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総論賛成 各論は反対/多能工 曖昧な現状20161125建設通信
建設産業にとって将来的な懸念として浮かび上がっている技能労働者の不足。大前提となる若手人材の確保・育成(入職や定着)に取り組む一方で、注目が集まっているのが複数の技能を併せ持つ、いわゆる複合工(多能工)の存在だ。しかし、この多能工化に対するニーズや受け止めは業界内でもさまざま。これからの建設産業界が求める技能者像に多能工はどう位置付けられるべきなのか−−。
多能工化は、専門工事業あるいは、そこで働く技能者にとって、いわば「働き方改革」となる。
目下の建設産業にとって、最重要のキーワードとなっている「生産性の向上」や、その背景にある人口減少と高齢化というわが国が直面する2つの課題に向き合う重要な取り組みの1つと言ってよい。
基本問題小委員会の中間とりまとめ(最終報告)に『複合工(多能工)−マルチクラフターの育成や活用事例の水平展開』が盛り込まれたことで、国土交通省の「キャリアパスモデル見える化検討会」(座長・蟹澤宏剛芝浦工大教授)でも主要テーマの1つに位置付けられている。
1人の職人が複数の職種を手掛ける、この複合工(多能工)に対する建設産業界の見方はどうなのか。
それを示す興味深いデータがある。建設産業担い手確保・育成コンソーシアム(事務局=建設業振興基金)が昨年11月からことし3月にかけて、総合工事業と専門工事業のそれぞれを対象に実施した「求める人物像」に関するアンケート調査がそれだ。
調査の結果によると、技能労働者の不足に対する危機感から、複数の工種を一括して担うことができる多能工への高い期待がある一方で、発注側である総合工事業と請け負う専門工事業とでは、その必要性への認識や意識に差が生じている。
実際に専門工事会社などに仕事を出す総合工事業や、技能者を抱える専門工事会社から見れば、複数の技能を持つ複合工は、その工種の専門工に比べると、技能の質やレベルが“中途半端”であるイメージが拭い切れていない。多能工を必要としない理由として、総合工事業が「作業効率が低い」といった点を挙げているのは、そのことを示す一例だろう。
技能者からみても、複数の工種を担えるだけの技能を高いレベルで身に付けたとしても、それによって給料が上昇するといった具体的なメリットがなければ、苦労して多能工になる意味がないというのが実情だ。
生産性の向上や供給力の維持にとって、 多能工化が有効な手段であるという認識は業界全体として一致しているが、それぞれの職種や技能にプライドを持つ技能者側は「総論は賛成だが各論は反対」 というのが本音。比較的、取り組みやすいとされる内装系の職種が、 その取り組みやすさに反して後工程であるが故に思ったほどの効果が得られないといった懐疑的な声は、多能工の曖昧(あいまい)な現状を端的に映し出す。
生産性や供給力だけでなく、専門工事会社がいかに請負契約の中で利益を上げることができるか、そのための手段としての多能工化という前向きなアプローチがいま必要になっていると言える。
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