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(前の記事から続く)
で、昨晩レイトショーでおかわりしてきました。
原作は長編の「ニール・アームストロング」の伝記です。だから宇宙開発と彼のプライベートの両方が鏡の表裏の様に描かれます。月面のセットに最新鋭の高解像度IMAXカメラを用いるかと思えば、プライベートや(当時の取材画像を彷彿させる)宇宙船搭乗シーン等に16mmの手持ちカメラを使うなど細かな演出で対比させています。
この作品で言えること少なくとも作り手が言いたかったことは「人類唯一の偉業を成し遂げた宇宙パイロットも悩みや葛藤を抱える一個人であった」と言う当たり前の事。映画の中で彼の意識に没入すれば「人類最初の月到達宇宙飛行士でなくても、うだつの上がらない理系崩れの一エンジニアであっても、自分の子供たちを元気に一人前に育て上げられることができた方がどんなに幸せだったか」と言う意識がくみ取れます。ラストの月面シーンで、まだ腫瘍で命を落とす前の幼い娘を含んだ家族でピクニックに行くシーンがフラッシュバックしますが彼にとっては人類最大の大エンジニアリングイベントと二度と取り返しのつかない家族の思い出は表裏一体の同義なのです。勿論、「だから娘を病死させた最初の月到達の宇宙飛行士より、一生うだつの上がらないエンジニア崩れでもなんとか二人の娘を育て上げた父の方がいいじゃん」なんてことは微塵も無いのは言うまでもありません。
自分はどうも人の話や物語の理解力が低いようです。家族からよく「人の話を全然聞いてない」と言われます。ちゃんと聞いてるつもりなのに理解できていないのです。昨今の電光石火の様なSNS「ちゃっと」にもついていけません。ついていっているふりをしているかもしれませんがその瞬間は内容が理解できていないのです。映画もしかり。2度鑑賞して初めて、主人公の感情に没入することができました。1202のエラーコードの意味は今回は判りましたがそれにも増して月面着陸までの数分間の描写は今回更に鳥肌が立ちました(絶対成功すると判っているのに)。そして思わせぶりに初めて彼が月への一歩を踏み出した時歓喜のあまり涙してしまったのです。ラストの役者冥利につきるというか、隔離されたガラス越しの夫婦の対面シーンも感動でした。非常に静かで抑えた演技演出なのですが、この時初めて、月に一歩を印す偉業を成し遂げたエリートアストロノーツと、例えば仕事と家庭家族との両立に葛藤するどこにでも居る一家の父の両面を同時に感じることができたというか。
長い映画(2時間22分)です。静と動があまりに対比的であり、感動の盛り上げ方もニヒルな感覚はありますがこの映画に関して「もう少しこうしてもらえば良かった」と言う部分がありません。前のレビューで「アポロ13に一歩及ばない(この映画も劇場で2度、購入したメディアでは何度となく鑑賞しました)」と評しましたが、そもそも映画化の視点が違うのです。今回はとらえどころのないBGMにも心を奪われました。宇宙開発スペクタクルミュージックでも、家族の愛と悲しみと葛藤を表現する切ないメロディでもなく、その中間なのです。不思議な曲調です。さり気なくこのBGMが映画全体のイメージを良く捉えています。音楽に拘るデイミアン・チャゼル監督の面目躍如です。
恐らく今週でロードショー公開は終了するでしょう。
数日間はこの余韻に浸りたいと思います・・・ |

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