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農村工学研究所 災害に強い 越流許容型ため池 を開発20060629日経
農村工学研究所(所長:宮本幸一)施設資源部土質研究室の毛利栄征(モウリ ヨシユキ)室長らの研究グループは、高機能土のうと傾斜積み工法を併用することにより、台風豪雨や大きな地震に強く、建設コストを縮減できる画期的なため池整備技術を開発しました。
【1.背景・ねらい】
ため池は、地域の暮らしを維持する生命線であり、ため池を安全に維持管理することで、その地域の安定した社会秩序が形成されてきました。ため池の総数は、全国で21万箇所と言われていますが、多くのため池は100年以上前に建設され、老朽化が進行しています。加えて、ため池の安全を脅かす自然災害は近年増加傾向にあります。平成16年度には、10回に及ぶ台風の上陸による豪雨と新潟県中越地震等が発生しました。そのため、集中豪雨による洪水が堤体(ため池の堤防部分)を乗り越える越流や、地震による堤体の亀裂や沈下により、全国で340箇所以上のため池が決壊し、約4,600箇所のため池が大きな損傷を受けました。一方、農村地域において都市化が進展し、ため池周辺にも宅地が広がってきており、ため池の安全性を確保することが従前にも増して重要となっています。
このように、ため池を取り巻く自然環境及び社会環境は著しく変化しており、被災及び老朽化したため池の安全性を回復及び向上させることが社会的な緊急課題となっています。
【2.成果の内容・特徴】
高機能土のうを用いた傾斜積み工法を開発し、台風豪雨や大きな地震に強く、建設コストを縮減できるため池整備技術を開発しました。
・高機能土のう:通常の土のうの約10倍の大きさで、土のうの端にテールとウィングと呼ぶシートを接続し、積んだときに土のう同士が連結される。
・傾斜積み工法:水平に土のうを積んだ状態では越流や地震時に決壊しやすいが、傾斜させて積むことで全く決壊しない。
○越流許容型ため池工法(ため池堤体の断面図)
* 関連資料 参照
【3.技術の検証】
1) 小規模越流実験によると、土のうを水平に積層した場合には、堤体を越流する流れによって3分間で崩壊したが、土のうを傾斜して積層したものでは4時間に亘る越流に対して全く崩壊することなく安定していることを確認しました。
2) 大型土のうを用いた高さ2.8mのため池堤体模型の震動実験では、兵庫県南部地震と同程度の地震に対して微小なクラックが発生する程度の損傷にとどまりました。
3) 兵庫県南部地震の1.6倍の1,300galという大きな地震動(参考:阪神・淡路大震災では最大818gal(ガル)の加速度が生じた)でも、決壊に至るような変形は発生せず、極めて高い耐震性を発揮することを確認しました。
【4.普及と今後の課題】
土のうを高機能化してため池に使用する本工法は、高い耐侵食性と耐震性を持っているため、ため池堤体のみならず河川堤防や海岸堤防への活用が期待できます。人件費が安価で、施工機械の使用が高価な発展途上国では効果的・経済的な工法になると考えられ、津波被害を軽減させる土木工事等への活用が期待できます。
今後、「越流許容型ため池工法」の計画・設計・施工指針を策定するため、実際のため池において性能試験と長期耐久性試験を行い、植生被覆などの土のう劣化対策の効果を確認する予定です。
【関連特許】
本工法は、農林水産省「官民連携新技術研究開発事業(H14〜H20)」の認定を受け、(独)農業工学研究所(平成18年4月1日に新法人への移行に伴い、(独)農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所に改称)と、三井化学産資(株)、東電設計(株)、(株)クボタで組織された新技術研究開発組合との共同研究により開発したものである。(特願2004−240318,特願2005−239074,特願2005−239056,特願2006−33232)
【研究体制】
・ 担当者は、農村工学研究所 施設資源部 土質研究室の毛利栄征室長らの研究グループ(三井化学産資(株)、東電設計(株)、(株)クボタが参画)
・農林水産省農村振興局整備部設計課の「官民連携新技術研究開発事業」で実施
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