああ、いいわ。 後で食べられるようにしておいてあげて。」 奏 「え?・・・あ・・・はいなのですよ。 ・・・?」(不思議そうな表情で席に戻る) 瑞穂 「・・・珍しいわね、まりや。」 まりや 「たまには良いんじゃないかなって・・・。 食事の時間なのに、夢中になって話し込むなんて、 よっぽどの事なんだろうな・・・って、そう思っただけ。」 瑞穂 「フフッ・・・妹思いなのね・・・ って言っても良いのかしら?」 まりや 「フ・・・ただの気まぐれよ・・・」 由佳里 「・・・。」 (由佳里の姉、由佳里を抱きしめて頭を撫でている) (奏、食事が済んで部屋に戻る。鼻歌[なぜか「リボンの気持ち」]を唄いながら階段を上がる奏) (奏、部屋に入り、照明を入れる) 奏 「・・・!」 一子 「ふにゅう〜・・・」(奏のベッドの端で寝ている) 奏 「一子さん、此処はお姉さまのお部屋ではないのですよ。」 (苦笑しながら一子を起こそうとする) 一子 「ウウ〜ン・・・お姉さまぁ・・・ラブですぅ〜・・・ふにぃ・・・」 奏 「・・・フフッ。 一子さんは、今、幸せの真最中なのですね。」 (呆れて起こすのを止め、微笑む) 夜空 (就寝中の奏) 奏 「?・・・此処は・・・病院・・・なのですか。」 (部屋の名札に目が行く) 「周防・・・院・・・? あ・・・!」 (部屋に飛び込み見渡す。ベッドに院長。その傍らに当時の奏) 奏 「奏は・・・タイムスリップをしてしまったのでしょうか?」 奏(幼) 「うわあ〜きれいなタオルなのですよ〜」 院長 「フフッ・・・それは、リボンなのですよ。」 奏(幼) 「リボン?」 院長 「後ろを、向きなさい・・・」 (院長、震える手で奏にリボンを着ける) 奏(高) 「・・・そうなのですよ・・・。この日は・・・ ・・・この日は・・・。」 院長 「・・・はい・・・。こちらを向いて・・・ ん・・・よく似合っているのですよ。」 奏(幼) 「わぁ・・・」 院長 「・・・。 いいですか、奏。 私はあなたを遺して逝かなくてはいけません。 それが今の私にとって、一番の心残りなのですよ・・・・・・。」 奏(幼) 「?」 院長 「・・・そのリボンは・・・、私があなたにしてあげられる・・・ 最初で最後の贈り物なのですよ・・・。」 奏(幼) 「ハハハ、わ〜い」(はしゃぎ回る) 院長 「・・・奏、あなたのこれからの一生が・・・どうか、 このリボンのような、明るい光に満ち溢れているように・・・ 私は・・・何時までも祈っていますからね・・・」 奏(高) 「・・・。 (目を瞑って涙を拭うと、立っていた場所がベッドの前に移っている。) ・・・!」(院長と目が合う) 院長 「良い人たちに・・・巡り会えましたね・・・。」 奏(高) 「院長・・・先生・・・」 院長 「よかった・・・本当に・・・ よかったですね・・・奏・・・。」 奏 「・・・。 はい・・・。」(涙しつつ笑顔) 院長 「・・・。」(笑顔で返す) (奏、夢から覚める) 奏 「院長先生・・・?」 (身を起こすと、隣には一子が寝ている) 一子 「うう〜ん・・・奏しゃあん・・・がぁんばるのですぅ〜よぉ〜」 奏 「・・・ 一子さんが見せてくれたのですね・・・。 ・・・ありがとうございましたなのですよ。」 一子 「ん〜・・・ふにぃ・・・」 由佳里 「皆さま方、昨夜は夕食の時間に遅れて 申し訳有りませんでした。」 まりや 「・・・うん・・・、さあ、食べましょ。」 瑞穂 「それにしても、由佳里ちゃん、眠かったりしないの?」 由佳里 「え?」 瑞穂 「一子ちゃんと話し込んでいて、 徹夜になったりしていないかと思って・・・。」 由佳里 「あ、いいえ。 皆さま方の食事が終わる頃には、一子ちゃんも戻られましたから。」 瑞穂 「え?そうなの?でも、一子ちゃんは・・・」 奏 「一子さんは、只今、奏の部屋でお休み中なのですよ。」 瑞穂 「え?私、てっきり、 由佳里ちゃんのお部屋でお泊まりして居るものだと・・・」 奏 「はいなのです。