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自治体独自の「ファンド」「基金」構想 地方が照らす太陽光発電20090401FujiSankeiBusinessi.
太陽光設備の導入を後押しするため、設備の設置補助などの原資となる地方独自の「環境基金」が、立ち上げに向けて続々と動き出した。北海道帯広市は「帯広市民エネルギー基金」(仮称)を2009年度にも設立する計画だ。青森県では、住民が出資する環境ファンドを活用して「県民太陽光発電所」を創設する構想が進む。地方発の取り組みは始まったばかりだが、太陽光利用のすそ野を広げる取り組みとして期待を集めそうだ。
◆収入源の多様化
帯広市の構想では、4月にも有識者や金融機関をメンバーとする検討組織を立ち上げる予定だ。基金の元手は「できるだけ複数を用意することを考えている」(環境課)といい、市民からの寄付金のほかにも「定期収入」となる集金の仕組みづくりを探っている。
その例として、有料化したレジ袋の収益の一部や、電気料金の新規契約時の上乗せ分、太陽光発電の売電収入などを組み入れることを視野に入れており、多方面に協力を求める考えだ。
こうして集めた基金を原資に、公共施設の屋根をはじめ各所に太陽光設備を広げる狙いだ。
同様に09年度での構想を掲げる青森県は、ファンドの設立主体に「NPO(民間非営利団体)などの第三者」(エネルギー開発振興課)を想定。県民や企業から出資を募り、自治体庁舎や学校に太陽光設備を設置。各所に設置した設備を総合して「県民共同太陽光発電所」と名付けるという。
売電などで得た収入から、出資者に「利益分配金」を還元する枠組みを作る方向で検討しており、「理想としては県内に3カ所ある主要都市それぞれに事業主体を置きたい」という。県は事業主体に対し、ノウハウの提供などの側面から支援する。
◆黒字で利益還元
実は、青森県などが環境基金の先例として位置付ける「成功事例」がある。
長野県飯田市の「おひさまファンド」だ。設立当初こそ同市の肝いりで発足したが、現在は株式会社の「おひさまエネルギーファンド」が独自に運営している。収益も黒字ベースを維持し、出資者には利益分配金を還元するなど経営は順調。会社設立後2回目となる08年末のファンド募集では、650人からの出資で約4億6000万円を上限とする温暖化防止ファンドを組成した。
前回のファンド募集では保育園や公民館など38件の補助を実施したが、2回目のファンドは出資金ベースで初回の2倍の規模となり、補助対象案件も広がりそうだ。
収入には、太陽光発電による売電のほか、工場などの省エネ対策を支援して対価を得る「省エネルギー支援サービス」事業や、太陽光などの自然エネルギー発電の「環境価値」分を売買可能な証書にした「グリーン電力証書」の販売も手がけている。
環境基金や環境ファンドの取り組みは、採算面がおぼつかなければ長続きしない。おひさまファンドのように、多くの収益源を抱えて事業を安定させることができるかどうかが、各地で始動し始めた新たな基金構想の成否を占う要因といえる。
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【予報図】
■「投資先」の魅力で普及加速
政府は2010年度までに、家庭や企業の太陽光設備で発電した余剰電力を電力会社が買い取る新制度を導入する方針だ。買い取り価格は通常の電気料金の2倍程度となる見込みで、一般家庭が太陽光発電を導入するインセンティブとなる。
地方が手がける環境基金や環境ファンドには、出資者などのステークホルダー(利害関係者)に利益が還元される仕組みをとるものがある。安定した利益還元を維持できるファンドが増え、「貯蓄の投資先」としての認知が広まれば、太陽光発電の普及に向けて大きな力を持つことになる。
今後は、こうした基金やファンドを下支えする制度を求める声が強まりそうだ。
基金の事業主体としてNPOを念頭に置く青森県は「NPO立ち上げの初期費用は非常に大きい。環境投資にかかわるNPOの初期費用を支援できるような枠組みがあれば有効だ」と指摘する。地方発の取り組みをバックアップする国の施策も、事業を軌道に乗せるための鍵といえそうだ。(塩原永久)
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