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建設業の農業参入を活用した地域農業の発展と農村環境の保全 20051114三菱総研
産業・市場戦略研究本部 主任研究員 渋谷往男
最近農業を行う建設会社が増えているのをご存じだろうか。新聞等でもときどき記事になっている。そもそもなぜ建設会社が農業を行うようになってきたのか。農業農村側としてはどう対応すべきかを論じてみたい。
■建設業者による農業の取り組み
建設業者が農業を行う背景には、2つの事情がある。ひとつは農業側の事情である。戦後の食糧難の時代に就職時期にあった昭和一桁世代は戦後60年一貫して我が国の農業を支えてきた。この世代が70歳代となり、農業からの引退が始まっている。このため、ほとんどの農村で農業の担い手不足とそれに伴う農地を中心とする農村環境の悪化に直面している。
もうひとつは建設業側の事情である。これまで公共事業はインフラ整備だけでなく景気対策の目的でも実施されてきた。しかし、財政赤字が拡大する中で政府、自治体とも公共事業の削減に動き出した。ピークであった平成7年に26兆円であった公共事業投資は平成17年の見通しでは15兆円と6割以下に減少している。この影響をもろに受けているのが農村部の建設会社である。農村部では役場や農協以外の主な就職口は建設会社であり、社員は家族同然、という会社も多い。このため、仕事が6割に減っても簡単にはリストラができない。社員を抱えつつ建設業以外の仕事に活路を見いだすしかない。そこで農業参入が有力な選択肢として浮上してくるのである。
■追いついてきた制度整備
筆者の業務を思い起こすと建設業の農業参入が一部で注目され始めたのは平成14年度、いまから3年前である。この頃は、建設業の農業参入は極めて異端視されており、農村の行政機関の関係者などからは農地が残土や産廃捨て場としてを使われるのではないかという懸念や、一過性のものでありすぐに撤退するという受け止め方が強かった。また、実際に参入した建設会社は農家が受けられるような補助金や融資制度もなく、相談相手も少ない、まさに孤立無援の状態であった。
しかし、島根県、北海道、長野県など公共事業への依存度が高い地方自治体が注目し、地域振興の立場から建設業の農業参入を積極的に支援するようになってきた。県によっては丁寧な「農業参入マニュアル」を作成している例もある。
さらに農林水産省でも、今年度から「強い農業づくり交付金」の対象として農業参入企業も加えられるとともに、本年9月からは建設会社を含む一般の株式会社による農地リース方式での農業参入が全国で行えるようになった。建設会社の農業参入を想定した実証事業も始まった。このように異例ともいえる早さで建設業の農業参入を支える制度が整ってきた。
■従来の農業側からの積極的な位置づけと協力を
建設業の農業参入は地域の農業や農村環境を守るとともに、雇用も守る。そのための制度整備も進んできた。しかし、農業者や農協、市町村など現場に近い人びとの意識や行動は一朝一夕には変わりにくい。
担い手の減少と農村環境の悪化は待ったなしの状況である。今後は農業者、農協、市町村などが、農業に意欲を持つ建設会社も農業の担い手として積極的に位置づけ、地域に暮らす運命共同体という意識で協力して地域農業の発展と農村環境の保全を図っていってほしい。
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