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**ニッコン e-建設経営通信 【第240号】**
■ Question 1
最近、エレベーター工事で強度の低い鋼材が使用されているという報道がよくなされていますが、その原因としてコスト縮減などが背景にあるのでしょうか。もしそうであれば、受注者の自覚ばかりの問題ではないように思いますが。
■ Answer 1
一般的に建設工事における瑕疵問題(設計図書で指定された強度が不足する鋼材を使用した施工は、瑕疵の一種です)は、ともすればその原因は明確にならないことが多いのですが、少なくとも昨年秋から年末にかけて発生したエレベーター工事における強度不足の鋼材使用事案については、おおよそその原因は明らかになっているところです。
強度の弱い鋼材はそうでない鋼材より安価ですから、ともすればコスト縮減が原因と思われるかも知れませんが、結論から言えば、そうではないことで引き起こされていたことが判明してきています。
例えば、平成19年12月に国土交通省が公表した富山県内におけるエレベーター工事における強度不足の鋼材使用は、次の通りです。
● 本来使用する予定の鋼材 SS400材(引張強さ400N/ミリメートル2以上)
用途 車両、建築、橋梁など
価格 トン約75,000円
● 実際に使用した鋼材 SPHC材(引張強さ270N/ミリメートル2以上)
用途 大型キャビネット、各種機械部品
価格 トン約74,000円
価格は、ある同時期のものであって絶対的なものものではありませんが、要は、SS400材とSPHC材との価格はわずか1.4%程度のことであり、コスト縮減が、今回の瑕疵工事の要因とは考えられないところです。
今回の富山県での事例では、そもそもエレベータ設置工事を受注した元請業者の担当者が、SS400材とSPHC材の違いを理解せず、設計図書に両方の鋼材を表記しており(これ自体も大きな問題です)、このため、実際に施工する下請業者からどちらの鋼材を使用するのか確認を求められ、どちらでも良いと答えたので、下請業者は、少しでも安価な鋼材であるSPHC材を使用したというものです。
そのため、当然のことながら強度不足を招いたという、技術的知識が相当不足していたとしか表現のしようがないことが起きていたのです。
その少し前に発覚したエレベータ工事における鋼材強度不足でも、少なくともコスト縮減が要因ではないとされています。
■ Question 2
最近、“現場力“が欠けているから、品質や施工ミスが増えているのでないか?
「もっと現場力を磨け!」と上司によく叱咤されます。現場力をどのように磨いたらよいでしょうか。
■ Answer 2
この質問は大変タイミングの良いテーマです。
今年の建設企業の人材育成におけるキーポイントになる要素だからです。
昨年の日経ビジネス(07年7月20日号)において、「ゼネコン 現場力を取り戻せ」という特集がありました。
この中で、図面に描いたものを確実に作り出す力が今の現場技術者に不足しているという現実を述べています。
製造業が経験したものつくりの人材危機が、今やゼネコンの建設現場に再現されていると言うのです。
設計図を施工図に作り変え、職人と現場打ち合わせし、工程とコストをチェックしながら無事、施主の望むものを提供する力が落ちていると言うことです。
施工図は外注に出し、作業は協力会社任せ、設計事務所の指示や発注者の要望をそのまま検討することなく、鵜呑みにして、不具合を作ったり、納まりの悪い仕上がりにしたりするようなことが目立ってきたからです。
質問の読者はまだ現場経験が浅いようですが、あなたの上司は身体で作業のコツや段取りを覚えてきたはずです。施工図も自分で手書きしてきたはずです。
だから、施工の収まりを現場で判断でき、現場状況に合わせて、すり付けや調整ができて、工事を円滑に適したものを作っているのです。
すなわち、“現場力”とは、工事の所定の要求水準を満たすためにマニュアルや仕様書に頼ることなく、大局的な施工チェックができ、方向性に間違いない進め方ができるという意味です。
異常に気付き、ミスや失敗の影響が把握でき、施工の裏付けや本質を知っているという要素を含んでいるのです。(詳しくは拙著 ニッコン「現場代理人実践読本」や「工事実践入門」を参照ください)
現場力を磨くには、この1月30日の建設人材育成ミニフォーラム『現場力』を磨こう をテーマにしたセミナーに是非ご参加ください。
また、現場代理人としての総合的な能力を磨いていく年間スクールも計画されていますのでこちらもご利用ください。
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