|
**ニッコン e-建設経営通信 【第198号】**
■ Question
労働安全衛生法等に関しての質問をさせて頂きます。
弊社が元請会社として建設工事の施工を行うこととなり、下請会社に対して法令等に則った各種書類の提出を指示していますが、ある下請会社から個人情報に関する事項(生年月日、年齢、現住所等)は記載出来ないとして、氏名のみが記載された作業員名簿が提出されてきました。
労働安全衛生法等には名簿提出の義務が明記されておりませんが、この場合、元請である当社としては、
1.安全管理、事故等の緊急時における対応に支障があること。
2.元方事業者としての安全衛生管理指針(平成7年4月21日付け基発第267の2号)により関係下請負人及びその労働者の把握する必要があること。
● 参考
【元方事業者としての安全衛生管理指針(基発第267の2号 H7.4.21)】 の概要
元方事業者による関係請負人及びその労働者の把握等
(1) 関係請負人の把握
元方事業者は、関係請負人に対する安全衛生指導を適切に行うため、関係請負人に対し、請負契約の成立後速やかにその名称、請負内容、安全衛生責任者の氏名、安全衛生推進者の選任の有無及びその氏名を通知させ、これを把握しておくこと。
(2) 関係請負人の労働者の把握
元方事業者は、関係請負人に対し、毎作業日の作業を開始する前までに仕事に従事する労働者の数を通知させ、これを把握しておくこと。
また、元方事業者は、関係請負人に対し、その雇用する労働者の安全衛生に係る免許・資格の取得及び特別教育、職長教育の受講の有無等を把握するよう指導するとともに、新たに作業に従事することとなった関係請負人の労働者について、その者が当該建設現場で作業に従事する前までにこれらの事項を通知させ、これを把握しておくこと。
3.個人情報の例外として、労働基準法107条に基づいて作業員名簿を備え、かつ、提出することとなっていること。
4.ゼネコン等のグリーンファイルをみますと、下請会社から元請会社に対して作業員名簿を提出することが義務のよう記述されていること。
等の理由により、下請会社からこれまで通り全ての事項を記載した作業員名簿の提出を求めることが出来るのでしょうか(当然ながら提出された個人の情報は適切に管理を行います)。
また、作業員名簿を提出しない場合又は氏名のみの作業員名簿を提出した場合などは、労働安全衛生法に違反するものではないでしょうか。
■ Answer
1 個人情報保護法23条1項では「法令に基づく場合」には個人情報を第三者に提供できる規定になっていますが、照会者が指摘されました労働基準法107条の規定は、使用者が雇用者の労働者名簿を作成すべき根拠規定ではあっても、その労働者名簿を第三者(元請)に提供できる根拠規定にはなりません。
したがって、基準法107条を根拠として下請会社から作業員名簿の提出を求めることはできないと思われます。
● 参考
【個人情報の保護に関する法律】
(第三者提供の制限)
第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ 本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
一 法令に基づく場合
二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
2 照会者が指摘された安全衛生管理指針自体には、直接作業員名簿を提出させることは記載されていません。
たしかにこの指針を適切に遵守するためには作業員名簿が必要という現場段階での判断は良く理解できますが、法的にはそのような内容は含まれていません。
また指針そのものは厳密には「法令に基づく」というのではなく、行政指導の範囲に留まるものと思われます(法令とは、法律、施行令、施行規則、告示までと一般に解されています)。
3 また、ゼネコン等のグリーンファイルに作業員名簿提出の根拠を求めているようですが、そのファイルは必ずしも法定された事項のみが記載されてるわけではなく、ゼネコンとしての独自の判断に基づく内容も含まれていると思われます。
したがって、グリーンファイルの法的性格は今ひとつ不明ですが、もし、グリーンファイルに明確にすべての事項を記載した作業員名簿提出を義務づけていることが記載されている場合、下請業者がその点を履行していないとして元請・下請間でのトラブルとなると思います(元請としては、例えばグリーンファイルを遵守することが下請契約の約定の一つになっているのであれば、作業員名簿を提出しない又は氏名のみの作業員名簿しか提出しない下請会社は下請契約違反となり、そのような下請会社を使用しないとすることも可能です)。
4 元請・下請関係のような契約関係に有る場合には、そのような関係のない第三者に比べて、業務遂行上の事情のウエイトが高くなることは避けられません。
したがって、元請として下請の施工管理上当該下請の作業員に関するこれまで提供されていた情報が必要不可欠なものかを再検討したうえで、必要と判断された作業員名簿を下請に提出するよう求めることが適切と思われます。
■ Question
当社では工事部員の業績目標に、原価目標や品質目標の他に現場受注目標を入れています。
導入時期には工事部の同意も得て決定しています。
しかし実際に運用してみると、追加変更などが取れなかったため、現場管理はしっかり行い原価目標や品質目標も達成しているのに業績目標全体の点数が下がる部員が多く、目標項目の見直し要請が出てきています。
どのようにすればいいのでしょうか?
■ Answer
以前のQ&Aでも触れたことがありますが、目標管理は達成できたかどうかを判定するのが目的ではなく、達成につながる行動を考え、実行に移すことで目標達成の可能性を高めることが目的です。
まず追加変更などの現場受注を取るための方法をしっかりと教えるようにしてください。
部課長クラスの方の昔の成功例を教えてあげるのもいいでしょう。
そうすれば徐々にでも現場受注が増え目標達成に近づき、目標項目見直しの必要性も無くなるはずです。
しくみを変更する方法としては、現場受注を業績目標項目からはずす事や、ウエイトを小さくすることも考えられます。
ただ、これは非常に後ろ向きな考え方であり、業績向上につながる目標管理制度・人事考課にはなりえません。
会社全体の業績を作り上げるためには追加変更を積極的に掘り起こすことは必要不可欠であり、それが理解されたからこそ導入時期に工事部の合意も得られたのでしょう。
導入してすぐに成果が出なかったからといって必要なことを放棄するのは会社にとっても社員にとっても決して良いことではありません。
目標項目からはずすことはせず、現場受注目標が達成できるような行動をとって、社員が報われるような業績目標の運営を行ってください。
|