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連載・明日を読む06建設経営1 20060105建設通信
【収益確保しのぎ削る/提案、施工総合力で勝負】
2006年、建設経営を取り巻く環境はいぜん厳しい。公共事業予算の削減が続き、民需も堅調とはいえ受注競争は激化の一途だ。財務改善の総仕上げに必須の利益確保への取り組みもやさしくはない。新たな公共調達方式や改正独占禁止法への対応も不可避で、市場見通しも「視界良好」とは言えない。経営のかじ取りいかんでは大きなダメージを負うのは必至だ。文字通り、建設経営は新時代への転換の最終章に入った。06年の明日を読む――。
ゼネコン各社にとって収益力の差が受注戦線での優勝劣敗の大きな要因になりつつある。すでに収益確保のための工事原価の圧縮は限界水域だ。施工時のコストダウン努力に依存する従来手法を見直し、より川上段階からの全社的な対応で調達力や生産性を高めなければ勝ち残ることはできない。建設経営の06年の課題の一つであり、例年にも増して重要度が高まっているのが収益追求だ。
「総合力を結集して体制を強化し、顧客の信頼を増すと同時に収益確保を図る」(清水建設の野村哲也社長)。
「業務全般を継続的に見直し、改善することにより生産性をより向上させる」(大林組の脇村典夫社長)。
西松建設も、収益性の悪い建築工事での粗利(完成工事総利益)確保のために、契約したら直ちに着工できる体制を強化していくのが課題とし、「粗利益率低下の要因となっている着工の遅れを回避する」(國澤幹雄社長)考えを強調する。
戸田建設の加藤久郎社長は05年新春、本紙のインタビューで「大手の数社は不動産開発投資に年間1000億円規模の資金を用意している。実は当社も開発には積極的だし、収益が確実に見込める案件には投資を惜しまない」と語り、現在も「2、3年先を見越した『つくり込み営業』の徹底を図る」方針を打ち出している。つくり込み営業の帰結は特命受注の可能性を大きくし、過度の受注競争に伴う低収益からの脱皮を意味する。
投資資金は、決算で確保する十分な収益を当てるのが前提。収益確保は顧客からの信用や信頼にもつながり、工事受注に結びつくなど相乗効果をもたらすというわけだ。
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経済動向の先行きを予見できず、保有不動産が不良債権化して経営再建の主因となった教訓を生かしながら開発事業の良い部分を経営に反映する現在の潮流は、大手から準大手へと拡大する傾向にある。ただ、参画は工事請負を基本とする対応も少なくない。
「収益を確保するには、単純な競争に巻き込まれないことが大切だ。そのためには上流へのアプローチが不可欠となる」(安藤建設の山田恒太郎社長)。
「事業のオペレーションにも深く関与することで、土地のマッチングなどオペレーションレベルでの提案もしていきたい」(フジタの網本勝彌社長)。
不動産開発事業への参画は、自らプロジェクトを創出するかつての「造注」と同じ手法だが、より上流部でのアプローチや事業化提案などは、事業者として参画しなくても土地情報やノウハウを提供するなどして高収益が期待できる特命受注に結びつけるねらいがある。
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別表は主要ゼネコンの05年度の直近決算見通しを売上高階層別(平均値)に分類したものである(表は本紙紙面をご参照ください)。階層別の構成社数は1兆円以上が5社、1兆円未満−3000億円以上が6社、3000億円未満−1000億円以上が17社となっている。
売上高と本業収益を表す営業利益をみると、1兆円以上の階層とそれ以下の2階層との開きの大きさが分かる。当期利益は2階層とも1兆円以上クラスに比肩しているようにみえるが、それぞれ1000億円以上の債務免除益を1社ずつ計上しているため、傾向としては格差に変化はない。前期比でも、各階層とも各項目で改善もしくは横ばいとなっているものの、増加率は1兆円以上の階層が残る2階層を大きく上回っており、格差拡大の傾向を物語る。
「組織の効率化や間接部門の縮小による固定比率の引き下げなどにより、収益力の向上を図っている」(大成建設の葉山莞児社長)。
鹿島も「顧客本位主義に基づく本業重視」を基本方針としつつ、たとえば、注力する開発事業についても「設計施工力があってこそ提案が生きる」(中村満義社長)とソフト・ハードの持てる力の相乗効果を追求している。
大手の営業利益を押し上げている要因の一つが不動産開発事業だ。売上高以上の伸びを達成しており、大林組が前期より25.6%、鹿島が21.9%増となっている。とくに鹿島は、全売上高に占める開発事業割合は12.1%だが、営業利益に占める割合は41.5%に達する。前記のように各社の取り組みは拡大基調にある。しかし問題は、いかにリスクヘッジをするかである。
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「ある物件で、大手と競合して受注を逃したのだが、そのとき施工力や提案力の差をつくづく教えられた」と述懐するのは、ある準大手ゼネコン社長。大手が受注を果たした決め手となったのは、準大手より約2カ月短い工期提案だった。「提示価格に大差はなかったが、短工期は、施主にとっては早く稼働できて投資代の回収を進められるメリットがあった」(準大手の社長)。
短工期や価格競争は収益を圧迫するが、利益の源泉は受注量に左右されるのも受注産業の宿命である。「分譲マンションや工場、物流施設、大型店舗などの低採算工事を中心に調達の強化や経費削減を進め、低コスト体質を確立することで収益率をあげる」(葉山大成建設社長)。要は、コスト削減の取り組みは際限がなく、その競争を制しない限り勝ち残りはないということになる。
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収益改善に腐心しているのはゼネコンだけではない。設備工事業各社も「受注前の積算を厳しく精査するように指示している」(空調大手)など、川上段階での取り組みを強化している。
また、戦略的受注の必要性を認識しながら「企業体力が回復するまでは採算性重視の方向でいく」、つまり不採算工事の排除を全社展開したり、「リニューアル受注は収益力回復に向けた大きな柱」「実効性を重視した計画を確実に遂行する中で現場力を高める」など、市場性と業態の基本を確認する取り組みも多くの企業に共通する。民間工事で元請受注ができるかどうかも大きな課題だ。
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