DAY by DAY 〜一年戦争の証言〜

「機動戦士ガンダム」一年戦争のすべてが今明らかに!

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 気がついたとき、自分がどこにいるか分からなかった。モニターや計器が発するわずかな明かりで、自分がMSのコクピットにいることを理解した。意識がはっきりしてくるにつれ、自分がどこで何をしていていたかを少しずつ思い出してきた。そう自分は、オデッサの攻略を目指す連邦軍を阻止するために、MSで出撃したのだ。11月7日に始まった連邦軍の大攻勢は、我が軍の反撃もあってその日のうちに一端は終息した。しかし、次なる攻撃があることは私をはじめ、オデッサに駐留するジオン公国軍の全員が口には出さなくとも理解していた。
 翌日も小康状態であった。散発的な攻撃があるだけで、我が軍も攻勢に出ることはなく、防御に徹していた。しかし、11月9日、敵の大部隊が戦線を突破したことで、戦局は大きく動くこととなった。戦線の切れ目からなだれ込む敵部隊に対し、我が軍も部隊を派遣、戦線の再構築を目指したのである。その部隊の中に私もあった。基地を出撃していた私は、敵部隊が戦線を破ったという通信を聞くと、自分の部隊をそちらに向けた。しかし、該当する地点に達する前に敵部隊と接触、戦闘に突入したのである。通信からわずかな時間で、敵はかなりの数の部隊を浸入させており、辺りはすでに混戦状態にあった。敵の攻撃を何とか押し戻そうとするも数の上での劣勢は明らかで、この防衛網が突破されるのも時間の問題であった。一端後退し、態勢を立て直すべきか? そう思ったその時、激しい衝撃を受けた私は、機体が倒れるのを感じていた。機体がダメージを受けたことは明らかであったが、衝撃でモニターは一時的にブラックアウトしており、アラームだけがコクピット内に鳴り響いていた。そして、機体が地面に倒れこむ衝撃を感じると同時に私は気を失ったのである。
 そう、これが数時間前の出来事だった。戦闘がどうなったのか、周囲の状況は全く分からない。とにかく、機体を動かすか、でなければコクピットから脱出しなければならない。モニターをつけようとするが、全く反応せず、機体の状態を示すモニターも消えたままとなっている。コントロールスティックやフットペダルはわずかに反応するが、機体が動き出す気配は全くなかった。数十分、機体を動かそうとしたが、それも無駄な努力であった。次に残された手段は、機体からの脱出だ。脱出装置が作動しなければ、私はここで朽ち果てることになる。覚悟を決めて、イジェクションレバーを引いてみたが、鈍い音がするだけで、何もおこらない。連続して何度か、引いてみたが同じであった。これで終わりか……、不思議と落ち着いた気分だった。ため息と同時にシートにもたれたとき、爆発音がコクピットハッチに響いたのである。イジェクション時にハッチを強制排除する装置が働いたのだ。開いたハッチからは、外の光が差し込み、そのまぶしさに私は目を細めた。光と同時に外から砂漠特有の砂を含んだ空気と何かが燃えるようなにおいが入り込んできていた。コックピットから這い出した私が見た光景は、今でもどう表現していいか分からない。私の視界には破壊された兵器とその間で息絶えた兵士たちが飛び込んできた。その光景に私は言葉を失うと同時に、呆然と立ちすくんでいた。
 遠くから聞こえた爆音に我に返った私は、この場を離れ、味方への合流を考えた。しかし、どっちに行けば味方がいるのか、見当も付かない。とりあえず基地のあった方向に向かい歩き始めた。一体どれほど歩いただろうか。周りの風景が変わることなく、破壊された兵器と死んだ兵器で埋め尽くされていた。ひとつ違うことは、少しずつ我が軍の兵器や兵士が多くなっているということだった。そのうち人の気配を感じることもあったが、物陰から様子を伺うとそのほとんどが連邦兵で、中には我が軍の兵士を連行している場面に出くわすこともあった。敵を迂回しながら、基地を目指すうちにいつしか、日は地平線に消え、辺りは真っ暗になった。エマージェンシーキットにライトが入っていたが、敵兵がいる中で自分の居場所を知らせるようなまねはしたくはない。かといって味方の位置も分からない。この状況に半ば自暴自棄なった私は、あと数時間歩いて、それでも味方に出会わなければ投降しよう、と決心した。そう決めると、ライトを点け辺りを照らしながら歩き始めた。この時の不気味さと心細さは今でもはっきりと覚えている。そうして歩き始めて数十分後、前から何かが接近してくる気配を感じた私は、ライトを消すと陰に身を隠した。目を凝らしながら暗闇を覗き込んでいると、向こうから一台のトラックがやってきたのである。暗くて連邦軍のものがジオン軍のものか判別できない。敵であれば投降すると決めていた私は、ライトをつけると、道に飛び出した。トラックが急ブレーキと共に停車すると、中から数人の兵士が降りてきて、私に銃を向けたのである。
 後ろに向かされた私は、このまま撃ち殺されるのだと思っていた。しかし、私の耳には、ジオンなまりのきつい言葉が入ってきたのである。ライトを点けた彼らに所属部隊などを伝えると、戦闘の結果を尋ねた。私の質問に彼らは一様に眉をひそめ、鉱山基地は放棄され、現在は敵に制圧されたのだろうと、答えた。そうなっていることは半ば確信していたので、私を驚かせなかった。了解した旨を伝えるためにうなずくと、彼らは味方部隊との合流のために移動しているといい、私にも同行を求めた。彼らは最終的にはバイコヌール宇宙基地を目指しているらしく、他に多くの部隊がそこに向かっているという。連邦軍が警戒態勢――ということは、大規模な掃討作戦やバイコヌールへの攻撃はまだないということだ――にある今のうちに距離を稼いでおいたほうがいいということなのだろう。同行することを了承した私は、彼らと共にバイコヌール宇宙基地を目指すこととなった。
 途中、撤退する味方部隊と合流した私は、何度かの敵襲を受けたが、無事、バイコヌール宇宙基地へと到着した。基地は撤退した部隊であふれかえっており、私が宇宙に戻るHLVに乗れたことは奇跡といってよかった。これが私のオデッサでの戦いとその後の撤退のあらましである。あそこで見た光景、そして鉄が焼けるにおいと死臭、それは宇宙では決して体験できないものだった。そして、私は今も鮮明にそれを覚えているのである。

<ジオン公国軍:オデッサ作戦からの帰還兵:ジン・ナガサワ少尉の回想より/オデッサでの戦果により彼は中尉に昇格した>

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