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学校という名の不動産 用地難で開発業者が注目20051110日経
国土交通省が発表した2005年の基準地価。東京23区が15年ぶりに上昇に転じるなど、大都市圏を中心に地価の底入れが鮮明になっている。
同時に、不動産ファンドによる物件の取得競争も激しさを増しており、開発用地そのものの確保が難しくなりつつある。そんな用地取得難の中、デベロッパーの目は学校に向き始めた。
湾岸の芝浦工大が跡地売却
今年3月までノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈氏が学長を務めていた芝浦工業大学。11月初旬にも、その敷地の一部を戸田建設など複数のデベロッパーに売却することが明らかになった。2006年4月をメドに、再開発が進む東京都江東区豊洲に大学院や工学部の一部を移転することが決まっており、港区芝浦の現キャンパスが注目を集めていた。
芝浦キャンパスはJR山手線・京浜東北線の田町駅から徒歩数分という好立地。運河を挟んだ目と鼻の先に、三井不動産などが開発を進める芝浦アイランドがある。急速にマンション建設が進む「湾岸エリア」の1つだ。大学の本部機能など一部は残すものの、立地を生かし跡地にはマンションが建設される可能性が高い。
同じような例はほかにもある。
今回、バブル後初めて基準地価の上昇地点が出た杜の都、仙台。学校法人東北学院は10月28日、中学と高校の跡地を森トラストに売却した。
敷地の広さは約1万6500m2。取得価格は80億円前後と見られる。森トラストは、仙台駅まで徒歩約10分という抜群の立地を生かして、ホテルを目玉に、オフィスやマンション、ホールなどを揃えた複合商業施設を建設する。既に、複数の外資系ホテル運営会社に進出を打診しているという。
これまでも、大学の跡地に大規模マンションが建設されることは少なくなかった。だが、ここにきての注目度の高まりはかつてないものだ。
都内の公立小学校も狙い目
「立地がいいものが多く、出物さえあれば学校はオイシイ。特に、少子化の影響で廃校になった都心部の公立小学校が狙い目だ」。ある大手デベロッパーの幹部は打ち明ける。
REIT(不動産投資信託)など不動産ファンドの物件取得はとどまるところを知らない。半年前に5%前後は確保できた不動産の投資利回りはオフィスで3%台に突入。オフィスやマンションなど物件の形に限らず、1%以上も投資家の期待利回りは低下している。
ファンドによる“1棟買い”を当て込むデベロッパーは、土地を仕入れ、オフィスやマンション開発を進める。こうした動きは名古屋や福岡、仙台など地方の大都市にも飛び火。不動産市場はバブル期以来の活況を呈する。
その一方で、立地や広さに優れる不動産物件は減少傾向にある。数年前は企業がリストラに伴って放出するグラウンドや社宅用地など、大規模開発に向いた土地を取得できた。
リストラも一巡した今、地上げした土地が高値で転売されるなど、都心部ではバブル期のような光景が繰り広げられている。都心部の一等地にあり、まとまった土地が手に入る学校は、開発用地としては確かに一級品だろう。
「(小学校売却の問い合わせを)業者から受けることはある。だが、売却した後、区内の用地を改めて取得するのは大変。区としては売るつもりはない」(東京都港区契約管財課)。そんな行政当局の声も不動産狂騒曲の中ではかき消されがち。少子化を背景に学校経営は厳しくなるだけに、開発側は熟柿作戦に出てくるかもしれない。
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