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115億円が73億円に、下落する不動産価格20081203KENPlatz
2007年〜08年の不動産市場は、ジェットコースターのように大きく上下した。ゆっくりと軌道を上っていたと思ったら、いつのまにか下りに転じ、左右に揺さぶられながら猛スピードで落ちていく。ここ数カ月間は「キャー」という悲鳴が聞こえてきそうなほどの急勾配だ。安全ベルトはついていない。振り落とされる者もいて、どこが底なのか、いつまで続くのか、わからない。
不動産会社や建設会社の経営破綻が相次ぐなか、不動産価格の下落も目立つようになってきた。買い手候補がいなくなった後の価格変動を印象づけたのが、日本ビクターの土地の取引だ。
08年5月、日本ビクターは、神奈川県大和市にある工場の土地約4万5000m2を日本綜合地所に115億5000万円で売却すると発表した。ところがこの取引は契約に至らなかった。9月になって日本ビクターは、この土地をスーパーマーケットなどを経営するエイヴイ(横須賀市)に売却した。価格は5月の発表時から40億円以上安い73億円。1m2あたりの価格は当初予定が26万円、変更後が16万円だ。
取引を開示するREIT(不動産投資信託)の資料を見ると、価格下落の現実がつかめる。上場REITとして初めて経営破綻したニューシティ・レジデンス投資法人は、民事再生手続き開始申請前の9月下旬、首都圏の集合住宅3物件を売却。その際、簿価に対して約12億円の売却損が発生した。短期借入金125億円の借り換えができなかったことが、売却の理由だ。当時の発表資料に、苦しい胸の内が記されている。
<昨今の不動産市況の急激な悪化は、本譲渡にも多大な影響を与え、誠に遺憾ながら本譲渡に伴い約12億円の売却損が発生することとなりました。投資主の皆様には、このような結果となりましたことを心からお詫び申し上げるとともに、先行き不透明な経済環境に対応する判断につき何卒ご理解を賜りたく心よりお願い申し上げます>
取得価格と売却価格の違いは以下の通りだ。
▼横浜市神奈川区金港町の集合住宅
67億5300万円(2004年取得) → 58億4000万円・・・13.5%の値下がり
▼品川区平塚の集合住宅
19億6000万円(2006年取得) → 18億円・・・8.2%の値下がり
▼港区南麻布の集合住宅
12億6000万円(2005年取得) → 11億5000万円・・・8.7%の値下がり
いつか底を打つのだが・・・
ジョイント・リート投資法人は11月10日、13億9354万円で取得する予定だった東京都渋谷区西原の集合住宅について、10%ほど減額することで合意したと発表した。不動産取引が停滞局面にあることなどを考慮して交渉を重ねた結果だという。売り主に預託金2億5000万円を預けることが条件だ。
ほかにも、売却価格が取得価格を下回ったREIT物件がいくつかあるので記しておこう。
▼大田区田園調布の集合住宅
2億4900万円(2005年取得) → 2億2500万円・・・9.6%の値下がり
▼中央区八丁堀の集合住宅
27億2500万円(2004年取得) → 26億2000万円・・・3.9%の値下がり
▼札幌市中央区北三条西のオフィスビル
37億円(2002年取得) → 35億2000万円・・・4.9%の値下がり
賃貸のオフィスビルや住宅、商業施設といった収益用不動産の場合、価格算出の骨格となるのは賃料単価と稼働率、それに投資家の期待利回りだ。テナントが減り、賃料単価が下がると評価額は下がる。今回の市場混乱のきっかけは、収益悪化の見通しよりも先に、買い手の資金源が絶たれてしまったことにある。不動産の取得や開発に使われるはずだった投資や融資の資金が消えた。
投資家は融資の借り換えが思うようにできず、借金を返すために資産を現金化する必要に迫られ、売り手が増えて買い手が減った。サブプライムローン問題が出てくる前には、考えもしなかった展開である。景気の後退を実感するにつれ、今度はテナントの撤退などによって賃料や稼働率が下がり、不動産価格が低下する動きがでるかもしれない。
ニッセイ基礎研究所は、11月に発表した不動産投資レポート「大幅悪化した景況感と市場回復の条件」で、不動産や金融などの関係者103人の回答結果をまとめている。不動産投資市場の今後の見通しについて、市場の悪化を予想する回答が92%を占めた。市場悪化を予想した回答者に悪化の期間を聞いたところ、「あと1年〜2年以内」が約5割で最も多い。「あと半年〜1年以内」と「あと2年以上」がそれぞれ2割だった。
どこが底なのか、いつまで続くのかわからないが、一つだけ確かなことがある。下降局面はいつか底を打ち、不動産価格は再び上昇に転じるということだ。そして、人々が一斉にブレーキを踏み込む局面でも、冷静に市場を観察してチャンスをうかがう投資家もいる。
国際的な投資家から見れば、不動産投資はその国や都市の安全性・将来性への投資でもある。世界と比べて、日本の不動産の収益性が安定していると判断されれば、手堅い資金はいずれ戻ってくるだろう。“そのとき”に、不動産の収益を支える日本企業に体力が残っているか、そして日本の将来はまだ明るいと思ってもらえるのか――。目下の私の心配事である。
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