昨夜、食事が終わって部屋に戻りましたら、 一子さんがベッドで寝ていらっしゃったのですよ。 とても楽しそうに寝言を仰っていたので、 起こすのが気の毒に思ったので、そのままお休み戴いたのですよ」 瑞穂 「寝言?」 奏 「あ・・・えっと・・・その・・・はい・・・」(赤面) まりや 「なあに?顔が赤いけど。」 奏 (照れくさそうに) 「え・・・っと、それが・・・ 一子さんと・・・瑞穂お姉さまとの ラブラブ新婚生活なのだそうですよ。」 瑞穂 「ラ・・・ラブラブ・・・」 まりや 「新婚・・・」 由佳里 「あ・・・」 (由佳里、スプーンを落とし、震えて赤面している) まりや 「ん?由佳里ィどうし・・・? な〜にあんたまで赤くなってんのよ。 ・・・?」 由佳里 「・・・。」 まりや 「ハハ〜ン・・・さては、 あんたも一子ちゃんの寝言を聞いたことがあるのねェ?」 由佳里 「あ?いえ・・・そんなこと・・・」 まりや 「ええいっ!見え透いた嘘をつくでなぁいっ! その顔は、とぉ〜ってもエッチな話を聞いたときの顔だ!」 由佳里 「うう・・・」 まりや 「さあ〜、聞かせてもらいましょうかぁ?」 由佳里 「イヤです・・・勘弁してください」 瑞穂 「まりや・・・、由佳里ちゃん、嫌がって居るんだし・・・」 まりや 「なによぉ、別にあんたの寝言を聞かせろって言ってんじゃないんだし・・・?
フ・・・
いいわよぉ・・・別にィ・・・。 話さないってんなら、 あたしが聞いた由佳里の寝言を公開しちゃおうっかなあ・・・」 由佳里 「そぉんなぁ!」 まりや 「さあ!白状しなさぁい」 瑞穂 「まりや、一応・・・本人の了解をもらってからの方が・・・」 まりや 「大丈夫だって。むしろ一子ちゃんなら どんな寝言を言ってたのかもう興味津々ですぅ〜 ・・・っとかなんとか言うに決まっているわよ。」 瑞穂 「いや・・・でも・・・」 まりや 「さあ!さあ!さあ!さあ!」 由佳里 「うぅ・・・。」 瑞穂 「・・・。」 由佳里 「瑞穂・・・お姉さまが・・・」 瑞穂 「え?また私なの?」 由佳里 「・・・ッ! みっ!・・・瑞穂お姉さまが・・・ 瑞穂お姉さまが男の方で!一子、幸せですぅッ!! 瑞穂、まりや 「!!」 |
|
(瑞穂と紫苑が会話している) 瑞穂 「も〜・・・ そんなに笑わないで下さい紫苑さん〜・・・」 紫苑 「べ・・・べつ・・・に・・・ 笑ってなんていませんよ。 ただ・・・一子さんが・・・ 可愛らしいな・・・プッ・・・フフフフ・・・」 瑞穂 「そんなに可笑しいですか?」 紫苑 「可笑しくなんて・・・有りませ・・・クスッ・・・ フ・・・だっ・・・だって・・・ 男性に成った瑞穂さんと・・・ ラブラブ新婚生活だなんて〜・・・」 瑞穂 「笑い事じゃありませんよぉ・・・。 も〜一子ちゃんったらぁ〜・・・。」 紫苑 「・・・宜しいではありませんか。 そんなに素敵な夢を見られると言うことは、 それだけ瑞穂さん達が、 一子さんを大切にしていらっしゃると言うことです。」 瑞穂 「そうでしょうか・・・」 紫苑 「・・・いい仕事、してます。」 瑞穂 「え?」 紫苑 「以前、圭さんが瑞穂さんに言われたことですわ。」 瑞穂 「あ・・・ああ・・・」(苦笑) 紫苑 「フフッ・・・ それにしても、由佳里さんが泣き出してしまうなんて、 夢の中の事とは言え、瑞穂さんが男性なのが、 余程ショックだったのでしょうね。」 瑞穂 「あ・・・はあ・・・」 紫苑 「一子さんの寝言って、 一体どんな内容だったのでしょうか? ウフッ・・・少々興味が湧いてまいりましたわ 今度、由佳里ちゃんにこっそり伺ってみましょうかしら。」 瑞穂 「ちょっ・・・やめてください!紫苑さん!! 余計に勘繰られる様なことに成ったら・・・」 紫苑 「でも、瑞穂さん。 いずれ御二人にはお話しなさるのでしょう?」 瑞穂 「え?・・・ええ・・・まあ・・・。 