|
「衣替え」でワンルーム活況 中古売り出し件数、首都圏で過去最高の勢い20121212SankeiBis
投資用を中心とした中古ワンルームマンションの売り出し件数が、首都圏で過去最高となる勢いで伸びている。不動産のデータ会社、東京カンテイ(東京都品川区)によると、2012年は前年比10%弱の約7万件に達する見通しだ。
バブル期の1980年代後半から90年ごろに建てられた物件が数多く供給されるとともに、保有・運用期間が短くなる傾向にあることも背景にある。ただ、築年数の長さから敬遠され、入居者の募集では苦戦を強いられているのも事実。物件の魅力を高めて成約率を伸ばし、資産価値の向上につなげるため、リフォーム関連など派生サービスも台頭している。
家賃下げず入居成約
投資用ワンルームマンション仲介の最大手、日本財託(東京都新宿区)は最近、新たに扱いを始めた横浜市の管理物件で想定外の事態に出くわした。
建築後22年、20平方メートルの部屋は入居者が退去したときの家賃が月額6万円で、同じマンションの他の部屋より約1割高い。長期にわたって住み続けたため、入居時の家賃のままだったのだ。補充入居者の募集では相場に合わせるのが常識だが、マンションのオーナーには値下げする考えは全くなく、空き室状態が長引く恐れがあった。
そこで提案したのが、低価格のリフォームで雰囲気を一新する同社のリノベーションサービス。オーナーは新たな投資を受け入れ、室内を一気におしゃれな空間へと変身させた。この結果、6万円の家賃ですぐに次の入居者と成約。同社の槙島隆之管理部部長は「正直言ってびっくりした」と振り返る。
バス・トイレ一体型に代表されるバブル期の物件は相対的に人気が低い。空室状態の長期化を避けるため、家賃を下げて入居者を募る「負のスパイラル」に陥るケースも顕在化しており、部屋の状態を放置すればオーナーが安定した利益を確保できなくなる恐れが強い。
トイレとバスを別々にするといった全面改装は、一般的に150万〜200万円程度もかかり、投資に見合った効果が期待しにくい。そこで、日本財託はニューヨークやパリ、バリ、カリフォルニア、ミラノをテーマに部屋を「衣替え」するサービスを39万8000円で用意した。例えば、建物周辺の景色が美しければニューヨーク風に、女性をターゲットにしたい部屋ならパリ風に−といった具合だ。
120件近い施工実績を重ね、未施工の物件と比べて空室期間を平均で14日間短縮。月額家賃も周辺相場よりも平均で3110円の引き上げを実現し、物件の収益性向上につなげている。
改装は見た目重視
ワンルーム専門のリノベーション施工会社、ポートフォリオ(東京都港区)は「リノベワン」というパッケージ商品を10年から展開。20平方メートルまでは55万円、20平方メートル超から30平方メートルは65万円でサービスを提供し、施工実績は260戸を超えた。
90年代に建てられたワンルームマンションについて、齋藤英一社長は「消費者の好みが多様化している今の時代に、このままでは画一的で魅力に欠ける」と指摘。見た目の良さにポイントを置いて改装を施すという。
このため、ワンルームの主なターゲットとなる女子大生やOLらの生の声を集め、商品づくりの参考にする手法を採用。一体型のバス・トイレはアクセサリーを配置して印象を変え、室内の壁はクロス貼りではなく塗装で仕上げるなど、さまざまな差別化を図った。この結果、平均で約9%の家賃アップに成功。同社は14年までに累計1200戸の施工実績を目指している。
オーナーに理解求め、物件差別化重視
一方、バブル期の経験や近年の中古マンションの活況ぶりで得た教訓や経験を生かし、海外展開を図る事業者も現れた。大和ハウス工業グループの住宅管理運営会社、大和リビング(東京都江東区)は韓国最大手の通信事業者、ktグループと提携。13年に韓国での賃貸住宅管理事業に参入する。
韓国でも小人数世帯が増加傾向にあり、ソウルなどでワンルームマンションの建設ラッシュとなっている。ただ、「かつての日本のようにワンパターンの物件が多い」(大和リビング海外事業室の石野茂光室長)といい、オーナーに理解を求めて物件の差別化を重視する方針だ。
首都圏の投資用ワンルームマンションでは、家賃収入の年間総額を物件価格で割った「表面利回り」が1〜9月は8.39%と前年同期比で0.36ポイント上昇。東京都心部では近年、新築ワンルームマンションの建築規制が厳しくなっていることもあり、中古物件の人気は当面続くとともに、派生ビジネスもさらに活発化しそうだ。(伊藤俊祐)
|