そのつもりでは居るんですが・・・。」 紫苑 「でしたら、今回のことは、 ちょっとした布石になるやも知れませんわね。」 瑞穂 「はあ・・・そうなると良いのですが・・・ だからと言って、新婚だなんて・・・」 紫苑 「ウッフフフフ・・・ 恋する乙女の妄想は、そういうものです。」 瑞穂 「は・・・はぁ・・・」 『恋する乙女・・・かぁ・・・ 男の僕には一生理解できないよ・・・』 圭 「瑞穂さん」 瑞穂 「え? わっ・・・はい、な・・・何でしょうか、圭さん」 圭 「今日、寮にお邪魔してもよろしいでしょうか 楓さんにお伝えしたいことが・・・」 瑞穂 「あ・・・申し訳ありません・・・。 楓さんは、寮母さんの代行が終わって、 一昨日の夜、帰ったところなんです。」 圭 「え・・・」 瑞穂 「恥ずかしながら、旅行から帰ったらすぐだってことを 私も寮の皆も、すっかり忘れていまして、 昨日も、紫苑さんに叱られてしまいました。」 紫苑 「本当にそうですわ。 瑞穂さんの事ですから、楓さんと私が揃うと御都合が悪くなるので、 わざと黙っていらっしゃったのではないかと邪推せざるを得ませんわ。」 瑞穂 「・・・紫苑さん・・・ですからぁ・・・」(苦笑) 圭 「もう・・・会えないのですね・・・」 瑞穂 「圭さん・・・(苦笑) でしたら、携帯電話の番号をお教えしますので、 連絡を取ってみてはいかがでしょう?」 圭 「そう、ですね。 そうして頂けると、助かります。」 瑞穂 「じゃあ・・・」(メモを書いて圭に手渡す) 圭 「・・・ありがとうございました。(立ち去ろうとするが立ち止まる) あ・・・瑞穂さんは今日、掃除当番でしたね。」 瑞穂 「ええ、そうですが・・・何か?」 圭 「・・・いいえ・・・別に・・・ では・・・。」 瑞穂、紫苑 「・・・。」(立ち去る圭を怪訝な表情で見送る) 瑞穂 「・・・(苦笑) 本当に・・・圭さんは・・・?(紫苑の方を向く) 紫苑・・・さん?」 (紫苑は圭の立ち去った方向を見詰めたまま) 紫苑 「圭さんは、楓さんと以前からお知り合いなのですか?」 瑞穂 「?いえ・・・、1月に開いたパーティーで会ったのが初めてでしたから、 ・・・どうかしましたか?」 紫苑 「何か圭さん・・・心配事が御有りのようです。 ・・・楓さんと、瑞穂さんに。」 瑞穂 「心配事?私たちに?」 紫苑 「よくは分かりませんが、しばらくは 圭さんの言動に注意した方が良いと思いますわ。」 瑞穂 「そう・・・ですか。」 一子 「う〜ん・・・どうすれば昇天出来るのでしょう・・・」(腕組みして考え込む) 由佳里 「・・・。」 由佳里の回想 由紀恵 「先輩にお礼を?」 (由佳里、頷く) 由紀恵 「ん・・・由佳里・・・人をもてなす方法は・・・知っているでしょ?」 由佳里 「・・・でも、ちゃんと覚えていないし・・・覚えたくても・・・。」 由紀恵 「そうね・・・それなら、 餅は餅屋。茶華道部の人に教えてもらえば良いんじゃない?」 由佳里 「茶華道部・・・」 由紀恵 「由佳里には、ちょっと厳しいかもしれないけれど・・・ ううん・・・頑張り屋さんの由佳里なら・・・大丈夫ね。」 回想終了 由佳里 「・・・」 茶華道部部長 「そこの方!」 由佳里 「えっ!?あ・・・はいっ!」 茶華道部部長 「こちらに何か御用ですか?」 由佳里 「えっと・・・その・・・あの・・・お茶を・・・習いたいのですが・・・」 茶華道部部長 「入部の希望ですか?」 由佳里 「え?・・・いえ・・・そうじゃ有りませんが・・・」 茶華道部部長 「・・・興味本意でしたらお引き取りください。 ここは部員以外の立ち入りは禁じています。 もし、入部を希望されるのでしたら、 来年度の新入部員の募集時期まで待って頂けませんか? 茶道検定を控えている今入部されても、 貴女にとって中途半端になってしまいますので・・・。」 由佳里 「あ・・・そ・・・そうですか・・・」
|




